デンカ 「IPXシリーズ」を本格販売、成長戦略の一環で

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2020年1月22日

 デンカはABS耐熱付与材「デンカIP」の新グレード「デンカIPXシリーズ」の本格販売を開始した。経営計画「Denka Value‐Up」の成長戦略である「事業ポートフォリオの変革/基盤事業のスペシャリティー化」の一環。

 「IPXシリーズ」は「デンカIP」の特性である高い耐熱性と低VOC(揮発性有機化合物)に加え、耐薬品性・塗装性の改善など、各性能を向上させた。同社が長年にわたって高分子樹脂設計で培ってきた、スチレン系の精密・重合技術をより深化させることで実現した。

 近年、自動車業界では安全基準の厳格化やハイブリッド・EV化により、さまざまな部品の複雑化や軽量化が進んでいる。それに伴い、各種部品の原料である樹脂には、耐熱性・耐薬品性・塗装性をはじめとする、多機能化・高機能化のニーズが高まっている。

 「IPXシリーズ」は、そうした自動車内外装材用途を中心とした、高度なニーズに幅広く対応できる。すでに千葉工場(千葉県市原市)で「IPXシリーズ」の量産体制を構築しており、2022年には年間4千tの販売を計画している。

 「デンカIP」は独自の重合技術により開発された、スチレン系合成樹脂。ABS・ASA樹脂の耐熱付与材、PA/ABSの相溶化剤として、自動車内外装や電子レンジ・エアコンなどのホームアプライアンスに幅広く使われている。同社は今後も独自の技術を生かし、顧客ニーズに応じた高付加価値製品の開発に取り組んでいく。

DICグループ 放電破壊を防止するフォトマスクを開発

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2020年1月21日

 DICはこのほど、100%子会社のトピックと、静電気による放電破壊を防止するフォトマスク「ESD障害対策クロムフォトマスク」の共同開発に成功したと発表した。トピックは同製品を3月から国内と東南アジア地域の電子部品・半導体市場に投入し、同年の売上高2億円を目指す。

ESD障害対策クロムフォトマスク
ESD障害対策クロムフォトマスク

 フォトマスクは、スマートフォンやタブレットなどの電子デバイスに用いる電子回路基板を製造する際に、電子回路基材に回路を描写する工程で利用される原版。

 フォトマスクの遮光層には、導電性遮光膜(金属クロム)を使用したフォトマスクがあるが、使用中に発生する静電気でパターン間に電位差が生じ、放電して破壊される「ESD障害」を引き起こす可能性がある。

 このESD障害は、露光工程はもとより、工程内でのハンドリング時や搬送時にも発生することが知られている。特に露光方式が、密着露光時やプロキシミティ露光時に、高い電圧が発生する場合が多く、これまでこのESD障害が歩留まり低下の大きな原因となっていた。

ESD障害(イメージ)
ESD障害(イメージ)

 今回開発した「ESD障害対策クロムフォトマスク」は、高精細で高精度のハイスペックなクロムマスクに特殊コーティングを施すことで、電子デバイスメーカーの製造工程での歩留まり向上とESD障害の防止の両立を実現。さらに、クリーンルーム内の異物付着防止や、付着した異物の容易な除去などの効果も期待できる。

 今後、次世代通信規格「5G」の商用サービスが本格的に開始することで、すでに世界的に普及し始めている5G対応の電子デバイスやIoTデバイスの需要が急激に高まることも予測される。

 DICグループは、〝ユニークで社会から信頼されるグローバル企業〟を目指し、社会要請に対応した製品を提供することで顧客の生産性向上に寄与するとともに、デジタル分野の社会変革にも対応した高機能な製品を迅速に社会へ提供していく考えだ。

BASF 新フォームグレード展開、VOC排出を抑制

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2020年1月20日

吸音・断熱フォーム「バソテクトUF+」
新グレードの吸音・断熱フォーム「バソテクトUF+」

 BASFはメラミン樹脂発泡体「バソテクト」の製品ラインアップを拡充している。

 グローバルに展開している新グレード「バソテクトUF+」は、従来の「バソテクトUF」に比べ、揮発性有機化合物(VOC)の排出量がさらに改善されたことで、新たな用途への可能性が見込まれている。

 非常に軽量で柔軟性を備えたフォームであることから、鉄道車両の断熱だけでなく、建物の空調機器にも最適で、設備の騒音も効果的に低減する。従来品と同様の特性を保持しており、高弾性・低熱伝導率で、密度はわずか7kg/㎥と非常に低く、加工中に鉱物繊維が飛散することはない。

 高い柔軟性により、細い隙間だけでなく、天井や壁といった湾曲面にもフィットする。米国の「ASTM C1410」規格を含む、最高の防火安全要件も満たしている。BASFの発泡体は寸法維持性があり、非常に低密度で、難燃性に優れているため、列車や地下鉄、路面電車の吸音と絶縁にも適している。

 新グレードは輸送分野で起こりうる最高レベルの防火規格(EN45545 HL3)に準拠しており、様々な鉄道・鉄道車両カテゴリーで使用可能だ。

 「バソテクト」はメラミン樹脂を原材料とするオープンセルフォームで、独自の様々な特性がある。耐火性の素材であることから、優れた防火性能を備えており、難燃剤を添加する必要がない。最大240℃の環境で使用でき、広範囲の温度域で安定した特性を保持する。

 また、オープンセルの気泡構造により、軽量で吸音性と断熱性に優れているほか、低温柔軟性も実現。自動車・航空宇宙・建築からコンシューマー製品まで、多くの産業で使われている。

NEDO・信州大 腰サポートウエアを開発、PVCで軽量化実現

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2020年1月20日

 NEDOはこのほど、信州大学とポリ塩化ビニール(PVC)ゲルアクチュエーターを搭載した、腰サポートウエアを開発したと発表した。重量が2kg程度と軽量で、低消費電力なのが特徴。また、PVCゲルアクチュエーター自体が弾力的に変形しやすいため、装着時の拘束感が少なく、装着者へのストレスが少ないサポートウエアとなっている。

 国内外で深刻な高齢化が指摘されている中、介護や物流現場などで動作支援に貢献できるウエアラブルロボットを、社会や個人に広く普及させることが急務となっている。従来の電磁モーターを搭載したサポートウエアは、重く硬く、駆動音が大きく、拘束感が強いことなどが課題となっている。

 そこで、NEDOと信州大は「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」事業で、駆動源にPVCゲルアクチュエーターを採用し、持ち上げ動作を補助する腰サポートウエアを開発した。

 積層したPVCゲルアクチュエーターを直径約6cm、長さ約45cmの筐体に格納し、本体に取り付けた上肢・下肢ハーネスを、肩・大腿部にそれぞれ装着して使う。アクチュエーターの駆動に伴い、アクチュエーター下部に接続されている下肢ハーネスを引き上げることで、上肢と下肢間に引張力が発生し、能動的に腰の負担を軽減することができる。

 加えて、低消費電力・柔軟・軽量・静音など、人との親和性が高いウエアラブルロボットの実現を可能にした。今後、さらなる軽量化や高出力化、安全性の確保のための研究開発を行い、2021年までに製品化を目指す。

クラレノリタケ 歯科レジン材にマルチレイヤーを追加

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2020年1月20日

 クラレノリタケデンタルは17日、保険適用の歯科切削加工用レジン材料「カタナ アベンシア ブロック(ユニバーサル用)」に、滑らかなグラデーションを持つML(マルチレイヤー)を追加し、今月21日に新発売すると発表した。

 歯科治療のデジタル化に伴い、関連機器を導入する歯科医院や技工所が増加し、治療件数も年々増加。同社は、多種多様なニーズに応えるため、各種CAD/CAM材料や装置類のラインアップ強化を進めている。

 今回発売を開始する「カタナ アベンシア ブロック(ユニバーサル用) ML(マルチレイヤー)」は、超微粒子フィラーを高密度に配合したことで、強度と滑沢耐久性の両立を実現した保険適用のCAD/CAM冠用レジンブロック。

 同社独自の製造技術により、各層の色調ギャップが少ない滑らかなグラデーションを実現しており、金属のクラウン(補てつ物)ではかなわなかった、天然歯に近い色調のある小臼歯クラウンをシンプルな作業で製作することができる。

 また、CAD/CAM装置による加工後の表面性状が滑らかで、技工所での操作と歯科医院での咬合調整後の研磨性にも優れている。

デンカ 新たな高耐熱アクリル系特殊エラストマーを開発

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2020年1月16日

 デンカは15日、経営計画「Denka Value‐Up」(2018~2022年度)の成長戦略である「事業ポートフォリオの変革/スペシャリティー事業の成長加速」の一環として、アクリル系をベースに高耐熱性を実現した特殊エラストマーを新たに開発したと発表した。

 近年、世界的な環境規制の高まりを受けて自動車市場では電動化の流れとともに、ディーゼル車からターボ機能を搭載したガソリン車へ注目が集まっている。ガソリン車ではさらなる環境負荷低減に向けてエンジンのダウンサイジング化が進み、高出力を可能にする耐熱性に優れたターボホース用のゴムが求められている。

 こうした環境対応による高耐熱ゴムのニーズを受け、今回新たに開発した特殊エラストマーは、同社がアクリル系特殊ゴム「デンカER」で培った高分子ポリマー設計技術、精密重合・配合技術を応用・深化させることにより、耐油性などの従来の優れた性能を保持しつつ、アクリル系エラストマーとしてこれまで困難であった約190℃の温度領域下での高耐熱性を実現した。

 デンカは、今後も独自の技術を生かした製品開発に取り組み、新たな価値を創造することで持続可能な社会の実現に貢献していく。

クラレ ジルコニア修復関連新製品、歯科技工所向け発売

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2020年1月7日

 クラレノリタケデンタルは6日、より効率的に高精度、高審美なジルコニア修復物の製作を可能にするミリングマシン、スキャナー、歯科用陶材、ジルコニア材料を、今月21日に歯科技工所向けに新発売すると発表した(スキャナーは昨年12月に発売)。

 近年、クラウンなどを使った補てつ治療では、CAD/CAM装置の普及により脱金属化が拡大する中、より天然歯に近い審美性や強度を持つセラミック修復に対するニーズが高まっている。同社は、ジルコニア材料の開発、関連機器やソフトウェアの拡充を進めることで、高品質なセラミック修復物の製作を行う歯科技工所のニーズに応える。

 今回発表したのは、「歯科用ミリングマシン MD‐500」「カタナデンタルスキャナー E4」「セラビアンZR 新シェード」「ノリタケカタナジルコニア」の4製品。なお、発売に先立ち、パシフィコ横浜で開催される「第48回横浜デンタルショー」(12~13日)で商品展示、デモンストレーションを行う予定。

帝人フロンティア ファーストキャビンと機能性寝具を共同開発

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2019年12月26日

 帝人フロンティアはこのほど、ファーストキャビン(東京都千代田区)と、寝具から発生するホコリを低減させることで睡眠の質を改善する機能性寝具を共同開発した。

 ファーストキャビンは飛行機のファーストクラスをイメージした、キャビンスタイルホテルを全国で展開しており、来年3月から「ファーストキャビン御堂筋難波」の全室に採用する予定だ。

 機能性寝具の中綿には、ポリエステル長繊維を使用しており、細かい粉塵が発生しにくくなっている。また、側地には高密度で緻密な構造のポリエステル織物を使用しており、布団内部のホコリを外部に放出しにくく、ダニや花粉などの侵入も防ぐ。これらのことから、一般的な布団に比べ、使用時に寝具から発生するホコリの量を約80%低減でき、睡眠時の中途覚醒が減少することにより、睡眠時間の延長など睡眠の質向上が期待できる。

 開発したのは掛け布団と敷き布団、枕、これらの専用シーツ、カバーで、専用のシーツやカバーは、リネンサプライヤーである光新星(大阪府大東市)の協力を得て検証・改良を行い、高温で洗浄・乾燥される工業洗濯に対応可能となっている。

 また、寝心地に関するモニター調査を実施して改良を重ねたことなどにより、一般的なシーツと同様の肌触りや風合いも実現した。高反発で回復力が高いポリエステル長繊維の中綿を使用するため、適度なクッション性を保つことができる。また、掛け布団はドレープ性が高く、身体に沿うため、温かい空気が身体と布団の隙間から逃げにくいなど、快適な寝心地を提供する。

 この機能性寝具については今後、ファーストキャビンの他施設での採用を順次拡大していく。両社は、客室の睡眠環境の改善を目的に、引き続き製品やウェアラブル端末を使用するサービスなどの共同開発を進める。

カネカ・大成建設 外壁・窓で発電する外装システムを共同開発

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2019年12月25日

 カネカはこのほど、大成建設と共同で、建物の外壁や窓と一体化させた太陽電池モジュールで発電する外装システム「T‐Green Multi Solar」を開発した。同システムは、高い発電効率に加え、採光・眺望・遮熱・断熱の各機能と意匠性を備えるとともに、災害時には独立した非常用電源としても機能する。導入イメージ(中・小規模ビルの外装)

 近年の環境意識の高まりを受け、SDGs(持続可能な開発目標)などへの取り組みの一環として、再生可能エネルギー導入による環境負荷低減を進める企業が増加。また、近年多発している自然災害とそれにより引き起こされる長時間停電への対策として、BCP(事業継続計画)やLCP(災害時の居住継続機能)の観点からも、自立電源を確保するニーズが高まっている。

 しかし、建物の屋上などは設置スペースが限られているため、太陽光発電設備の導入拡大が困難となっていた。こうした中、大成建設は技術センター内のZEB実証棟を拠点に、外壁など外装を利用した太陽電池ユニットを開発・適用し、発電性能の検証・改善などに取り組んできたが、発電効率の向上と意匠性の両立が課題となっていた。

 そこで、両社は、大成建設の建材一体型太陽電池の設計施工ノウハウと、世界最高効率の発電モジュール製造技術を持ち、住宅分野で高性能な瓦一体型太陽電池の導入実績を持つカネカの太陽電池モジュールを組み合わせることで、外壁・窓で発電する多機能で意匠性を備えた外装システムを開発した。

 今後、両社は、都市型ZEBを実現する創エネルギー技術として、環境経営に積極的に取り組む企業、BCPを強化する企業、災害時の活動拠点となる公共施設、LCPを強化したい集合住宅などに対し、同システムを積極的に提案していく考えだ。

千葉工大など 海底資源の正確な面積算出方法を確立

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2019年12月24日

 千葉工業大学次世代海洋資源研究センターと産業技術総合研究所、東京大学、海洋研究開発機構、神戸大学はこのほど、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)で、マンガンノジュールが密に分布する領域(マンガンノジュール密集域)を地図上に示し、その面積を正確に算出する方法を世界で初めて確立した。

 計5回の研究航海で調査した、南鳥島EEZ内約15万5500㎢の範囲の中の40%にも及ぶ広大な海底が、マンガンノジュール密集域であることを突き止めた。その面積は四国と九州を足し合わせた面積に匹敵する。密集域は南鳥島EEZ内の様々な海域に及んでいるため、南鳥島EEZの残りの未調査海域を考慮すれば、さらに面積は広がると予想される。

 南鳥島EEZにはマンガンノジュールのほか、レアアース汚泥やマンガンクラストといった海底資源が、豊富に存在することが近年明らかにされている。その中で、南鳥島EEZに分布するマンガンノジュールは、コバルトを多く含むという特徴がある。コバルトはエコカーやスマートフォンのリチウムイオン電池に必須の元素で、集積回路の多層配線技術の銅やタングステンに代わる金属となりうる重要なレアメタルであるが、価格変動が激しく、供給リスクがあることが問題となっている。

 今回の手法では、マンガンノジュール密集域に、実際にどの程度の量のレアメタル(特にコバルト)が含まれているかを直接知ることはできない。しかし、今後マンガンノジュールの化学分析を精密に行ってレアメタル含有量を明らかにし、今回開発した面積算出法と組み合わせることで、南鳥島EEZ内に存在するレアメタルの総量を精度よく算出することができるようになり、有望海域の効率的な絞り込みに繋がると期待される。