富士フイルム 次世代の微量元素分析法に最適な標準物質を開発

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2021年2月1日

 富士フイルムはこのほど、試料中の微量元素濃度の高精度分析に必要な標準物質を開発したと発表した。次世代微量元素分析法「フェムト秒レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(fs-LA-ICP-MS)法」に最適な標準物質で、微量の不純物質などの濃度測定が可能となり、最先端の材料開発などへの応用が期待される。昨年12月から標準物質のサンプル提供を開始した。微量元素分析は土壌や水質の環境汚染分析、機能性材料の不純物分析など、幅広い用途で行われている。

 元素濃度は標準物質を基準に測定するが、試料の状態(固体、液体など)によって選択する分析手法が異なるため、各手法に最適な標準物質を準備する必要がある。固体試料では、試料表面にレーザー光を照射し、加熱・蒸発した試料をイオン化して測定する「レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法」がある。効率良く固体試料を加熱・蒸発させるフェムト(1000兆分の1)秒レーザーと、短時間に大面積をサンプリングできる高速多点アブレーション技術を組み合わせた「fs-LA-ICP-MS法」が開発され、より高精度な微量元素分析が期待されるが、適した標準物質がなく正確な測定が困難だった。

 今回、同社の解析技術やナノ分散技術、精密塗布技術と、グループの富士フイルム和光純薬の超高純度ポリマー合成技術を組み合わせ、東京大学と共同で最適な標準物質を開発した。シリコンウェハ基板(1㎝四方)と既知の濃度の18種類の元素を均一に分散した超高純度ポリマーを主成分とする薄膜(500㎚)で構成され、0.1~100㏙の濃度範囲で定量分析が可能。「fs-LA-ICP-MS法」はレーザー照射点が高速・広範囲に移動するため、固体試料と同標準物質を並べて同時に加熱・蒸発し、混合状態の元素の濃度を測定できる。そのため試料の溶液化が不要で、ユーザーの利便性の向上と高精度の微量元素分析を実現できた。

 今後、同標準物質のサンプル提供とともに、顧客ニーズに合わせたラインアップの拡充を検討していく考えだ。

DIC 設置・移設が簡単なIoT環境無線センサー発売

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2021年2月1日

 DICは29日、商業施設やオフィスビルなどの屋内環境で温度・湿度・照度のセンシングに利用する、やわらか無線センサー「ハッテトッテ」の受注を開始したと発表した。

やわらか無線センサー「ハッテトッテ」
やわらか無線センサー「ハッテトッテ」

 同製品は、場所を選ばず簡単にセンシングが行えることから、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」社会の実現に貢献することが期待される。

 温度や湿度などを測るセンサーは有線タイプが主流だが、既存施設へ設置しづらく、テナントやフロアレイアウトの変更時に適所設置できないなどの課題があった。また、無線タイプの場合も、従来製品の多くは筐体がプラスチック成形品のため、取り付けが簡便な両面テープでの固定では落下の危険性があり、加えて、センサーのデザインと施設デザインとの不調和に対して改善を求める声も高まっていた。

:「ハッテトッテ」薄く手軽い形状
「ハッテトッテ」薄く手軽い形状

 こうした中、DICは、これらの課題を解決するため、「ハッテトッテ」を開発。同製品は、設置の簡便性、軽くて薄い形状(厚さ5.8㎜、重さ約38g)と空間デザインを邪魔しない意匠性、電池内蔵で一切の配線不要、LoRaWANにより長距離通信が可能といった特長を備えている。近日中には、IPX6相当の防水を備えた屋外向け製品も受注を開始する予定だ。

設置や移設が簡単
設置や移設が簡単

 同社は、「CO2センサー」や「距離センサー」などのラインアップ拡充を検討。3密検出、オフィス・商業施設などの環境改善と省エネ、介護施設の感染症警告やヒートショック回避、1人暮らしの見守り、美術館の展示物保護、工事現場の熱中症警告など幅広い用途への展開を図り、2023年には売上高3億円を目指す方針だ。

産総研 CO2からメタノールの低温合成触媒を開発

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2021年1月29日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ゼロエミッション国際共同研究センターが低温低圧条件でCO2の水素化により高選択でメタノールを合成できる新規の複核錯体触媒を開発したと発表した。イリジウム2個を含むイリジウム触媒は30℃/0.5M㎩の低温低圧でもCO2の水素化反応が進み、選択的にメタノールを合成できた。

 温室効果ガス排出実質ゼロの目標に向け、CO2を有用化学品へ変換するカーボンリサイクル技術の開発が喫緊の課題だ。メタノールは世界で年間約1億t生産される化成品原料・代替燃料で、CO2から変換できる基幹物質でもある。従来の銅系固体触媒が通常必要とする200℃以上の高温状態ではメタノールへの平衡転化率が低く、COやメタンも副生するため、反応の低温化が技術課題であった。

 産総研は低温反応用のイリジウム錯体触媒の開発に取り組み、活性点構造や反応機構の解明を進めてきた。1つのCO2分子に3つの水素分子が段階的に反応し、メタノールと水になる。1つ目の水素が反応してギ酸は生成するが、その後の水素反応が起こらずメタノールは生成しなかった。

 今回連続的な水素化を図り、活性点のイリジウムを2個もつ複核イリジウム触媒を開発した。従来の水相での均一触媒反応では水との競争反応のためメタノール生成はわずかだったが、固体状触媒による気相反応ではメタノール生成量は30倍増加し、メタノールの回収も容易であった。反応時間とともにメタノール生成量は直線的に増加し、メタンやCOは検出されなかった。5回の再利用試験でも触媒の劣化はなく、合計の触媒回数は100回を超えた。2個のイリジウム金属を分子内に適切に配置することが重要で、イリジウム同士が近すぎても遠すぎても触媒活性は低下したことから、複数の活性点による連続的な水素化が示唆された。

 今後は、触媒のさらなる高性能化と低コスト化を目指す。また、メタノールの生産性をより向上させるため、フロープロセスを開発し実用性の高い触媒プロセスの開発を進めていく。

 

東ソー 周南市で自家発バイオマス燃料使用の協定締結

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2021年1月29日

 東ソーは28日、山口県周南市と同市にある和泉産業との間で、公共施設から発生する剪定樹木を、東ソー南陽事業所の自家発電所用燃料として利用することについて、「周南市公共施設発生樹木のバイオマス燃料製造及び自家発電所燃料使用に関する協定書」を締結したと発表した。今年4月1日から開始される。

(写真左から)東ソー南陽事業所の田代克志所長、藤井律子周南市長、和泉産業の和泉貴信社長。協定締結式にて
(写真左から)東ソー南陽事業所の田代克志所長、藤井律子周南市長、和泉産業の和泉貴信社長。協定締結式にて

 具体的には、同協定に基づき、和泉産業は周南市内の公共施設から発生する剪定樹木を同社の周南バイオマスセンターで破砕・チップ化し、東ソーへの輸送を行う。一方、東ソーは木質バイオマス燃料である同チップを自家発電所で石炭と混焼することにより、CO2量で年間100t前後、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を進めていく。

南陽事業所の自家発電所
南陽事業所の自家発電所

 東ソーは、気候変動問題に関わる課題として、GHG排出量削減への取り組みが事業の中長期的な成長に繋がると考えており、今後も引き続き、エネルギー使用の効率化、GHG排出量の削減、CO2の分離回収・原料化による有効利用に向けた技術開発を推進していくことで、持続可能な社会の実現に貢献していく考えだ。

帝人など 心・血管修復材の臨床試験、被験者登録を完了

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2021年1月28日

 帝人、大阪医科大学、福井経編興業の3者は27日、共同で開発を進める「心・血管修復パッチ OFT-G1(仮称)」の臨床試験について、目標としていた症例数の被験者登録を完了したと発表した。今回登録された被験者は、0歳児から成人までの幅広い年齢層の患者で、様々な先天性心疾患をもつ。今後、手術後1年間の安全性や有効性のデータについて評価を行った後、製造販売承認の申請に向けて準備を進めていく。

埋植された「心・血管修復パッチ」 (イメージ)

 「心・血管修復パッチ」は、大阪医大の心臓血管手術に関する豊富な知見、福井経編興業の優れた経編技術、帝人のポリマー解析技術を組み合わせて創出された医療材料。世界最先端の治療を早期に提供できるよう、これまで日本医療研究開発機構(AMED)や厚生労働省など様々な支援を受け、開発を推進している。

 現在、組織欠損部の補填や狭窄部の拡大などの修復を要する心臓血管手術を受ける患者は、治療の進歩により、生存期間の長期化が可能になった。そのため、患者の成長に伴って修復パッチが伸長することにより、パッチを埋植した部分に狭窄が起こりにくい治療法や、長期間の留置によるパッチの劣化や石灰化に起因する再手術を低減できる治療法に対する期待が高まっている。「心・血管修復パッチ」は、体内に埋め込んだ材料の一部が自己組織と一体化し、身体の成長に合わせて伸長可能な構造をもつ。実用化すれば、先天性心疾患患者の再手術のリスク低減につながり、患者や家族の肉体的・経済的な負担を軽減することが期待される。

 3者は、国内での「心・血管修復パッチ」の1日も早い承認申請と上市を目指し、将来的には適応拡大や、海外での事業化も検討していく。そして、今後も医療機器開発を通じて、先天性心疾患患者の治療とQOL向上に貢献していく考えだ。

三井化学 大阪工場で高効率ガスタービン発電設備が稼働

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2021年1月28日

 三井化学は27日、大阪工場(大阪府高石市)内に高効率ガスタービン発電システムを設置し、昨年12月から営業運転を開始したと発表した。最大出力は約30MW。経済産業省の「平成30年度省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」に採択され、Daigasエナジーと共同で実施するもの。

ガスタービン写真 大阪工場に設置した、高効率ガスタービン発電設備
ガスタービン写真 大阪工場に設置した、高効率ガスタービン発電設備

 同システムの稼働により、三井化学大阪工場の自家発電比率が向上するとともに、ガスタービン発電設備から発生する高温排ガスをエチレンプラントのナフサ分解炉の燃焼用空気として利用することで、分解炉の使用燃料を削減。これにより、同工場から排出されるCO2が年間で約7万t削減できる(2016年度比)。

 三井化学は、2050年GHG(温室効果ガス)排出「実質ネットゼロ」を目指し、今後も積極的に取り組んでいく考えだ。

トムラとボレアリス 廃プラのMR実証プラントを稼働

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2021年1月27日

 トムラソーティングソリューションズとボレアリスはこのほど、ドイツで先進的なメカニカルリサイクル(MR)の実証プラントの稼働を開始したと発表した。同実証プラントは、生産するポリマーペレットが消費財メーカーや再生加工事業者が求める高い要求基準に適しているかを検証し、今年初旬には適格性評価・検証資料の公表を予定しており、高度なポリマーペレットの本格的な商業量産工場の建設につなげる。

 同プラントは、トムラ、ボレアリス、廃棄物リサイクル企業ジンマーマンの3社の共同事業。ボレアリスが採算性の責任を担うとともに、技術革新、リサイクル、コンパウンド技術の専門知識を提供。トムラは技術的ソリューションを提供し、豊富な専門知識、確立されたプロセスと市場での知見をもとに高度な収集・選別システムを通じて循環型経済の実現に貢献する。そして、プラスチックを含む複数の種類の廃棄物を選別してきた経験をもつジンマーマンは、工場運営と製品品質を担う。

 また、同プラントでは、高純度、低臭気、安定した製品、淡色分率が高いボレアリスの「Borcycle M」グレードのリサイクルポリマーを提供するため、自動車や消費財など様々な顧客がプラスチック用途で求める高い品質のソリューション技術を確保する。

AGC 化学品プラント運転一括管理システムを開発

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2021年1月27日

 AGCはこのほど、化学品プラントの運転管理、品質管理などを一括管理できる化学品プラント運転一括管理システム「CHOPIN(ショパン)」を開発した。今年から本格導入を開始し、2023年までに千葉工場、鹿島工場の全ての化学品プラントにシステムを展開し、運転操業ノウハウの完全デジタル化を目指す。

 化学品プラントは、プラントの制御システム、操業状況を記録管理するプラント情報管理システム、製品の品質を管理するシステムなど複数のシステムを組み合わせて運用している。さらにプラントのオペレーター同士は、手書きのノートで情報共有や運転指示などの申し送りを行っており、それらに必要な情報の伝達に多大な時間と手間を要することなどが大きな課題となっていた。

 こうした中、AGCはプラント運転に関わる全てのデータの一元管理を目的として開発した同システムは、これまで異なる複数のシステムで運用されていたプラント運転に関する全ての情報をはじめ、オペレーターの作業指示・作業ログや申し送り情報もデジタル化し、統合管理できる。2019年より千葉工場の高機能フッ素樹脂製造プラントで開始した試験運用では、1日当たり11時間以上の作業時間削減を実現した。

 また、システム導入により同プラントの安定稼働を実現した結果、年間1億円以上のコスト改善効果を上げている。今後は現場作業の点検データなどを運転管理システムへ逐次入力ができるよう、モバイル端末を使ったリアルタイムデータ活用を推進する予定だ。

 AGCグループは、デジタル技術を活用しビジネスプロセスの変革を行う〝スマートAG〟を推進。製造・研究開発・営業などあらゆる業務のビッグデータを活用し、業務のさらなる効率化や顧客への新たな付加価値の提供を目指していく。

東京大学など、高次トポロジカル絶縁体で次世代省エネに一歩

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2021年1月26日

 東京大学と東京工業大学の研究グループはこのほど、産業技術総合研究所(産総研)、東京大学大学院、大阪大学大学院らの研究グループと共同で世界初の高次トポロジカル絶縁体の実現を擬一次元積層物質の実験で明らかにしたと発表した。

 高次トポロジカル絶縁体は、近年理論的に存在が予想された新しい量子相だ。結晶内部は絶縁体だが表面の特定の稜線が金属化し、スピンの向きのそろった電子が一次元で安定して流れる(スピン流)。電子の「電荷」と「スピン」の性質のうち、「電荷」を利用するのがエレクトロニクスだが、スピントロニクスは「電荷」と「スピン」の両方を活用する次世代省エネ技術の1つで、高性能ハードディスクなどに応用されている。原子層物質と呼ばれる薄いシート状物質を「積み木」のように積み上げることで、新奇な電気・磁気的性質を生み出せる。

 トポロジカル絶縁体は結晶の表面全体が金属化するのに対し、高次トポロジカル絶縁体は試料の稜線だけが金属的であることが予想されていたが、三次元結晶では未確認だった。今回、トポロジカル原子層を自在に組み換えられる擬一次元ビスマスハライド(ヨウ素、臭素化物)に着目し、積層の取り方によって様々なトポロジカル量子相を実現できる物質設計指針を提案した。また、角度分解光電子分光法による電子状態の直接観測で、Bi4Br4(ビスマス臭化物)が世界初の高次トポロジカル絶縁体であることを実証した。

 Bi4Br4は奇数番目と偶数番目の層が交互に180度反転しながら積み上がり、結晶表面には無数の階段構造が形成し1つ1つに稜線ができる。結晶内電子が感じる対称性が通常と異なるため、結晶の稜線だけが金属となり高次トポロジカル絶縁体状態となることが分った。また、稜線に沿って流れる電流の総量は大きいため検知できた。

 今後、積層の取り方による物質設計指針により、従来のトポロジカル絶縁体とは異なる新奇な性質が見出だされることが期待される。また、接着テープなどで積層物質からトポロジカル性質の薄片を取り出せるため、省電力スピン流デバイスや量子計算デバイスへの応用が期待される。

 

BASF 大容量・短時間充電LⅠB負極用バインダー

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2021年1月26日

 BASFはこのほど、リチウムイオン電池(LIB)の大容量化と充電時間短縮を実現する負極用バインダーの新製品「Licity(リシティ)」シリーズを開発したと発表した。顧客の必要要件・用途に応じて黒鉛やシリコン系負極などに適したバインダーを選択できる。電極の膨張を抑制することで大容量化し、充放電サイクル数の増加、充電時間の短縮が可能。低温環境下での性能を高め、集電体との密着性に優れるとしている。幅広い活物質との高い適合性をもち、顧客ニーズに合わせたカスタマイズも行う。

 e-モビリティは気候とエネルギー問題に対する最も有望な解決策の1つだ。2019年の電気自動車(EV)の世界販売台数は約210万台で、中国はその過半数を占める。中国政府の公共利用向けグリーンカー政策で、自動車OEMとバッテリー企業のLIB技術の強化が進む。

 OEMは中国、日本、韓国市場での競争に向け、アジア、欧州、米国で新しい巨大工場に大規模投資を行っている。世界をリードする電池メーカーの多くはアジア太平洋地域に拠点をもつが、BASFは世界最先端の製造設備で、高い技術力とアプリケーションノウハウに基づく高品質な現地製品を提供する。また、世界的規模で生産・供給体制を強化し、顧客の製造拠点に近い場所で一貫して高品質製品を提供し、アジアから顧客の生産拠点の拡大を支援することもできる。

 一方、「リシティ」バインダーは水性カルボキシル化スチレン・ブタジエン共重合体で、VOC含有量は非常に少ない。バイオマスバランス・アプローチを適用するとBASFの製造プロセスで使われたバイオマスが「リシティ」に割り当てられ、カーボンフットプリントはさらに低減し、バイオマス由来の認定も可能となる。

 BASFは経済目標と環境的責任、社会的責任を一致させる取り組みを行っており、近いうちにこの市場での主要プレーヤーになることを目指している。