帝人 CFRTP製の荷台が「PACEアワード」を受賞

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2020年5月8日

 帝人は7日、同社グループで軽量複合材料部品の開発・生産・販売を手がける米国のコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP社)とともに、「PACE(Premier Automotive Suppliers, Contribution to Excellence)アワード」を受賞したと発表した。 

 帝人 2020-PACE-Winnerロゴ米国の自動車専門媒体「オートモーティブ・ニュース」が主催する「PACEアワード」は、自動車産業の革新的な技術に贈られる賞で、20年以上の歴史がある。

 今回受賞したのは、帝人の熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)製品である「Sereebo(セリーボ)」を利用し、帝人とCSP社が、米ゼネラルモーターズとの共同によりピックアップトラック向けに開発したピックアップボックス(荷台)の「カーボン・プロ」。

 世界初の量産自動車向けCFRTP部品「カーボン・プロ」は、「Sereebo」を用いることで、スチールを使用したピックアップボックスに比べて約40%の軽量化を実現するとともに、約10倍の耐衝撃性を持つほか、耐腐食性にも優れる。

 また、従来の素材では量産できなかった複雑なデザインの成形にも対応することができ、リサイクルも容易になった。今回の受賞は、こうした特性が高く評価された。なお、「カーボン・プロ」はこれまでにも数々の受賞実績があり、「PACEアワード」は4回目の受賞となった。

 帝人グループは、「自動車向け複合材料事業の展開」を「将来の収益源育成:ストラテジックフォーカス」分野に位置づけている。今後も、複合化を強みとした技術開発に一層注力し、車体の軽量性と強度に加え、デザイン・生産性・コスト効率など、様々な顧客ニーズに対応できるソリューションプロバイダーとして、グローバルに事業を展開していく考えだ。

2019 GMC Sierra Denali CarbonPro Edition
CFRTP製品「Sereebo(セリーボ)」を用い、帝人とCSP社が、GMとの共同によりピックアップトラック向けに開発したピックアップボックス(荷台)「カーボン・プロ」

JXTGホールディングス 量子コンピュータでの計算化学、共同研究促進

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2020年5月7日

 JXTGホールディングスはこのほど、量子コンピュータを用いた計算化学手法開発に関する共同研究契約をQunaSysと締結したと発表した。JXTGグループは、基盤事業の競争力強化や成長事業の収益力強化を目指し、昨年度よりQunaSysと量子コンピュータの活用可能性について検討を続けてきた。

 QunaSysは、JXTG開催の2018年度アクセラレータープログラムで採択されたスタートアップ企業。量子コンピュータ活用のための新しいアルゴリズム(計算手法)を数多く開発・提案してきた。量子コンピュータは従来のコンピュータとは概念の異なる計算方法を特徴とし、計算速度が圧倒的に速いとされる。

 計算化学は、コンピュータ上で実験結果を計算・予測する化学の1分野であるが、同社グループの持つ技術を組み合わせることで、研究開発の大幅な加速や新製品探索の可能性が確認できた。共同研究契約の締結により、今後は、人材の育成や具体的なトライアルの展開など、これまで以上に踏み込んだ連携を目指し、2022年度末を目途に、計算手法の開発・実証を行っていく。

 JXTGは量子コンピュータのアルゴリズム開発に主体的にかかわり、これを活用することで、「2040年JXTGグループ長期ビジョン」に掲げる基盤事業のキャッシュフローの最大化に向けて取り組む方針だ。

DIC 産官学連携の接着技術開発プロジェクトに参画

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2020年5月7日

 DICはこのほど、科学技術振興機構(JST)が推進する未来社会創造事業の研究プロジェクト「Society5.0の実現をもたらす革新的接着技術の開発」(CREAプロジェクト)に今年度より参画したと発表した。

 同プロジェクトは、電気自動車(EV)や自動走行車など次世代モビリティの軽量化や部材リサイクルに貢献する、「革新的な接着技術」の研究開発を目的としている。九州大学の田中敬二教授らの研究グループが提案し、2018年度に文部科学省から示された大規模プロジェクト型の技術テーマの1つ。高分子科学、先端計測および数理科学を専門とする研究者と連携企業の連合体が、接着現象に関連する界面の学理からものづくりまで一貫して研究開発を行うもので、2022年には実証実験フェーズへの移行を目指す。

 Society5.0は、仮想と現実の空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会のことで、第5期科学技術基本計画により、日本のあるべき未来社会の姿として提唱されたもの。その中に自動車産業の変革(CASE:つながる、自動運転、共有、電動)があり、「革新的な接着技術」は、それを実現するための重要な基盤技術の1つである。

 人命に関わるモビリティの接着技術には、強度や耐久性の保証と、それらに基づいた健全性や信頼性が求められる。共同研究では、モビリティの構造接着で重要な異種材料接合の高耐熱・高耐久機能と、廃棄の際に従来以上に容易に解体できる資源リサイクルに適した易解体性を兼備したエポキシ系接着樹脂の開発を目指す。

 DICグループは、新たなモビリティ社会に貢献するリサイクル性を兼備した複合材料の開発を進めることで、循環型社会の実現とSociety5.0の実現に貢献していく。

住友化学と東北大学 アルミ負極の劣化回避、新しい機構を解明

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2020年5月7日

 住友化学はこのほど、東北大学金属材料研究所の李弘毅特任助教、市坪哲教授をはじめとする研究グループと共同で、リチウムイオン二次電池(LIB)の負極の材料を高純度アルミニウム箔のみで、充放電時に起こる巨大体積ひずみを回避するという新しい機構を解明したと発表した。両者は2019年4月より連携して、LIB高容量化のための新しい負極の研究開発を行っている。

 LIBは、リチウムイオンが正極と負極間を移動することで充放電が行われ、負極は、充電時に正極から移動してきたリチウムイオンを取り込む役割を果たしている。現在の負極は炭素系材料が主流だが、電池のさらなる高容量化のために、炭素系材料に比べて3~10倍のエネルギーを蓄えられるシリコンのほか、スズやアルミニウムなどの金属系材料の使用が期待されている。しかし、それらの材料は、大きなエネルギーを蓄えられる反面、充放電時に2~4倍も膨縮するため内部の電極構造が崩れやすい点が、実用化の課題となっていた。

 今回、両者の研究グループは、高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することにより、課題であった充放電時の体積膨縮の制御が可能なことを見出だした。今回の解明は、東北大学金属材料研究所の物質・材料に関する科学の力と、住友化学が長年にわたり高純度アルミニウム事業で培ってきた技術の融合による成果と言える。一体型アルミニウム負極の実現により、従来のLIBに比べて、電池製造のプロセスを大幅に簡素化できることから、製造工程の環境負荷低減とともに、高容量化や軽量化、低価格化なども期待できる。また、次世代電池として注目される全固体電池にも、研究成果を適用できる可能性がある。

 両者は引き続き、一体型アルミニウム負極の実現に向けて研究開発に励み、持続可能な社会の構築に取り組んでいく考えだ。

住友化学と東北大学アルミ負荷の劣化回避

大王製紙 4月末から不織布マスクの国内生産を開始

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2020年5月7日

 大王製紙はこのほど、不織布マスクに関し、子会社であるエーリエルプロダクトに1ラインで月産1300万枚まで生産可能な最新鋭の生産設備を4月末に導入し、直ちに生産を開始すると発表した。

 同社は「エリエールブランド」の不織布マスクを海外協力工場で生産し販売しているが、日本国内でのマスク不足の状況を踏まえ安定的な供給に貢献する。生産量については同400万枚で運転を開始する予定で、感染対策のために大量のマスクを必要としている機関、施設などに優先して供給していく。

 その後、生産量を増やしながら一般生活者向けにも販売する見通しで、今回の新設ラインに加えて2台目の加工機を増設し、7月からは同2600万枚の生産能力を持った設備まで増強することを計画している。

 同社は、新型コロナウイルス感染症の急激な感染拡大により、少しでも要望に応えることができるよう安定供給に努めていく考えだ。

 

ダイセル 拠点地域の自治体に不織布マスク7万枚を寄付

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2020年5月7日

 ダイセルは28日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、拠点所在地に不織布マスク計7万枚を寄付したと発表した。

 内訳は、兵庫県姫路市(姫路製造所網干工場、広畑工場、イノベーション・パーク)に3万枚、同県たつの市(播磨工場)に2万枚、新潟県妙高市(新井工場)に2万枚となっている。マスクは各自治体を通じ、教育および医療関係などに携わる「エッセンシャルワーカー」に届けられる。

 同社は今後も、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と終息に向け、可能な限りの社会的貢献を行っていく考えだ。

旭化成 永原顧問が紫綬褒章に シクロヘキセンの技術開発 

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2020年5月7日

 旭化成は28日、「ナイロン原料用シクロヘキセン製造技術の開発」の業績が評価され、永原肇顧問が、令和2年春の「紫綬褒章」を受章することが決定したと発表した。紫綬褒章は「学術芸術上の発明改良創作に関し事績著明なる者」に対して授与される。

旭化成 永原肇顧問
永原顧問

 永原顧問が開発したナイロン原料用シクロヘキセンの製造方法は、従来法に対して、省資源、省エネルギー、廃棄物ゼロを実現し、より安全でCO2排出量約30%削減をもたらすプロセス。昨今、環境・エネルギーの視点から自動車軽量化ニーズなどによってナイロンの世界市場は拡大しているが、同製造プロセスは環境負荷軽減に大きく寄与し、今期の受賞はその業績が評価された。

 ナイロンの中間原料はシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの混合物。この中間原料の従来の製造方法であるシクロヘキサンの空気酸化法は、当時は、「原料のうち約20%が要処理廃棄物となる」「爆発に対する安全上の配慮が必要である」などの問題点があり、化学工業界の懸案の1つだった。

 永原顧問は、これらの問題を克服するため、シクロヘキサノールの前駆体となるシクロヘキセンを得るために、ベンゼンの部分水素化という熱力学的に極めて困難な反応に取り組んだ。亜鉛化合物を助触媒とする新規なルテニウム粒子触媒を見出だすとともに、気相―油相―水相―固体の4相からなる特殊な反応場を用い、触媒・原料・生成物などの溶解・拡散・抽出を制御する技術を確立することで、この反応を成功に導き、工業化までを実現した。

 旭化成は、今後も自動車軽量化ニーズなどによってナイロンの世界市場が拡大している状況下で、ナイロン樹脂事業と繊維事業の拡大に貢献していく考えだ。

 

ダウ 医療従事者の保護、軽量のフェイスシールドを開発

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2020年4月28日

 ダウはこのほど、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)と向き合う医療従事者が必要とする、個人防護具(PPE)の緊急ニーズに対処するため、簡素化されたフェイスシールドデザインを開発した。また、そのデザインをオープンソースファイルで共有しPPEの生産率向上を図っていく。さらに、米国ミシガン州の病院に寄付するため、10万個のフェイスシールドの生産に向け協力して取り組む方針だ。

 同社は、ポリエチレン樹脂(PE)の代表的メーカーだが、通常はプラスチックの最終製品を生産していない。しかし、パンデミック対策に向けた取り組みとして、テキサス州フリーポートのパック・スタジオ応用開発施設が備える試作・製作能力を生かし、フェイスシールドの樹脂フィルム技術を開発。また、他のバリューチェーンパートナーと協働し、シールドの装着感を向上させるフォームコンフォートストリップの製造業者の特定に取り組んでいる。

 このフェイスシールドのデザインには非常に柔軟性がある。シールドは入手しやすい各種ポリマーから生産でき、水流やレーザー、ダイカット技術といった種々のハイスループット技術を利用したカッティングが可能。また、シールドと前額部のクッションという二つだけの部品で構成されたシンプルかつ軽量なものであるため、複数部品の組み立てが排除され、配給をより迅速に展開できる。

 一方、同社はミシガン州の病院に寄付される10万個のフェイスシールドを生産する。同州を拠点とするtinkrLABは、レーザーカットと組み立てを担う主要開発パートナーの役割を果たしており、すでに生産の初期割当を完了。いくつもの試作品が実地試験され、医療従事者からのフィードバックが、最終デザインの開発で役立てられた。

 フェイスシールドの使用は一度限りということが多いものの、特定のフィルム組成を活用した場合、シールドは殺菌され再利用が可能となる。このフェイスシールドは、米国食品医薬品局(FDA)のガイダンスに記述された制限事項と、公衆衛生上の緊急事態期間中のフェイスシールドに関して発せられた緊急使用許可と一致した形で開発、配給されている。

 ダウは、マテリアルサイエンス分野での専門性と生産能力を活用し、殺菌剤や消毒剤、洗剤、医療関係者用の使い捨てPPE、病院ベッド用の形状記憶フォームといった、コロナパンデミックと戦うために最も重要となる衛生医療の製品と技術を開発している。

 

ダイセル 腸内細菌に注力、業務提携で研究開発を加速

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2020年4月28日

 ダイセルはこのほど、注力分野の1つであるヘルスケア領域に関してベンチャー企業のサイキンソー(東京都渋谷区)と、資本業務提携したと発表した。今回の業務提携により、機能性食品素材のマーケティングと研究開発を加速していく方針だ。

ダイセルは、嫌気性微生物を用いた発酵をコア技術とした腸内細菌代謝物(エクオール「フラボセル」など)を軸にヘルスケア事業を行っている。

一方、2014年に設立されたサイキンソーは、「腸内細菌叢で人々を健康に」のビジョンを掲げ、健康寿命の延伸への貢献を志向している。人の腸内細菌叢をDNA検査で明らかにし、AIで解析することで、お腹の不調や生活習慣病などの可能性や予防、生活改善に関する助言を行う腸内フローラ検査「Mykinso(マイキンソー)」を展開。現在、国内最大規模の約2万検体データを保有しており、蓄積したデータをAI解析することで様々な「未病」を検知し、予防・改善を促している。

こうした中、サイキンソーはサービス対象のさらなる拡大のため協業先を探していたが、ダイセルがこれに賛同し資本業務提携をする運びとなった。

 両社は今後、業界での標準化・規格化を目指し、腸内細菌叢の解析手法を進化させていく。また、ダイセルは協業により、マーケティング活動ではサイキンソーが持つクリニックなどの販路の活用や、製品群の腸活素材としてのブランド構築を目指す。研究開発の面では、ダイセルの技術(腸内細菌関与メカニズムの研究)と、サイキンソーの技術(腸内細菌と病気との相関解析)を融合させ、さらなる製品・サービスの開発を促進していく考えだ。