DIC MR高度化のパッケージ素材、NEDOに採択

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2020年11月18日

 DICはこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した2020年度「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発プロジェクト」の〝材料再生プロセス開発〟に採択され、8月より実証を開始したと発表した。

 同研究プロジェクトで担当する役割は、福岡大学工学部化学システム工学科の八尾滋教授をテーマリーダーに、6つの研究機関と、同社を含む12社が共同で廃プラスチックを新品プラスチックと同等の物性に再生し、再利用するマテリアルリサイクル(MR)の技術開発を行うもの。実施期間は、5年間(2020~24年度)を予定している。

 同研究プロジェクトでは、同社は〝材料再生プロセス開発〟へ参加し、インキや接着剤などのパッケージング素材がプラスチックのマテリアルリサイクル特性に及ぼす影響について基礎的な研究を行い、さらにこの研究で得た知見をもとに、環境負荷の少ないインキや接着剤などの製品開発を目指した研究を行っていく。

 DICグループは、世界的な社会課題である廃プラスチックや海洋プラスチック問題に対し、サステナビリティ戦略として同社が対応すべき領域を定め、取り組みを強化している。同研究プロジェクトに参画することで、プラスチックごみ問題の解決にあたると同時に、プラスチックの高度資源循環の社会実装に貢献していく。

NEDO 材料再生プロセス開発
NEDO 材料再生プロセス開発

NEDO 工場に超電導ケーブルを敷設、省エネ化を実証

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2020年11月16日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、昭和電線ケーブルシステム(CS)、BASFとともに、BASFジャパン戸塚工場(横浜市戸塚区)に全長約200mの三相同軸超電導ケーブルを敷設し、今月8日から工場の省エネルギー化を目指す実証試験を開始した。

 民間工場の実系統に三相同軸超電導ケーブルを導入して行う実証試験は世界初。また、屋外にあるケーブルと高低差がある環境での施設形態も世界初となる。

 実証試験は来年9月末まで行い、液体窒素でのケーブル冷却の検証のほか運用コストの算出や安全性の確認を実施する。実証試験にはCSが2017年にNEDO助成事業で開発した三相同軸型の超電導ケーブルシステムを使用。この超電導ケーブルを30MW以上の大規模電力を使うプラントのケーブルに採用すると、従来のケーブルに比べ送電時の電力損失を95%以上抑制できる。これにより、年間2000万円以上の電気料金の削減効果が見込める。

 3者は今回の実証試験を通じて、民間のプラントでの敷設工法、運用管理方法、省エネルギー効果などを検証する。そして、プラントインフラの更新時や再生可能エネルギー活用時の電力損失削減に向けた超電導ケーブルの早期の実用化を行い、超電導技術の社会普及につなげていく考えだ。

BASFジャパン(株) 戸塚工場における超電導ケーブル敷設ルート
BASFジャパン 戸塚工場における超電導ケーブル敷設ルート

NEDO 無電力熱エネ輸送のループヒートパイプを開発

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2020年11月4日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)と名古屋大学とともに、世界最大6.2kWの熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプを開発した。3者は、エネルギーの供給過程で排出される未利用熱の革新的活用技術に関する研究開発に取り組んでいる。

世界最大6.2kWの熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプ
世界最大6.2kWの熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプ

 近年、工場排熱や自動車エンジンからの排熱など、これまで未利用であった熱エネルギーを有効活用する技術が注目されている。このような熱は、排出されている場所が利用先から離れている場合が多く、有効利用のためには、高温の熱源から利用先まで熱を損失なく運ぶ熱輸送技術が極めて重要になる。

 こうした中、2009年に名古屋大学は、電力を使用することなく半永久的に大量の熱輸送を可能にするループヒートパイプ技術を開発。ループヒートパイプは、多孔体が液を吸い上げる毛管現象を駆動源としており、高温廃熱を動力源として駆動することができるため、電力不要の熱輸送技術として期待されており、近年、スマートフォンなどの電子機器への適用が広がっている。しかし、これまでは熱輸送量が数百W程度と少なく、自動車や工場の排熱利用に適用できるような大量の熱輸送を行うことができなかった。

 そこでNEDOは、TherMATと名古屋大学とともに、未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発事業の一環として、「ループ型ヒートパイプの研究開発」に取り組み、今回、大熱量ループヒートパイプを開発し、電力を使わずに6.2kWという世界最大の熱エネルギーを2.5m輸送することに成功した。

 今後、自動車のエンジンや工場からの排熱利用、電気自動車やデータセンターの機器類の熱マネジメント、大型発熱機器の冷却などへの適用を図り、抜本的な省エネルギー化を目指す。

NEDOと浪江町 水素活用の協定を締結、道の駅に供給

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2020年11月2日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と福島県の浪江町はこのほど、水素の普及拡大に向け連携・協力する基本協定を締結したと発表した。なお、同協定は2022年3月31日までとなっている。

NEDO石塚理事長と浪江町の吉田町長
NEDO石塚理事長と浪江町の吉田町長

 NEDOは、浪江町に建設した再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」を通じて、低コストでクリーンな水素製造技術の確立を目指している。

 一方、浪江町は「浪江町復興計画【第二次】」(2017年3月)に基づき、「エネルギーの地産地消の実現と新しい産業の創出」を目指すとともに、今年3月には「ゼロカーボンシティ」を宣言し「水素社会実現の先駆けとなるまちづくり」に向けた取り組みを進めている。こうした中、両者は、水素の普及拡大を視野に連携・協力する基本協定を締結した。

 同協定による初の取り組みとして、浪江町が「道の駅なみえ」に設置した純水素型燃料電池にFH2Rで製造した水素を供給し、今月から施設内の一部に電力供給と熱供給を行う予定。

 今後も、NEDOと浪江町はFH2Rで製造した水素の利活用や情報発信に取り組み、水素の普及拡大をけん引していく。

 

経産省 「ゼロエミ・チャレンジ」企業リストを公表

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2020年10月20日

 経済産業省はこのほど、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)サミット2020の中で、上場・非上場企業あわせて320社の「ゼロエミ・チャレンジ企業」を発表した。

 経産省が日本経済団体連合会や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と連携し、脱炭素化社会の実現に向けたイノベーションに挑戦する企業を「ゼロエミ・チャレンジ企業」としてリスト化し、投資家などに活用可能な情報を提供するプロジェクト「ゼロエミ・チャレンジ」の一環。投資家・金融機関・有識者などで構成する「環境イノベーション・ファイナンス研究会」で制度設計、リストアップの客観性・網羅性の基準を策定し、実際の活用に向け公表するもの。

 第1弾として公表した320社は、「革新的環境イノベーション戦略」に紐付く経産省の事業やNEDOが実施する28のプロジェクトを対象に、この趣旨に賛同する企業。そのうちNEDO関連では170社、8技術研究組合が含まれる。

 今後、水素やCCUS(CO2回収・有効利用・貯留)、再エネなど39の主要テーマごとにゼロエミ・チャレンジ企業、投資家、政策立案者などの対話の場を設け、投資家の技術や経営戦略としてのイノベーション動向に対する理解を深め、民間資金をイノベーションに呼び込むよう環境整備する。また他省庁と連携してリストを拡充し、ゼロエミ・チャレンジ企業を投資対象とした金融商品の組成などに活用できる情報をアップデートする。

 なおゼロエミ・チャレンジ企業だけが使用できる「ロゴマーク」を策定。投資家への訴求を図っていく考えだ。

経産省 ゼロエミ

NEDO バイオジェット燃料普及の研究開発6件を始動

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2020年10月19日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、バイオジェット燃料の普及に向けた市場形成や社会実装のためのサプライチェーン構築とカーボンリサイクルのための原料基盤技術を強化する研究開発に着手すると発表した。事業化スキームや経済性を検証し、バイオジェット燃料の市場形成に向けたサプライチェーン構築を促進する。

 航空業界にとってCO2排出量削減による地球温暖化抑止対策は喫緊の課題だ。バイオマス由来のバイオジェット燃料導入は実現可能性が高く、海外では廃食用油由来のバイオジェット燃料が実用・商用化され、国内でも今年中のバイオジェット燃料の国内定期便デモフライトを予定するなど、事業化の動きが加速している。

 こうした中、NEDOは2017年度から「バイオジェット燃料生産技術開発事業/一貫製造プロセスに関するパイロットスケール試験」を実施しており、2030年ごろの商用化を目標に一貫製造技術の確立を目指した研究開発に着手する。

 実証を通じたサプライチェーンモデルの構築では、製造技術ごとに「油脂原料からの水素化・脱酸素化処理」(ユーグレナ)と「短繊維パルプ由来エタノールの脱水重合」(Biomaterial in Tokyo、三友プラントサービス)の一貫製造技術の確立と、原料調達・製品供給などの事業スキームや経済性を検証する。

 微細藻類基盤技術開発では、特長の異なる大量培養方法「海洋ケイ藻のオープン/クローズ型ハイブリッド培養」(電源開発)、「熱帯気候・屋外環境下での発電所排気ガスを利用した大規模微細藻類培養」(ちとせ研究所)、「微細藻バイオマスのカスケード利用」(ユーグレナ、デンソー、伊藤忠商事、三菱ケミカル)の実証と生産コスト低減や副生物の有効利用にも取り組む。また微細藻類研究拠点の整備と商用化の課題解決・標準化を図る「微細藻類研究拠点および基盤技術の整備・開発」(日本微細藻類技術協会)も採択した。事業期間は2024年度までで、今年度予算は49.5億円。

 同事業を通じてバイオジェット燃料の普及に道筋をつけ、航空分野での温室効果ガスの排出量削減に貢献するとしている。

NEDOなど 大変形特性の分子構造を機械学習で特定

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2020年10月9日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)はこのほど、ソフトアクチュエーターなどに必須の低応力・大変形の材料開発を加速する手法を共同で開発した。

 柔軟な材料でできたソフトアクチュエーターは小型・軽量・静音・耐水で、動力源も熱・電気・光などと豊富。その上、筋肉のように曲線的で繊細に動き、より生活に近い場所での活躍が見込まれ、特にリハビリ・介護のための作業補助、パワーアシスト用ウエアラブルマシンや、医療手術支援のための遠隔操作マシンなどへの応用が期待される。しかし材料開発は技術者の「勘と経験」による試行錯誤のため、コストと時間が課題であった。

 NEDOの「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」で計算・プロセス・計測を統合して有機・高分子系機能性材料開発の高速化に取り組む中、ソフトアクチュエーター材料の有力候補である液晶エラストマーの分子構造と材料変形の関係を機械学習させ、目標特性を発現する分子構造の予測が可能となった。

 同プロジェクトの要素技術「液晶エラストマー粗視化分子動力学シミュレーター」は1次構造レベルから高分子構造を表現可能。液晶エラストマーは柔軟な分子鎖に剛直な分子単位を含む架橋高分子で、分子鎖中の粒子の数、架橋の長さと密度、強直分子の間隔と配向方向などの分子構造を表すパラメーターの組み合わせは数百以上あるが、大変形特性を決定するパラメーターを特定し、分子構造の有力候補を短時間で約10分の1に絞り込むことに成功。革新的ソフトアクチュエーター材料の開発期間を大幅に短縮できる。またエラストマーやゲルなどの大変形を特徴とする様々な材料開発への応用も期待できる。

 今後、実在の材料に対し、より高度な設計指針を出すためのデータベースの拡充と技術開発を行い、革新的ソフトアクチュエーター開発のための高速材料選定技術を構築するとともに、幅広い材料開発への適用を目指す考えだ。

 

NEDOと兼松 EV専用ナビアプリ、世界で初めて提供

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2020年10月8日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と兼松はこのほど、EV専用のスマートフォン向けナビゲーションアプリ「EV Co‐Driver」の本格提供を開始した。

EV専用ナビアプリ「EV Co-Driver」
EV専用ナビアプリ「EV Co-Driver」

 EVが世界的に普及する中、米カリフォルニア州ではZEV規制や、優遇措置が充実しており、米国内では自家用EVの販売台数が最も多い。一方、充電インフラは都市部を中心とした整備に留まるため、EVの利用は近距離の移動に限定されている。

 こうした中、NEDOと日産自動車、兼松の3者は2015年から同州で、急速充電網の整備とリアルタイム情報サービスの提供を通じて、EVの利用頻度向上と行動範囲拡大を目指す実証事業に取り組んでいる。ソフト面では2016年からEVドライバー向けに提供しているスマートフォン用リアルタイム情報アプリ「DRIVEtheARC」を導入し、今回NEODと兼松は、さらにEV専用のスマートフォン向けナビゲーションアプリの本格提供を開始した。

 同アプリでは、目的地とバッテリー残量を入力するだけで、運転ルート・時間だけでなく充電ステーションでの待ち時間・充電時間も踏まえた最短ルートを瞬時に表示。また、出発後も経路変更やステーションの混雑状況に応じて電欠を避けた最短ルートをリアルタイムで再検索し、ターンバイターン(逐次表示)でナビゲーションする機能も備えている。これらの機能により、EVドライバーの電欠に対する心理的不安を軽減する。

 このようなEVドライバーに特化した包括的な機能を備えるナビゲーションアプリは世界初であり、これによりEVの行動範囲拡大やさらなるEV普及の促進につなげていく。

 

NEDO 航空機の燃費改善に向け複合材6件の研究開発

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2020年10月7日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、航空機の燃費改善や日本の航空機産業の国際競争力強化を目指し、新たに6件の複合材料の研究開発事業に着手した。

 同事業では、複合材料などの関連技術開発を中心として、航空機に必要な信頼性・コストなどの課題を解決するための要素技術を開発する。これにより、航空機の燃費改善によるエネルギー消費量の削減と2040年に1500万tのCO2排出量の削減、航空機産業の国際競争力の強化を目指す。

 航空機産業では、CO2排出量の削減のため、航空機の軽量化やエンジンの燃焼効率向上による燃費の改善が期待されている。また、国際的な産業競争が激化しており、燃費改善用の部材や加工技術開発などが急がれている。

 近年、航空機の構造部材には、従来の金属部材に代わり軽量化を目的として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が積極的に導入されてきたが、今後航空機需要の70%を占めると予想される細胴機では金属材料が主流であり、細胴機へのCFRPの適用に向けて、よりコストが低く生産性の高い成形組立技術の開発が必要になる。

 また、航空機エンジンの燃焼効率向上に向けて、金属材料(ニッケル合金)より3分の1程度軽量で耐熱性に優れたセラミックス基複合材料(CMC)の活用が注目され、中でも、耐熱温度の高い炭化ケイ素(SiC)を使ったCMCの1400℃級航空機エンジン部材への早期実用化が期待されている。

 こうした背景から、NEDOは、航空機の燃費改善、環境適合性向上、整備性向上、安全性向上のため、航空機への適用を想定したCFRPやCMCといった複合材料について、新たに6件の研究開発事業に着手。同事業では、複合材料などの関連技術開発を中心として、航空機に必要な信頼性やコストなどの課題を解決するための要素技術を開発する。

 同事業では、プロジェクトリーダーに東北大学大学院航空宇宙工学専攻の岡部朋永教授を指名し、実施予定先と連携し、成果の最大化を図る。

航空機向け新たな複合材料開発
航空機向け新たな複合材料開発

 

 

NEDOなど 温泉水でも熱交換が可能な熱交換器を開発

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2020年10月6日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東北大学、馬渕工業所、小浜温泉エネルギーはこのほど、温泉スケールと呼ばれる固形物が析出しやすい温泉水でも安定した熱交換が可能な熱交換器を開発し、1カ月間の温泉熱回収の実証試験に成功した。

 今回開発した熱交換器は、熱交換器に付着した温泉スケールを自動的に取り除くことで、熱交換の効率を維持することが可能。これにより温泉水の熱交換器のメンテナンスコストの低減が見込める。また、温泉水以外にも、汚泥を含む工場温排水や藻類・貝類を含む海水・河川水など、様々な分野の熱交換に応用でき、未利用熱や再生可能エネルギーの利用促進が期待される。

 一般的に温泉水はカルシウムや硫黄などの溶解成分を含み、熱交換器の伝熱面上に温泉スケールが析出し、熱交換を阻害することがある。そのため、頻繁な清掃が必要で、メンテナンスコストが高いことが課題だった。

 こうした中、NEDOなど4者は「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」に基づき、伝熱面を回転させ、そこに羽根を押し当てることで伝熱面に析出した温泉スケールを剥ぎ取れるようにした熱交換器を開発。これにより、表面を常時温泉スケールが付着していない状態に保つことを可能にし、熱交換の効率を維持することができる。また、小浜温泉(長崎県雲仙市)で1カ月間の熱交換実験を行った結果、伝熱面からの温泉スケールの除去と熱交換効率の低下抑制に成功した。

 今後、スケールアップした熱交換器を開発し、長期間(3カ月を予定)の現地実証試験を行うことで、さらなる耐久性向上のための検証を行うほか、熱交換器の高性能化のための研究開発を行う。

実証試験の様子
実証試験の様子