三井化学 EUVペリクルの商業生産開始、微細化に対応

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2021年5月27日

 三井化学26日は、EUV(極端紫外線)に対応した次世代の半導体フォトマスク防塵カバー「EUVペリクル」について、世界に先駆け商業生産を開始したと発表した。半導体のさらなる微細化や顧客の技術革新要請に対応することで、世界市場に向け生産を行っていく考えだ。生産量は公開していない。

「EUVペリクル」。岩国大竹工場で商業生産を開始した
「EUVペリクル」。岩国大竹工場で商業生産を開始した

 同社は2019年、半導体リソグラフィー分野で世界ナンバーワンのオランダASML社から、EUVペリクル事業のライセンス契約を受け、その設計と技術に基づき同製品の生産設備を岩国大竹工場(山口県和木町)に新設した。

 データ通信を超高速化する第5世代移動通信システム(5G)の導入により、スマートフォンの一層の高機能化と半導体の高性能化が求められる中、先端デバイスに使われる半導体では、回路線幅7㎚以下の超微細化が必要なことから、それに伴い超短波長であるEUV露光技術の採用が本格的に拡大している。

EUV露光機のイメージ図
EUV露光機のイメージ図

 三井化学は、ICT分野を成長市場としてフォーカスし強化策に注力、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージングに続く第4の成長領域の柱を目指し取り組みを加速させている。今後もICT分野関連製品群への積極投資を展開していくと見られる。

 三井化学は、露光工程の防塵カバー「ペリクル」を1984年に発売して以来、半導体の微細化に合わせたペリクルの改良と製品品質の向上に努めてきた。ペリクルで培った異物管理などの生産ノウハウがEUVペリクルの生産にも生かされており、引き続きEUV露光機の進化に合わせ、同製品の技術改良・革新をASML社と共に取り組んでいく。

三井化学 高ガス透過素材にシール性付与し市場開発へ

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2021年5月26日

 三井化学は25日、新素材フィルム「ヒートシーラブル高ガス透過フィルム」(開発品)の市場開発を開始したと発表した。同フィルムは、特定のガスを選択的に高く透過する性能に加え、他の樹脂製フィルムと比較して低温でヒートシール性を発現する特長も併せもつ。

開発品と各フィルムとのガス透過係数比較
開発品と各フィルムとのガス透過係数比較

 同社のデータによれば、ポリエチレン製のフィルムと比較して、ガス透過係数は二酸化炭素で約4倍、酸素で約5倍、ヒートシール性能は120℃で約2倍の強度を示している。これまでにも選択的に特定のガスを高く透過するフィルムはあったものの、ヒートシールが困難なことから用途が限られるという課題があった。「ヒートシーラブル高ガス透過フィルム」は、それらの課題を解決し、パッケージ加工が容易になったことで、用途拡大が期待されている。

ヒートシール性能の温度依存性比較

 三井化学では、液体や菌などは通さずに気体のみを透過する特性から、細胞培養キットの保護用途、医療用器具のパッケージ、特定ガスの分離膜といった産業分野などの用途を想定している。

三井化学 人事(2021年6月1日)

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2021年5月25日

[三井化学・人事](6月1日)▽新化学技術推進協会神田拓▽研究開発本部高分子材料研究所モディファイヤーGL平野英樹▽解兼モビリティ事業本部エラストマー事業部EPT‐GL、同事業本部機能性コンパウンド事業部ミラストマーGL水川修一▽同事業本部エラストマー事業部EPT‐GL康碣。

三井化学 丹青社と協業開始、感性価値高めフィルム開発

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2021年5月24日

 三井化学はこのほど、丹青社との協業により、フィルム越しに見える景色を自然な見え方ながら色鮮やかに見せるポリエステルベースのウインドウフィルム「ポジカフィルム」を開発したと発表した。両社は、より豊かな空間体験の提供を目的に協業を開始。三井化学の最先端テクノロジーと丹青社の空間づくりのノウハウを組み合わせることで、感性に着目した共同開発を推進している。

『ポジカフィルム』による視覚効果(イメージ写真)
「ポジカフィルム」による視覚効果(イメージ写真)

 第1弾は、三井化学がメガネレンズ材料分野で培った、より良い視界を追求する「くっきり色素」技術により同製品を開発した。同技術は、可視光の黄色領域を特定の割合で選択的にカットするため、彩度が向上し、黄ばみのない白さを引き立たせる。「ポジカフィルム」を窓に貼ると、青空や海、緑の木々や赤い花などの色を濃く鮮やかに感じたり、青空に浮かんだ雲の白さをより白く感じたりするほか、肌色を血色よく見せる効果などが現れる。

 今後は、リゾートホテルやブライダル施設の窓ガラス、博物館のショーケース、店舗・商業施設のショーウインドウ、オフィスの窓ガラスや照明などへの展開を見込む。三井化学・研究開発本部長の柴田真吾常務執行役員は、「当社グループには多くの素材や技術があるが、これからは機能的価値の追求だけではなく、それらがいかに人々にとっての良い生活やライフスタイルの提供につながるかを提案していくことが重要だ」と話す。

 今回の協業では、三井化学の特定波長カット技術を感性価値に高めた。これを皮切りに「研究開発からスピード感をもって事業開発に繋げていく事例を数多く輩出していきたい」(柴田常務)と協業に期待感を寄せた。

 また、丹青社・企画開発センター企画部の菅波紀宏部長は、三井化学の最先端の化学・素材の力と、丹青社の「こころを動かす空間」づくりの共創を強調する。両社の協業を通じ、利用者の五感に訴えかける新たな体験価値の創出を目指していく考えだ。

 なお、「ポジカフィルム」は、三井化学の100%子会社、三井化学ファインが今年9月からの販売を予定する。

 

三井化学 バイオナフサでCNとバイオプラ加速、日本初

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2021年5月21日

 三井化学は20日、2050年のカーボンニュートラル(CN)の実現に向け、フィンランドにある世界有数のバイオマス燃料製造会社であるネステ社(Neste)および豊田通商とバイオマスナフサの調達に関する売買契約を締結したと発表した。

バイオナフサは、ネステ社のシンガポール製油所(写真、同社ウェブサイトから)やロッテルダム製油所などで生産されている
バイオナフサは、ネステ社のシンガポール製油所(写真、同社ウェブサイトから)やロッテルダム製油所などで生産されている

 今年10月以降をめどに大阪工場(大阪府高石市)のエチレンプラント(クラッカー)に、日本で初めて原料としてバイオマスナフサの投入を予定。エチレン、プロピレン、C4留分、ベンゼンといったバイオマス基礎原料を生産する。同時に、マスバランス(物質収支)方式によるバイオマスナフサを原料とした、既存品と同等品質のフェノールなどのバイオマス化学品や、ポリオレフィンをはじめとしたバイオマスプラスチックの製造とマーケティングを開始する。調達量は、来年3月までの今年度中に1万tを計画。価格は石油由来ナフサの2~3倍程度になる見込みだ。

 ネステ社は、リニューアブル・ディーゼル(発展型再生可能ディーゼル)では世界トップのシェアを誇るバイオマス燃料のサプライヤー。同社のバイオマスナフサは、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されており、石油由来の原料を使用しない100%バイオマス由来のナフサとなる。今回、バイオマスナフサを使用することで、原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルでのCO2は、石油由来ナフサ使用時に比べて大幅に削減されることが期待される。

 一方、バイオマス認証については、三井化学と豊田通商は、バイオマス認証制度として欧州で広く採用されているISCC認証を取得する予定だ。同認証はEUのバイオマス燃料などの認証としてすでに広く認知されており、複雑な生産工程をもつサプライチェーンのバイオマス化を推進させるマスバランス方式の有効な認証制度。バイオマス原料の割合を認証済みの手法で最終製品に割り当てることで、顧客の意思により使用原料のバイオマス化を選択できる。

 三井化学は昨年、総合化学メーカーとしていち早く「2050年のCN」を宣言し、循環経済の実現に向け、化学品・プラスチックのリサイクルとバイオマス化の両輪を進めている。地球温暖化対策に貢献するバイオマス化は、CN実現に向けて重要な戦略課題と捉えており、素材・プロセスの開発とともに、ステークホルダーとの対話を通じてバイオマスの社会への実装を推進している。3社は今後連携を深めながら、日本での国産バイオマスプラの新市場創出を図っていく考えだ。

マスバランス方式によるバイオマス割り当てのイメージ
マスバランス方式によるバイオマス割り当てのイメージ

 

 

三井化学 銅合金フィルムがSIAA抗ウイルス材料認定

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2021年5月18日

 三井化学はこのほど、銅合金蒸着技術を活用した抗ウイルスフィルム「カッパーストッパー」(開発品)が、SIAA(抗菌製品技術協議会)認定試験機関の評価試験で、多様なウイルスに効果を発現することを確認し、併せて、SIAAの抗ウイルス材料認定を取得したと発表した。

「カッパーストッパー」フィルムの外観
「カッパーストッパー」フィルムの外観

 「カッパーストッパー」は、ポリプロピレンフィルムの片面に同社が独自開発した銅合金蒸着技術を施したコーティング材料。銅がもつ抗菌・抗ウイルス性を維持したまま、錆びやすく変色しやすい欠点を合金化することで解決したほか、フィルム化により、幅広い工業製品への応用を可能にした。

SIAAの抗ウイルス材料認定を取得
SIAAの抗ウイルス材料認定を取得

 三井化学は今回の評価試験の結果を受け、コロナ禍で拡大する抗ウイルスマーケットへの本格的な市場開発を開始。「カッパーストッパー」フィルムの用途拡大を推進することで、人々の生活の質(QOL)の向上に貢献していく考えだ。安定的に抗ウイルス性を必要とし、繰り返し使用する用途に適していることから、医療・介護・福祉・住宅・オフィス・学校・飲食店・工場などでの使用を想定している。

三井化学 市原工場で「ルーカント」新設備が営業運転

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2021年5月13日

 三井化学は12日、市原工場(千葉県市原市)内に炭化水素系合成油「ルーカント」の新プラント(年産2万t)を建設し、4月から営業運転を開始したと発表した。これにより、岩国大竹工場(山口県和木町)と市原工場の2拠点供給体制となり、世界の旺盛な需要に対応するとともに不測の事態の事業継続性を強化する。

市原工場で営業運転を開始した「ルーカント」 新プラント

 「ルーカント」は、同社が世界で初めて商品化した高性能炭化水素系合成油。粘度の温度依存性が小さく、剪断安定性・熱化学的安定性に優れているなどの特長をもつ。それらの特長から、極めて高品質が求められる自動車ドライブラインのギア油、工業用潤滑油やグリースなどの粘度調整剤として採用。主要な自動車メーカーや潤滑油メーカーに認証されており、低環境負荷ニーズの高まりの中、省燃費や長寿命に貢献するものとして世界的に需要の増大が見込まれている。

 三井化学は、潤滑油添加剤パッケージ最大手のルーブリゾールとの戦略提携を行っており、両社で潤滑油市場での「ルーカント」事業のさらなる拡大と成長を図る。また、三井化学独自の取り組みとして、エラストマー、エンプラ改質用途など、機能性液状ポリマーとしての積極的な市場・用途開発に取り組んでいく考えだ。

三井化学 EO・EO誘導品を値上げ、物流費など高騰で

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2021年5月10日

 三井化学は7日、エチレンオキサイド(EO)など3製品を今月15日納入分から値上げすると発表した。対象製品と改定幅は、EOが「17円/kg以上」、EO誘導品のエチレングリコール(EG)とエタノールアミン(EA)が「20円/kg以上」。いずれも2019年4月以来、2年ぶりの値上げとなる。

 対象製品については、物流業界全般と定修作業時の労働力不足、またそれらに起因する賃金上昇により、物流関連費用や設備修繕費などの高騰が続く。これらのコストアップは、従来の合理化といった自助努力のみでは吸収が困難であり、製品の安定生産・安定供給継続のためには、原料価格の変動分とは別に、価格改定せざるを得ないと判断した。

三井化学 共同開発の新規3Dインナーマスク販売開始

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2021年4月28日

 三井化学はこのほど、名古屋大学大学院工学研究科の堀克敏教授、同大学発ベンチャー・フレンドマイクローブ(フレンド社)の3者で新規3Dインナーマスク「タートル」を共同開発し、フレンド社が生産・販売を開始したと発表した。すでに東海地区に多数の店舗を展開する美容室グループの旗艦店では、美容師やスタッフへの採用も決定している。

インナーマスク『タートル』。中央部は交換できる不織布フィルター
インナーマスク「タートル」。中央部は交換できる不織布フィルター

 3者は昨年7月に、「タートル」の前身で、「マスク本体」と「不織布フィルター」からなる新規3Dマスク「θ(シータ)」を共同開発。「タートル」は、「シータ」を薄型にした進化形で、普段使いの布製やウレタン製のマスクと併せて使うインナータイプになる。

 使い捨てマスクのプラゴミ問題が顕在化する中、環境への配慮から、繰り返し使用する本体は生分解性のあるポリ乳酸(PLA)製とし、使い捨てフィルターの不織布についても従来品との比較で10分の1の削減が期待できる仕様とした。そのほかの主な特長として、本体が樹脂製のため洗浄など衛生管理が容易なこと、また3D設計により皮膚への接触が少ないことから、装着時の蒸れや化粧移りを抑え、口の周りの空間によりマスク会食時に使いやすいなどの利点が挙げられる。

インナーマスクとしての装着イメージ
インナーマスクとしての装着イメージ

 現在、国内のマスク需給バランスは改善し、マスクの2重使いやインナーマスクの装着も見られている。しかし、不織布製マスクに比べ、布マスクやウレタンマスク単体でのウイルス除去率は一般的には低いとされており、ウイルス感染予防の観点からその効果は限定的だ。

 今回、堀教授はマネキンを使用した独自の性能評価装置を作成、実験用ウイルスによる「タートル」の性能評価を実施した。ウレタンマスクの内側に同製品を装着することで、ウレタンマスク単体使用時のウイルス除去率が約24%だったのに対し、「タートル」との複合使用では90%近くの除去率を発揮。ウイルス除去効果が大幅に改善されることを確認した。

 3者は、今後も同製品の普及を通じ、ウイルス感染のリスクを下げ、広く人々の安全・健康に貢献していく考えだ。販売価格は30日分交換用不織布がセットで2750円(税込)。フレンド社のウェブサイト、アマゾンなどで販売を行っている。三井化学は、フィルター用の交換用不織布を提供する。