産総研 もみがら・米ぬかと微生物で重金属廃水を浄化

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2021年9月30日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で、米ぬかを栄養源にした硫酸還元菌の活性を利用し、重金属を含む鉱山廃水を安定的に浄化する廃水処理装置の運転管理技術を確立した。

 日本国内には、稼働を休・停止した鉱山跡地が多く存在し、重金属を含む酸性の鉱山廃水が発生する場合がある。このような場所では、環境への悪影響を防止するために、廃水処理が続けられている。

 一般に鉱山廃水は、専用の設備や化学薬品を使って中和処理されるが、近年は、微生物活性を利用した低コスト・低環境負荷の処理技術に注目が集まっている。JOGMECは、農業廃棄物であるもみがらと米ぬかをそれぞれ微生物の担体と栄養源として活用し、硫酸還元菌の働きによって重金属を沈殿除去する装置の開発を行ってきた。しかし、装置内でどのような微生物が働いているかが未解明であり、装置の安定的な維持管理方法が確立できていなかった。

 両者は、処理装置に不可欠な微生物の特定と運転条件の最適化に取り組んだ。その結果、ある硫酸還元菌のみが嫌気度の低い環境に対して例外的に強く、この菌の活性を維持することが安定な廃水処理に重要であることを解明した。この技術は、低コスト・低環境負荷で重金属を含む廃水を浄化できるため、鉱山廃水だけでなく産業廃水への応用も期待できる。

 現在、JOGMECは今回開発した装置を大規模化した実証試験を行っており、その装置内の微生物について、両者は共同で解析を行う予定。また、米ぬか以外の有機物を使った装置の開発も進め、様々な条件の廃水への適用を進めていく考えだ。

 

住友ベークライト 連続基板生産に対応、ロールコア材の量産開始

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2021年9月30日

 住友ベークライトはこのほど、リールtoリールの連続基板生産に対応したロールタイプのコア材料の量産を宇都宮工場で開始した。

 これまで同社は、低熱膨張、高剛性、高弾性率を特長とする半導体パッケージ基板材料「LαZシリーズ」の生産・販売を行ってきた。一般にコア材料は、プリプレグの両面に銅箔をセットし枚葉でプレス成型・硬化させて生産する。近年、デバイスの薄化基板、高集積化により、基板のさらなる薄化が求められており、使用されるコア材の厚みも薄化が進んでいる。しかし薄くなればなるほど、基板メーカーでの取り扱いが難しくなり、歩留まりの低下に加え、将来の高コスト、供給不安につながることが懸念されている。

 これに対し、同社では、革新的な連続生産方式でロールタイプコア材を製造することが可能。リールtoリールのロールタイプのコア材連続基板生産方式(フレキシブル基板で多く採用)は、工程中はロール搬送されるためほとんど人の手を介さず、ハンドリングロスが低減。さらに、材料ロスは理論的に両端のみであり、高い面積歩留まりも期待できる。今回、こうしたコンセプトに賛同した基板メーカーの極薄両面二層基板用に初めて採用され、ロールタイプのコア材の量産に至った。

 一方、この方式は品質安定性(厚み、物性、寸法)にも優れていることから、将来の極薄基板生産に対しても様々な問題を解決できる可能性を秘めている。さらに従来のプレス生産方式では困難な20㎛以下のコア材を提供できるため、さらなる薄化要求にも対応でき、かつ、コスト競争力の高い極薄リジット基板の提供が可能になると見ている。

 同社は、大きな成長が期待されるディスプレイ市場とメモリー市場に向け、デバイスで使用される極薄二層基板をターゲットに、市場拡大を目指していく。

三菱ケミカル アルミ樹脂複合板、抗菌・抗ウイルス品を発売

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2021年9月30日

 三菱ケミカルは29日、グループ会社の三菱ケミカルインフラテック(MCIT)が、アルミ樹脂複合板「アルポリック」の内装用不燃材料「ALPOLIC/fr インナーライト」シリーズから抗ウイルス・抗菌グレードを10月に発売すると発表した。なお同製品は抗ウイルス、抗菌の2つで「SIAA(抗菌製品技術協議会)」マークを取得している。

 「アルポリック」シリーズは表面にアルミニウム、芯材に樹脂を使用した三層構造からなるアルミ樹脂複合板。様々な意匠・加工性・耐候性を備えた銘柄を揃え、幅広い用途で使用されている。1970年代の生産・販売開始から現在に至るまで国内トップシェアを誇り、海外では世界130カ国以上への販売実績をもつ。

 「ALPOLIC/fr インナーライト」シリーズの抗ウイルス・抗菌グレードは、「アルポリック」の軽量・高剛性・高平滑性はそのままに、表面塗装に抗ウイルスおよび抗菌加工を施した安心・安全で清潔感のある内装仕上げ材。予め抗ウイルス加工剤・抗菌剤を含有させた塗料を焼き付け塗装しているため、取り付け後は抗ウイルス剤などの塗布が不要となり、工数削減に貢献する。さらに、一般的なエタノールや次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒剤による拭き掃除に対しても、外観や抗ウイルス・抗菌性能が保持できる高い耐久性を併せもっている。

 同日には、「アルポリック」抗ウイルス加工品について、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を確認したと発表。日本繊維製品品質技術センターが行った抗ウイルス性試験の結果、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果(低減率99%以上)を確認している。

 MCITは今後も、市場や顧客の様々なニーズに対応し、「アルポリック」製品の開発・展開を進めていく考えだ。

産総研と北海道大学 CO2からのブタノール連続生産を達成

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2021年9月29日

 産業技術総合研究所(産総研)と北海道大学はこのほど、CO2を原料に、アルコールの一種であるブタノールを連続生産する技術を共同開発した。CO2を直接原料として使う、新たな化学品合成プロセスとして期待される。

 年間1000万t以上のアルコールやアルデヒドが、プロピレンなどの不飽和炭化水素、CO、水素を原料にしたヒドロホルミル化反応(オキソ反応)により、コバルトやロジウム錯体触媒を使ったバッチ式反応で製造されている。金属錯体触媒は生成物との分離や再利用に課題がある。固体担体に固定化する手法が提案されてきたが、反応性が変化し、耐熱性が低下してしまう。

 産総研は、ルテニウム錯体がCO2をCOに変換する触媒機能をもつことに着目し、毒性の高いCOの代わりにCO2を使うオキソ反応を世界に先駆けて開発した。しかし錯体触媒は有機溶媒に溶解させて使うため、耐圧反応容器を使うバッチ式反応プロセスが必要であった。

 今回イオン液体を使って、ルテニウム錯体触媒をシリカゲル表面に薄膜状に固定化した触媒を開発。薄膜状のイオン液体中のルテニウム錯体触媒は、有機溶媒中と同様に反応する上、外観はシリカゲルと同じ粉体であるため、一般的な固体触媒と同様に扱える。

 またイオン液体は、オキソ反応温度域では揮発しないので、触媒を担体上に安定に保持できる。これにより、CO2と水素とプロピレンから、ブタノールを連続的に生産することが可能になった。高圧フロー式反応装置で反応圧8・6M㎩、反応温度170℃、約8時間の反応では、従来のバッチ式反応プロセスに比べ、時間当たりの収率は10倍になった。

 今後は主生成物の選択性と触媒の耐久性の向上のため、新たな金属錯体触媒やイオン液体の改良を行っていく。また、幅広く他の原料への適用可能性も検討していく。

今回開発したCO2を原料としたアルコール合成プロセス

 

東亞合成 瞬間接着剤に新製品投入、耐水・耐熱性を向上

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2021年9月29日

 東亞合成はこのほど、家庭用瞬間接着剤「アロンアルフア」シリーズの新商品「タフパワー」(容量:2g)を、10月から順次店頭販売を開始すると発表した。大幅な改良を行い耐水性と耐熱性を向上させたほか、容器についても、エラストマーとポリエチレンのハイブリット型容器を採用することで、使いやすさを追求した。 

耐水性と耐熱性を向上させた「タフパワー」

 同社の調査によれば、ユーザーの7割以上が瞬間接着剤に耐水性と耐熱性を求めるなど、その要望は高い。「タフパワー」は「アロンアルフア」シリーズの中で最も両特性に優れており、水回りや熱がかかりやすい部分の補修・工作に向く。

 また、キャップを外してすぐに使えるワンステップ開封を採用。プッシュ部分を弾力性のあるエラストマーにしたことで、液量コントロールを容易にした。多用途タイプで、硬質プラスチックや合成ゴムをはじめ、金属、木材、陶器、軟質ビニールなど、幅広い素材の接着が可能。

キャップを外してすぐに使えるワンステップ開封(左)。弾力性のあるエラストマーの採用で液量コントロールが容易になった

 「タフパワー」は、東亞合成が50年にわたり磨きをかけた、瞬間接着剤の配合・生産技術と容器製造技術をベースに開発した。今後も多様化するニーズに対応した、使いやすく、最適な性能をもった製品を開発し、持続可能な社会の実現に貢献していく。なお、発売元はコニシ。

 

三菱ケミカル バイオエンプラがトヨタ「MIRAI」に採用

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2021年9月29日

 三菱ケミカルは28日、バイオエンジニアリングプラスチック「DURABIO(デュラビオ)」が、トヨタ自動車の燃料電池自動車で、昨年12月から販売している新型「MIRAI(ミライ)」のリアヒーターコントロールパネルに採用されたと発表した。「デュラビオ」が「ミライ」に採用されたのは初となる。

「デュラビオ」が採用されたトヨタ「MIRAI」

 「デュラビオ」は、再生可能な植物由来原料イソソルバイドを使用したバイオエンプラ。耐衝撃性・耐候性・耐熱性などの点で一般的なエンプラよりも優れた物性をもつ。また、一般的なエンプラは、自動車のシートに含まれるアミンという物質により劣化(白濁など)することが知られているが、「デュラビオ」は耐アミン性にも優れているという特長もある。これらの特性を生かし、車載ディスプレイ前面板やフロントグリルなど自動車の内外装意匠部品への採用が進んでいる。

パネルに「デュラビオ」が採用

 「ミライ」は水素で発電した電気で走る燃料電池自動車であり、環境課題とエネルギー課題の解決に貢献する〝究極のエコカー〟と呼ばれる環境車。「デュラビオ」は、内装材として求められる耐衝撃性や耐薬品性といった物性に加え、植物由来原料の素材である点が、「ミライ」のコンセプトとも合致し、今回の採用に至った。

 三菱ケミカルでは、植物由来で環境負荷低減にも寄与できる「デュラビオ」の用途展開を通じて、環境にやさしいクルマづくりに貢献していく。

 

ランクセス プラ・金属製の放熱性レーダーセンサー提案

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2021年9月28日

 ランクセスはこのほど、熱管理性能を備えたレーダーセンサーの新たなコンセプトを開発した。

 熱伝導性プラスチックと金属冷却素子の組み合わせで、組み立てが容易で素材選択の自由度が高い。次世代自動車の主要機能である運転支援システムは距離制御、車線変更監視、衝突回避、死角監視システムなどで構成される。レーダー波による車両周囲360度の監視には、レーダーセンサーは不可欠。センサーは防塵・防水の完全密閉システムであり、内部からの効果的な放熱が困難で、電子機器の性能とセンサーの耐久性を損なう恐れがある。

 同コンセプトは、フロントカバー(レドーム)、レーダー吸収体、アンテナと、冷却素子を一体化したバックカバーなどで構成。主にポリ塩化ビフェニル製だが、高いレーダー波透過性が必要なレドームには、低誘電率(Dk)・低損失係数(Df)のポリブチレンテレフタレート(PBT)「ポカン」が適する。

 バックカバーは、ポリアミド(PA)6と金属冷却素子の、プラスチック金属ハイブリッドだ。射出成形により、補強リブや冷却リブ、コネクタ用スロット、さらに歪みのないケーブル取り付けなどが一体化。電子部品が発生する熱は、金属冷却素子の表面に薄く形成されたプラスチックを通じてアセンブリ全体から効率的に放散され、その効果は熱伝導性PA6「デュレタンBTC」で確認済みだ。

 また金属製冷却素子は、レーダーセンサー内の電子機器を電磁放射から保護する。個々の部品はスナップフィットとホットリベット、2成分射出成形のOリングとシールリップで組み立てるため、ネジを使用する従来法に比べて安価で時間も短縮され、部品を溶接する必要がないため、異種のコンパウンドも使用できる。同社は、「HiAnt」ブランドの下、材料やアプリケーション、プロセスの技術開発のノウハウを結集し、コンセプト設計、材料最適化、機械的・レオロジー的シミュレーション、コンポーネントテスト、生産立ち上げなど、あらゆる開発段階でパートナーをサポートしている。

 

タカラバイオ 下水中のコロナ検出、PCRキットを発売

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2021年9月28日

 タカラバイオはこのほど、下水に含まれる新型コロナウイルス遺伝子を高感度かつ迅速に検出可能なPCRキットの受注を開始した。

下水中の新型コロナウイルス遺伝子をに検出できるPCRキット
下水中の新型コロナウイルス遺伝子をに検出できるPCRキット

 多くの感染者の糞便中には、ウイルスが存在する可能性が報告されており、下水中に排出されたコロナウイルス遺伝子を定期的にモニタリング調査することで、対象施設あるいは地域の感染症の流行状況などを把握する下水疫学に関わる研究が進められている。

 同製品は、下水からのコロナウイルス遺伝子検出に必要なPCR試薬(PCR酵素液、プライマー・プローブ、陽性コントロールなど)が含まれたオールインワンキットで、煩雑な準備作業の省力化に貢献する。

 プライマー・プローブには、「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」の記載に準拠した配列を使用し、従来の検出法を簡便に実施できる検査キットとして製品化。下水中のコロナウイルスに加え、ウイルスの濃縮から検出までの操作を確認するためのプロセスコントロールの検出にも対応する。

 同製品では、ワンステップRT-PCR法の採用により、下水中の低濃度のコロナウイルスを高感度に検出できる。また、従来はRT-qPCR反応に3時間以上を要したが、同社の高速PCR技術の採用により、同製品では最短で約50分へ大幅に短縮された。

 なお、同製品は、山梨大学大学院総合研究部附属国際流域環境研究センターの原本英司教授との共同研究を通じて製品化した。同製品により下水中のコロナウイルス遺伝子検出の迅速・効率化を実現することで、コロナウイルス感染の疫学調査・研究に役立つことが期待される。

帝人 バイオミメティクス製品を展開、生物模倣で開発

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2021年9月28日

 帝人グループは、生物の優れた構造や機能を模倣することで開発に至った高機能な製品を展開している。

 イネの葉をヒントに開発した撥水ファブリック「ミノテック」は、日本古来の雨具「蓑(みの)」からアイデアを得た製品。イネの葉には表面張力を低減する微細な凹凸が無数にあるため、水滴を葉の軸方向に速やかに流れ落とす。

 「ミノテック」は、イネの葉と同様の凸構造を配した「マイクロガーター構造」で撥水メカニズムを再現し、緩い傾斜で水滴を滑らせる。レインウエアなどと異なり、柔らかい風合いをもつことからファッション素材として幅広く採用されている。

 一方、ヤモリの手のひらをヒントに開発した、生活アシスト手袋「ナノぴた」は、指紋消失による指先の摩擦力消失などのがん薬物療法による副作用に対応した製品。「ナノぴた」の手のひら側には直径700㎚ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」を使用しており、高い摩擦抵抗力により高いグリップ力を実現している。「ナノフロント」の表面構造は、ニホンヤモリやユリクビナガハムシなどの接着力の高い生物の脚先の構造と類似していることが確認されている。

マイクロ波化学 ケミカルリサイクル実証設備を完成

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2021年9月28日

 マイクロ波化学は27日、マイクロ波プロセスを活用した汎用プラスチック分解技術の開発を目的とするケミカルリサイクル(CR)の小型実証設備を大阪事業所内に完成させたと発表した。

ケミカルリサイクルの実証設備

 同社はマイクロ波によるプラ分解技術の開発を独自で推進。「PlaWave」と名付けられた分解技術は、①様々なプラスチックに適用でき熱分解にも解重合にも対応可能、②ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)ではオイルとガスの作り分けが可能、③マイクロ波の直接・選択加熱により従来技術と比較し省エネや設備コンパクト化によるコスト低減が可能、といった特長がある。マイクロ波は、カーボンニュートラル達成のために不可欠である電化技術。再生可能エネルギーなどの脱炭素電源を利用することでグリーンなプラ循環を可能とする。

 昨年12月には、同社の研究開発テーマ「マイクロ波プロセスを応用したプラスチックの新規CR法の開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の中小・ベンチャー企業対象「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択され、今回の小型実証設備の開発に至った。

 この小型実証設備は1時間当たり5kg程度の処理能力があり、ポリスチレンをはじめとした様々なプラで実証を重ねていく予定。2022年秋には年産数百t規模の大型実証プラントを建設し、2025年頃までに同1万t規模までスケールアップする計画で、廃プラを油化する技術開発を進めるとともに、これまで難しいとされてきたPEやPPのガス化実証を行う。

 同社は今後、「PlaWave」を国内外の企業に導入することで、サーキュラーエコノミーを推進していく。

「PlaWave」のロードマップ