産総研など 過度のリンによるサンゴ生育阻害を初公表

, , , ,

2021年3月23日

 産業技術総合研究所(産総研)、北里大学、琉球大学の研究グループはこのほど、砂から溶出した高濃度のリンが稚サンゴの骨格形成を阻害することを初めて明らかにした。

 市街地や農地から過度の栄養塩が海に流れ込むと、サンゴが減少することは知られていたが、科学的メカニズムが明らかになり、サンゴ保全に役立つことが期待される。海水温上昇や海洋酸性化など地球規模のストレスによるサンゴの減少が指摘されているが、沿岸域の土地利用の変化や開発にともなう陸域由来の物質によるサンゴ生育環境の悪化など、地域特有の影響も懸念されている。

 リン酸塩は代表的な栄養塩の1つで、ATPやDNAなどの主要構成生体分子で、生命活動には必須だ。しかし、サンゴ礁の生態系は微量のリン酸供給(表層海水で0.3μM以下)で成立しており、リン酸供給が過剰になると、藻類などの増加、生きたサンゴの被度が減少、白化したサンゴの回復の遅れが生じる。リン酸塩はサンゴ骨格の素材である炭酸カルシウムへの吸着性が高く、また熱帯・亜熱帯の石灰質(炭酸カルシウム)の砂に蓄積していると考えられる。

 今回、ミドリイシサンゴが比較的多く生息する沖縄島北部沿岸部と、市街地や農地に比較的近い南部沿岸域で採取した石灰質の砂と共に、コユビミドリイシの稚サンゴを約40日間飼育し、稚サンゴの骨格形成の様子と飼育海水に溶出したリン酸塩濃度を調べた。北部沿岸部の砂から溶出したリン酸塩は5~8μMで、稚サンゴの底面骨格は海水のみの飼育時に比べ7割程度に減少した。

 一方、南部沿岸域の砂からの溶出量は12~20μMで、底面骨格は3割程度にまで減少し、高濃度リン酸塩添加時と同様の凹凸の激しい骨格表面になった。これにより、石灰質の砂は陸から流れ込んだリン酸塩を吸着し、高濃度で蓄積することが分った。砂に蓄積したリン酸塩を蓄積型栄養塩と定義し、サンゴなどの底生生物に対する影響の本格的調査を始めた。また、沿岸域の蓄積型栄養塩を調べることで、陸域負荷の大きな場所を特定することも可能だ。さらに底生生物の生育に影響を及ぼす可能性のあるその他の陸域由来物質についても、石灰質砂への蓄積の有無の調査を開始した。

ユニチカ PA6T/PA66代替のバイオマスPA開発

, , ,

2021年3月23日

 ユニチカはこのほど、世界的に供給不足が続く6Tナイロン(PA6T)や66ナイロン(PA66)を代替できるナイロン樹脂「ゼコットAG310A-64」「ゼコットAG310A-67」「ナノコンM2090」シリーズの販売を開始したと発表した。

 自動車や電子部品などに使用されているPA6T、PA66の世界的な供給不足が続くが、その原因は主成分の1つであるヘキサメチレンジアミンの原料アジポニトリルの自然災害などの影響による供給不安定にあり、解消には数年はかかると見込まれている。

 このような中、ヘキサメチレンジアミンを使わずにPA6TとPA66を代替できるナイロン樹脂を、ポリアミド合成技術とバイオマス素材の利用技術の組み合せにより開発した。融点315℃の高耐熱性ホモポリマー ポリアミド10T「ゼコット」をベースに独自のコンパウンド技術により、PA6Tとほぼ同等物性で耐摩耗性が大幅に上回る「AG310A-64」シリーズを、また、ガラス繊維強化PA66とほぼ同等の物性の「AG310A-67」シリーズを開発した。

 「ナノコンM2090シリーズ」はPA6にクレイをナノメートルサイズで分散させた「ナノコン」をベースに、独自のコンパウンド技術で非強化PA66とほぼ同等の物性を実現した。いずれもPA6T、PA66の供給不足への対策に貢献できるとともに、植物由来であることから環境負荷低減への貢献が期待できる。

産総研 SiCウエハー量産技術の大型共同研究を開始

, ,

2021年3月22日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ウエハーメーカーを含む民間企業17社と公的機関3機関との連携で次世代パワー半導体用炭化ケイ素(SiC)ウエハーの量産技術の確立を目指した大型共同研究を開始したと発表した。SiCインゴットを作るバルク単結晶成長プロセスからウエハー化の加工プロセスに至るまで低コスト化を実現する製造技術の開発を進める。

 パワー半導体素子は、大電力を制御する発電・送電システムや、産業用ロボットなどのFA機器、自動車や鉄道などの輸送機器、コンピューターなどの情報通信機器や家電製品に至るまで、幅広く産業・社会に浸透している。現在シリコン(Si)製パワー半導体が主流だが、SiC製パワー半導体素子はエネルギー損失が少なく、新幹線や電気自動車などへの社会実装も始まっている。しかしSiCは極めて堅く安定な材料であるため、単結晶成長やウエハー加工にかかる時間とコストが課題だ。

 SiC単結晶は2000℃以上の極高温の気相雰囲気で成長させるが、成長速度は1時間当たり500㎛~数㎜と遅く、Si単結晶の100分の1以下だ。またパワー半導体として致命的な結晶欠陥も多く残留し、生産効率の良い欠陥排斥技術も未確立だ。直径6インチクラスの大口径SiCウエハーの需要が世界的に高まる中、より高品質なSiC単結晶を高速に成長させる技術の早期確立を目指す。

 またSiC単結晶をウエハーに加工するには、単結晶の切断から研磨まで多くの工程でダイヤモンド砥粒を消費する。加工時間もSiウエハーの6倍以上かかるため、高速でダイヤモンド砥材の消費の少ないウエハー加工技術の確立を目指す。

 これら技術開発の活動の場として、民活型オープンイノベーション共同研究体「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)」内に材料分科会を新設し、柔軟な産学官連携体制のもとで主に「次世代SiC結晶成長技術開発」や「次世代ウエハー加工技術開発」のプロジェクトを推進している。またSiC結晶成長技術からウエハー加工技術に関わる材料、装置、プロセスの各専門企業が多数連携することで、従来の製造技術の抜本的な技術改革を早期に進められる体制作りを行っており、新規の参入を希望する企業や、研究機関を随時募集している。

 

太平洋セメント 高信頼・高容量LiB用正極材料を開発

, ,

2021年3月22日

 太平洋セメントはこのほど、リチウムイオン電池(LiB)用の正極材料「ナノリチア(Nanolitia)」(リン酸マンガン鉄リチウム)を開発した。LiBの信頼性の向上と長寿命が期待できる。

 LiBは自動車の電動化や風力・太陽光などの再生可能エネルギー発電による電力貯蔵の要だ。現在主流のニッケルやコバルトを含む正極材料は高容量だが、原材料コバルトの供給不安と、過充電や破損による燃焼の恐れがあり、さらなる信頼性の向上が課題である。

 コバルト不使用の正極材料として流通しているリン酸鉄リチウムは既存正極材より電圧が低い。今回リン酸マンガン鉄リチウムについて、独自の水熱合成技術でナノサイズレベルの均一粒子を合成し、独自のカーボン被覆技術で材料の導電性を向上させ、従来引き出せていなかった材料のポテンシャルを十分に発揮させることに成功した。

 「ナノリチア」は、熱安定性に優れ信頼性は極めて高く、高い容量も確保できる。不純物も少ないため、長寿命や充電時間の短縮も期待できる。既存の正極材料と電圧が同等であるため、単独で正極材料として使うほか、既存の正極材料と混合して性能を維持したまま信頼性を上げることも可能だ。中央研究所(千葉県佐倉市)内に建設中の年間生産能力100tの実証プラントは今年度中に完成・稼働し、本格的な事業化に向けた活動を行っていく予定だ。

 同社グループの経営理念「持続可能な地球の未来を拓く先導役をめざし、経済の発展のみならず、環境への配慮、社会への貢献とも調和した事業活動」を今後も強力に推進していく考えだ。

DIC スピルリナ由来有効成分、美肌食品の特許取得

, ,

2021年3月22日

 DICはこのほど、食用藍藻スピルリナに含まれる青色色素「フィコシアニン」を有効成分とする美肌食品用途の特許を取得したと発表した。今後は、特許を利用し、「フィコシアニン」を関与成分とした機能性表示食品への展開など、美容や健康機能を訴求する製品分野へ積極的に展開していく。

⾷⽤藍藻スピルリナから抽出した「フィコシアニン」
⾷⽤藍藻スピルリナから抽出した「フィコシアニン」

 同社グループは、長年スピルリナ事業を展開しており、スピルリナから抽出した青色色素「フィコシアニン」を天然の青色食品着色料として販売。今回の特許は、色素以外の新たな用途に関するもので、「フィコシアニン」を有効成分とした「肌の保湿性向上」、「シワ改善」、「はりつや改善」、「弾力性向上」を目的とする飲食品を網羅するものとなる。「フィコシアニン」の美肌効果については、臨床試験によりその効果を確認している。

 「フィコシアニン」の原料となるスピルリナは、約30億年前に誕生した食用藍藻で、50種以上の健康・栄養成分を含むスーパーフードの王様とも呼ばれる。同社グループは、その可能性にいち早く着目し、50年以上にわたって研究を続けてきた。以来、藻類研究のパイオニアとしてスピルリナ粉末を健康食品や、食用色素、食品素材や飼料分野へ展開している。

 DICグループは、中期経営計画において、今後の新事業の柱の一つとしてヘルスケア分野の強化に注力。消費者の健康志向を背景に今後も同社が得意とする藻類培養技術を用いた〝食の安全・安心〟に注力した食品やサプリメントなどの製品開発を進めていく考えだ。

:「フィコシアニン」の美肌効果
「フィコシアニン」の美肌効果

 

積水化学工業 セキスイハイム50周年、記念プロジェクト始動

, , ,

2021年3月19日

 積水化学工業は18日、住宅カンパニーの住宅事業(セキスイハイム)誕生から今年で50年を迎え、住社会の課題を解決する4つの記念プロジェクトを始動すると発表した。

セキスイハイム50年 記念プロジェクト
セキスイハイム50年 記念プロジェクト

 新築では、①全国一斉まちづくりプロジェクトとして、「あさかリードタウン」の際立ちを全国の戸建まちづくりへ展開、②スマートハウス№1プロジェクトとして、先進・スマートの際立ち深化でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)比率90%を目指す。ストックでは、③買取再販「Beハイム」展開プロジェクトとして、工業化住宅の際立ちで価値を向上・継承する。また生産では、④工業化住宅イノベーション再発進プロジェクトとして、工業化を追求し続ける工場の際立ちを再発信していく。

セキスイハイム50周年ロゴ
セキスイハイム50周年ロゴ

 同社の住宅カンパニーでは、環境問題をはじめとした社会課題の解決や強固な経営基盤の構築を事業の成長力として位置づけ、「顧客価値」と「事業価値」の両立によるESG経営を推進。四つの記念プロジェクトを皮切りに、100周年に向け総力を挙げて住宅事業のESG経営を加速し、住社会への際立ちで社会課題解決への貢献を拡大していく考えだ。

 

 

帝人フロンティア ポリエステル立体成型吸音材が新型FCVに採用

, , , ,

2021年3月19日

 帝人フロンティアは18日、同社が開発したポリエステル立体成型吸音材が、トヨタ自動車の燃料電池自動車(FCV)・新型「MIRAI」(昨年12月発売)の燃料電池(FC)システムに採用されたと発表した。

ポリエステル立体成型吸音材の外観
ポリエステル立体成型吸音材の外観

 FCシステムは、高圧水素タンクから供給される水素と空気中から吸い込んだ酸素を、発電部位のFCスタックで化学反応させることにより電気と水を発生させるもの。立体成型吸音材は、その反応時に発生する水をFCスタックや排水管内からダクトを通じて車外に排出する際に、水が通過するノイズを低減するために使用される。

トヨタ新型FCV『MIRAI』の内部構造イメージ図
トヨタ新型FCV「MIRAI」の内部構造イメージ図

 今回新型「MIRAI」に採用されたポリエステル立体成型吸音材は、要求性能を実現するために、原料繊維のタイプや不織布の仕様、積層構造の検討などを重ねて開発。特殊成型設備に適合した金型を製作するとともに、内部まで均等に熱浸透させることで高精度な成型を可能にする特殊工法により、複雑なFC部品の形状に隙間なく充填し吸音性能を発揮する。

 帝人フロンティアは、戦略領域であるモビリティ用途に向けてさらに展開を強化し、持続可能な社会の実現に向けたソリューション提供を通じて、「未来の社会を支える会社」を目指していく考えだ。

住友ゴム 好調な需要で米国のタイヤ生産能力を倍増

, , ,

2021年3月18日

 住友ゴム工業はこのほど、米国工場の乗用車・ライトトラック用タイヤの生産能力を現在の日産6500本から2023年末までに日産1万2000本に増強することを決定した。投資額は約101億円を計画。増産により、北米市場でのSUV、ライトトラック用タイヤの好調な販売に対応し、あわせて順調に販売を伸ばすトラック・バス用タイヤの生産能力も、約27億円を投じて現在の日産1750本を2024年末までに2300本に増強する。

 新型コロナウイルス感染症の拡大で落ち込んだタイヤの世界需要がコロナ前の水準まで回復するのは、来年以降になると見込まれるが、FALKENブランドの『WILDPEAK(ワイルドピーク)』シリーズを中心とする高機能タイヤで、北米市場での販売を着実に伸ばしている。この好調な販売に対応するため、また米国工場の生産性改善が進んだことから増産投資を決定した。現地生産を強化し販売リードタイムを短縮することで、さらなる拡販につなげていく考えだ。

 さらにタイと宮崎の工場でも既存設備をSUV、ライトトラック用生産設備に置換する。タイ工場では2023年までに日産4150本、宮崎工場では2024年までに日産1600本の生産置換を行い、北米の販売拡大をサポートする。両拠点への総投資額は108億円の計画だ。

 同社は中期計画の柱の1つに高機能商品の開発・増販を掲げており、今回の生産能力増強により、その取り組みを一層加速するとしている。

東レ 高耐熱かつ高品位なOPPフィルムを創出

, ,

2021年3月18日

加工温度120℃に対応、光学分野で拡販を図る

 東レは、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムとして世界最高レベルの耐熱性と品位を実現した〝新タイプ「トレファン」〟を創出した。開発品は打痕、汚染リスクを極小化する高い品位を有し、120℃の高温環境でも使用することが可能。すでにサンプル提供を開始し、顧客評価を進めており、今年度中の上市を計画している。今後、光学材料や電子部品工程向けなど幅広い用途展開を図ることで、年間売上高10億円を目指していく考えだ。

新タイプ「トレファン」
新タイプ「トレファン」

 OPPフィルムは、離型性、低アウトガス(フィルム中から放出されるガス成分)性、紫外線透過性、低吸湿性といった様々な特性に優れ、包装用途に広く使われる。

 東レは、

コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

ENEOSなど 横浜市と水素FC船実証の包括連携協定を締結

, , , , , ,

2021年3月17日

 ENEOS、日本郵船、東芝エネルギーシステムズ、川崎重工業、日本海事協会の5者はこのほど、「高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業」について、横浜市と包括連携協定書を締結したと発表した。

 同事業は、昨年9月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に採択されたもの。5者は連携により、①高出力燃料電池搭載内航船舶(水素FC船)の開発②船舶向け水素燃料供給の開発③船舶での水素エネルギー利活用の情報発信④その他、災害時の高出力燃料電池搭載内航船舶を活用した事業継続性の検討―を行っていく。

 横浜市では、港湾での脱炭素化の実現を目指し、カーボンニュートラルポートの形成に向けた取り組みを進めている。5者は水素FC船の開発・実証運航(2024年予定)に向けて、横浜市と連携して取り組みを進め、環境に配慮した船舶への対応をいち早く進めるとともに、横浜港から脱炭素化社会の実現に貢献していく考えだ。

 なお、カーボンニュートラルポートとは、国際物流の結節点・産業拠点となる港湾で、水素、アンモニアといった次世代エネルギーの大量輸入や貯蔵、利活用などを図るとともに、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化を通じて温室効果ガスの排出を港全体としてゼロにする構想。