ブリヂストン 匠の技を伝えるDXシステムを開発

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2021年5月21日

 ブリヂストンはこのほど、ノビテック(東京都渋谷区)と共同で航空機用タイヤや建設・鉱山車両用タイヤの「モノづくり領域」で、匠の技を伝えるシステムを開発したと発表した。タイヤの成型作業に必要な暗黙知をデジタルで形式知化・定量化し、熟練技能員の匠の技を確実かつ効率的に伝承する。既に久留米工場(航空機用タイヤ生産)と北九州工場(建設・鉱山車両用タイヤ生産)に本格導入し、タイ工場(航空機用タイヤ生産)にも今年上期中に展開する予定だ。

 現場の匠達による膨大なデータや経験が支える「ゴムを極める(見る・解く・操る)」技術とデジタルを融合し、より大きなデータで、より早く、より容易に、より正確に「断トツ商品」「断トツソリューション」に繋げるために、市場・顧客情報をエンジニアリングチェーンに繋ぐ市場・顧客接点と、技術イノベーションを進める「素材開発~製品開発~モノづくり」全体で、DXに取り組んでいる。

 航空機用と建設・鉱山車両用のタイヤには過酷な使用環境に耐える高品質・高性能が求められ、メーカーの総合的で高度な技術力が反映される。構成部材が多く、成型工程の作業ステップ数は乗用車用タイヤの15倍以上で、高度な熟練スキルが必要。成型作業の不具合は製品不良に直結するため、技術の伝承がグローバル供給体制の構築の課題となる。

 今回開発した技能伝承システムは、作業の動きをモーションカメラや慣性・圧力センサーで計測し、新人と熟練技能員の差を作業ステップ毎に可視化・評価する。弱点を繰り返し訓練することで、効率的に技能を習得できる。熟練スキルを標準化することで、高品質な商品を安定供給できる。

 同社は独自のソリューション事業を進め、航空機ソリューションではタイヤ摩耗予測技術による航空機整備作業の効率化や生産・使用段階のCO2排出量削減に、鉱山ソリューションではタイヤの温度・空気圧データと車両の位置・速度データの統合・分析による車両の運搬効率や資源生産性の向上、鉱山オペレーションの最適化などに貢献している。

 今後もタイヤ・ゴムの知見と様々なパートナーの知見を融合し、技術を伝承しながらイノベーションを加速させ、社会価値・顧客価値を共創していく考えだ。

帝人 PPS使用のテープ状炭素繊維プリプレグを開発

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2021年5月21日

 帝人はこのほど、欧州で炭素繊維事業を展開するドイツのテイジン・カーボン・ヨーロッパ社が、一方向性の炭素繊維プリプレグ「テナックス TPUD」の新製品として、母材にポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を使用した、テープ状の炭素繊維プリプレグを開発したと発表した。

 今回の開発品は、既に市場展開しているポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂やポリアリールエーテルケトン(PAEK)樹脂を使用した製品と同様に、耐薬品性、耐熱性、リサイクル性、低吸水性、寸法安定性、高温下での耐クリープ性および短時間成形や室温での貯蔵、出荷を可能にするなどの特性を備えながら、これまでの製品よりも低い温度での成形が可能という特長がある。

 これによりPPS樹脂を使用した炭素繊維プリプレグは、高い費用対効果を発揮しながら、要求特性の厳しい航空機用途や自動車用途をはじめ、石油・ガス産業用途、スポーツ用途、医療用途、産業機械用途などに向けたソリューション展開が可能。さらに難燃性と低発煙性能にも優れることから、航空機や鉄道車両の内装用途にも使用することができる。また、ATLやAFPといった技術で自動積層し、オーバーモールド成形により複雑な形状を付与するなど、より高度な技術に対応し、生産効率の向上により製造工程のコスト効率向上にも大きく寄与する。

 帝人は、これまでPEEK樹脂やPAEK樹脂を母材としたテープ状の炭素繊維プリプレグを展開してきたが、母材にPPS樹脂を使用した「テナックス TPUD」をラインアップに加えることで、これまで以上に幅広い分野への展開が可能となった。

 今回の開発を契機として、高い性能と生産効率の両立という顧客ニーズへの対応力を強化するため、様々な「テナックス TPUD」製品を提供するとともに、持続可能な社会の実現に向けたソリューション提供を強化し、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」を目指していく考えだ。

三井化学 バイオナフサでCNとバイオプラ加速、日本初

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2021年5月21日

 三井化学は20日、2050年のカーボンニュートラル(CN)の実現に向け、フィンランドにある世界有数のバイオマス燃料製造会社であるネステ社(Neste)および豊田通商とバイオマスナフサの調達に関する売買契約を締結したと発表した。

バイオナフサは、ネステ社のシンガポール製油所(写真、同社ウェブサイトから)やロッテルダム製油所などで生産されている
バイオナフサは、ネステ社のシンガポール製油所(写真、同社ウェブサイトから)やロッテルダム製油所などで生産されている

 今年10月以降をめどに大阪工場(大阪府高石市)のエチレンプラント(クラッカー)に、日本で初めて原料としてバイオマスナフサの投入を予定。エチレン、プロピレン、C4留分、ベンゼンといったバイオマス基礎原料を生産する。同時に、マスバランス(物質収支)方式によるバイオマスナフサを原料とした、既存品と同等品質のフェノールなどのバイオマス化学品や、ポリオレフィンをはじめとしたバイオマスプラスチックの製造とマーケティングを開始する。調達量は、来年3月までの今年度中に1万tを計画。価格は石油由来ナフサの2~3倍程度になる見込みだ。

 ネステ社は、リニューアブル・ディーゼル(発展型再生可能ディーゼル)では世界トップのシェアを誇るバイオマス燃料のサプライヤー。同社のバイオマスナフサは、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されており、石油由来の原料を使用しない100%バイオマス由来のナフサとなる。今回、バイオマスナフサを使用することで、原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルでのCO2は、石油由来ナフサ使用時に比べて大幅に削減されることが期待される。

 一方、バイオマス認証については、三井化学と豊田通商は、バイオマス認証制度として欧州で広く採用されているISCC認証を取得する予定だ。同認証はEUのバイオマス燃料などの認証としてすでに広く認知されており、複雑な生産工程をもつサプライチェーンのバイオマス化を推進させるマスバランス方式の有効な認証制度。バイオマス原料の割合を認証済みの手法で最終製品に割り当てることで、顧客の意思により使用原料のバイオマス化を選択できる。

 三井化学は昨年、総合化学メーカーとしていち早く「2050年のCN」を宣言し、循環経済の実現に向け、化学品・プラスチックのリサイクルとバイオマス化の両輪を進めている。地球温暖化対策に貢献するバイオマス化は、CN実現に向けて重要な戦略課題と捉えており、素材・プロセスの開発とともに、ステークホルダーとの対話を通じてバイオマスの社会への実装を推進している。3社は今後連携を深めながら、日本での国産バイオマスプラの新市場創出を図っていく考えだ。

マスバランス方式によるバイオマス割り当てのイメージ
マスバランス方式によるバイオマス割り当てのイメージ

 

 

東レ 高熱伝導CFRP創出、金属と同等の放熱性

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2021年5月21日

ヒートマネジメント設計が可能、適用拡大を図る

 東レは19日、炭素繊維複合材料(CFRP)の放熱性を金属同等まで高める高熱伝導化技術を創出したと発表した。同技術をCFRPに用いた場合、熱源からCFRP内部の熱伝導経路を通って効果的に放熱することができ、モビリティ用途におけるバッテリーの劣化抑制、電子機器用途のパフォーマンス向上などに貢献できる。同社はすでに同技術の提案を開始。顧客ニーズに合わせてカスタマイズを行っており、数年内に製品化を目指していく考えだ。

高熱伝導化技術を適用したCFRP構造
高熱伝導化技術を適用したCFRP構造

 CFRPは軽量で高強度、高剛性の特長をもち、航空機、自動車、インフラ部材、スポーツ用品、電子機器などに広く使用されている。自動運転や電動化など、CASEに代表される次世代モビリティ用途では、充電時の発熱によるバッテリーの劣化を防ぐため、構造材料であるCFRPの放熱性向上が求められている。CFRPの熱伝導性はアルミ合金などの金属に比べ劣っているため、金属よりも熱伝導性に優れたグラファイトシート(GS)を表面や内部に配置することで放熱性を改善するアプローチが取られている。しかし、

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JNC 津留発電所が営業運転を開始、改修工事が完成

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2021年5月20日

 JNCはこのほど、熊本県上益城郡山都町に所有する水力発電所(津留発電所)の改修工事を完成させ、営業運転を開始したと発表した。

水力発電設備
水力発電設備

 同社グループは、環境・エネルギー分野を重要な事業ドメインと位置づけている。国内に13カ所の水力発電所(最大出力合計9万8000kW、3カ所の太陽光発電所(同5100kW)を保有し、再生可能エネルギーによる発電事業に取り組んでいる。今回、2013年より進めている水力発電所の大規模改修工事において、津留発電所が営業運転を開始した。一連の大規模改修工事では、10カ所目の営業運転開始となる。水車・発電機を高効率の機器へ更新し、認可取水量を変えずに出力を400kW(約4%)増強した。

 同社の水力発電所は全て「流れ込み式」を採用。河川水からごみを取り除いた後に、水路を通して水槽へ導き、水圧鉄管を落下させることで水車を回して発電する仕組み。大規模なダムを必要としないため環境負荷が低く、CO2排出量が少ない、貴重な純国産のエネルギーと言える。

 同社は、これまで培ってきた発電技術を生かし、周辺環境に配慮しながら、将来にわたり安定したエネルギーの供給で持続可能な社会に貢献していく。

 

生命科学インスティテュート 脳梗塞に有効な再生医療

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2021年5月20日

 三菱ケミカルホールディングスグループの生命科学インスティテュート(東京都千代田区)はこのほど、脳梗塞患者対象のMuse細胞製品「CL2020」の臨床試験結果の概要について記者会見を行った。

 急性期治療後も身体機能障害が残る脳梗塞発症後14~28日以内の患者を対象に、「CL2020」を静脈内に点滴単回投与した際の安全性と有効性に関するプラセボ対照二重盲検比較試験を、2018年から東北大学脳神経外科で実施した。

 機能障害に対しては、

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ENEOS バッテリー循環社会の実現に向け協業開始

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2021年5月20日

 ENEOSホールディングスは19日、MIRAI-LABO(東京都八王子市)と連携し、バッテリー循環社会実現に向けた協業を開始すると発表した。両社は、バッテリーのユース(リースやシェアなど)、リユース、リサイクルが循環する仕組み「BaaS(Battery as a Service)プラットフォーム」を構築し、これまで一次利用にとどまっていたバッテリーの3段階での利用を検討していく。

両社が目指す「BaaSプラットフォーム」構想のイメージ
両社が目指す「BaaSプラットフォーム」構想のイメージ

 一次利用では、シェアサイクル・小型EVシェアをはじめとした電動モビリティサービスに利用する。二次利用では、使用後の中古バッテリーを集積し劣化評価を実施後、残存性能に応じた組み合わせにより定置型バッテリーシステムとして再利用し、ENEOSのサービスステーション(SS)や電動モビリティステーション、商業施設や住宅などの様々な場所への設置と利用を検討する。

 三次利用では、二次利用によりさらに容量が低下したバッテリーを自律型街路灯など低容量でも活用可能な用途で再利用していく。さらに、三次利用を経て、寿命を迎えた中古バッテリーは、リサイクルにより資源化し新品バッテリーの材料として再利用。将来的には、この一連の循環サイクルをクラウドシステムにより適正に一元管理することで、バッテリー利用の最適化と最大化を図る。

「BaaSプラットフォーム」構想により提供されるサービスイメージ
「BaaSプラットフォーム」構想により提供されるサービスイメージ

 また、定置型バッテリーシステム(二次利用)をVPP(仮想発電所)に活用することも今後検討していく。同プラットフォーム実現に向け、現在実証を行っているモビリティサービスに加え、電動バイクの活用も含めたバッテリーサービスの実証を、2022年度をめどに段階的に展開する予定だ。

 ENEOSグループは、分散型電源の活用を中心とした次世代エネルギー供給・地域サービスのネットワーク構築を目指している。その一環として、オープンイノベーションによる革新的事業の創出に向けて、シェアサイクル・小型EVシェアをはじめとした電動モビリティサービスの展開を見据えた実証を行っている。

 一方、MIRAI-LABOは同社がもつMBMS(複合バッテリー制御システム技術)を駆使し、環境に配慮したサスティナブルな自律型MaaS社会の構築を促進してきた。今回の協業では両社のノウハウや知見を生かし、使用済みバッテリーを評価・再活用することで、循環型社会の実現に貢献する新しい効率的なエネルギー供給の仕組みを構築していく。

 

JFEエンジニアリング ボイラ発電向けDX関連サービス提供開始

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2021年5月19日

 JFEエンジニアリングはこのほど、バイオマス発電所などのボイラ発電プラント用に開発したビッグデータ活用技術パッケージ「RODAS」の提供を開始したと発表した。AIやクラウドを駆使した総合的なDX(デジタルトランスフォーメーション)関連サービスの提供は、プラント業界において世界的な先駆けとなる。

 「RODAS」は、社内向けに開発した、ビッグデータ収集・可視化・分析・機械学習を一気通貫で行うプラットフォーム「Pla’cello」の機能を活用し、プラント運転に関する膨大な時系列データを扱う事業者向けにカスタマイズしパッケージ化したもの。

 同社横浜本社内のグローバルリモートセンターに接続している顧客のプラント運転データを、目的に応じてデータ選定・最適なグラフ描画など、編集までの一連の操作を直感的に行うことができ、ITや統計学の専門知識をもたなくても容易に使用できる。また、プラント技術者によるデータ解析作業時間が、最大90%削減できた。

 「RODAS」は、ビッグデータをAIで活用する異常予兆検知機能や最適制御技術にも対応。プラントのトラブル防止と効率運用により、ベテラン技術者が不足する中でも安定操業を維持し、収益向上にも役立つ。今後も「Pla’cello」をベースに、より高度なプラント操業技術を追求し、プラント業界のDX促進と再生可能エネルギー利用の拡大に貢献していく考えだ。

タカラバイオ 迅速・簡便な新型コロナ株変異検出用試薬を販売

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2021年5月19日

 タカラバイオはこのほど、新型コロナウイルス変異株の変異検出用リアルタイムPCR試薬(研究用試薬)の販売を開始した。検体からウイルスRNAを精製する工程が不要で、迅速・簡便に1時間以内で検出が可能だ。

 新型コロナウイルスの変異株による感染が増加しているが、スパイクタンパク質のN501YとE484Kの2カ所の変異を検出する迅速・簡便なリアルタイムPCR試薬。コアキット(PCR酵素ミックスと前処理試薬のセット)と、N501YとE484Kの変異をそれぞれ特異的に検出できるプライマー/プローブから成り、これらを組み合わせて変異検出に使用できる。

 コアキットには現在販売中の研究用試薬「SARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kit」と同じダイレクトPCR技術が使われており、一般的な検査キットのようにRNAを精製する必要がない。唾液などの検体に前処理試薬を添加して加熱するだけでPCRを開始でき、検査時間は1時間以内で、大幅に時間短縮できる。また、同社のqPCR装置や市販のqPCR装置への適合性も確認している。なお、製品化は群馬パース大学大学院木村博一教授の監修によるもの。

 同社はすでに、新型コロナウイルス変異株解析のための次世代シーケンサーによるゲノム配列解析サービスを行っているが、特定の変異株の検出を簡便に行う方法を提供することで、PCR技術、遺伝子工学技術を通して新型コロナウイルス感染症対策に貢献していく考えだ。

 

日本触媒 有機ELの省電力化などに貢献、電子注入材を開発

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2021年5月19日

 日本触媒はこのほど、NHKと共同で有機ELの低消費電力化・長寿命化・低コスト化に寄与できる新しい電子注入材料を開発したと発表した。これまで有機ELでは、電極金属から有機材料への電子の供給をスムーズに行うことを目的にアルカリ金属化合物を用いてきたが、これらは有機材料との反応性が高いため有機EL素子の劣化の要因とされてきた。

 これらの課題に対し両社は、電極金属と有機材料との間に大きな分極を生じさせることで、有機ELの劣化要因となるアルカリ金属化合物を用いることなく効率的に電子を注入できる技術開発を推進。今回、この分極型電子注入技術の開発で得られた知見を活用して、より効率的に電子注入を行える電子注入材料を開発した。

 この新しい材料は、フッ化リチウムやリチウム―キノリノール錯体のようなアルカリ金属からなる一般的な電子注入材料に対して同等以上の特性を示し、有機ELの低消費電力化とそれによる長寿命化への寄与が期待される。さらに同開発品を用いることで、これまで困難とされていた陰極から発光層への直接電子注入を容易にできることも見出だした。

 一般に有機ELでは、陰極から供給された電子を発光層に届けるために電子輸送材料が必要とされてきたが、これが不要になることで有機EL構造の簡素化が可能となり、有機ELを構成する材料の削減や成膜プロセス短縮による低コスト化が期待できる。

通常の有機ELの構成
開発品を用いた有機EL構成例