富士フイルム 再生医療分野でiPS細胞提供と特許供与を開始

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2020年12月10日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医療領域の事業成長を加速させるため再生医療分野で新たな取り組みを展開すると発表した。

 同社米国子会社でiPS細胞の開発・製造・販売でリードするFUJIFILM Cellular Dynamics(FCDI)が、治療用iPS細胞の提供とiPS細胞作製技術に関する特許ライセンス供与を本格化。第1弾として特許ライセンスの全世界での非独占的使用権をLonza Walkersvilleに許諾した。

 FCDIは、エピソーマルベクターや初期化因子を複数導入してiPS細胞を安全かつ効率的に作製する技術や、多様な細胞へと分化誘導する技術を早期に確立。今年3月にcGMP対応の新施設を稼働させ、高品質な治療用iPS細胞の生産体制を構築した。今後、再生医療製品の研究開発を進める企業に対し、治療用iPS細胞の提供と作製技術特許のライセンス供与を幅広く行い、顧客の製品開発の支援と生産プロセス開発・製造受託サービスを本格化させ、iPS細胞による再生医療の産業化を推進する。

 富士フイルムはバイオ医薬品や再生医療製品、それらの研究開発や製造での細胞培養に必要な培地など、バイオ医療領域で成長戦略を進めている。バイオ医薬品の開発・製造受託の設備増強や培地の新工場建設など、積極的な設備投資で高まる需要増に迅速に対応する生産体制を強化。基礎研究から生産プロセス開発まで一貫する「バイオサイエンス&エンジニアリング研究所」を日米に設立し、基盤技術や次世代技術の研究を推進している。バイオテクノロジーやエンジニリアング技術、培地技術などグループの技術を結集し、バイオ医薬品の原薬製造の培養から精製までの一貫生産を実現する連続生産システムを業界で初めて開発した。

 同社は事業を通じて社会課題の解決に積極的に取り組むことで、バイオ医療領域の事業成長を加速させるとともに、新たな産業の創出に貢献していく考えだ。

 

AGC バイオ医薬品のデンマーク拠点の培養能力を倍増

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2020年11月26日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社AGC Biologics社(米国)でのバイオ医薬品CDMOの培養能力増強を決定したと発表した。デンマーク拠点の隣接地を購入し、工場棟とオフィス棟から成る新社屋を建設し、シングルユース仕様の2000リットルの動物細胞培養槽を増設。総投資額は約200億円、稼働開始は2023年の予定だ。

 バイオ医薬品CDMO市場は年間約10%以上の成長を続け、同社の受託件数はそれを上回る。これに対応するため動物細胞を使ったバイオ医薬品CDMOの培養能力を増強し、デンマーク拠点のシングルユース仕様の培養能力は従来の倍以上に拡大。それに合わせた分析・開発設備や人員増にも対応し、延床面積約1万9000㎡の新社屋を建設する。

 AGCグループはバイオ医薬品CDMO事業を含むライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけ、合成医農薬CDMO、動物細胞と微生物を使ったバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資を行い、事業を拡大させてきた。今年7月には成長著しい遺伝子・細胞治療領域にまでCDMO事業の幅を広げ、2025年の目標売上高1000億円以上を2~3年前倒しで達成する見込み。

 今後も各地域でグローバル統一の高水準の品質・サービスを提供できるよう、各拠点のシナジーを最大限発揮させ、製薬会社、患者そして社会に貢献していく考えだ。

 

住友化学 合成生物学で次世代事業を加速、米国で新組織設立

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2020年11月17日

 住友化学は16日、米国子会社ベーラント・バイオサイエンス社(イリノイ州:VBC)のバイオラショナルリサーチセンター内に、新組織「シンバイオハブ」を設置したと発表した。合成生物学の革新的技術が数多く創出されている米国内に同分野の技術構築を目的とした拠点を設立することで、次世代事業の創出に向けた取り組みを一層加速させる。

 近年、バイオテクノロジーとデジタルテクノロジーの融合による技術の急速な進歩により、合成生物学の産業利用が大きく進展。こうした中、住友化学は、合成生物学と総合化学メーカーとして長年培ってきた化学技術を融合させることで、化学合成だけでは製造が困難な高機能製品や、高収率かつクリーンで省エネルギーなプロセスを開発し、新事業の創出を目指している。すでに、コナジェン社への出資やザイマージェン社との提携をはじめ、合成生物学分野のスタートアップ企業やアカデミアとの間で様々な取り組みを進め、同分野への研究開発投資を積極的に実施している。

 今回、VBC内に新設するシンバイオハブは、オープンイノベーションはもとより、米欧のイノベーション探索拠点であるコーポレート・ベンチャーリング&イノベーションオフィス(CVI)や、バイオサイエンス研究所、工業化技術研究所などの国内拠点とも連携。同社グループ全体で、合成生物学を利用した基盤技術の早期構築を図る。

 また、生産菌株の開発、スケールアップなどの自社研究にも着手し、バイオラショナル事業や化学品の工業化で培った技術も生かして合成生物学の技術・知見・経験を集積することで、同社グループがもつ化学技術とのシナジーも追求し事業化につなげていく考えだ。

 

ENEOS 大型バイオマス発電所の共同事業に向け合意

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2020年11月12日

 ENEOSはこのほど、世界最大級の大型バイオマス発電所について、イーレックス(東京都中央区)と共同で事業化を検討することに合意し、環境アセスメントを開始すると発表した。同発電所の設備出力は30万kWを予定し、国内では最大、世界でも石炭火力など他エネルギー源からの転換を除けば、 最大級のバイオマス発電所となる。

 建設用地はENEOSがもつ新潟サンライズゴルフコース(新潟県聖籠町)の一部を活用する計画で、バイオマス燃料には、海外からの安価かつ安定供給が見込める燃料を検討していく。また、再エネ賦課金という形での国民への負担がない、日本初となるFIT制度から自立したNon‐FITの大型バイオマス発電所の実現を目指す。

 ENEOSは再生可能エネルギー事業を次世代の柱の1つとして位置づけ、メガソーラー(20カ所、約4.8万kW)、風力(2カ所、約0.4万kW)、バイオマス(1カ所、約6.8万kW)を全国で展開し、再エネ事業の拡大に取り組んでいる。バイオマス発電については、今年5月に室蘭バイオマスの商業運転を開始。供給安定性に優れた再エネ発電として、さらなる拡大を目指していく。

 他方、イーレックスは現在4基のバイオマス発電所をもつ国内有数のバイオマス発電事業者。加えて、東南アジアの現地パートナーとPKS(パーム椰子殻)の集荷・製造事業に取り組むなど燃料事業にも力を入れている。

 今後は、両社が培ってきたバイオマス発電の知見を活用して、2023年中の工事着工、2026年度中の運転開始を目指し、共同で事業化検討を行っていく。

 

NEDO バイオジェット燃料普及の研究開発6件を始動

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2020年10月19日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、バイオジェット燃料の普及に向けた市場形成や社会実装のためのサプライチェーン構築とカーボンリサイクルのための原料基盤技術を強化する研究開発に着手すると発表した。事業化スキームや経済性を検証し、バイオジェット燃料の市場形成に向けたサプライチェーン構築を促進する。

 航空業界にとってCO2排出量削減による地球温暖化抑止対策は喫緊の課題だ。バイオマス由来のバイオジェット燃料導入は実現可能性が高く、海外では廃食用油由来のバイオジェット燃料が実用・商用化され、国内でも今年中のバイオジェット燃料の国内定期便デモフライトを予定するなど、事業化の動きが加速している。

 こうした中、NEDOは2017年度から「バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」を実施しており、2030年ごろの商用化を目標に一貫製造技術の確立を目指した研究開発に着手する。

 実証を通じたサプライチェーンモデルの構築では、製造技術ごとに「油脂原料からの水素化・脱酸素化処理」(ユーグレナ)と「短繊維パルプ由来エタノールの脱水重合」(Biomaterial in Tokyo、三友プラントサービス)の一貫製造技術の確立と、原料調達・製品供給などの事業スキームや経済性を検証する。

 微細藻類基盤技術開発では、特長の異なる大量培養方法「海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養」(電源開発)、「熱帯気候・屋外環境下での発電所排気ガスを利用した大規模微細藻類培養」(ちとせ研究所)、「微細藻バイオマスのカスケード利用」(ユーグレナ、デンソー、伊藤忠商事、三菱ケミカル)の実証と生産コスト低減や副生物の有効利用にも取り組む。また微細藻類研究拠点の整備と商用化の課題解決・標準化を図る「微細藻類研究拠点および基盤技術の整備・開発」(日本微細藻類技術協会)も採択した。事業期間は2024年度までで、今年度予算は49.5億円。

 同事業を通じてバイオジェット燃料の普及に道筋をつけ、航空分野での温室効果ガスの排出量削減に貢献するとしている。

NEDOと長瀬産業 希少アミノ酸の生産性を1000倍に向上

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2020年10月16日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構と長瀬産業はこのほど、食品・化粧品・医薬品など幅広く利用が期待される希少アミノ酸「エルゴチオネイン(EGT)」の生産性を、NEDO開発のスマートセル技術の活用で約1000倍に向上させたと発表した。これは世界最高レベルの生産効率で、安価で高純度な環境配慮型EGTバイオ生産プロセスの確立が可能となった。

 EGTはキノコなどに微量含まれる抗酸化能に優れた希少アミノ酸。人にはFGTを利用する仕組みがあるため、食事摂取による脳機能の改善、皮膚、眼、各種臓器細胞の酸化ストレスからの保護が示唆される。天然物からの抽出では含有EGTが微量、化学合成では環境負荷が大きいなど、安価で低環境負荷の製法は未確立だ。

 NEDOは2016年から、植物や微生物細胞の物質生産能力を最大限引き出す生物合成技術「スマートセル」を構築し化学合成では困難な有用物質の創製、化学合成を上回る生産性を目指す「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」事業(スマートセルプロジェクト)を推進してきた。長瀬産業は2015年に安価で安定供給可能な環境配慮型バイオ生産プロセスの開発を始め、昨年度から同事業に参画して研究開発を加速してきた。

 今回、同プロジェクト独自のスマートセル基盤技術「酵素改変設計技術」「代謝経路設計技術」「HTP微生物構築・評価技術」「輸送体探索技術」により細胞内の生産反応の最適化に成功。生産効率は世界最高レベルの従来比約1000倍を達成した。

 今後、同生産菌株を活用し早期の事業化を進め、化学合成が難しい有用物質の創製、低コスト・低環境負荷の生産プロセスである「スマートセルインダストリー」の実現に貢献していく考えだ。

プロジェクト概要
プロジェクト概要

 

三菱ケミカル 全国発明表彰受賞、バイオ由来の樹脂製造技術

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2020年10月15日

 三菱ケミカルは、公益社団法人発明協会が主催する令和2年度全国発明表彰で、「バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術の発明」により「朝日新聞社賞」を受賞した。

 同発明は、バイオマス資源由来のポリエステルに実用強度、意匠性、実用耐久性、土中分解性の促進などの機能を付与する製造技術の発明で、同社の「BioPBS」などの生分解性樹脂の製造に活用されている。全国発明表彰は、日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、独創性に富む優れた発明などを表彰している。

 今回受賞した発明は、バイオマス資源由来のジカルボン酸やジオールを主原料とすることにより、従来の石油由来の製品と比べ、二酸化炭素の排出量削減に大きく貢献することが評価された。

 同社は、今回の発明以外にもバイオマス資源由来の製品に関する技術を多数保有し、また、同発明については、米国、欧州、中国へも特許登録を完了し技術展開を行っている。同社は、これらの技術を活用して、積極的にバイオマス資源由来製品の普及および市場のさらなる拡大を促進し、持続可能な社会に貢献していく。

全国発明表彰を受賞した、バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術
全国発明表彰を受賞した、バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術

三菱マテリアル 廃棄食品バイオガス発電施設の営業運転開始

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2020年10月8日

 三菱マテリアルはこのほど、2018年設立の連結子会社ニューエナジーふじみ野(NEFC)が食品廃棄物のバイオガス化および発電電力販売の目的で、昨年7月より建設を進めていたプラント施設が営業運転を開始したと発表した。

NEFCバイオガス発電プラント全景
NEFCバイオガス発電プラント全景

 NEFCは、食品工場や小売店などの食品関連事業者から排出される食品廃棄物を1日あたり40t処理、得られたバイオガスで発電し(出力550kW)、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)で売電する。市川環境エンジニアリング、コープデリ生活協同組合連合会、生活協同組合コープみらいも出資している。

 日本国内の食品廃棄物量は年間約1600万tで、約7割は焼却処分されている。一方、国内の廃棄物最終処分場は新設が難しく、残余年数は約20年といわれ、最終処分量削減による延命対策が求められており、焼却で発生するCO2の削減も、地球温暖化防止上の課題だ。

 三菱マテリアルグループの企業理念「人と社会と地球のために」の下、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」となることをビジョンとし、中期経営戦略で解決すべき重要な社会課題として「都市廃棄物の効率的処理」「CO2排出量削減」を掲げている。

 NEFCは食品廃棄物のバイオガス化と発電に加え、処理過程で発生する廃プラ、汚泥などを三菱マテリアルのセメント工場で原料や熱エネルギー代替として再資源化する独自の事業スキームにより、最終処分廃棄物ゼロ、CO2排出量削減を可能とし、最終処分場の延命や地球温暖化防止にも寄与する。

 同社グループは、NEFCの食品廃棄物バイオガス事業を通じて、循環型社会の構築に貢献していく。

ちとせ バイオジェット燃料の技術開発がNEDO事業に

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2020年10月6日

 ちとせグループの中核企業であるちとせ研究所は5日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募したバイオジェット燃料生産関連の技術開発事業に、「微細藻類由来の純バイオジェット燃料の製造に向けた藻類の長期大規模培養技術の確立」を目指すテーマが採択されたと発表した。

 ちとせ研究所は、マレーシア・サラワク州の州立研究機関であるサラワク生物多様性センターや、サラワク州政府系の電力会社サラワク・エナジーらと共同で研究開発に取り組み、火力発電所の排気ガスを利用した藻類の長期大規模培養技術の確立を目指す。

 光合成により二酸化炭素を吸収する微細藻類由来バイオジェット燃料の普及に向けては、十分な供給量の確保と生産コスト削減の観点から、数千㏊規模での藻類の大量培養が必要になる。今回の実証事業では、事業化を目指す上で最小単位となる5㏊規模での実証を行っていく。

 日本と東南アジア全11社で活動するバイオベンチャー企業群のちとせグループは、これまで国内外の様々な環境下で、様々な藻類種、様々な藻類培養技術を応用し、多くの共同事業者と共に、複数の屋外実証プロジェクトを実施、その一部を商業化している。

 これらの知見を生かし今回、5㏊の新規大規模藻類培養設備を構築し、熱帯気候の屋外環境下での純バイオジェット燃料製造に最適な微細藻類を選定することで、同微細藻類種を含む複数の微細藻類種を使って火力発電所排気ガスを利用した大規模藻類培養の実証を行う。また、実証データを基にバイオジェット燃料の社会実装を見据えたTEA(技術経済分析)、LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施していく予定だ。

バイオジェット燃料普及に向け、火力発電所の排気ガスを利用した大規模藻類培養の実証を開始
バイオジェット燃料普及に向け、火力発電所の排気ガスを利用した大規模藻類培養の実証を開始

ユーグレナ バイオ燃料宣言、3市23社1団体が賛同

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2020年9月23日

 ユーグレナはこのほど、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」宣言に、新たに2市15社が賛同したと発表した。

 次世代バイオディーゼル燃料の利用などを通して、気候変動対策の継続を目指す企業、自治体、団体数は27まで拡大。同社は2010年にバイオ燃料の研究開発を開始、国産の藻類由来のバイオ燃料製造を目標に、15年から横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングスとともに「国産バイオ燃料計画」に取り組んでいる。

 18年のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの完成を機に、ひろしま自動車産学官連携推進会議を加えた1市4社1団体をサポーターとして「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを目指す「GREEN OIL JAPAN」宣言を発表した。

 その後「ユーグレナバイオディーゼル燃料」の導入・普及に協力する企業などが同宣言の賛同に加わり、同燃料を使用する14社1団体、使用済み食用油の回収や精製、バイオ燃料の原料提供などの9社、製造・利用技術の開発や支援の6社、取り組みを支援する3市1団体となった(延べ数)。

 今後も賛同企業・団体などとグリーンリカバリ―(緑の回復)に寄与し、気候変動への具体的対策を遅らせないよう、バイオ燃料を通したサステナブル社会の実現に、官民一体で取り組んでいく考えだ。

 バイオ燃料の原料となる使用済み食用油の回収への協力や、バイオ燃料製造実証プラントで製造する次世代バイオディーゼル燃料「ユーグレナバイオディーゼル燃料」の普及を進め、人々の生活を取り巻く「車」や「発電機」などへの利用拡大を目指す。