花王 抗菌作用メカニズムを原子・分子スケールで解明

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2020年11月25日

 花王はこのほど、ドイツのハイデルベルク大学と共同で放射光X線を使った精密解析により、細菌に対する界面活性剤・芳香族アルコール抗菌剤の作用メカニズムを原子・分子スケールで明らかにしたと発表した。

 浴室のピンク汚れなどの主な原因であるグラム陰性菌に対し、塩化ベンザルコニウム(界面活性剤)・ベンジルアルコール混合物は高い抗菌効果を示し、浴室洗浄剤などに応用されている。グラム陰性菌は糖鎖と炭化水素鎖を主成分とする「リポ多糖」の層に覆われ、カルシウムイオンがマイナスに帯電したリポ多糖分子同士をつないでバリア層を作っている。塩化ベンザルコニウムはプラス電荷をもち、マイナスに帯電したリポ多糖分子と電気的に引き合う性質があるため、抗菌作用への関与が推察された。そこでサルモネラ菌(グラム陰性菌)から抽出したリポ多糖で均一モデル膜を作製し、塩化ベンザルコニウムとベンジルアルコールを作用させ、放射光X線分析でX線反射率によるリポ多糖層の微細構造の変化と、斜入射角X線蛍光によるカルシウムイオン分布の変化を同時測定した。

 その結果、塩化ベンザルコニウムはマイナスに荷電したリポ多糖に結合はするが、リポ多糖膜はカルシウムイオンのバリア層によって安定に維持されている。そこにベンジルアルコールを混ぜると、ベンジルアルコールの作用でリポ多糖分子の糖鎖と炭化水素鎖の界面部分にゆるみが生じ、塩化ベンザルコニウムが膜に侵入して破壊することが分かった。抗菌作用メカニズムを0.01㎚の原子・分子スケールでとらえた世界的に先駆的な発見となった。

 抗菌作用メカニズムの解明により、人や環境に低負荷で効果的な抗菌剤や抗菌技術の開発が可能になる上、感染症の原因となるほかの細菌の抗菌や、細菌と類似の表面構造をもつウイルスの不活化メカニズムの解析への応用が期待される。なお、塩化ベンザルコニウムは経済産業省が公表している新型コロナウイルスに有効とされる界面活性剤の1つだ。

 同社はサイエンスに裏打ちされた製品や技術の開発を通じて「感染症と向き合う新たな社会」の課題である「公衆衛生レベルの向上」と「感染予防」に貢献していく考えだ。

 

住友ベークライト 米工場が生産・品質管理システムの認証を取得

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2020年11月25日

 住友ベークライトはこのほど、スミトモベークライトノースアメリカ(SBNA)・マンチェスター工場が、プラスチック材料工場として国内外4工場目となる航空機関連部品に関連する生産・品質管理システムのAS9100の認証を取得したと発表した。

AS9100の認証を取得した米SBNA・マンチェスター工場
AS9100の認証を取得した米SBNA・マンチェスター工場

 航空機業界は目下厳しい状況にあるが、同社は、新規拡販ターゲット市場に航空機市場を定め、中長期視点に立ってVaupell社(航空機関連の関係会社)を中心にビジネス拡大に向けた活動を展開。航空機関連市場では、電子部品や自動車とは異なる独特な生産・品質管理が求められるため、同社がもつ優位性あるプラスチック材料の信頼性を高める必要がある。生産・品質管理システムをもとにした材料開発、生産、品質保証を整備・証明するために、国内外の材料工場でAS9100認証取得を進めている。

 すでに静岡工場、北米のナイアガラフォールズ工場、マレーシア工場ではAS9100認証を取得。4工場目の取得となるマンチェスター工場ではフェノール樹脂やプリプレグ、パネル関連材料などを取り扱っている。

 また同工場では、高強度、高耐熱、耐衝撃性、寸法精度などに優れる長繊維補強熱硬化性成形材料や、航空機用コネクタや電子部品に使用されている短繊維補強熱硬化性成形材料を生産しており、航空機部品の軽量化を一気に実現し、一括成形による部品点数削減とコストダウンに貢献できる可能性をもっている。すでに、航空機メーカーおよび航空機部品メーカー(Tier1)から高い関心が寄せられ、サンプルワークでは一部顧客から好評価も得ている。

 同社は今後、さらにマーケティング活動を進め、2023年度に売上高数十億円に加え、5年間で航空機関連ビジネスを2倍にすることを目指していく。

JNC コロナを迅速かつ高感度に検出する技術を共同開発

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2020年11月25日

 JNCと東京農工大学は24日、共同開発した迅速-高感度免疫診断技術AptⅠa(アプティア)法を活用し、新型コロナウイルス(S抗原タンパク質)の迅速‐高感度検出に成功したと発表した。

 アプティア法では、JNCの特許技術である熱応答性磁性ナノ粒子「Therma-Max(サーマ・マックス)」と東京農工大の池袋一典教授が開発した抗原認識試薬(DNAアプタマー)を検体と混ぜ合わせることで、安価(抗体利用時の2分の1~10分の1程度)で短時間(ELISA法の2分の1~3分の1程度)かつ高感度(ELISA法の1~10倍程度)に抗原を検出(濁度)することが可能となる。

 従来の抗原検査キットでは抗原認識試薬(抗体)が2種類必要だったが、アプティア法では1種類のDNAアプタマーで抗原を検出できるという特徴がある。さらに、インフルエンザウイルスに結合するDNAアプタマーを併用することで、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時検出も実現。計測には濁度計を使用するためモバイル化も可能だ。

 DNAアプタマーはモノクローナル抗体と異なり、迅速な分子設計と人工合成が可能であるため、変異を繰り返す新型コロナへの対応(診断)も見込まれる。またアプティア法とJNCの特許技術であるペーパークロマト法を組み合わせることで、唾液を使った新型コロナの簡易抗原検査キット(目視判定)への応用も期待される。

 今後は実用化に向けて、診断薬メーカーをはじめとする共同研究先を広く募集し、商品化を目指していく方針だ。新型コロナの簡易検査を巡っては、多岐にわたる業種やアカデミアから数多くの新技術開発が発表され、磁性ナノ粒子を使う簡易検査法では、日本大学から「SATIC」法という新たな診断法が発表されている。

 なお、アプティア法で利用する「サーマ・マックス」は、JNCと神戸大学による産学連携の研究成果から製品化された。

AptIa法による 抗原検出の原理
AptIa法による 抗原検出の原理

NEDO 革新的ロボット研究開発基盤の構築事業を開始

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2020年11月24日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、多品種少量生産現場などロボット導入が進んでいない領域にも対応する革新的産業用ロボットの実現に向け、重要な要素技術を産学連携で研究開発する事業に着手すると発表した。8社11大学などが参画し、期間は今年度からの5年間、今年度予算は2.5億円。既存技術の改良・改善のアプローチのみならず、サイエンス領域に立ち返った技術開発や異分野の技術シーズの取り込みなどによるイノベーション創出を目指す。

 産業用ロボットは自動車産業やエレクトロニクス産業に数多く導入され、日本の産業の発展に欠かせない基盤技術だ。また食品加工や物流分野などにも労働力不足を背景に導入が検討され、産業用ロボットの市場拡大が見込まれる。

 一方、日本には産業用ロボット専業メーカーが少なく、個別企業では対応が限定されるため、基礎・応用研究への支援が期待されている。今回、ロボティクス以外の分野も含めた幅広い大学研究者などと連携して要素技術を開発し、企業ニーズに対して大学のシーズを有効活用できるよう、将来の社会実装に向けた産学連携体制の基盤を構築する。

 研究開発する技術分野は「自動的・汎用的ロボットの動作計画技術」「多用な対象物に対応できるセンシング機能とハンドリング技術」「ロボットを安定操作できる遠隔制御技術」「ロボット構成部材へ適応できる新規な非金属や複合素材」だ。

 具体的テーマは「産業用ロボットの機能向上・導入容易化のための産学連携による基礎技術研究(6社10大学・研究所)」「変種変様な多能工作業を可能にするセンシング技術搭載エンドエフェクタの開発と実証(1社1大学)」「果菜作物収穫システムの開発(1社1大学)」だ。

ダウ 中国社とPE単一素材の洗剤用パッケージを商品化

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2020年11月24日

 ダウはこのほど、テンターフレーム二軸延伸用「INNATE TFポリエチレン樹脂(TF‐BOPE)」が、中国の大手洗剤ブランドである立白(Liby)の、タブレット洗剤のパッケージに採用されたと発表した。ダウは、2035年までに包装用製品の100%を再利用またはリサイクル可能にする、という新たなサステナビリティゴールの達成に向けた取り組みを推進しているが、この提携により加速することになる。

「INNATETMTF-BOPE」を使用した洗剤パッケージ
「INNATETMTF-BOPE」を使用した洗剤パッケージ

 タブレット洗剤用のパッケージのマテリアルリサイクル(MR)を可能にする取り組みは、ダウ、立白およびFujian Kaida社との協力により実現。「TF-BOPE」は、既存のMRの工程で再利用可能な、単一素材(オールPE)の素材であること、輸送中の漏れを低減する高靭性など優れた物性や、商品棚でのアピール力や手触りの良さを実現する光学特性を備えていることが評価されて選択された。大手包装メーカーであるFujian Kaidaが、立白のタブレット洗剤用のパッケージを製造する。

 ダウは今年7月初め、「TF-BOPE」フィルム用のPE樹脂を「INNATE」高精度樹脂シリーズに加える、革新的かつ画期的なブランド拡張を発表。「TF-BOPE」は、高性能で使いやすく、MR可能な包装材料に対する世界的な業界ニーズに対応するための製品。「INNATE TF」は、「リサイクル可能なデザイン」ソリューションとして認知されており、ブランドオーナーが開発初期段階からパッケージのリサイクル性を考慮できるようにする。

 ダウは、2025年サステナビリティゴールの一環として、バリューチェーン全体の主要なステークホルダーと協力し、革新的で持続可能なパッケージ用のソリューションを促進することで、プラスチック業界の健全かつダイナミックな発展の推進に取り組んでいる。「TF-BOPE」樹脂は、加工業者、ブランドオーナー、小売業者に、MR可能であると同時に必要とされる特性をもつ革新的なパッケージ用のソリューションだ。これは、従来のPE製品と比較して、優れた物性を備える同樹脂特有の分子構造により可能となった。

東レ リチウムイオン電池用無孔セパレータ創出

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2020年11月24日

金属リチウム負極電池の安全化と大容量化に貢献

オンライン会見 長田所長・佃研究主幹
長田所長(左)・佃研究主幹

 東レは、金属リチウム負極電池の実用化に向け、リチウムイオン2次電池(LIB)用無孔セパレータの創出に成功した。今後、同セパレータをウェアラブルデバイスやドローン、電気自動車(EV)向けなどの次世代超高容量・高安全LIBへの適用を目指していく方針だ。オンラインによる会見を開催し、フィルム研究所の長田俊一所長と佃明光研究主幹が説明を行った。

 LIBの需要は、モバイル機器や、車載用途で急速に拡大。用途の拡大に伴い、LIBにはさらなる高容量化・高エネルギー密度化が求められており、最も理論容量が高く、酸化還元電位が低い金属リチウム負極が注目されている。金属リチウム負極は、黒鉛負極に対してイオンの貯蔵量は10倍以上となり、LIBへの使用時には従来の2~3倍の電池エネルギーが見込まれる。しかし、充電時に金属リチウム表面からリチウムデンドライト(樹枝状結晶)が成長するため、セパレータを突き破り正負極がショートしたり、セパレータが目詰まりを起こしたりと安全性や電池寿命が低下するといった課題があり、現状では実用化に至っていない。

 デンドライトは、微多孔フィルムの空孔に沿って成長するため、無孔とすることで成長を阻害できるが、リチウムイオンの透過性が悪化することから、デンドライト抑制とイオン電導性の両立が不可欠となる。さらに、金属リチウム負極を用いた電池は、高容量化に伴い安全性への要求がより高くなるため、セパレータの耐熱性や熱寸法安定性の一層の向上も必要だ。

無孔セパレータ
無孔セパレータ

 こうした課題に対して東レは、長年培ってきた高耐熱アラミドポリマーの分子設計技術を駆使し、分子鎖間の間隙(リチウムイオンのみ透過できる0.5~1㎚に設計)やリチウムイオンとの親和性を制御することで、高いイオン伝導性と高耐熱性をもつ新規イオン伝導性ポリマーを創出した。これを微多孔セパレータ上に積層しLIB用無孔セパレータとすることで、金属リチウム負極使用電池でのデンドライト抑制とイオン伝導性の両立を実現している。

 正極に3元系(ニッケル・コバルト・マンガン)、負極に金属リチウムを使用したサイクル試験では、無孔セパレータは充放電サイクル100回で80%以上の容量維持率を確認。このセパレータを使用した金属リチウム負極電池が、デンドライトによるショートを抑制できることが実証された。なおコストについては、アラミドを使用するため従来品のセパレータに比べ高価になるが、電池容量が拡大するメリットで賄えるとしている。

 一方、金属リチウム負極電池の実現には、無孔セパレータだけでなく他の電池部材との全体設計が重要となる。同社はサンプルワークなどを行い、電池メーカーとの協業を進めていく構え。3~5年後にはプロトタイプが完成し、その後、実用化が加速することを想定している。市場としては、モバイル機器といった民生用から車載用への拡大が期待される。ただ、車載用に採用されるためには、充放電サイクル500回で90%以上の容量維持率が必要となるなど、さらなる改善が求められる。

 同社は今後も、早期の技術確立に向けて研究開発を加速していく考えだ。

 

中外製薬 ESG投資指数「DJSI World」に初選定

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2020年11月19日

 中外製薬はこのほど、世界の代表的なESG投資指数であるDJSIの全世界版である「DJSI World」の構成銘柄に初めて選定され、アジア・太平洋版である「DJSI Asia Pacific」に3年連続6回目の選定を受けた。

 DJSIは、米ダウ・ジョーンズ・インデックス社が作成する代表的なESG指数であり、企業の持続可能性(サステナビリティ)に関心をもつ世界中の投資家にとって重要な投資選択基準の1つ。同指数の構成銘柄は、企業の経済・環境・社会面でのサステナビリティの評価により毎年選定される。

 「DJSI World」の医薬品セクターには、全世界の医薬品企業の中でサステナビリティ評価が世界3位となった中外製薬も含め、上位8社が構成銘柄として選定された。DJSI World全体では323社(日本企業39社)が選定されている。なお、アジア・太平洋版「DJSI Asia Pacific」には、同社を含め5社が選定された。

 中外製薬は中期経営計画の中で、イノベーションへの挑戦を支える「サステナブル基盤の強化」を5つの戦略の1つとして掲げ、社会との共有価値創造実現のため六分野の重点強化領域を特定し、DJSIをはじめとするESG外部評価のギャップ分析に基づいて、6分野を中心にPDCAサイクルを回すことで、継続的なサステナブル基盤の強化に取り組んでいる。その結果、今年はサプライヤーの人権デュー・デリジェンスやサプライチェーンマネジメントに関する評価が昨年を大きく上回った。

 同社は、「すべての革新は患者さんのために」という事業哲学の下、革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献することで、生命関連企業として積極的に社会責任を果たしていく。

 

エボニックとシーメンス CO2原料の化学品製造を開始

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2020年11月19日

 エボニックインダストリーズとシーメンスエナジーはこのほど、CO2と水からスペシャルティケミカルを製造するテストプラントの稼働を開始したと発表した。

 「レティクス(Rheticus)Ⅰ、Ⅱ」プロジェクトは再生可能資源由来の電力と人工光合成技術を利用したエネルギー革命を目指し、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)から総額630万ユーロの助成を受けている。

 エボニックの最大拠点マールで稼働するテストプラントは、シーメンスエナジーのCO2/水電気分解装置とエボニックのバイオリアクターから成る。CO2と水をCOと水素に電気分解した後、微生物(バクテリア)を利用してプラスチックや栄養補助食品などの出発物質を製造する。このような人工光合成はエネルギー貯蔵庫の役割も果たし、炭素循環による大気中CO2の低減にも寄与する。今後数週間で合成ガスの組成、電気分解と発酵の相互作用の最適化を行い、高純度化学品製造のための液体処理ユニットを設置する。

 同プロジェクトの成功により、CO2から高付加価値スペシャルティケミカルや高エネルギー人工燃料などをモジュール方式で柔軟に生成できるプラットフォーム技術が実現する。A・カルリチェクBMBF大臣は「この最高水準の技術はドイツだけでなく世界中で実現する可能性があり、技術輸出を行う絶好のチャンスだ。効果的な地球環境保護の推進と、ドイツの強力な産業基盤の維持の両方を、このプロジェクトで実現できると確信している」と述べ、ドイツ連邦議会議員でグリーン水素担当の連邦委員を務めるS・カウフマン氏は「グリーン水素経済はイノベーション大国ドイツで革新的な技術が使われた場合のみ成功する。そのために必要な勇気と研究精神を、レティクスのプロジェクトパートナーは模範的に示している」と述べている。

 またエボニックのイノベーション担当のH・シュヴァーガー副会長は「化学産業のエネルギー転換ソリューションや開発なしに地球環境保護は不可能だ。政治的決定による供給安定性と信頼が、新しいものを生み出すフレームワークを設定する」と化石燃料の段階的廃止に関するスピードに警鐘を鳴らしている。

 

DIC 肌のバリア機能を高める機能性表示食品を新発売

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2020年11月19日

 DICはこのほど、食用藍藻(らんそう)スピルリナを中心とした健康食品を製造・販売する100%子会社DICライフテックが、肌のバリア機能を高める機能性表示食品「フィコナ スキン モイストリフティング タブレット」の販売を開始したと発表した。

PHYCONA フィコナ
フィコナ スキン モイストリフティング タブレット

 同製品は、食用藍藻スピルリナから独自の特許製法で抽出した青色素「フィコシアニン」を関与成分とし、最終製品によるヒト臨床試験で保湿効果が確認された機能性表示食品。保湿効果を含む有用成分は多数あるが、タンパク質の一種であるフィコシアニンは肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があることが報告されている。製品にはC-フィコシアニン、アロフィコシアニンが含まれており、内側から肌のバリア機能(保湿力)を高める今までの保湿成分にはない新しい有用成分をもつ。

 フィコシアニンの原料となるスピルリナは、約30億年前に誕生した食用藍藻で、50種以上の健康・栄養成分を含むスーパーフードの王様とも呼ばれる。DICグループは、その可能性にいち早く着目し、50年にわたって研究を続けてきた。藻類研究のパイオニアとしてスピルリナ粉末を健康食品や、食用色素、食品素材や飼料分野へ展開してきた結果、青い色素成分「フィコシアニン」が秘めている優れたパワーを独自に見出だした。

 DICグループは、中期経営計画「DIC111」の中で、今後の新事業の柱の1つとしてヘルスケア分野の強化に注力している。消費者の健康志向を背景に今後も同社が得意とする藻類培養技術を活用した〝食の安全・安心〟に注力した食品やサプリメントなどの製品開発を進めていく。

三井化学 歯科材事業を拡充、入れ歯をクラウドでデザイン

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2020年11月19日

 三井化学はこのほど、グループ会社のクルツァージャパンが、今月から歯科用3Dプリンターで作製するデンチャー(入れ歯)のデザインを行える、クラウドベースのプラットフォームサービスの販売を開始したと発表した。

DENTCAのデザインシステムを使ったデンチャー(入れ歯)のデザイン
DENTCAのデザインシステムを使ったデンチャー(入れ歯)のデザイン

 同サービスは、三井化学の米国子会社DENTCA(カリフォルニア州)が米国を中心に展開していたもので、このほどクルツァージャパンが日本でのサービスを開始した。同社はまた、先月から三井化学の高分子・合成技術を生かした、今年5製品目となる3Dプリンター用ソフトスプリント(=マウスピース)向けの新規レジンインクの販売も始めており、3Dプリンターを活用した歯科材料事業の拡充を進めている。今回開始したクラウドベースのデザインプラットフォームサービスにより、歯科技工士の省力化や熟練した歯科技工士の人手不足解消、患者の負担軽減などに貢献していく考えだ。

 従来は、歯科技工士が模型を使い歯列や歯肉のデザインを手作業で行っていたが、同サービスでは、クラウドベースのソフトウェア上で全てデザインできるようになる。そのデザインをもとに、薬事認証を取得した歯と歯肉造形用のレジンインクを使い3Dプリンターでデンチャーを作製する。これにより、これまで歯科技工士が長時間かけて作成していた作業時間を10分の1程度に短縮するほか、患者はデンチャー作製のための通院を従来の最低5回から3回程度まで減らすことが可能になる。

 三井化学グループの歯科材料事業は、長年のビジネスで現場のニーズを知り抜いたドイツのクルツァー、先進的なデザインシステムの提供により安定した品質の歯科技工をサポートするDENTCA、そして歯科に特化した3Dプリンターを開発し、安定した品質で機器を供給する米国B9Creations、さらに三井化学のポリマーテクノロジーを組み合わせて、顧客に最適なソリューションを提供することで事業拡大を図っている。

 今後もデジタル化を推進し、歯科医療従事者と患者のQOL向上に貢献していく考えだ。