【国際化特集】コロナ禍がターニングポイントに

2021年3月29日

事業再編が加速、変化の時代にこそ商機を見出す

 わが国化学産業は、大きなターニングポイントを迎えている。昨年は、コロナ禍によって汎用品を中心に需要が落ち込む反面、半導体材料やライフサイエンスなどは安定した収益を確保しており、事業によって明暗がはっきり分かれる年となった。特に石油化学事業は、市況低迷や原料価格の下落といった変動の波を激しく受け事業環境が悪化。この状況を踏まえ、新たに構造改革を検討する企業も出始めており、その動向が注目されている。今後、成長が期待できる事業に経営資源を集中させるため、各企業ではポートフォリオの再編が一層加速していきそうだ。

 一方、今回のパンデミックは、各国のグリーン政策に勢いを与えた。EUの「欧州グリーン・ディール政策」に続き、わが国でも「グリーン成長戦略」が策定され、経済と環境の好循環を目指す方針が示されている。また、対立を深める米国と中国の間で、気候変動をめぐる「脱炭素」が新たな覇権争いの焦点になるとの見方も強まってきた。こうした脱炭素化の流れは、CO2排出量が多い製造業にとってリスクになりかねない。ただ、日本の化学企業は、サスティナビリティに貢献できる技術や製品を多く持っている。それらを活用して、この変化をビジネスチャンスに転換できるかが、グローバル市場で生き残りを図るカギとなるだろう。

 今回の「国際化特集」では、先行き不透明感が強まる中、世界のトレンドをいかに捉え、どう対応していくのか、業界を代表する首脳の方々に聞いた。

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◇インタビュー◇

経済産業省 製造産業局素材産業課企画調査官 小林麻子氏
▽グリーン社会への転換が国際的潮流に、イノベーションを期待

信越化学工業 代表取締役会長 金川千尋氏
▽塩ビは環境貢献とインフラ整備に不可欠、需要を捉えて増設

三菱ケミカルHD 代表執行役社長 越智 仁氏
▽発想力で新しい価値観を生み出す人材、変化にはDXで対応

旭化成 代表取締役社長 小堀秀毅氏
▽成長は海外に、グローバル・変革を見据えた取り組みに注力

昭和電工 代表取締役社長 森川宏平氏
▽世界で戦える会社へ進化、7月の実質統合からの1年が重要

 

【国際化特集】経済産業省製造産業局素材産業課企画調査官 小林麻子氏

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2021年3月29日

グリーン社会への転換が国際的潮流に、イノベーションを期待

2021年の世界経済の動向と化学産業の業況見通しについて

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、依然として厳しい状況にありますが、全体としては緩やかに回復していると捉えています。IMF(国際通貨基金)は1月、今年の世界経済成長率の見通しを5.2%から5.5%としました。3月のOECD(経済協力開発機構)の予測も世界成長率を5.6%に上方修正しています。アメリカや日本をはじめとした主要国の政策支援やワクチンが経済活動を活性化させる期待が高まっていますが、新たな感染の波や変異株ウイルスの影響による異例の不確実性のなか、引き続き世界経済の動向をしっかり注視していく必要があります。

 そのなかで、化学産業は、エチレン設備稼働率が

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【国際化特集】信越化学工業代表取締役会長 金川千尋氏

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2021年3月29日

塩ビは環境貢献とインフラ整備に不可欠、需要を捉えて増設

2021年の世界情勢と事業環境の見通しについて。

 金川会長画像世界各国は新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めつつ経済活動との両立を果たそうとしています。これは過去に例を見ない難しい状況です。そのような中で、当社の主力製品である塩ビは北米のみならず全世界で需要が伸びています。また半導体ウエハーも堅調です。当社はコロナ禍の中にあっても各製品の需要を取り込むことに注力しています。各国でワクチンの接種が進められていますが、人類の英知が必ずや新型コロナウイルス感染症を克服するものと確信しています。

米中関係が新たな局面を迎える中、どう対応していきますか。

 米中両国が相手国への関税の引き上げなど対立を激化させれば、当然世界全体に大きな影響を与えます。当社はカントリーリスクの低い米国で塩ビ事業を拡大してきました。半導体ウエハーでも米国に工場を有するなど、主要事業では複数の国に

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【国際化特集】三菱ケミカルホールディングス代表執行役社長 越智 仁氏

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2021年3月29日

発想力で新しい価値観を生み出す人材、変化にはDXで対応  

コロナ禍など未だ不透明な状況が続くが、化学産業の業況について。

 業界によってまちまちだが、化学業界で言えば、すでにコロナ前の状況にまで回復してきている。当社の収益率を見ても、昨年の4月を底に右肩上がりで伸びてきており、最近はさらにそれが立ち上がってきている状況だ。米中貿易摩擦以前、つまり2018年以前の状態に戻ってくるのは、おそらく2022年から2023年の始めごろだと見ている。

 その大きな理由の1つは、

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【国際化特集】旭化成代表取締役社長 小堀秀毅氏

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2021年3月29日

成長は海外に、グローバル・変革を見据えた取り組みに注力

2021年の世界情勢について。

  新型コロナウイルスの問題については、ワクチン接種が始まったことで明るい兆しは見えている。ただコロナ禍の収束には、治療法の確立とワクチンの普及が条件であり、今年はまだ人々の行動に制限がかかるだろう。また、コロナ禍によってオンラインの普及や活用が急速に進んでいる。Eコマースが拡大するなど新たな潮流が出てきており、産業構造が大きく変わる可能性もある。

 一方、米国はバイデン政権に代わり、

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【国際化特集】昭和電工代表取締役社長 森川宏平氏

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2021年3月29日

世界で戦える会社へ進化、7月の実質統合からの1年が重要

現在の事業環境をどう見ていますか。

  化学業界に関していえば、昨年のコロナ禍で落ち込んだ需要が、徐々に戻ってきていると認識している。エレクトロニクス分野では、リモートワークの拡大で5Gの導入が一気に加速し、半導体や関連製品は活況を呈している。仮にコロナが収束したとしても、このトレンドは続いていくだろう。

 これは当社にとってプラスに働いている面もある。その1つの例がハードディスク(HD)だ。データ生成量の増大に伴いデータセンターへの投資が拡大されたことに加え、これまでSSDへの切り替えが進み減少が続いていたモバイルPC向けも、新興国を中心に教育現場でのリモート授業で使用するためHDを搭載した安価なモバイルPCのニーズが高まり、減少スピードが鈍化した印象がある。

エレクトロニクス以外の分野はいかがですか。

 モビリティについては、自動車生産の回復に従い当社の製品も昨年秋から回復してきているが、先行き不透明感が漂っており、

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《新春インタビュー》出光興産代表取締役社長 木藤俊一氏

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2021年1月25日

昨年を振り返って。

 昨年は、統合会社として中期経営計画2年目という大事な年になったが、新型コロナに振り回された1年だった。エネルギー供給会社である当社の使命は、いかなる環境下においても、石油供給のサプライチェーンを死守することだ。コロナ対策をしっかり行ってきたことにより、原油調達から製油所、物流、サービスステーション(SS)に至るまで、当社グループ各社の中でのクラスター発生を防ぐことができた。

 特に、4年に1度となる北海道製油所のメジャーSDM(シャットダウンメンテナンス)では、期間を3カ月に延ばすなど対策を講じたことで、延べ人数約10万人の作業員が1人の感染者も出さずに無事に完遂した。これを機に、

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《新春インタビュー》日本ゼオン代表取締役社長 田中公章氏

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2021年1月19日

2020年を振り返って。

田中公章社長 (正方形)
田中公章社長

 昨年は、米中貿易摩擦などにより世界経済が低迷する中、新型コロナウイルスの感染拡大によって上期(4―9月期)の業績は減収減益となった。エラストマー事業では、当社事業と関連が深い自動車産業が停滞したため、合成ゴムを中心に出荷が大幅に前年同期を下回った。夏以降は徐々に需要が回復しているが、特殊ゴムは自動車部品の中間・流通在庫が多い影響で依然として足取りが重い。ただラテックスは、コロナ禍がプラスに働き、ゴム手袋の需要が堅調となっている。

 一方、高機能材料については、

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【カーボンリサイクル特集】

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2020年11月21日

化学産業、カーボンニュートラルへの対策が加速
CO2を有効利用、技術力でフロントランナーに
    

 気候変動による異常気象の顕在化、海洋プラスチックごみ問題に端を発した世界的な環境保全への意識の高まりなど、現在、人間社会と地球(資源・環境)との関わり方を改めて見直す局面にある。

 2015年に採択されたSDGsやパリ協定では、解決すべき社会課題や環境問題の長期的なビジョンが示された。わが国でも地球温暖化や廃プラスチックに対して意識が高まっており、サーキュラーエコノミー(循環型社会)の実現に向けた技術開発やソリューション提供が大きなテーマとなっている。

 世界的に環境貢献が問われる中、経済産業省が今年5月「循環経済ビジョン2020」を策定。さらに菅義偉首相は所信表明演説で、2050年にGHG排出を実質ゼロにすると表明した。化学業界でもCO2の原料化やケミカルリサイクル、またグリーン水素といった実証事業が加速しているが、今後はそれを社会実装するために、業界の垣根を越えた連携が重要となりそうだ。

 今回の異業種企画特集では「カーボンリサイクル」をテーマに、行政の方針や業界団体の取り組み、また企業各社のこれまでの成果と課題、事業化に向けた戦略などについて取材した。

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◇インタビュー◇

経済産業省製造産業局素材産業課長 吉村一元氏
 ▽非連続のイノベーションを創出、脱CO2社会を実現

プラスチック循環利用協会広報学習支援部長 冨田 斉氏
 ▽プラスチックリサイクルを支援、循環型社会の実現に貢献

三菱ケミカルサーキュラーエコノミー推進部長 金沢大輔氏
 ▽サステナビリティ事業をサポート、会社全体でCEを加速

旭化成研究・開発本部化学・プロセス研究所長 鈴木 賢氏
 ▽炭素・水素循環技術を開発、環境分野でトップランナーに

積水化学工業ESG経営推進部長 西山宏喜氏/担当部長 三浦仁美氏
 ▽新環境長期ビジョンを策定、環境をESG経営のエンジンに

ハイケム代表取締役社長 高 潮氏
 ▽C1ケミカルが基軸、炭素利用効率を上げ空気と海をきれいに

ちとせグループ最高経営責任者 藤田朋宏氏
 ▽光合成でCO2を固定、バイマス基点で目指す循環型社会

◇ケミカルリサイクル◇

積水化学工業広報部広報担当課長 中村慎一郎氏
 ▽BRエタノール技術を社会実装へ、資源循環をシステムで実現

昭和電工プラスチックケミカルリサイクル推進室長 栗山常吉氏
 ▽使用済プラスチックから水素、液化炭酸ガス、アンモニア製造

 

【カーボンリサイクル特集】経済産業省

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2020年11月21日

製造産業局素材産業課長 吉村一元氏

非連続のイノベーションを創出、脱CO2社会を実現   

素材産業課 吉村課長

 ━世界的に環境対策が求められています。

 コロナ禍にあっても、国内では環境対策の議論が進んでおり、各企業がそのベクトルに向かって動き出している。その背景として、日本の石炭火力発電に対し世界から厳しい目で見られていることや、国際的にESG(環境・社会・企業統治)投資の動きが加速していることが挙げられるだろう。

 こうした状況を踏まえると、日本としても強い技術力を生かして環境分野でフロントを走り続けていかなければならない。これは化学企業にとっても大きなテーマだが、カーボンニュートラルの実現のためには、早い段階での目標設定が必要となることに加え、クリアすべき高いハードルもある。各企業ではすでに具体的な対策を打ち始めているが、一企業の力で全てに対応することは難しく、あらゆる方面との協業や連携などを模索していかなければならない。

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