水素利用推進に取り組む民間企業10社(出光興産、岩谷産業、JXTGエネルギー、住友商事、中部電力、東邦ガス、トヨタ自動車、日本エア・リキード、三井住友銀行、三菱ケミカル)はこのほど、中部圏での水素の需要拡大と安定的な利用のためのサプライチェーンの構築を目指し、水素の大規模利用の可能性を検討する「中部圏水素利用協議会」を発足した。産業界全体で横断的に検討を進める日本で初めての取り組みとなる。
現在、CO2の排出量削減による地球温暖化の抑制が喫緊の課題であり、これを解決するためには、持続可能で低炭素なエネルギー利用の促進が重要となる。そのため日本政府は、水素を将来の重要なエネルギーの1つに位置づけ、「水素社会」の実現に向けた「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定。この中では、当面の目標として、2030年に年間30万tの水素を利用するという大規模な水素供給システムの確立が掲げられている。
こうした中、水素の製造・供給サイドでは、さまざまな企業により社会実装に向けた新たな技術や方策の実証が進みつつあるが、水素を利用する需要サイドでは、大規模な使い方や水素利用量の拡大についての検討が個社レベルに留まっているのが現状。
そこで、中部圏で産業界を横断した協議会を立ち上げ、大規模な水素利用の具体的な方策を検討し、供給サイドと連携を図りながら、社会実装に向けた取り組みを進める。
同協議会では、2020年代半ばからの社会実装開始を目指して、①中部圏での水素受け入れ拠点から需要サイドまでのサプライチェーンの検討②中部圏全体での水素利用量のポテンシャルの試算③各々の需要サイドで受け入れ可能な水素コストの検討④必要な施策と社会実装につながる事業モデルの提案、などに取り組んでいく予定。
ロードマップの実現に向けては、産業界での技術開発、コスト低減努力のみならず、金融界との連携による資金供給スキームの構築、政府のリーダーシップによる制度・インセンティブ設計、規制改革などの三位一体の活動が必要であり、同協議会はその一翼を担っていく。そして、同協議会の取り組みが中部圏のみならず日本各地に広がっていくよう、政府とも連携して官民一体となって進めていく考えだ。