◇この人にきく◇ ハイケム サステナベーション本部副本部長 高 裕一氏

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2021年4月23日

C1化学など中核事業括り、成長分野の出口戦略強化へ

 日中間の化学品の貿易事業で創業したハイケム。その後、中国でのOEM受託製造を展開する一方で、独自に行う触媒技術の研究・開発を進め、合成ガスから非石油由来でエチレングリコールを生産する革新的な「SEG技術」のライセンス事業に参入するなど、C1ケミカルを中核として事業領域を大きく拡大させている。

 今年1月1日付で、持続可能性(サステナビリティ)と技術革新(イノベーション)を包括する「サステナベーション本部」を新設。成長の源泉であるC1ケミカル事業や触媒事業を発展させることで、ポリ乳酸(PLA)をはじめとする生分解性材料の普及、カーボンニュートラル社会や水素事業実現に向けた展開を加速していく考えだ。同本部の高裕一副本部長に、今後の取り組みについて聞いた。

━ サステナベーション本部を立ち上げた意図について。

   当社がこれまで展開してきた、炭素の利用効率を上げるC1ケミカルやプラスチック問題に対する生分解性材料への取り組みは、SDGsの17の目標の中でも、CO2削減と海洋マイクロプラスチックの課題にダイレクトに貢献できる事業だと考えている。

 今回、C1ケミカル事業と、生分解性材料など機能性ポリーマーを扱う素材事業部、工業触媒部などを1つの組織「サステナベーション本部」で括った。「サステナベーション」は、地球や社会、会社のサステナビリティと、それを実現するイノベーションを掛け合わせた造語になるが、会社として今後、その2つの要素を1つの本部で統括し推進していく強い意思を明確に打ち出し、社内外へ向けてメッセージを発信するために新設した。

━ 本部新設から4カ月目だが、どのような成果が見えてきたか。

  発足当時はそこでどういった化学変化が起きるのか、まだはっきりとイメージできていない部分もあったが、実際に走り出してみると、組織が1つだからこそできる、ということが多く見えてきた。我々のC1ケミカルは合成ガスを原料として、非石油由来でポリエステル原料のエチレングリコール(EG)を作る「SEG技術」が一番の強みであり、その反応工程で使う触媒も自社で提供している。

 一方、素材事業部は生分解性材料に代表される商材を、

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【ポリアセタール特集1】(総論)

2021年4月14日

足元は需給タイト、環境対応や用途展開が課題

 ホルムアルデヒドを重合して作られるポリアセタール(POM)は、60年近い商業実績があるエンジニアリングプラスチック。世界市場では、セラニーズとポリプラスチックスが二大メーカーで、デュポン、韓国エンジニアリングプラスチックス(KEP)、三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP)、コーロン、BASF、旭化成などが続く。中国のローカルも入れると世界に十数社、生産能力の合計は150万t程度と見られる。

 昨年は業界内で動きがあった。ポリプラスチックスは、親会社であるダイセルがセラニーズの出資を引き取り完全子会社化。また、セラニーズと三菱ガス化学の合弁会社であるKEP(年産14万t)は両親会社への製品供給専業になり、セラニーズはアジアでの供給能力を高める結果となった。ここ数年の動きでは、BASFがドイツでの製造を停止し、コーロンとの合弁会社(韓国)の工場(同7万t)に集約、また、セラニーズとSABICの合弁会社Ibn Sina(同5万t)がサウジアラビアにおいて稼働を開始している。なお、新設計画が多い中国ローカルメーカーについては、実際に稼働しているのは3社程度のようだ。POMの世界需要は年間125万t程度と見られ、地域別では、中国が50数万t、その他アジアと欧州が各々25万t前後、米州が十数万t、日本が9万t程度と推測される。近年では、需要の伸びが見込まれる中国やアジア市場で各社の競争が激化している状況だ。

 POMは結晶性が高く機械物性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性に加え、成形性にも優れる。また、エンプラの中では比較的安価であることから、幅広い分野で使われている。主な用途として、低摩擦・摩耗、低騒音を生かした電子・電機用途のギアや、摺動性を生かした衣料用途のファスナー、耐油性を生かした燃料系部品などが挙げられる。

 分野別にみると、様々な部品で使用される自動車向けの割合が高く、世界全体で約40%、日米欧では60%前後を占める。自動車1台あたりの使用量は約4.5kgと推定されるが、今後EV化の加速により燃料系部品用途が減少してくる可能性もある。こうした中、各社は新規用途開拓を模索し、コンパウンド技術による高性能化・高機能化に注力。さらに新たな取り組みでは、環境対応として、使用済となった製品のリサイクルや、再生可能な原料への転換なども検討を進めているようだ。

 一方、需要については、昨年前半はコロナ影響で大きく落ち込んだものの、自動車生産の回復に伴い年後半には急回復した。特需により需給バランスはタイトな状態が続き、生産は対前年比プラスで推移している。とはいえ、長期的に見れば、世界平均で年率3%程度の市場成長になる見通しだ。

 

 

【ポリアセタール特集2】ポリプラスチックス

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2021年4月14日

欧米市場開拓に注力、ダイセルとのシナジー追求

 ポリプラスチックスはポリアセタール(POM)を「ジュラコンPOM」として展開する、世界シェアトップのメーカー。昨年にはダイセルの完全子会社となり、ダイセルの成長けん引の一翼を担うこととなった。

 ポリプラは1964年にダイセルとセラニーズの合弁で設立。主力製品であるPOMは、富士工場の10万tを皮切りに、1988年に台湾・高雄工場の2.5万t、2000年にマレーシア・クアンタン工場の12万t、2005年に中国・南通工場内で4.2万t(引き取りベース)と拡張し、現在の生産能力は約29万tとなっている。足元では世界市場のPOM需要が高まりを見せている。同社は拡大する市場に応えるため、中国での9万t規模の増設を計画しており、市場プレゼンスを一層高めていく方針だ。

 販売戦略では、2012年以降、欧米へ事業拠点を設置し、グローバル展開を加速させた。高いシェアを握っているアジア市場の維持・拡大だけではなく、欧米市場での新規開拓・シェア拡大に注力している。欧米での活動は、POMが広く採用されている自動車部品向けに、欧米系OEMへの参入を目指し、米国とドイツにテクニカルソリューションセンターを開設。技術サポートと併せてスペックイン活動を進める中で、日系OEMとは異なる要求特性への対応や、信頼性データの提出を進め、徐々に採用事例が増えてきている。

 一方、同社は自動車分野以外の用途開拓にも力を注ぐ。その背景として、欧州や中国を中心にEV化が進み、POMの主要用途である燃料系部品が減少する可能性も出てきたことが挙げられる。食品接触用途向けでは「M90-57/M270-57」を開発し、世界的な市場展開を図っている。さらに直近では医療分野へのアプローチとして、新たに「PMシリーズ」の販売を開始。すでに薬事用などで広く利用されているCOC樹脂「TOPAS」とともに、医療分野にソリューションを提供していく構えだ。

 同社は、今年1月に富士工場にマザー工場としての機能をもたせた「F-Base」を開所し、運用を開始した。グローバルで生産、技術、保全、検査、物流、安全の監視を強化し、また隣接する研究開発部門との連携を高め技術革新の創出につなげる。ポリプラは、ダイセルの長期ビジョンの中で新ダイセルの象徴的な役割を担っており、成長領域でのシナジー効果を追求していく方針だ。

 

【ポリアセタール特集3】三菱エンジニアリングプラスチックス

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2021年4月14日

自動車向け高機能グレード開発、OEMなどに攻勢

 三菱ガス化学(MGC)と三菱ケミカルの合弁会社である三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP)は、MGCからポリアセタール(POM)樹脂「ユピタール」の供給を受け、樹脂の販売とコンパウンドの製造・販売を行っている。

 同社のPOM樹脂の供給能力は、主に国内向けに供給する四日市工場の2万t、中国を中心にグローバルの輸出拠点であるタイポリアセタールの10万tに加え、中国PTMエンジニアリングプラスチックス(ポリプラスチックス、セラニーズ、韓国エンジニアリングプラスチックスとの合弁)の取り分を勘案すると、年間能力は13万tで世界第5位を占めている。

 POMは摺動性と機械強度に特長があり、約8割はレジンとして販売される。残りの約2割がコンパウンドした特殊グレードとなるが、POMメーカー各社は、配合組成や製造技術などで差別化・高機能化を図っている。市場としては、POMの浸透率が高く、市場成長率がGDPにリンクしているアジア市場の成長が期待されるが、メーカー各社の競争が年々激化している状況だ。 事業環境を見ると、昨年の需要はコロナ禍の影響を受けた春先に落ち込んだものの、中国経済が立ち直ってきたことで後半から受注が急回復した。自動車向けに加えOA関連も伸びており、この状況が4月以降も続くとの見方が強い。

 MEPは、これまで自動車向けの出荷比率が低かったが、摺動性、耐久性、成形加工性を向上させた高機能グレードを開発し、OEMや部品メーカーに提案するなど攻勢をかけている。今後はこれらの特性を食品や水回り、OA機器、雑貨などにも展開させていく。さらに医療関連用途への進出も視野に入れており、規格対応などにも取り組む考えだ。

 一方、環境対策は各社にとって無視できないテーマとなっている。MEPはサプライチェーン全体で取り組む構えで、親会社と協力しながら、リサイクルや原料の見直しなどできることから進めていく。また安全面では、ホルムアルデヒド発生によるVOC問題がある。同社は、製造技術の最適化によりホルムアルデヒド量を半減させる技術開発に成功。成型時の金型の汚れが減少する効果もあり、金型メンテナンス回数の削減によるコスト削減への貢献も大きい。コスト競争力を維持したまま製品の機能・性能を向上できるため、今後のシェア拡大が期待される。

 MEPは、高付加価値と環境経営に指針を取っている。新たな需要の探索や環境配慮型材料の提案を強化することで、高機能グレードの比率を50%に高めていく考えだ。

 

【ポリアセタール特集4】旭化成

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2021年4月14日

足元はフル稼働継続、ロボット分野への展開検討

 ポリアセタール(POM)を「テナック」「テナック-C」の製品名で展開している旭化成は、ホモポリマーとコポリマーを世界で唯一生産・販売するメーカー。ホモポリマーを製造しているのは旭化成とデュポン(年産15.2万t)の2社のみであり、機械特性に優れていることから、自動車のギア関連市場では独壇場となっている。

 同社の生産能力は、国内の水島製造所が年4.4万t(ホモポリマー2万t、コポリマー2.4万t)、中国(張家港)が2万t(コポリマー)の合計6.4万t。大手メーカーに比べ規模は大きくないものの、技術力を生かして差別化と高付加価値化に注力しており、POM市場で存在感を高めているようだ。

 同社の事業環境を見ると、昨年前半はコロナ禍の影響で販売量が前年比60~70%程度に落ちこんだ。しかし自動車産業の回復と共に需要が急回復し、

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【国際化特集】コロナ禍がターニングポイントに

2021年3月29日

事業再編が加速、変化の時代にこそ商機を見出す

 わが国化学産業は、大きなターニングポイントを迎えている。昨年は、コロナ禍によって汎用品を中心に需要が落ち込む反面、半導体材料やライフサイエンスなどは安定した収益を確保しており、事業によって明暗がはっきり分かれる年となった。特に石油化学事業は、市況低迷や原料価格の下落といった変動の波を激しく受け事業環境が悪化。この状況を踏まえ、新たに構造改革を検討する企業も出始めており、その動向が注目されている。今後、成長が期待できる事業に経営資源を集中させるため、各企業ではポートフォリオの再編が一層加速していきそうだ。

 一方、今回のパンデミックは、各国のグリーン政策に勢いを与えた。EUの「欧州グリーン・ディール政策」に続き、わが国でも「グリーン成長戦略」が策定され、経済と環境の好循環を目指す方針が示されている。また、対立を深める米国と中国の間で、気候変動をめぐる「脱炭素」が新たな覇権争いの焦点になるとの見方も強まってきた。こうした脱炭素化の流れは、CO2排出量が多い製造業にとってリスクになりかねない。ただ、日本の化学企業は、サスティナビリティに貢献できる技術や製品を多く持っている。それらを活用して、この変化をビジネスチャンスに転換できるかが、グローバル市場で生き残りを図るカギとなるだろう。

 今回の「国際化特集」では、先行き不透明感が強まる中、世界のトレンドをいかに捉え、どう対応していくのか、業界を代表する首脳の方々に聞いた。

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◇インタビュー◇

経済産業省 製造産業局素材産業課企画調査官 小林麻子氏
▽グリーン社会への転換が国際的潮流に、イノベーションを期待

信越化学工業 代表取締役会長 金川千尋氏
▽塩ビは環境貢献とインフラ整備に不可欠、需要を捉えて増設

三菱ケミカルHD 代表執行役社長 越智 仁氏
▽発想力で新しい価値観を生み出す人材、変化にはDXで対応

旭化成 代表取締役社長 小堀秀毅氏
▽成長は海外に、グローバル・変革を見据えた取り組みに注力

昭和電工 代表取締役社長 森川宏平氏
▽世界で戦える会社へ進化、7月の実質統合からの1年が重要

 

【国際化特集】経済産業省製造産業局素材産業課企画調査官 小林麻子氏

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2021年3月29日

グリーン社会への転換が国際的潮流に、イノベーションを期待

2021年の世界経済の動向と化学産業の業況見通しについて

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、依然として厳しい状況にありますが、全体としては緩やかに回復していると捉えています。IMF(国際通貨基金)は1月、今年の世界経済成長率の見通しを5.2%から5.5%としました。3月のOECD(経済協力開発機構)の予測も世界成長率を5.6%に上方修正しています。アメリカや日本をはじめとした主要国の政策支援やワクチンが経済活動を活性化させる期待が高まっていますが、新たな感染の波や変異株ウイルスの影響による異例の不確実性のなか、引き続き世界経済の動向をしっかり注視していく必要があります。

 そのなかで、化学産業は、エチレン設備稼働率が

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【国際化特集】信越化学工業代表取締役会長 金川千尋氏

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2021年3月29日

塩ビは環境貢献とインフラ整備に不可欠、需要を捉えて増設

2021年の世界情勢と事業環境の見通しについて。

 金川会長画像世界各国は新型コロナウイルス感染症の拡大防止に努めつつ経済活動との両立を果たそうとしています。これは過去に例を見ない難しい状況です。そのような中で、当社の主力製品である塩ビは北米のみならず全世界で需要が伸びています。また半導体ウエハーも堅調です。当社はコロナ禍の中にあっても各製品の需要を取り込むことに注力しています。各国でワクチンの接種が進められていますが、人類の英知が必ずや新型コロナウイルス感染症を克服するものと確信しています。

米中関係が新たな局面を迎える中、どう対応していきますか。

 米中両国が相手国への関税の引き上げなど対立を激化させれば、当然世界全体に大きな影響を与えます。当社はカントリーリスクの低い米国で塩ビ事業を拡大してきました。半導体ウエハーでも米国に工場を有するなど、主要事業では複数の国に

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【国際化特集】三菱ケミカルホールディングス代表執行役社長 越智 仁氏

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2021年3月29日

発想力で新しい価値観を生み出す人材、変化にはDXで対応  

コロナ禍など未だ不透明な状況が続くが、化学産業の業況について。

 業界によってまちまちだが、化学業界で言えば、すでにコロナ前の状況にまで回復してきている。当社の収益率を見ても、昨年の4月を底に右肩上がりで伸びてきており、最近はさらにそれが立ち上がってきている状況だ。米中貿易摩擦以前、つまり2018年以前の状態に戻ってくるのは、おそらく2022年から2023年の始めごろだと見ている。

 その大きな理由の1つは、

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【国際化特集】旭化成代表取締役社長 小堀秀毅氏

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2021年3月29日

成長は海外に、グローバル・変革を見据えた取り組みに注力

2021年の世界情勢について。

  新型コロナウイルスの問題については、ワクチン接種が始まったことで明るい兆しは見えている。ただコロナ禍の収束には、治療法の確立とワクチンの普及が条件であり、今年はまだ人々の行動に制限がかかるだろう。また、コロナ禍によってオンラインの普及や活用が急速に進んでいる。Eコマースが拡大するなど新たな潮流が出てきており、産業構造が大きく変わる可能性もある。

 一方、米国はバイデン政権に代わり、

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