産総研 固体酸化物形燃料電池で最高レベルの発電性能

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2021年8月23日

 産業技術総合研究所(産総研)のゼロエミッション国際共同研究センターはこのほど、ナノ構造制御した高性能空気極を開発し、固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セルで世界最高レベルの出力密度を達成した。「固体酸化物エネルギー変換先端技術コンソーシアム(ASEC)」でプライマリ会員の大阪ガス、京セラ、デンソー、森村SOFCテクノロジー、三浦工業と産総研による「革新セルスタックプロジェクト」の取り組み。

 SOFCは他の燃料電池より発電効率が高くすでに市販化されているが、システムの大きさや製造コストが普及への課題だ。セルの出力密度向上を目的に、電極反応抵抗の小さな空気極の開発に取り組み、今回パルスレーザー堆積(PLD)法で自己組織化ナノ複合空気極と、その性能を十分に発揮するためのナノ柱状多孔質集電層、ナノ複合化燃料極機能層を開発・搭載した。

 従来の空気極材料には単一または複数の金属酸化物との混合物である多孔質焼成体が使われ、その粒子径は数百㎚から1㎛程度である。今回PLD法により、二種類の材料が太さ数10㎚程度の柱状構造の中に各々幅数㎚の縞状で存在する交互配置構造の作製に成功した。燃料極機能層は、水素の酸化反応を促進するために燃料極支持体と電解質の間にあり、サブミクロン程度のセラミック混合物が使われる。

 今回、噴霧熱分解法により、10㎚程度の一次粒子を凝集、二次粒子化した粉末を作製。セル全体の抵抗低減と緻密な薄膜電解質の形成を向上させる。空気極集電層は電極反応のための電子を供給する層で、通常1㎛程度の粒子からなる。今回PLD法で作ったナノ柱状多孔質集電層は、数十㎚程度の領域ごとに電気的接続をし、電極全体の効率を上げた。これらの新規材料を搭載した単セルは、電極反応抵抗率0.01Ω/㎠、700℃での出力密度4.5W/?以上、SOFCセルの一般的な作動電圧0・8Ⅴでの電流密度三A/㎠で、従来の一般的なセルの6~10倍の電流値を実現。これによりセル枚数は10分の1程度にでき、コストの大幅削減とシステムの小型化が見込まれる。

 6月から開始したASEC第2期では、構造安定化による電極の長寿命・高信頼性化や、量産化への適応性検討などを進めるとともに、これら部材を搭載する技術の早期実用化を図る。

岩谷産業など CO2フリー水素とCNメタンの製造検討

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2021年8月23日

 岩谷産業はこのほど、関西電力と共同で「ハイドロエッジ」の液化水素製造プラントを活用したCO2フリー水素とカーボンニュートラル(CN)メタン製造の検討を開始したと発表した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発」で、製造方法とモデル構築を目指す。実施期間は今年度の1年間。

 水素はクリーンエネルギーとして脱炭素社会実現の切り札として期待されるが、現在国内で商業用に製造・供給されている水素は製造・輸送時にCO2を排出しており、CO2フリー水素の製造技術確立や製造コストの削減が求められる。

 今回、NEDO委託事業に「CO2フリー水素の製造に関する最適手法の検討およびモデル構築」と「メタネーションによるカーボンリサイクルの最適手法の検討およびモデル構築」が採択され、①水素の原材料である天然ガスのCO2フリー化のための証書の調達方法やコストなどの調査、②CO2回収のための脱炭装置などの導入・運転に要するコスト調査、③再生可能エネルギーによる水素製造のための電力調達方法や水電解装置などの設備構成やコスト調査、④CNメタン製造・供給のためCO2とCO2フリー水素によるメタネーションの適用可能性と、既設設備を最大限活用するCNメタンの輸送方法と最適製造・供給モデルの検討、を行う。

 なおハイドロエッジ(大阪府堺市)は岩谷産業と関西電力、堺LNGの合弁会社で、液化水素製造能力は3kl/時×3系列だ。

帝人フロンティア 特殊ファインセラミックスの遮熱塗料、販売開始

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2021年8月23日

 帝人フロンティアはこのほど、真球状特殊ファインセラミックスの使用により、高い遮熱性を示し、平滑できれいな塗装面を実現する遮熱塗料「ソルフリオ」の販売を開始すると発表した。

遮熱塗料「ソルフリオ」 塗装の一例
遮熱塗料「ソルフリオ」 塗装の一例

 同社は、環境戦略として「THINK ECO」を掲げ、衣料から産業資材までの幅広い用途で省エネに役立つ素材や製品を展開している。今回、販売を開始する「ソルフリオ」をはじめ、今後も省エネに貢献するソリューションの提供に注力していく考えだ。

 近年、地球温暖化による猛暑や、熱中症による健康被害の深刻化などにより、暑さ対策への関心とともに、遮熱製品に対するニーズが高まっている。中でも遮熱塗料は、暑さ対策に加え、省エネにも有効であることから、市場で高く評価されている。ただ、既存製品には、幅広い素材に対応し平滑できれいな塗装外観が得られるものは多くなかった。

 こうした中、同社は、幅広い素材に対して高い遮熱効果を発揮し、平滑できれいな塗装面が得られる遮熱塗料の開発に成功した。特長として、①真球状特殊ファインセラミックスが均質に配置された塗膜を形成することで太陽光の近赤外線を効率よく反射し塗装面の温度上昇を抑制する高い遮熱効果、②凹凸の少ない平滑で光沢のある塗装面を実現し、高いレベリング性を保有、③80㎛と薄い膜厚であり、表面硬度は鉛筆硬度3Hと高硬度、④無機素材や金属素材、プラスチックなど幅広い素材に対応可能、などが挙げられる。

 同社は今後、屋根や外壁、エアコン室外機、分電盤などの屋外設備向けに販売を開始。その後、屋外スポーツ施設・器具やコンテナ、金属製構造物など幅広い用途に展開していく。売上目標として、2021年度に5000万円、2024年度には3億円を目指す。

三菱ケミカル シュガーエステルを増強、福岡事業所に新系列

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2021年8月23日

 三菱ケミカルは20日、福岡事業所(福岡県北九州市)に、シュガーエステルの新たな製造工場を建設することを決定したと発表した。製造能力は年産2000tで、2023年夏の稼働を予定している。

シュガーエステル
シュガーエステル

 シュガーエステルは、ショ糖と植物油脂由来の脂肪酸を主原料とした乳化剤で、水分と油分を均一に混合させる機能をもち、食品の加工や流通保管時の品質維持に役立つ製品。飲料(缶コーヒーなど)、乳製品(ホイップクリームなど)、菓子類(ケーキやチョコレートなど)といった加工食品をはじめとした幅広い分野で使用されている。

 近年、国内食品メーカー向けの安定した需要に加え、中国を中心とした海外需要が著しく伸長しており、今後も一層の成長が期待される。同社は現在、三重事業所(三重県四日市市)を拠点にシュガーエステルを製造しているが、増加する需要に対応するとともにサプライチェーンの強化を図るため、福岡事業所に新系列を設置することを決定した。

中外製薬 抗体カクテル療法、コロナ感染症に対し承認取得

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2021年8月20日

 中外製薬はこのほど、抗コロナウイルスモノクローナル抗体「ロナプリーブ点滴静注セット300」と「同1332」について、新型コロナウイルス感染症に対し、厚生労働省より特例承認を取得したと発表した。

 奥田修社長CEOは、「新型コロナの流行は複数の変異株の出現により新たな局面を迎えている。1日も早い収束のためには、ワクチンによる新規感染の抑制とともに、感染者に対する治療選択肢の拡充が極めて重要だ。同治療薬は、重症化リスク因子をもつ外来患者の入院・死亡リスクを低下させるとともに、重症化の抑制と症状消失までの期間短縮が臨床試験において示されている」としたうえで、「また、同治療薬は、デルタ株をはじめとする複数の変異株に効果があることが非臨床試験で確認されている。こうしたエビデンスを基に特例承認を取得している。感染拡大が続く中、可及的速やかな供給に向け日本政府や関連事業者と緊密に協働していく」と述べている。

 今回の承認は、コロナ患者を対象として海外で実施された第Ⅲ相臨床試験の成績、および日本人における安全性と忍容性、薬物動態の評価を目的とした国内第Ⅰ相臨床試験の成績に基づいている。国内での同治療薬の供給は、日本政府との合意に基づき、2021年分が確保されている。同社は、速やかな供給に向け、引き続き日本政府とともに協働していく。

鈴与商事 ユーグレナの次世代バイオディーゼルを導入

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2021年8月20日

 鈴与商事とユーグレナはこのほど、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を静岡県で初めて導入すると発表した。鈴与商事は、ユーグレナ社が宣言した「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを目指す「GREEN OIL JAPAN」宣言に賛同し、今年7月より自社の宅配水配送車両に「サステオ」を導入する。

(左から)鈴与商事:加藤 正博社長、ユーグレナ社:出雲 充社長
(左から)鈴与商事:加藤正博社長、ユーグレナ社:出雲充社長

 従来型のバイオ燃料は、カーボンニュートラル(CN)の考え方に基づき、CO2を燃焼時に排出しない再生可能エネルギーである一方、化石由来の軽油と5%以下の混合燃料での使用が前提であることに加え、トウモロコシやサトウキビ、パームといった作物を主な原料とするため、食料との競合や森林破壊といった問題が指摘されている。

 今回導入するユーグレナの「サステオ」は、使用済み食用油と微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)などを主原料とし、食料との競合や森林破壊のリスクが低いという点で持続可能性に優れた次世代バイオディーゼル燃料。また、分子構造が軽油と全く同じ(JIS規格・品確法上ともに軽油に該当)ことから、軽油を使用している既存車両のエンジンに使用可能であり、水素や電気といった代替エネルギーへの移行に際して課題となる多大なインフラコストを必要とせず、既存インフラを活用しながら効率的に普及拡大することが可能となる。

 両社は、将来的な自治体や民間企業への展開も視野に、鈴与グループ各社への導入拡大を検討していくとともに、地球環境に配慮した活動を共に推進し、脱炭素化社会、持続可能な社会の実現に取り組んでいく。

東ソー、U/HPLCカラム製品、発売開始から50周年

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2021年8月20日

 東ソーはこのほど、U/HPLC(超高速液体クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィー)カラム製品「TSKgel」が発売開始から50周年を迎えたと発表した。

「TSKgel」カラム

 同社は、1971年に国産としては初となるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)カラム「TSKgel S」タイプの開発・商品化に成功し発売を開始した。その後も、U/HPLCカラムの開発・商品化を継続し、ほぼすべての分離モードの商品を全世界に販売している。なかでも、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)カラムは製品ラインアップ上の主力と位置づけており、特に1977年に発売を開始した「TSKgel SW」シリーズはバイオ医薬品業界では抗体医薬品の品質管理用途としてファーストチョイスのSECカラムとなっている。

 

 「TSKgel」は、液体クロマトグラフィーの科学技術が進化していく中で、基礎生物学研究、創薬、医薬化学、化学、食品、その他の産業用途など、あらゆるニーズに最適なソリューションを提供している。同社は、ライフサイエンス分野の製品やサービスの提供を通じて、人々の健康と福祉に関する社会課題の解決に貢献できるよう、これからも積極的に取り組んでいく。

高速 GPC 装置「 HLC-8420GPC」
高速 GPC 装置「 HLC-8420GPC」

 

出光興産 変動料金制を活用したEV充電サービスの実証開始

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2021年8月20日

 出光興産は19日、日産自動車、100%子会社であるソーラーフロンティアとともに、独自のダイナミックプライシング(変動料金制)を活用したEV充電サービスの実証事業を開始すると発表した。期間は今年11月~来年1月まで。同実証事業は経済産業省の採択を受けている。

 3社は、EVやPHVなどの電動車の普及がさらに進む将来に向け、電力負荷の低減や平準化を目的として同実証に取り組む。

 再生可能エネルギーを効果的にEV充電に活用することや、電力需要が高まる時間帯を避けた充電を可能にする仕組みを検証し、カーボンニュートラルの達成と持続可能な電力インフラの実現に貢献することを目指す。

 実証概要として、EV「日産リーフ」ならびにEV充電設備をもつ実証参加者を対象に、電力料金の割引額をスマホのアプリ上に提示。再エネの主力電源である太陽光パネルが発電する昼間や、電力需要の低い深夜などにEV充電を促す。

 推奨する時間帯に充電した際には、あらかじめ提示した割引額を電気料金から控除する。これにより、実証参加者の行動変容を分析するとともに、実証参加者へアンケートを実施し、仕組みの実効性とサービスとしての実現可能性を検証する。

 各社の役割として、出光興産は実証事業全体の運営、電気料金メニューの提供、実績集計・分析、日産自動車は実証参加者の募集協力、テレマティクスを使ったEVデータの提供、ソーラーフロンティアは、機器システム構築、機器選定・調達を担う。対象参加者は、東京電力管内のうち、出光興産が指定する工事可能エリアに居住し「日産リーフ」とEV充電設備をもつ個人50人を予定。なお、参加するためには出光興産が提供する電気プランへの切り替えが必要となる。

産総研 透明電極の結晶化抑え透明有機デバイス高性能化

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2021年8月5日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、透明酸化物電極(透明電極)を使った透明有機デバイスの性能が透明電極の結晶化を阻害することで大幅に向上することを見出だした。窓のように透明性が要求される場所へも透明有機デバイス搭載が可能となり、用途が大きく広がる。

 有機デバイスは形状がフレキシブルであるため、皮膚などの複雑な形状の表面へも設置できる電子デバイスとして注目される一方、非透明であるため透明性やデザイン性が求められる用途には適さない。透明電極と組み合わせることで透明化できるが、透明電極を形成する過程でデバイスの電気特性が大幅に低下してしまうという問題があった。透明電極形成時に生じるプラズマや高エネルギー粒子によるデバイスへのダメージ低減に着目し、スパッタリング製膜法も開発されたが、本来のデバイス性能には届いていない。

 一方、透明電極の結晶化度が高いほど電気伝導性が高く性能向上に有利と予測し、透明電極/電荷注入層/有機薄膜/下部電極からなる透明有機デバイスの透明電極の結晶化を試みたが、逆にデバイス性能は低下。解析の結果、結晶化した透明電極の場合、電荷注入層/有機薄膜界面にギャップが形成され、デバイス内の電気伝導を阻害することが判明した。

 結晶化した透明電極では、透明電極内の応力が緩和する際に膜が変形し、膜面方向に微小な変位(位置のずれ)が生じ、電荷注入層下面と有機薄膜の上面が形状的に合致しなくなるので、電荷注入層/有機薄膜の界面に微細なギャップが形成されることが明らかとなった。

 一般に、酸化物薄膜の膜内応力は膜の結晶性を下げると低減することから、透明電極製膜中に結晶化を阻害する微量のガスを導入したところ、膜内応力は約4分の1に低減。これで有機電界発光デバイスを作製したところギャップは無くなり、電流/電圧特性と発光特性は大幅に改善した。

 今後、透明電極内の応力のさらなる低減と透明有機デバイスの高性能化に取り組むとともに、長期間使用時の耐久性など実用面の検討を行い、実用化に向けた研究を引き続き行っていく。

 

旭化成 JRの鉄道網を活用した生鮮品物流システム開始

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2021年8月5日

 旭化成はこのほど、同社のクラウド型生鮮品物流ソリューション「Fresh Logi(フレッシュロジ)システム」を用いて、JR東日本水戸支社の鉄道網を活用した貨客混載・鮮度保持物流を構築したと発表した。これにより、朝収穫された生鮮品が午後には販売可能となることから、水戸支社沿線地域の活性化や、鉄道利用による低コストかつ低環境負荷での鮮度保持輸送の提供を目指していく。

Fresh Logi 密閉ボックス

 昨今、コロナ影響による旅行客の減少に伴い、地方の産品の販売に影響が及んでいる。またサステナビリティの観点から、フードロス削減やモーダルシフトによる省エネ化の重要性が増しており、旅客鉄道を物流に利用する取り組みが開始されている。

センサーにより密閉ボックス内外の温湿度、内部のCO2濃度、位置情報や衝撃の検知などが可能

 同システムで用いられる「Fresh Logi 密閉ボックス」は、センシングによって輸送・保管環境(青果物の輸送・保管温度・湿度・ガス組成など)を可視化。さらにインフォマティクス技術を活用して青果物の鮮度を推定・予測する。両社は、同システムと旅客車両輸送を組み合わせることで、より鮮度を保ったまま旅客車両で生鮮品を輸送できる物流網を構築した。

折り畳み時

 産品の高付加価値化、トレーサビリティ向上による消費者への安心・安全・品質の提供、旅客車両の有効活用による輸送の省エネ化と輸送力強化などを実現し、沿線の生産者にとって新たな販売機会の創出につながることが期待される。なお初回は、今月5日の朝に茨城県内で収穫される「とうもろこし」を輸送。同日内にJR品川駅構内にある「NewDays」品川中央で販売される予定だ。

 旭化成は、今回の取り組みを通じてフードサプライチェーンの見える化およびトレーサビリティの向上により食の「安心・安全」や「鮮度保持」を追求するとともに、スマート化によるフードロスの削減、環境負荷低減に貢献していく。また、今後も外部との積極的なコネクトを通じ、持続可能な社会の実現に向けた新たな価値の創造・提供に努めていく。