NEDOなど バッチ連続生産の医薬品製造設備を検証

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2021年6月30日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などはこのほど、バッチ連続生産方式を採用した再構成可能なモジュール型の医薬品製造設備「iFactory」(アイファクトリー)について、従来の主要な方式に比べエネルギー削減では約8割、廃棄物では従来比3~4割の削減が見込めることを確認したと発表した。

実用化に向けて開発が進められている「iFactory」のモジュール(左)と自動分析装置(右)
実用化に向けて開発が進められている「iFactory」のモジュール(左)と自動分析装置(右)

 医薬品の国内市場規模は2030年までに25.7兆円の市場に成長すると予測される。国内外を問わず、医薬品に使用される高機能化学品の多くは、バッチ式製造法により製造されるが、発生する廃棄物量やCO2量の削減と「オンデマンド生産」への適応が課題となっている。

 こうした中、NEDOが取り組む技術開発テーマの1つとして、「再構成可能なモジュール型単位操作の相互接続に基づいた医薬品製造用『iFactory』の開発」を、2018年度から開始。高砂ケミカル、田辺三菱製薬、コニカミノルタケミカル、横河ソリューションサービス、テックプロジェクトサービス、大成建設、島津製作所、三菱化工機および産業技術総合研究所(産総研)が、連続合成法とバッチ式製造法を組み合わせたバッチ連続生産方式を採用したモジュール型の医薬品製造設備「iFactory」の開発を行っている。

 これまでの検証から、バッチ連続型プロセスで実際に製造した医薬・ファインケミカルズ関連の3品目で洗浄・濃縮・晶析・ろ過が、1時間当たり10kgの生産速度で、8時間連続稼働できることを確認。また、生産工程の1つである「ろ過」を連続方式にすることで、一般的なバッチ方式の装置に比べ8時間稼働で78%、連続反応器による反応工程に導入した連続方式の設備で84%に相当するエネルギー削減効果を実現した。さらに、連続化による洗浄溶剤の使用量や切り替え洗浄の回数の大幅軽減で、従来のバッチ方式で製造した医薬・ファインケミカルズ関連の3品目で30~40%の廃棄物削減効果が見込める結果となった。

 今後はプロトタイプの製作と実証を進め、日本の医薬品製造での省エネルギー化・生産と資源の効率化に貢献する生産設備の構築と実用化を目指す。

 

ダイセル ポスト5Gシステムを開発、NEDO事業に採択

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2021年6月30日

 ダイセルはこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」について、2つの研究開発が採択されたと発表した。同社はこれを機に、エレクトロニクス実装材料の研究開発や事業化を加速し、経済産業省とNEDOが進める日本のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化に貢献する。

NEDOに採択された、「ミリ波・テラヘルツ帯向け高機能材料・測定の研究開発」概要
NEDOに採択された、「ミリ波・テラヘルツ帯向け高機能材料・測定の研究開発」概要

 「先導研究(委託)/基地局関連技術」では「ミリ波・テラヘルツ帯向け高機能材料・測定の研究開発」が採択。ポスト5Gの後半以降、ミリ波からテラヘルツ帯の高周波を利用することで通信帯域を確保し、さらなる高速大容量、超低遅延、および多数同時接続の実現が期待される。

 しかし、ミリ波(30~300G㎐)やテラヘルツ帯(300G㎐~3T㎐)では、伝送ロスによる信号品質の劣化や材料の測定技術が確立されていない。これらの課題解決に向け、同社は①次世代超ローロス低誘電材料、②平滑導体と低誘電材料の高信頼性接合、③テラヘルツ帯通信用材料の測定技術を開発する。この先導研究により、ポスト5Gの基地局向けリジッドプリント配線板の低誘電材料や接合の事業化、測定技術の標準化を目指す。

 一方、「先導研究(助成)/先端半導体製造技術(後工程技術)」では「ポスト5G半導体のための高速通信対応高密度3D実装技術の研究開発」が採択。ポスト5Gは、通信インフラからエッジデバイスまで、膨大な情報を低遅延で高速に伝達する半導体高度化技術への要求が急速に高まる。その実現には前工程の微細化加工だけではなく、複数の半導体を3次元で集積する先端後工程の重要度が増している。

NEDOに採択された、「ポスト5G半導体のための高速通信対応高密度3D実装技術の研究開発」概要
NEDOに採択された、「ポスト5G半導体のための高速通信対応高密度3D実装技術の研究開発」概要

 ポスト5G半導体に必要な高速通信対応高密度3次元実装を実現するために、①高周波対応高密度パッケージCu焼結接合技術、②高信頼・高性能ビルトアップ半導体サブストレイト技術、③高周波パッケージ導波路コネクタ技術を開発する。この先導研究により、先端後工程向けのCu焼結接合材料やバンプ形成絶縁接着材料の事業化、装置、周辺材料、プロセスなどのノウハウ組合せによるソリューションの提供、およびサブストレイト技術や導波路コネクタ技術の標準化、デファクト化を目指す。

 同社は、今後も長年培ってきた高機能材料や加工技術の強みを生かした様々な最先端の技術開発に取り組み、便利・快適な社会の実現に貢献していく考えだ。

NEDOなど カルボン酸合成技術開発、ギ酸を有効利用

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2021年6月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などはこのほど、計算・プロセス・計測の三位一体による技術開発スキームを活用し、高効率な触媒を使い、ギ酸とアルケンから様々な化学品の基幹原料となるカルボン酸を合成する技術を開発したと発表した。

 NEDOは超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクトに取り組み、革新的な機能性材料の創製・開発の加速化を目指している。今回、産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)、日本触媒と共同で、安全で環境に優しいカルボン酸の合成技術を開発した。

 カルボン酸は、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、高吸水性樹脂などの高分子材料、医薬品、農薬などの有用化学品の基幹原料となるため工業的な応用も期待されている。しかし、これまでに報告されている例では、高圧条件や有毒で爆発性の高い一酸化炭素(CO)を使用することや、触媒以外にヨウ化メチル(CH3I)など環境負荷の高い複数の添加剤を大量に使用することが問題となっていた。

 今回開発した技術は、従来のような高圧条件を必要とせず、有毒で爆発性の高いCOガスや環境負荷の大きい添加剤を使用しない。さらに、ギ酸はCO2と水素から高効率に合成できるので、CO2を利用したクリーンな原料とみなすこともできる。この技術が実用化されれば、CO2を炭素資源として利用するカーボンリサイクル社会実現への貢献が期待できる。

 今後、触媒系の反応効率をさらに向上させるために、ロボティクスを活用したハイスループット実験により触媒のさらなる改良を迅速かつ効率的に実施し、最終的には化学品の連続生産技術であるフロー合成に使用できる固定化触媒の高速開発を目指す。

 なお日本触媒は、新化学技術推進協会(JACI)がオンラインで開催する「第10回JACI/GSCシンポジウム」(6月28~29日)で、研究成果の詳細を発表する予定。

 

BASF 洋上風力発電利用で380万tのCO2削減

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2021年6月29日

 BASFはこのほど、世界有数の再生可能エネルギー企業RWE(ドイツ・エッセン)とともに持続可能な工業生産のためのプロジェクト案を発表した。

 両社は再生可能電力の発電施設の増設と、気候保護に向けた革新的技術の利用について広範な協力を進める。発電容量2GWの洋上風力発電施設を追加建設し、グリーン電力をBASFの本社工場に供給し、CO2フリーの水素製造と基礎化学品生産の電化を目指す。電気加熱式スチームクラッカーなどのCO2フリー技術は、すでにパートナー企業と協力して開発を進めている。これにより年間のCO2排出削減量は約380万tとなり、そのうちの280万tは同工場で実現される見込みだ。

 BASFは、気候保護と競争力の維持を両立するための、明確なロードマップだとしている。なお、風力発電施設建造への公的補助金の利用は予定していない。この計画実現には適切な規制の枠組みが必要だとし、2030年以降の使用を想定した洋上発電プロジェクト用地の入札は、産業界のエネルギー転換のための重要な入札として特別指定し、さらにグリーン電力は再生可能エネルギー法の賦課金の対象とされるべきではないと主張している。なお現時点、CO2フリーの水素生産についての規制の枠組みは定められていない。

 将来に向けた変革には、再生可能エネルギー源からの安価で十分な量の電力が必須で、政策当局と業界の間で革新的な協力体制を敷き集中的に取り組み、バリューチェーン全体での協力が必要だとしている。電力業界と化学業界をリードする両社は、このパートナーシップにより変革に求められる各種条件をまとめ、各当事者の意思を結集する考えだ。また、気候中立的な工業生産はドイツでの付加価値と雇用を維持し、新技術の輸出機会を創出していくとしている。

三井化学と日立製作所 材料開発を高速化するMIの実証開始

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2021年6月29日

 三井化学と日立製作所は28日、日立が開発した人工知能(Ai)を活用したマテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術を、実際の新材料開発に適用する実証試験を開始すると発表した。同実証試験に先立ち、日立の開発技術を三井化学が提供した過去の有機材料の材料開発データで検証したところ、高性能な新材料の開発に必要な実験の試行回数が従来のMIと比較し約4分の1に短縮できることを確認。両社は今年度中をめどに、新製品・素材開発に向けた同技術の導入・成果を検証する技術実証を行い、来年度から実用化を目指す考えだ。

従来技術との比較。少量の実験データでも高性能材料の化学式を自動生成できる深層学習技術
従来技術との比較。少量の実験データでも高性能材料の化学式を自動生成できる深層学習技術

 新製品の開発は事業活動の要となるものの、開発までには課題抽出、基礎研究から、スケールアップといった実証実験など、多大な時間とコストを伴う。今回の実証を通じて、三井化学が過去から蓄積している膨大な開発に関する知見と日立が提供するデジタル技術とを融合することで、新製品開発に掛かる時間・コストの大幅な削減が期待されている。

 日立は、AIやシミュレーション技術などを活用して新材料を探索するMIの高度化に向け、これまで大量の実験データを必要としていた有機材料開発に、少量の実験データでも高性能な新材料の候補化合物(化学式)を発案することができる深層学習技術を新たに開発した。

 その特長は①「入れ子型」AIと、②高性能な化合物の生成を加速する成分調整方式。①では、大規模なオープンデータ(化学式を文字列で表現したデータ群)で学習したAIの内側に、実験データで学習したAIを埋め込む入れ子型構造により、少ない実験データでも新材料開発に活用できる。また②では、外側のAIで文字情報である化学式を一度数値情報に変換し、内側のAIでこの数値情報から性能に影響する成分を分離・調整することで、高性能な化合物を表現する数値情報を新たに作成。さらにそれを再び化学式に変換し直すことで高性能な化学式を高確率で生成し、実験回数を削減する。

 三井化学は今後、DXを通じた社会課題解決のため、革新的な製品やサービス、ビジネスモデルを迅速に創出し社会に提供していく。一方、日立はDXを加速させる同社の「Lumada(ルマーダ)」ソリューションである「材料開発ソリューション」に、今回実証する高速化技術のラインアップ化・水平展開を図る。両社は素材開発の協創を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

SABIC フレキシブルPIフィルム用高純度硬化剤

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2021年6月28日

 SABICはこのほど、フレキシブルエレクトロニクス用ポリイミド(PI)フィルム硬化用の高純度4,4’-ビスフェノールA型酸二無水物(BPADA)の粉末状製品「SD1100P BPADAパウダー」を発表した。

 PIフィルムは機械的強度、高耐熱性、寸法安定性、銅に近い熱膨張係数、低誘電率といった特性から、5Gフレキシブルプリント基板や透明ディスプレイなどのフレキシブルエレクトロニクスに適した基板材料である。

 BPADAはオキシジフタル酸無水物(ODPA)などの既存の酸二無水物と比べ、フレキシブル銅張積層板、カバーレイや接着剤に使用されるフィルムやワニスの製造時に、誘電率と誘電正接の低減、吸水率の低減、金属との接着性の改善など、各種性能を向上させる。金属への接着性向上により信頼性が高まる上、より薄く低粗度な銅箔の使用が可能となり、部品の小型化や信号伝達性能の向上が図れる。

 熱ラミネート工程での金属への接着性や加工性が向上すると、必要な熱、圧力、時間が低減でき、両面ラミネート構造といったより薄肉のフレキシブル回路構成もサポートできる。またPIフィルムの着色性が低減するため、透明ガラスディスプレイなどの代替も可能だ。

 5Gネットワークのインフラや接続端末の高速化・大容量化に対応して、フィルム特性が向上する。軽量で超薄型の折りたたみ可能なフレキシブルエレクトロニクスは、フレキシブルスマートフォン用の曲面ディスプレイやアンテナ用基板などの新たな用途への可能性が期待され、フレキシブルエレクトロニクス市場は2024年まで2桁成長すると予想されている。

 同社は、熱硬化性新規用途のパフォーマンスを最適化する新たな材料開発に取り組み、酸二無水物ポートフォリオをさらに拡大していく考えだ。

 

三井化学 3つの機能を併せもつドライバーズグラス上市

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2021年6月28日

 三井化学はこのほど、ビジョナリーホールディングスとの共同企画により、3つの機能を併せもつレンズを採用した新機能ドライバーズグラス「Ds’Assist(ディーズアシスト)」を開発し、今月25日から、ビジョナリーホールディングスが運営するメガネスーパーなど限定104店舗での販売を開始した。メガネの上からも装着可能なタイプで、利用者の矯正視力を保ったままクリアな視界が得られるもの。販売価格は3万4980円(税込)。 

「Ds'Assist(ディーズアシスト)」。3つの機能でドライバーの視界をアシスト
「Ds’Assist(ディーズアシスト)」。3つの機能でドライバーの視界をアシスト

 同製品には、三井化学の3つの光制御テクノロジーを結集。①まぶしさや見づらさの原因となる黄色光を選択的にカットする「NeoContrast(ネオコントラスト)」、②目に有害とされる紫外線やHEV(高エネルギー可視光線)をカットする「UV+420cut」、③白色LEDの特定波長を選択的にカットする「LEDライトカット」―の技術導入により、視機能の低下が顕著となるシニアドライバーをはじめ、あらゆる運転者のドライビングシーンで視覚サポートを実現する。

JARWA推奨品
JARWA推奨品

 夜間運転時のJIS規格に適合していることから、特に近年多く採用されているLEDヘッドライトに対する防眩効果により、夜間の運転時にも必要な光量を十分に確保した上で安全に使用できる。また、自動車業界の安全対策の中心的な役割を担う日本自動車車体補修協会(JARWA)の推奨も得ている。

 三井化学は、これからも「視界品質QOV(Quality of View)」をコンセプトに、視力矯正から目の健康と快適さまで、より良い視界を追求する製品開発に取り組んでいく。

NEDO 革新的マテリアル技術の研究開発8件に着手

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2021年6月25日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、将来の国家プロジェクトなどにつながる革新的なマテリアル技術の先導研究として、8件の研究開発に着手した。15~20年以上先の新産業創出に結びつく革新的マテリアル技術のシーズを育成し、データ駆動型ものづくりや、ポスト5G技術の中核マテリアル、サプライチェーンの安定化・国内化、迅速なウイルス対策といったイノベーションの実現を目指す。

 新型コロナウイルス感染症の拡大や世界規模の異常気象、各国企業・政府間での技術覇権争いの激化、持続可能な開発目標(SDGs)への意識の高まりなど、イノベーションを巡って大きな情勢変化が起きる中、「統合イノベーション戦略」が昨年閣議決定された。強みがあるものの競争力を失いつつあるマテリアル分野を、戦略的に推進するための重要技術基盤と位置づけ、4月には「マテリアル戦略」を策定。これを受け、「マテリアル革新技術先導研究プログラム」を開始した。

 今年度は「プロセスインフォマティクス技術」「スーパーファインセラミックス技術」「革新的な資源マテリアルプロセス技術」「ウイルス感染症対策向け新規マテリアル関連技術」の4つのテーマ区分を設定し、公募した研究開発の中から8件を採択した。

 今後は、これらテーマの推進に加え、マテリアル分野のイノベーション創出に向けて、取り組むべき研究開発内容の情報提供依頼(RFI)と、マテリアル分野の重要技術のシーズ発掘を目的とした調査事業を行っていく。

 

産総研 湿度変化で発電する「湿度変動電池」を開発

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2021年6月24日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、空気中の湿度変化により発電する「湿度変動電池」を開発した。

 昼夜の湿度差で㎃レベルの電流を連続して取り出すことができ、IoT機器などの自立型極低電力電源としての応用が期待される。様々な電子機器の普及と、IoT(モノをインターネットに接続する)技術の進展により電子機器の数が増加する中、電源供給方法が問題となる。膨大な数の電子機器に対して、電源配線、定期的な充電や電池交換は、物理的スペースや労力の面で現実的ではない。

 小型電子機器の自立電源として熱電素子、太陽光発電、振動発電など環境中の微小エネルギーを使う環境発電技術の開発が行われているが、熱、光、振動などが存在する場所は限られることから、「どこでも発電できる」技術とは言い難い。どこにでも存在する湿度(水蒸気)を利用する場合、既存の発電素子で得られる電流は㎁、㎂レベルで実用的ではない。

 今回、潮解性無機塩水溶液の吸湿作用と塩分濃度差発電を組み合わせた、新しい原理の発電方式を開発。イオン交換膜で隔てた開放槽と閉鎖槽に、水と潮解性のあるリチウム塩からなる電解液を封入。低湿度環境では開放槽から水分が蒸発して濃度が上昇し、閉鎖槽との濃度差で電極間に電圧が発生する。

 高湿度環境では開放槽内の水溶液が空気中の水分を吸収して濃度が低下し逆の濃度差が発生し、逆向きの電圧が発生する。この湿度変動電池を恒温恒湿槽内に入れ、湿度を30%と90%に繰り返し変化させたところ、湿度30%のときには22~25㎷、湿度90%のときにはマイナス17㎷程度の電圧が発生した。最大電圧のときの出力は最大30㎼であった。短絡電流は5㎃で、1㎃以上の電流を1時間以上継続して出力できた。

 また湿度20~30%の密閉容器に湿度変動電池を入れ、電圧が一定したところで10㎼以下で駆動する低消費電力モーター接続すると、溜まったエネルギーによりモーターは2時間半以上駆動した。昼夜の温度変化などで湿度は数十%変動するため、比較的大きなエネルギーを長時間安定して取り出すことができ、「置いておくだけでどこでも発電できる」新たな再生可能エネルギーと言える。

 今後、さらなる出力向上や長期間使用時の耐久性など、実用化に向けた研究を行っていく。

SABIC 耐熱・耐電圧、自己回復性誘電体フィルム

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2021年6月24日

 SABICはこのほど、最高150℃の耐熱性と既存製品を上回る温度・電圧性能をもつ厚さ5㎛の「エルクレス HTV150誘電体フィルム」を発表した。

 マイナス40℃~150℃の動作温度範囲と高い耐電圧性能を備えており、500V、150℃で2000時間の寿命を社内テストで実証した。さらに過剰電圧によって破損した場合に、自己回復する機能も備えている。大きな漏れ電流や電荷損失がなく、大容量の電気エネルギーを長時間蓄えることができるため、高電圧・高温対応のDCリンクコンデンサに利用できる。

 また、ワイドバンドギャップ半導体が動作する高周波や高温領域での優れた誘電性や絶縁性と低損失など、コンデンサ用途での利点がある。これにより、風力発電や太陽光発電、航空宇宙、xEV(電動車)用途に最適な高効率・低損失な炭化ケイ素(SiC)半導体のインバータ・モジュールの動作が改善し、高温・高電圧など厳しい用途条件での信頼性が向上する。

 薄膜フィルムの生産は信越ポリマーと協働しており、業界標準の蒸着、コンデンサの巻き取りと扁平化といった各種プロセスでの使用は、既存の機器や様々な蒸着仕様(ベタ、ヘビーエッジ、パターン)で検証済みとしている。

 今後もパワーエレクトロニクス分野に対する革新的な素材とフィルム技術の提供を通じて、ますます厳しくなる顧客と業界のニーズに対応し、様々な電圧とエネルギー密度の向上に向けて、さらに薄い膜厚のフィルムの開発を継続していく考えだ。