日本触媒の4-12月期 減収減益で通期予想は据え置き

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2021年2月4日

 日本触媒は3日、2020年度第3四半期(4―12月期)の連結業績(IFRS)を発表した。売上収益は前年同期比14%減の1955億円、営業利益86%減の15億円、税引前利益74%減の36億円、純利益84%減の15億円となった。世界景気の減速、原料価格や製品海外市況の下落に伴う販売価格低下、販売数量減少で減収となった。また生産・販売数量の減少、在庫評価差額などの加工費の増加、スプレッドの縮小、連結子会社NSEの固定資産の減損、三洋化成工業との経営統合中止に伴う関連費用の計上などで減益となった。

 セグメント別に見ると、基礎化学品事業は減収減益。アクリル酸とエステルは需要低迷による製品海外市況の下落と原料価格下落による販売価格の低下、販売数量の減少で減収。酸化エチレンも同様に価格低下と数量減少で減収。エチレングリコールとセカンダリーアルコールエトキシレートは、販売数量が増加するも製品海外市況による販売価格低下で減収だった。

 機能性化学品事業は減収減益。高吸水性樹脂と特殊エステルは市況下落に伴う価格低下と数量減少で減収。コンクリート混和剤用ポリマーと洗剤用水溶性ポリマー、塗料用樹脂も需要低迷による数量減少と価格低下で減収。無水マレイン酸は数量増となったが価格低下で減収。電子情報材料とエチレンイミン誘導品は販売価格は上昇したが数量減少で減収。樹脂改質剤と粘着加工品は数量減少で減収。ヨウ素化合物は販売価格上昇と販売数量増加で増収となった。

 環境・触媒事業は減収減益。プロセス・排ガス処理・脱硝用触媒は販売数量減少で減収。燃料電池材料は販売価格低下で減収。リチウム電池材料は販売数量増加で増収となった。

 なお、通期業績予想は、前回発表値を据え置いた。前回精査中としていた経営統合関連費用を計上したが、アクリル酸とアクリル酸エステルの販売数量が想定を上回ることや在庫評価差額などの加工費の減少が見込まれるため、前回発表値並みの業績予想としている。

日本触媒 高速で高密度な蓄熱デバイス、共同開発を推進

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2021年1月13日

 日本触媒は12日、北海道大学、産業技術総合研究所と共に、NEDOエネルギー・環境新技術先導研究プログラムについて「合金系潜熱蓄熱マイクロカプセルを基盤とした高速かつ高密度な蓄熱技術の研究開発」事業を受託したと発表した。

合金系潜熱蓄熱マイクロプセル「h-MEPCM」
合金系潜熱蓄熱マイクロプセル「h-MEPCM」

 地球温暖化防止に向けて再生可能エネルギーの活用が進みつつあるが、条件によって変動するため、蓄エネルギー技術を併用する必要がある。蓄熱は蓄電池と比べ安価であるが、熱の発生する時間や場所が必ずしも需要と一致しないため、現状では大量の余剰熱が廃棄されている。蓄熱技術を用いることで、余剰熱を再利用し大幅な省エネにつなげることが可能となる。

 今回の事業では、同大・能村准教授の開発した合金系潜熱蓄熱マイクロカプセル(h-MEPCM)を同社の触媒製造技術により成型体に加工。同大ではこの成型体を使ったプロトタイプモジュールの諸物性を評価し、産総研ではデータを基にシミュレーションモデルの構築と応用モジュールの作成を行う。これにより、蓄熱成型体のデバイスとしての性能を取得し、応用展開を促進する計画だ。

 h-MEPCMは金属の核をセラミックス(アルミナ)の殻で封じた粒子径30㎛前後の粒子で、核の金属が600℃付近で溶解することにより潜熱として熱を蓄える。高い基礎的熱特性をもつが、実用に向けては粉体を適切な形に成型することが求められていた。

 同社は蓄積したノウハウを活用して、種々のサイズのペレット、リング、ハニカムなどの形状をもつh-MEPCM成型体を作成。これにより実用モデルでの諸物性の評価が可能となるため、蓄熱密度、伝熱特性などの基礎物性の取得に加え、出力特性、繰り返し耐久性など使用形態での熱特性の測定を行い、具体的性能を示す。さらに、社会実装を促進するため、想定する用途でのシミュレーションを行い、炭酸ガス抑制効果やコスト削減効果など、既存技術に対する優位性も示していく。

 同事業の展開先として、高温産業炉の省エネ技術リジェネバーナーでの利用や電炉排熱の再利用、コジェネレーションの熱電需給調整、EVの暖房用蓄熱などの省エネ用途に加え、再生エネとの組み合わせでは24時間安定発電も可能な集光型太陽熱発電(CSP)、石炭火力の燃焼器を蓄熱体で置き換えた蓄熱発電などの再生エネ安定利用などを想定している。

 

《化学企業トップ年頭所感》日本触媒 五嶋祐治朗社長

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2021年1月12日

 昨年は、コロナに明けてコロナに暮れた1年だった。業績の急激な悪化や三洋化成工業との経営統合の中止という、大変厳しい結果に深くお詫びする。

 今年は、中期経営計画期間が3月末で終了する。経営環境の劇的な悪化も加わり目標達成は困難となったが、得たものも多く、それらをどう生かすかが課題だ。SAPサバイバルプロジェクトによるコスト削減、新規事業分野への挑戦、仕事革進活動など、今後さらに応用・展開・進化させていく。

 コロナ禍影響が続くため、4月からの2021年度は単年度予算で進め、次期中長期経営計画は2022年度から開始する。そこでは、既存事業の強みを再強化して安定収益源とし、技術基盤を生かした新規事業の展開で事業領域を広げ、外部環境変化に対する耐性強化を主眼とした成長戦略を構築する。あわせて、規模や収益力の増強に加え、環境負荷低減などサステナブル社会への貢献にもつながる経営計画を目指す。

 まずは足元の業績の立て直しを確実に図る。即効性のある方策だけではなく、将来にもつながる踏み込んだ方策にも着手している。新規事業テーマも個々の事業性を再確認し、優先順位を見極めながら集中的に進めていく。これらの方策で、2年以内の業績回復を図る計画だ。私自身もこれまで以上に危機感をもち、時には大胆な決断をもってやり抜く覚悟で臨むので、皆さんの結束と参画を是非お願いする。いざという時の結束力と集中力、解決力は当社伝統の力だ。今回も必ず結果を出していこう。

 今年は創立80周年を迎え、発行準備中の社史には当社の歴史を再確認できる記録がたくさん載せてある。次の100周年に向けて拠り所とすべき手掛かりを学び、将来に向けて「TechnoAmenity」という当社企業理念を生かし、さらなる成長を果たすための計画に結び付けなければならない。足元の環境や業績は最低の状態で発射台は低く、伸びしろは大きい。このような前向きな気持ちで、この節目の年を元気よくスタートしよう。

 今年も安全・安定操業をしっかりと継続し、皆さんとともに健康で幸多い年となることを祈る。

 

日本触媒 化粧品素材分野で共同開発、住商コスメと協業

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2020年12月25日

 日本触媒と住商コスメティクスはこのほど、化粧品素材分野で次世代商品の共同開発と販売を目的とした覚書を締結し、協業を開始すると発表した。

 近年、グローバル化粧品市場において求められる機能は、美白やスキンケア、アンチエイジングなど、地域やトレンドによって多様化している。また、肌にやさしい素材を使用した化粧品を使おうという潮流「クリーン・ビューティー」が広がり、効能だけでなく素材への関心も高まっている。最近では、ウイルスやPM2.5、花粉などが地肌や髪に付着するのを防ぐ素材や抗菌性のある素材の需要が急増するなど、多様化する消費者のニーズに応える新素材の開発が求められている。

 こうした中、両者は、多様化する消費者のニーズに応えるため、化粧品素材の共同開発と販売に関する検討を開始した。バイオポリマーやアクリル系ポリマーなどの皮膜形成剤や増粘剤で検討を始めており、他のアイテムについても検討を進めていく。

 住商コスメティクスは、グローバルな顧客網を生かして市場や顧客のニーズをくみ上げ、日本触媒が、触媒技術をベースとした合成技術と重合技術をはじめとする独自技術を活用した研究・開発を行うことで、多様なニーズに応える新素材を開発し海外化粧品メーカーへの販売を推進していく考えだ。

 

日本触媒 「国連グローバル・コンパクト」に署名し登録

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2020年11月18日

 日本触媒はこのほど、国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、先月19日付で参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

国連グローバル・コンパクト
国連グローバル・コンパクト

 UNGCは、各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することで、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な取り組み。

 同社は、グループ企業理念「TechnoAmenity~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」を掲げ、事業を通じて人びとの豊かな生活を支えるとともに、自らも成長することを目指してきた。〝Amenity〟には、「自然や文化の豊かさと調和して、健康的で便利で楽しく魅力的でもあり、さらには将来に希望がもてる住みよい状態であること」といった意味を込めており、これは国連が提唱するSDGsにも通じるものと捉えている。

 同社は今回、UNGCに署名することにより、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野からなるUNGCの10原則を支持し、企業姿勢を明確に表明することで、グループ企業理念の実践を一層推し進め、持続可能な社会の実現に貢献するために取り組んでいく。

日本触媒 紙より薄いフィルム光源、パイロットで製造開始

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2020年11月12日

 日本触媒は11日、紙より薄いフィルム光源(「iOLED」フィルム光源)について、パイロットラインでの製造を開始すると発表した。顧客の様々なニーズに対応するために一定量のサンプルを供給することで早期の製品化を目指す。

200×200 mm サイズの基板で製造された「iOLED」
200×200 mm サイズの基板で製造された「iOLED」

 「iOLED」フィルム光源は、有機ELの長年の課題であった大気中の酸素や水分による素子の劣化を、日本触媒とNHKとの共同開発による材料や素子技術(iOLED技術)により克服していることに加え、厚さ0.1mm以下と紙より薄く、高い柔軟性も実現している。同社には、自動車業界、服飾業界、包装業界、美容・医療業界など多岐にわたる業界から問い合わせがあり、これまで少量のサンプル提供を行ってきた。

 今回パイロットラインを立ち上げたことで、より大規模で本格的なサンプル試験が可能になる。製造する基板の最大サイズは200mm×200mmだが、さらに一部製造ラインを自動化することで、生産能力を10倍以上に増強した。このパイロットラインを活用して、様々な開発ステージの顧客に対して希望の使用形態に合った色、形、特性を持ったサンプルを提供していく。

 同社は、この「iOLED」フィルム光源の新しい光をもって、明るい未来を創造していくと共に、今後も独創的で優れた技術を開発・企業化し、企業理念「TechnoAmenity~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します」の実現にまい進していく考えだ。

 なお、12月にオンラインで開催される新機能性材料展において「iOLED」フィルム光源を紹介。同社のブースでは、薄さを体感する動画などが視聴できる。

日本触媒 血管構造の細胞凝集塊作製、移植時に高い治療効果

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2020年11月10日

 日本触媒は9日、3次元細胞培養容器「ミコセル」を用いた細胞培養において、表面に血管末端構造を保有する血管構造を含む細胞凝集塊の形成に成功したと発表した。この血管構造を含む細胞凝集塊は、その形態から再生医療の移植などで、従来の細胞凝集塊より優れた治療効果を発揮することが期待される。

3 次元細胞培養容器「ミコセル」
3 次元細胞培養容器「ミコセル」

「ミコセル」とは、同社が独自技術により開発した3次元細胞培養容器。細胞基材への適度な接着性があるため、生体内での状態により近い細胞凝集塊を均一な粒子径で多量に作製できる。

 近年、細胞を3次元培養することで、様々な形態の細胞凝集塊を形成することが注目されている。その1つとして、細胞凝集塊内部への酸素や栄養の供給を目的に目的組織の細胞と血管内皮細胞を共培養して、血管構造が付与された細胞凝集塊形態の形成が提案されている。この形態は、血管構造が付与されたことで、移植時に患者由来の血管と接続し細胞凝集塊の生着率が上がり、治療効果の向上が期待される。しかし、従来の血管構造を有する細胞凝集塊は、細胞凝集塊内部で血管構造がランダムに形成される。そのため血管構造の方向性の制御や細胞凝集塊表面への血管構造の末端形成が困難であり、移植後の生着と治療効果に課題があった。

 同社は今回、「ミコセル」を用いて幹細胞と血管内皮細胞を共培養して作製した細胞凝集塊で、基材に接着した部分に血管内皮細胞も接着し、そこから細胞凝集塊の垂直方向に複数の血管構造がドーム状に形成されることを見出だした。この構造は従来の細胞凝集塊では見られず、基材接着面に血管内皮細胞が存在することで移植時に速やかに患者由来の血管と接続して高い治療効果が得られることが期待される。また、当該構造を有する細胞凝集塊は血管構造を持たない細胞凝集塊に比べて内部の低酸素状態が改善されることが分かった。

 「ミコセル」で作製した血管構造が付与された細胞凝集塊は、再生医療分野への応用の他、より生体内に近い凝集塊を実験室レベルで作製できるという観点から、臓器モデルの作製や創薬スクリーニングなどにおける動物実験代替の試験への応用が期待される。

 同社では、今回新たに作製した血管構造を含む細胞凝集塊をはじめ様々な分野に「ミコセル」を供給し、連携を進めることで、医療技術の発展に貢献することを目指す。

「ミコセル」上の血管含有細胞凝集塊の特徴
「ミコセル」上の血管含有細胞凝集塊の特徴

 

日本触媒の4-9月期 半期で赤字はリーマンショック以来

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2020年11月9日

 日本触媒は6日、2021年3月期第2四半期(4-9月期)の連結業績(IFRS)を発表した。売上収益は前年同期比19%減の1247億円、営業損失12億円(78億円減)、純損失12億円(69億円減)となった。半期で赤字となったのはリーマンショックが起こった2008年度下期以来となる。

 セグメント別に見ると、基礎化学品事業は、売上収益21%減の491億円、営業損失4億円(35億円減)。アクリル酸およびアクリル酸エステル、酸化エチレンは、需要低迷による海外市況の下落や原料価格下落に伴う販売価格の低下、また販売数量も減少した。

 機能性化学品事業は、売上収益16%減の715億円、営業損失10億円(33億円減)。高吸水性樹脂は、2、3月に発生した欧州での仮需の反動や、新興国では需要の減退も見られた。原料価格の低下によりスプレッドは改善したが、販売数量の減少や在庫評価損が増加した。欧州のNSC社の固定資産に対し減損損失を計上した。特殊エステルは、世界景気の減速により需要が低迷し販売数量が減少し、また海外市況の下落に伴い販売価格が低下した。電子情報材料、コンクリート混和剤用ポリマーなどは、需要低迷などで販売数量が減少した。

 環境・触媒事業は、売上収益24%減の41億円、営業損失1億円(6億円減)。プロセス触媒、排ガス処理触媒および脱硝触媒は、販売数量が減少した。燃料電池材料は販売価格が低下した。リチウム電池材料と湿式酸化触媒は、拡販に努め販売数量が増加した。

 なお、通期業績予想については10月8日に下方修正を発表し売上収益は前年度比14%減の2600億円、営業利益92%減の10億円を見込む。

 同日開催されたオンライン会見の中で、五嶋祐治朗社長は「下期は需要回復を想定しているが、 “日本触媒の4-9月期 半期で赤字はリーマンショック以来” の続きを読む