環境省 レジ袋有料化キャンペーン、辞退率6割を目標に

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2020年6月29日

 環境省は7月1日から実施されるレジ袋有料化を前に、「みんなで減らそうレジ袋チャレンジ」キャンペーンを、25日に立ち上げた。

(左から)トラウデン直美さん、小泉進次郎環境大臣、西川きよし師匠、さかなクン
(左から)トラウデン直美さん、小泉進次郎環境大臣、西川きよし師匠、さかなクン

 同日に開催した発足式の中で、小泉進次郎環境大臣は「地球規模で様々な課題があるが、その1つがプラスチック問題だ。この課題に対し、レジ袋から様々な気づきを持ってもらいたい、そんな思いからキャンペーンを始めた」と説明。

小泉環境大臣が手にするのは、福島県・只見中学校の生徒が製作し、地域に広げている新聞紙製のエコバッグ(左)。青色のバッグは、熊本地震の際に使用されたブルーシート製
小泉環境大臣が手にするのは、福島県・只見中学校の生徒が製作し、地域に広げている新聞紙製のエコバッグ(左)。青色のバッグは、熊本地震の際に使用されたブルーシート製

 専用ウェブサイトやテレビCMなどを通じ、マイバッグの利用促進や、個人・事業者・団体の様々な環境保護への取り組みを紹介することにより、今年3月時点で3割程度のレジ袋辞退率を、年末には6割まで高めることを目標にしている。

 

西川きよし師匠のエコバッグは、座右の銘「小さなことからコツコツと」を染め抜いた日本手拭い製
西川きよし師匠のエコバッグは、座右の銘「小さなことからコツコツと」を染め抜いた日本手拭い製

 テレビCMに声と似顔絵キャラクターで出演しているのは、「環境省プラごみゼロアンバサダー」に任命された、タレントの西川きよし師匠、さかなクン、トラウデン直美さんの3氏。発足式では各氏が普段実際に使っているマイバッグを持ち寄り、レジ袋の辞退や環境保護へのエピソードを披露した。

 ちなみに、西川きよし師匠のマイバッグは、自身の座右の銘「小さなことからコツコツと」が染め抜かれたオリジナル手拭いでこしらえたもの。3氏はアンバサダーとして、今後もそれぞれの活動分野で「レジ袋ゼロ」「プラごみゼロ」を訴求していく。

さかなクンのエコバッグは、WWF(世界自然保護基金)ジャパンとのギョラボ(コラボ)で作成。パンダとハコフグのイラスト入り
さかなクンのエコバッグは、WWF(世界自然保護基金)ジャパンとのギョラボ(コラボ)で作成。パンダとハコフグのイラスト入り

 「ドラッグストアのレジ袋使用量は年間約33億枚」と、小泉環境大臣が示した枚数は、平積みにすると富士山18個分の高さになるという。目標達成には、個人のみならず、事業者や団体の取り組みもカギとなりそうだ。

トラウデン直美さんのエコバッグは、海洋ごみをリサイクルした、洋服も入る大きめサイズ
トラウデン直美さんのエコバッグは、海洋ごみをリサイクルした、洋服も入る大きめサイズ

 なお、専用ウェブサイト(http://plastics-smart.env.go.jp/rejibukuro-challenge/)では、消費者向けのチャレンジャーの募集を開始。事業者・団体向けのサポーターの募集もまもなく開始され、都道府県ごとの登録状況やユニークな取り組み事例を紹介していく。

 

東大と産総研 電子励起状態のAI予測で解析時間を短縮

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2020年6月26日

 東京大学生産技術研究所と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、励起状態にある電子構造を人工知能(AI)で高速かつ高精度に予測する新手法を開発した。この手法を電子励起分光スペクトルに適用することで、物質の構造解析や環境物質調査、医療診断に要する時間の大幅短縮が可能となる。

 半導体設計、電池開発、触媒解析の現場で、物質構造を調べる方法の1つに電子励起分光スペクトル測定がある。X線・電子線を照射して物質中の電子を励起し、その励起状態に応じて得られるスペクトルを解析することで物質の原子配列と電子構造を調べる方法だ。それにはコンピュータで電子の励起状態を再現し、スペクトルを理論計算する必要があり、膨大な時間を要する。また励起状態は複雑なため、物質間の励起状態の違いなど、基礎的な知見がなかった。

 研究グループは、酸化シリコン(SiO2)の「結晶」と「アモルファス(非晶質)」の励起状態と基底状態について、1200個近いスペクトルをデータ化。それを使って基底状態と励起状態の関係性をニューラルネットワークに学習させ、基底状態の情報をもとに励起状態の電子構造を高速・高精度に予測できるAIを構築した。

 その結果、スペクトルの理論計算を数百倍に高速化できた。さらに、SiO2で作成した予測モデルを酸化マグネシウムや酸化アルミニウム、酸化リチウムなどに適用した結果、結晶構造や構成元素が異なるにもかかわらず、それらのスペクトルを高精度に予測できた。このことは、SiO2とこれら酸化物の励起状態が類似していることを示唆している。

 一方、結晶SiO2で作成した予測モデルをアモルファスSiO2に適用すると予測精度が著しく低く、同じ組成物であっても原子配列によって励起状態が異なることが明らかになった。

 今回は内殻電子励起スペクトルに適用したが、赤外分光やラマン分光などの励起状態が関わるスペクトルにも展開することで、物質の構造解析や環境物質調査の時間を大幅に短縮でき、物質科学や環境問題の解決、医療技術の発展などへの貢献が期待される。

P&G、プラリサイクル「プラごみペイ」を北海道で開始

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2020年6月26日

 プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)はこのほど、日本環境設計(東京都千代田区)とともに、一人ひとりの「地球への敬意を払いたい」という気持ちを後押しするプラスチックリサイクルの新しい枠組み「プラごみペイ」プロジェクトの北海道地域限定トライアルをスタートした。

 P&Gは「世界を変える力、未来を育てる力」のテーマの下、持続可能な消費のための様々な取り組みを推進。2030年までの重要戦略の1つである環境サステナビリティ対策の一環として同プロジェクトに取り組む。

 近年、誰もがリサイクルは重要と考えているが、忙しい日常の中での行動には難しさもある。そこで消費者が気軽に、簡単にプラごみのリサイクルに参加できる「プラごみペイ」プロジェクトを用意。日々深刻化する問題「プラごみ」、身近になったキャッシュレス「PAY=ペイ」、そして家族と住まう地域への貢献をかけあわせ、「プラごみを減らすことで、地球に敬意を払い、資源も、楽しさも、循環する」ことを目指す。

 LINE公式アカウント「P&GプラごみPAY」を友だちに追加、店舗の回収ボックスにプラごみを投函するとLINEポイントが5ポイント付与され、再生されたプラスチックは地域社会に還元する仕組みだ。

 トライアル運用は、サッポロドラッグストアー(札幌市)の協力で北海道の「サツドラ」174店舗で8月2日まで実施される。トライアルの効果検証の後、日本全国の自治体、小売業、リサイクル業者など幅広く協働することで持続的なプロジェクトに育てていく考えだ。日常のプラごみが「価値」に変わるという新しいアクションの、全国展開を目指している。

ヘンケル 高速塗布・高熱伝導液状ギャップフィラーを発売

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2020年6月26日

 ドイツ・ヘンケルはこのほど、サーマルインターフェース材料(TIM)の新製品「BERGQUIST GAP FILLER TGF 7000」を上市した。

 この液状TIMは、7.0W/mKの高熱伝導率と最大吐出量18g/秒の高塗布速度を両立。優れたスループット性は、最近の小型・高出力設計に対応して大量生産、信頼性、高熱伝導率が必要とされる自動車ADAS(先進運転支援)システム、電力変換(パワーコンバージョン)システム、電動ポンプ、ECU(エンジン制御)などの用途に最適だ。

 一般に熱伝導率の高い液状材料は、塗布装置の詰まり、ケーキング、沈殿、分離が起きやすく、塗布速度と高熱伝導率のバランスがポイントとなる。新製品は、2液混合型シリコーン樹脂系の熱伝導性ギャップ充填材料で、これら問題が発生しにくい配合設計。塗布後に室温で硬化するが、硬化後も柔らかく部品への負荷は抑えられ、応力の発生を低減する。低分子シロキサンの揮発量は300㏙で、様々な基板や光学部品にも対応可能。さらに貯蔵安定性や扱いやすさも、リスクの低いロジスティクスに有利だ。

 様々な環境・負荷状況下での放熱性能は、試験会社で評価しており、解析結果は、製品設計コンセプト、試験方法、熱特性や機械特性などの詳細情報とともに、6月30日にオンライン・ウェビナー(英語のみ)で公開する予定となっている。

 フォルムと機能が本質的にリンクする次世代自動車設計では、大電流・大電力部品による車体の軽量化、スマート化、洗練化が進む。ヘンケルは、新しいギャップフィラーによる効果的な熱制御ソリューションを通じて、こうした進化の実現に貢献していく考えだ。

ダウ GHG削減とプラごみ問題根絶、新たな目標を発表

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2020年6月26日

 ダウはこのほど、世界で最もイノベーティブで顧客本位であり、インクルーシブかつ持続可能な素材科学企業になることを目指し、気候変動とプラスチックごみの問題に対処するための新たな目標を発表した。

 2025年サステナビリティゴールに基づく、新たな持続可能性目標として、①気候の保護:2030年までに年間炭素排出量を正味500万t、2020年比15%削減。パリ協定に沿って、2050年までにカーボンニュートラルを達成する、②廃棄物の根絶:2030年までに、100万tのプラスチック回収・再使用・リサイクルを実現する、③循環経済:2035年までに、包装用途の全製品を、再利用可能またはリサイクル可能にする―を設定している。

 同社の取り組みとして、プラごみ問題では、環境への廃棄物の流出を根絶し、循環型経済に向けて材料科学業界をリードするという明確な目標に基づいた投資とコラボレーション活動に注力。これには、廃棄プラスチックをなくすための国際アライアンス「AEPW」への参画や、サーキュレート・キャピタルへの投資が含まれる。

 一方、気候変動の問題では、最終的に世界の温室効果ガス(GHG)排出を削減できる、低炭素製品や技術の開発・商品化を促進。企業がGHG削減の説明責任を果たせるように、主要な大学やNGO、監査専門家、技術パートナー、業界関係者と協力しており、今年後半にはこの協力に関する詳細な情報を提供する予定だ。

 なお、同社は、17年連続となる2019年度「サステナビリティリポート」を発行し、2025年サステナビリティゴールに向けた進捗と結果を報告している。

 

クラレ 米カルゴン社が活性炭設備を増設、年産2万5000t

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2020年6月26日

 クラレは25日、米国子会社のカルゴン・カーボン社が、同社ミシシッピ州パールリバー工場に、瀝青炭ベース活性炭の生産設備を増設すると発表した。活性炭の世界的な需要拡大に対応するため。生産能力は年産2万5000t。2022年末の稼働を予定する。投資金額は約1億8500万ドル(=約198億円)。

 活性炭は、瀝青炭やヤシ殻などを原材料として加工した、表面に微細孔を持つ炭素材料で、微細孔の大きさや形状によって様々な用途に使用されている。カルゴン社はクラレが2018年に買収した瀝青炭ベース活性炭のグローバルトップメーカーであり、使用済み活性炭の再生事業でも、世界有数の地位を占めている。

 活性炭は近年、水・大気の浄化など環境関連用途で広く使用されており、特に米国では水質汚染物質の除去など飲料水分野で需要が拡大。今回決定した生産設備の増設により、グローバルに安定した活性炭の供給体制を拡充するとともに、環境問題へのソリューションを提供していく考えだ。

 クラレグループは、創立100周年を迎える2026年のありたい姿「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を長期ビジョンに掲げ、その実現に向けた中期経営計画「PROUD 2020」(2018~20年度)を推進する。

 炭素材料事業では、クラレの炭素材料事業部とカルゴン社の統合プロセスを推進し、両社それぞれが持つ技術や用途開発力の融合によるイノベーションの創出など、さらなるビジネスの拡大を目指す方針。今後も将来の安定した事業ポートフォリオ構築を図り、成長事業への投資を継続して実施していく。

カルゴン・カーボン社の米国ミシシッピ州 パールリバー工場
カルゴン・カーボン社の米国ミシシッピ州 パールリバー工場

産総研など コロナ対策関連のAI情報をウェブで公開

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2020年6月25日

 産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所(理研)、情報通信研究機構(NICT)はこのほど、昨年12月に設立した「人工知能研究開発ネットワーク(AI Japan)」の会員数が100を超えたこともあり、ウェブサイトを開設・公開した。

 同ネットワークは、人工知能(AI)の研究開発に関する統合的・統一的な情報発信やAI研究者間の意見交換の推進などを目的とし、AIに係る研究開発などに積極的に取り組む大学・公的研究機関を対象に会員募集を進めていた。同ウェブサイトでは、日本のAI研究開発に関する情報の集約化を図り、各会員のAI研究開発に係るプレスリリースやイベントなどの最新トピック紹介など、一元的な情報発信を行う。

 第1弾として、会員大学・公的研究機関およびその研究者による「新型コロナウイルス感染症対策関連に係るAIを活用した取り組み」を公開した。AIは治療薬開発、感染シミュレーション、遠隔環境整備など、新型コロナ感染症対策に広範に貢献できる技術。会員に対してAIを活用した取り組みを調査し、登録された23大学・公的研究機関から69件の活動が登録された。

 今後も、ウェブサイトを通してAIの研究開発に係る統合的・統一的な情報発信に取り組んでいく。詳細はウェブサイト(https://www.ai-japan.go.jp/)に掲載。

 

コベストロ サーキュラーエコノミーへの移行を加速

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2020年6月25日

 独コベストロは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を持続可能な世界のモデルにするため、総力を挙げて取り組んでいる。

 素材メーカーとして製造・製品レベルだけでなく、サプライチェーン全体にサーキュラリティ(循環性)というコンセプトを取り入れ、様々な計画やプロジェクトによって段階的に実現していく方針だ。特に化学・プラスチック産業でのサーキュラーエコノミーへの移行を加速させ、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするような経済の実現を目指す。

 同社は、2019年から全社を挙げた戦略プログラムを進め、「代替原料」「革新的なリサイクル」「共通のソリューション」「再生可能エネルギー」の4分野に注力。全世界の生産設備で代替原料や再生可能エネルギーの利用を計画し、20以上のプロジェクトでリサイクル向上の方法を研究している。さらに、価値を創出するすべてのサイクルについて、パートナーと協力し新たなビジネス関係の構築を図っている。

 代替原料では、バイオベース原料の自動車・家具用塗料への応用、CO2由来素材のマットレス、スポーツグラウンド、繊維への使用がある。リサイクルでは、特にケミカルリサイクルに大きなポテンシャルがあるとし、プラスチックの分子レベルでの変換・再利用の研究を推進。社会共通のソリューションでは、業界を超えたコラボレーション、ブロックチェーン技術によるサプライチェーンの透明化や、廃棄プラ削減の国際アライアンス「AEPW」の一員としての使用済みプラの処分方法の啓蒙、などを行っている。再生可能エネルギーについても、ドイツ国内プラントの消費電力の大部分を、2025年よりデンマーク・オーステッド社の風力発電所から調達する予定だ。

 マーカス・スタイレマンCEOは、「プラスチックを地球環境に流出させてはならない。プラスチックは捨ててしまうにはもったいなく、高い価値がある。再生可能資源として利用可能であると理解した上で使用する必要がある」と強調した。

ランクセス コロナ特別措置の段階的解除と新勤務様式へ

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2020年6月25日

 ランクセスの日本法人は、国内の新型コロナウイルス感染の減少傾向を受け、6月1日より感染防止対策を継続した上での段階的な緩和措置を開始した。

 同社は、2月25日より国内3事業所で在宅勤務を含む特別対応措置を実施していた。今回の緩和措置は、新たな就業規定と感染防止の行動指針により構成。第1段階は、在宅勤務を継続しながら感染状況を注視し、第2段階以降は、出社人数を制限しながら適宜オフィス勤務を可能にする。最終段階として、今後数週間~数カ月間の感染状況を見ながら、柔軟性のある働き方の仕組み作りを進め、持続可能な新しい勤務様式へと移行していく考えだ。張谷廷河社長は「従業員、パートナー企業の安全確保を最優先事項とし、新型コロナウイルス感染症の防止に努め、持続可能な社会を目指す新たな共通課題に取り組む」と述べた。

 一方、同社は、コロナ禍による対外的な支援にも注力。このほど、コロナ禍の影響を受ける国内の子どもたちを支援した。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの新型コロナウイルス緊急支援プログラムに賛同し、4~5月にかけて従業員募金と寄付マッチングプログラムを実施。このプログラムには、全国の放課後児童クラブ(学童保育)を対象とした活動金支援や、健康・衛生指導員へのオンライン相談、東京都23区内のひとり親家庭への応援ボックス提供などが含まれている。

 また、ドイツ・ランクセスは、世界各国で新型コロナ感染防止に取り組み、4月には世界13カ国(欧州6、アジア4ほか)の病院、関係当局、公共機関への消毒剤「Rely+On Virkon」の寄付を発表。2月には、中国・武漢市と周辺地域の病院に合計1tの殺菌剤を寄付した。同社は今後も、社会、取引先、従業員への責任を果たすため、コロナ対策に真摯に取り組む考えだ。

 

日本ゼオン 非対称SIS研究成果、日本接着学会の技術賞に

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2020年6月25日

 日本ゼオンはこのほど、同社が開発を進める非対称SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)の研究成果が、「2020年度日本接着学会技術賞」を受賞したと発表した。独自に開発した技術により、ラベル用ホットメルト粘着剤の機能向上を実現し、その工業的価値の向上に貢献したことが評価された。

 なお研究題目は「新規なブロック構造により高速ダイカット性を実現したSIS系ホットメルト粘着剤」。非対称SISとは、スチレンとイソプレンの熱可塑性ブロック共重合体であるSISの両末端スチレンブロックに意図的に非対称な構造を持たせ、そこに対称な低スチレン比率の対称スチレンブロックを混在させることで、高スチレン含有量ながらスフィア構造という特異な相構造を持たせた同社独自開発のポリマー。近年、主に紙おむつ用の伸縮材料(エラスティックフィルム)の素材として需要が拡大しているが、「スチレン含有量が高くて柔らかい」というユニークな性能に着目し、これまでSISが使われてきた諸用途について技術課題解決の可能性を追求してきた。

 今回、受賞対象となった研究は、非対称SISの粘着ラベルへの応用に関するもの。有機溶剤を使わない粘着ラベルには「ホットメルト型」と「アクリルエマルジョン型」の2タイプがある。

 日本では「アクリルエマルジョン型」が主流だが、世界市場では、塗工ラインスピードの速さ、被着体選択性の広さ、低温タックの出しやすさに優れる「ホットメルト型」も大きく成長。ホットメルトのベースポリマーには主にSISが使われるが、従来のSISは粘着物性に優れる一方、粘着ラベル用途では高速での打ち抜き加工性(ダイカット性)と、配合される軟化剤の染み出しが長年の課題だった。

 こうした中、同社は、非対称SISの技術を深化させ課題の解決に取り組んだ結果、良好な粘着物性を保持しつつ、高速ダイカット性および軟化剤の耐染み出し性(オイル保持性)をも両立させることに成功。また、ダイカット工程の粘着剤研究では、これまでは実際の工程試験での確認が一般的だったが、代用評価方法を確立したことが早期開発に寄与し、今後のラベル用粘着剤のさらなる付加価値向上も期待されている。

 同社グループは今後も、独創的技術をより一層磨き上げながら、新たな時代のニーズに応えるよう努めていく方針だ。