産総研と日立 新たな移動体データ記述形式、国際標準仕様に

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2020年6月30日

 産業技術総合研究所(産総研)と日立製作所はこのほど、人や自動車などの移動体の位置・時間情報を表す新たな移動体データ形式「MF‐JSON形式」を地理空間情報の国際標準化団体(OGC)に共同で提案し、国際標準仕様として採択されたと発表した。

 人や自動車など様々な移動体の動的な空間情報を一体的に記録することで、移動データの流通・利用の促進に貢献する。通信技術やGPSなどのセンサ技術の発展で、人やモノなどの移動体の時間によって変化する位置情報(移動データ)の収集は容易になった。

 移動データを流通し共有することは、自動運転や防災、公衆衛生対策などに重要であるが、移動データの標準的な交換形式が無くシステムごとにデータ形式が異なるため、システム間の円滑なデータ連携に問題があった。

 今回採択された「MF‐JSON形式」は、既存のOGCデータ交換形式の問題点を改善したもので、6月に公開された。XML形式よりデータ記述量が少なく、CSV形式より多様な移動体を記述可能。3次元形状の物体移動データを簡潔に記述でき、ウェブ環境で利用しやすくなった。

 GPSからの人流データ(点形状)、道路交通渋滞情報(線形式)、洪水浸水区域の拡大(面形状)、自動車の走行(立体形状)などの動的な地理空間情報に加えて、気温、カメラ画像、速度センサなどから得られる時系列データを、移動体の動的な属性情報として一体的に記述できる。

 このように多様な移動体情報をより高精度に共有・利用できるため、人々の移動状況や密接度などの時間的・空間的な分析に即したマイクロマーケティングやロボットを利用した災害時の効率的な避難誘導、細街路を活用する超小型車両交通システムなど、新たなサービスへの応用が期待される。

 今後は、自動運転や移動ロボット、ドローンなどの安全・安心な移動の支援に加え、工場・倉庫の作業員の作業改善、公共施設・駅構内の混雑緩和などの移動データの時空間パターン分析のサービスインターフェースに関して、国際標準化を図る考えだ。

BASF、新型コロナの影響を受ける子どもたちを支援

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2020年6月30日

 BASFジャパンはこのほど、新型コロナウイルス感染症対策支援として、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに200万円を寄付することを決定した。

 支援金は、「全国の放課後児童クラブ(学童保育)を対象とした活動金支援」と「経済的に困難な状況にあるひとり親家庭支援」に役立てられる。さらに、全社員を対象とした募金活動を開始する。石田博基社長は、「私たちの支援が子どもたちへの負担を軽減し、彼らの笑顔につながることを願っている」と述べている。

 BASFグループは「Helping Hands」キャンペーンと題し、総額約1億ユーロ規模の新型コロナウイルス感染症対策支援活動を世界中で行っている。本社のあるドイツへマスクを1億枚以上を提供したほか、特別措置としてドイツ、フランス、オランダ、スイス、スペイン、トルコ、米国で手指消毒液の生産体制を整え、地元の医療機関に無償で提供している。

 

日立化成 横浜サイトで再生医療等製品の製造業許可取得

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2020年6月30日

 日立化成はこのほど、再生医療等製品に特化した製法開発・受託製造施設「横浜サイト」(横浜市)が、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に基づく再生医療等製品の製造業許可を取得した。

日立化成 横浜サイト
日立化成 横浜サイト

 再生医療はけがや病気で損傷した組織・臓器および免疫の機能を回復させるため、体外培養した細胞などを体内に移植する治療法で、がん免疫療法や体性幹細胞、iPS細胞などを用いた治療法がある。近年、がん免疫療法や体性幹細胞を用いた治療法の臨床応用例が急増し、再生医療市場の急速な立ち上がりが期待されている。

 同社は、2017年に米国の再生医療等製品の受託製造大手PCT(現Hitachi Chemical Advanced Therapeutics Solutions)を完全子会社化。そこで得た製法開発と製造に関する技術と運営ノウハウを取り入れ、再生医療等製品の製法開発・受託製造サービスを提供する横浜サイトを新設した。

 また昨年、ドイツに製造拠点を持ち、欧州や米国の製薬企業向けに再生医療等製品の受託製造を行うアプセスバイオファーマを完全子会社化。これにより日立化成グループは、米国3カ所、日本と欧州に各1カ所、計5カ所の製造拠点を中心に、再生医療等製品の受託製造事業をグローバルに展開している。

 同社は再生医療等製品の製造業許可を得たことにより、今後、薬機法に基づく再生医療等製品の治験薬・医薬品製造を通して再生医療の発展に努めるとともに、将来の量産体制に向けた製造技術を確立し、患者のQOL向上に貢献していく考えだ。

 

昭和電工 アルミ缶のリサイクル、昨年度は443万缶回収

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2020年6月30日

 昭和電工は、同社グループや協力企業各社の従業員によるアルミ缶リサイクル活動を継続して実施しており、2019年度(2019年4月~2020年3月)は約443万缶、一缶15.3グラム換算で計約67.8tのアルミ缶を回収した。

2020年度アルミ缶リサイクル推進ポスター
2020年 アルミ缶リサイクル推進ポスター

 昭和電工グループのアルミ缶リサイクル活動は、子会社の昭和アルミニウム缶が1972年に開始し、2001年よりグループ全体に発展させた。従業員への広報・啓発活動のほか、回収量や参加率に応じ事業場や個人を表彰する社内表彰制度を設け、活動の活性化に努めている。昨年度の活動への参加人数は8057人、国内グループ従業員の活動への参加率は97.6%となった。回収されたアルミ缶は、同社グループが買い取り、昭和アルミニウムなどで飲料用アルミニウム缶の原料として使用される。

 アルミ缶リサイクルは資源を有効活用できるだけでなく、アルミ製造時の電力消費量を原料のボーキサイトから生産する場合に比べて約97%削減することが可能。また、この活動の収益金の一部は、地域の社会福祉協議会や福祉施設、障害者サークルなど様々な施設や団体へ寄付され、同社グループの社会貢献活動として定着している。

 同社グループは、事業活動を通じたSDGs課題解決への貢献を目指し、アルミ缶リサイクル活動のほか、使用済みプラスチックのアンモニア原料化や、鉄スクラップの再資源化に必須な黒鉛電極の製造など、資源循環型社会を支える事業を積極的に推進している。今後も製品・サービスの提供を通じ、豊かさと持続性が調和する社会の創造に貢献していく方針だ。

 

ENEOS IoTで灯油配送を最適化、パートナー契約

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2020年6月30日

 ENEOSは29日、ゼロスペックとIoT技術(スマートセンサーおよびモニタリングシステム)を活用した灯油配送最適化事業に関しパートナー契約を締結したと発表した。

 同事業は、ゼロスペックが開発したIoTスマートセンサーを顧客の灯油ホームタンクに設置し、タンク内の在庫情報を取得。在庫情報をモニタリングすることで、最適な配送タイミングを把握し、効率的な配送を可能とする。2018年度から北海道と東北エリアで実証実験を実施し、配送にかかる走行距離や時間の削減効果などの有用性を確認した。最適な配送の実現により、顧客にタイムリーに灯油を届けるとともに、灯油配送事業者が直面している人手不足や配送経費の削減といった課題の解決が期待される。

 今回のパートナーシップ契約締結による協業を機に、今年度下期より北海道と東北エリアのENEOS系列特約店へ展開し、将来的には、展開エリアの順次拡大やAI分析による最適配送計画の自動策定、さらには、その他の油種への転用や取得情報の需要予測などへの有効活用を目指す。

 両社は、デジタル技術を活用することで、灯油供給ネットワークの維持を図り、エネルギーの安定供給、地域社会の発展へ貢献していく。

BASF 生分解性コポリエステルの生産で中国企業と協業

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2020年6月29日

 BASFはこのほど、中国・レッド・アベニュー・ニュー・マテリアルズ・グループに、生分解性脂肪族―芳香族コポリエステル(PBAT)について、BASFの生産技術を用いて生産・販売するライセンスを供与した。

生分解性コポリエステル(PBAT)の中国生産でRed Avenue New Materialsと協力
生分解性コポリエステル(PBAT)

 レッド・アベニュー・ニュー・マテリアルズ・グループは年産6万tのPBAT工場を上海に建設。2022年に稼働する予定で、BASFの生分解性樹脂「ecoflex(エコフレックス)」向けなどポリマー市場に供給を開始する。バイオプラスチック(生分解性プラ+バイオマスプラ)の世界市場は、年率15%の成長が見込まれている。多くの国で新たな法律や規制が施行され、堆肥化可能な素材が包装材や農業用マルチフィルム、袋などに使用されることで、積極的な市場展開が続くと予測されている。

 BASFのグローバル・ビジネス・ユニット、スペシャルティ・ポリマーズ責任者のオリビエ・ウブリッヒ氏は、「当社の『エコフレックス』と革新的素材の生分解性コンパウンド樹脂『ecovio(エコバイオ)』は、この成長市場ですでに大きな役割を果たしている。PBATの増産により、当社の市場での立場がさらに強化される」と述べている。

 「エコバイオ」は「エコフレックス」をコンパウンド材料として配合した生分解性コンパウンド樹脂。一部が植物由来の生分解性樹脂であり、有機性廃棄物袋、ラップフィルム、青果用袋、農業用マルチフィルム、食品包装など、幅広い用途での使用が可能。食品廃棄物の回収だけでなく、農作物の生産性向上、包装・貯蔵時の優位性も認められている。食品廃棄物が減少し、栄養分が大量の堆肥として土壌に還元され、土壌中のプラ蓄積が回避されることにより、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現する。

ユニリーバ 気候・環境・資源への新たな取り組みを開始

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2020年6月29日

 ユニリーバはこのほど、地球環境をより健全なものとするための新しいコミットメントと取り組みを開始すると発表した。気候変動を食い止め、自然環境を保護・再生し、未来の世代へ資源を引き継ぐために、これまで以上に断固とした行動を起こすためのものだ。

 同社は、「2039年までにゼロエミッション(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現する」ことを目指す。また、若い農業従事者や小規模農家を強化し協調して森林・土壌・生物多様性を守り回復させるプログラムを推進するとともに、水問題のある地域ではコミュニティの水アクセスを改善するよう、政府やその他の機関と連携していく考えだ。

 同社は、新たに創設された「気候&自然基金」に総額10億ユーロ(約1200億円)を投資する予定。今後10年にわたり、地区の再生、森林の再生、炭素隔離、野生動物保護、水の保全などの行動に活用される。具体的には、「ベン&ジェリーズ」(アイスクリーム)による酪農場での温室効果ガス排出量の削減、「セブンス・ジェネレーション」(ホームケア)によるアメリカ先住民の再生可能エネルギー利用への取り組み、「クノール」(調味料)によるよりサステナブルな農業への支援など、既存のプログラムを基盤とし、さらに拡大していく方針だ。

 また、同社が販売する全ての製品へのカーボンフットプリント明示を目指し、温室効果ガス排出量削減を科学的かつ独自の目標に向けて取り組むサプライヤーとの提携に加え、森林破壊を一切行わないサプライチェーンの実現などを掲げている。

 アラン・ジョープ最高経営責任者は「新型コロナウイルスのパンデミックや、不平等が生む深刻な問題に取り組む間も、気候危機は世界の脅威であり続けている。気候変動、生物多様性の減少、水不足など、全ての問題は互いに関連しており、同時に対処しなければならない。企業としてブランドによる直接的行動を通じて、この危機に取り組む責任がある」と述べている。

環境省 レジ袋有料化キャンペーン、辞退率6割を目標に

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2020年6月29日

 環境省は7月1日から実施されるレジ袋有料化を前に、「みんなで減らそうレジ袋チャレンジ」キャンペーンを、25日に立ち上げた。

(左から)トラウデン直美さん、小泉進次郎環境大臣、西川きよし師匠、さかなクン
(左から)トラウデン直美さん、小泉進次郎環境大臣、西川きよし師匠、さかなクン

 同日に開催した発足式の中で、小泉進次郎環境大臣は「地球規模で様々な課題があるが、その1つがプラスチック問題だ。この課題に対し、レジ袋から様々な気づきを持ってもらいたい、そんな思いからキャンペーンを始めた」と説明。

小泉環境大臣が手にするのは、福島県・只見中学校の生徒が製作し、地域に広げている新聞紙製のエコバッグ(左)。青色のバッグは、熊本地震の際に使用されたブルーシート製
小泉環境大臣が手にするのは、福島県・只見中学校の生徒が製作し、地域に広げている新聞紙製のエコバッグ(左)。青色のバッグは、熊本地震の際に使用されたブルーシート製

 専用ウェブサイトやテレビCMなどを通じ、マイバッグの利用促進や、個人・事業者・団体の様々な環境保護への取り組みを紹介することにより、今年3月時点で3割程度のレジ袋辞退率を、年末には6割まで高めることを目標にしている。

 

西川きよし師匠のエコバッグは、座右の銘「小さなことからコツコツと」を染め抜いた日本手拭い製
西川きよし師匠のエコバッグは、座右の銘「小さなことからコツコツと」を染め抜いた日本手拭い製

 テレビCMに声と似顔絵キャラクターで出演しているのは、「環境省プラごみゼロアンバサダー」に任命された、タレントの西川きよし師匠、さかなクン、トラウデン直美さんの3氏。発足式では各氏が普段実際に使っているマイバッグを持ち寄り、レジ袋の辞退や環境保護へのエピソードを披露した。

 ちなみに、西川きよし師匠のマイバッグは、自身の座右の銘「小さなことからコツコツと」が染め抜かれたオリジナル手拭いでこしらえたもの。3氏はアンバサダーとして、今後もそれぞれの活動分野で「レジ袋ゼロ」「プラごみゼロ」を訴求していく。

さかなクンのエコバッグは、WWF(世界自然保護基金)ジャパンとのギョラボ(コラボ)で作成。パンダとハコフグのイラスト入り
さかなクンのエコバッグは、WWF(世界自然保護基金)ジャパンとのギョラボ(コラボ)で作成。パンダとハコフグのイラスト入り

 「ドラッグストアのレジ袋使用量は年間約33億枚」と、小泉環境大臣が示した枚数は、平積みにすると富士山18個分の高さになるという。目標達成には、個人のみならず、事業者や団体の取り組みもカギとなりそうだ。

トラウデン直美さんのエコバッグは、海洋ごみをリサイクルした、洋服も入る大きめサイズ
トラウデン直美さんのエコバッグは、海洋ごみをリサイクルした、洋服も入る大きめサイズ

 なお、専用ウェブサイト(http://plastics-smart.env.go.jp/rejibukuro-challenge/)では、消費者向けのチャレンジャーの募集を開始。事業者・団体向けのサポーターの募集もまもなく開始され、都道府県ごとの登録状況やユニークな取り組み事例を紹介していく。

 

帝人 炭素繊維ショートファイバー設備を40%増強

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2020年6月29日

 帝人は26日、同社グループで欧州の炭素繊維事業会社である独・テイジン・カーボン・ヨーロッパ(TCE)が、欧州市場の需要拡大に対応するため、炭素繊維「テナックス」ショートファイバーの生産能力を40%増強したと発表した。すでに稼働を開始している。

炭素繊維「テナックス」ショートファイバー
炭素繊維「テナックス」ショートファイバー

 欧州の電子機器、医療機器市場では、軽量化や耐衝撃性の向上を目的に炭素繊維を使用したコンパウンド製品へのニーズが高い。中でも新型コロナウイルス感染症拡大の影響からレントゲン機器や人工呼吸器などの用途で需要が高まっている。

 「テナックス」は、高強度、高剛性、高い熱変形性などの特長に加え、軽量化が可能な炭素繊維。高品質のコンパウンド製品が電子機器や医療機器などに使用されており、熱可塑性および熱硬化性樹脂を用いた幅広い製品ラインアップでショートファイバーを展開している。こうした中、TCEは欧州の顧客対応力を強化し、多様なニーズに幅広く対応していくため、ドイツでのショートファイバー生産を増強した。

 帝人グループは今後、炭素繊維製品の開発をさらに強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供することで、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していく。

東大と産総研 電子励起状態のAI予測で解析時間を短縮

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2020年6月26日

 東京大学生産技術研究所と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、励起状態にある電子構造を人工知能(AI)で高速かつ高精度に予測する新手法を開発した。この手法を電子励起分光スペクトルに適用することで、物質の構造解析や環境物質調査、医療診断に要する時間の大幅短縮が可能となる。

 半導体設計、電池開発、触媒解析の現場で、物質構造を調べる方法の1つに電子励起分光スペクトル測定がある。X線・電子線を照射して物質中の電子を励起し、その励起状態に応じて得られるスペクトルを解析することで物質の原子配列と電子構造を調べる方法だ。それにはコンピュータで電子の励起状態を再現し、スペクトルを理論計算する必要があり、膨大な時間を要する。また励起状態は複雑なため、物質間の励起状態の違いなど、基礎的な知見がなかった。

 研究グループは、酸化シリコン(SiO2)の「結晶」と「アモルファス(非晶質)」の励起状態と基底状態について、1200個近いスペクトルをデータ化。それを使って基底状態と励起状態の関係性をニューラルネットワークに学習させ、基底状態の情報をもとに励起状態の電子構造を高速・高精度に予測できるAIを構築した。

 その結果、スペクトルの理論計算を数百倍に高速化できた。さらに、SiO2で作成した予測モデルを酸化マグネシウムや酸化アルミニウム、酸化リチウムなどに適用した結果、結晶構造や構成元素が異なるにもかかわらず、それらのスペクトルを高精度に予測できた。このことは、SiO2とこれら酸化物の励起状態が類似していることを示唆している。

 一方、結晶SiO2で作成した予測モデルをアモルファスSiO2に適用すると予測精度が著しく低く、同じ組成物であっても原子配列によって励起状態が異なることが明らかになった。

 今回は内殻電子励起スペクトルに適用したが、赤外分光やラマン分光などの励起状態が関わるスペクトルにも展開することで、物質の構造解析や環境物質調査の時間を大幅に短縮でき、物質科学や環境問題の解決、医療技術の発展などへの貢献が期待される。