東レなど P2Gシステムの実用化、基本合意書を締結

, , , , ,

2021年4月19日

 東レ、東京電力ホールディングス、山梨県の3者はこのほど、甲府市米倉山(こめくらやま)の電力貯蔵技術研究サイトで技術開発を進めてきたP2G(パワー to ガス)システムの成果を発展させ、さらにカーボンニュートラル(CN)の実現を目指した新たな事業への挑戦に向け、共同事業体の設立を検討していくことについて合意した。

 2016年度から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、3者が共同で技術開発を行ってきたP2Gシステムは、大型の水電解装置や水素出荷設備などの施設全体がおおむね完成。今年6月から、山梨県内の工場やスーパーマーケットで水素を利用する実証試験を全国に先駆けて開始する。

 こうした中、P2Gシステムの技術をさらに発展させ、山梨県内外での水素供給事業を可能にするとともに、国が創出する新たな基金事業へも積極的に取り組んでいくため、今回の合意に基づき、共同事業体「やまなし・ハイドロジェン・カンパニー(YHC)」(仮称)の設立に向けた検討を進める。

 山梨県は、2050年までに温暖化ガスを実質ゼロにする脱炭素社会の実現に向け、P2Gシステムの実用化を加速し県内外への普及を図る。そして、さらなる高効率化・大容量化に向けた技術開発を進め、エネルギー需要家の化石燃料の利用をグリーン水素に大きく転換させ、新たな水素エネルギー産業の創出を目指す。

 東京電力HDは、非化石エネルギーの推進を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、産業部門の電化や水素の技術開発により、脱炭素社会の実現に貢献していく。

 東レは、「サステナビリティ・ビジョン」の中で、2050年に温室効果ガスの排出と吸収のバランスのとれた世界などを目指すことを掲げ、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決を通じて社会に貢献することを目指している。電解質膜、電極基材などの水電解・水素圧縮や燃料電池向け材料の開発、製造および販売を通じて、CNを可能とする水素製造(水電解)や水素インフラ(圧縮・貯蔵)、水素利用(燃料電池)技術の発展に貢献していく。

東レ オールカーボン二層構造のCO2分離膜創出

, , ,

2021年4月16日

分離性能と高耐久性を両立、ガス分離用途に応用

 東レは15日、中空糸状の多孔質炭素繊維を支持体とし、その表面に薄い炭素膜の分離機能層を形成したオールカーボンの二層構造をもつ革新CO2分離膜を創出したと発表した。同分離膜は、優れたCO2の分離性能と高耐久性を兼ね備え、従来の無機系分離膜と比較して設備の小型化が可能。同社は今後、同分離膜の社会実装に向けた研究・技術開発を加速していく考えだ。

革新CO2分離膜の構造
革新CO2分離膜の構造

 炭素循環社会の実現には、発電などの排ガスからCO2を分離回収し、水素と組み合わせてメタンを生成し化学品や燃料に再利用する、といったカーボンリサイクルが求められる。CO2分離技術が不可欠となるが、一般的な吸収法や吸着法はエネルギー消費量が大きく、省エネルギー化の課題があった。

 こうした中、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

東レ 高耐熱かつ高品位なOPPフィルムを創出

, ,

2021年3月18日

加工温度120℃に対応、光学分野で拡販を図る

 東レは、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムとして世界最高レベルの耐熱性と品位を実現した〝新タイプ「トレファン」〟を創出した。開発品は打痕、汚染リスクを極小化する高い品位を有し、120℃の高温環境でも使用することが可能。すでにサンプル提供を開始し、顧客評価を進めており、今年度中の上市を計画している。今後、光学材料や電子部品工程向けなど幅広い用途展開を図ることで、年間売上高10億円を目指していく考えだ。

新タイプ「トレファン」
新タイプ「トレファン」

 OPPフィルムは、離型性、低アウトガス(フィルム中から放出されるガス成分)性、紫外線透過性、低吸湿性といった様々な特性に優れ、包装用途に広く使われる。

 東レは、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

東レ 極薄グラフェン分散液を創出、粘度を制御

,

2021年3月10日

高流動・高導電性を両立、LIB長寿命化に貢献

 東レは、高濃度でありながら流動性に優れた極薄グラフェン分散液を創出した。開発品は、グラフェンがもつ高い導電性などの優れた特長を発揮しやすいことから、電池材料や配線材料、塗料など各種用途への展開が期待できる。同社は早期の実用化を目指し、研究・技術開発を推進していく考えだ。

分散液を使用しないと粘土状に
分散液を使用しないと粘土状に

 グラフェンは、炭素からなるナノサイズの極薄シート状の二次元材料。均一に配列しやすい性質があり、優れた導電性・熱伝導性・バリア性を備える次世代機能性材料。グラフェンを塗布したり、他材料と混合したりすることで新たな機能を付与することができる。

 東レは、安価な黒鉛原料から化学剝離法による3㎚以下の極薄グラフェン製造技術を開発。物理剝離法(20~50㎚)や、他社の化学剝離法(10~20㎚)と比べ極薄であることから、塗布した時の被覆性や他材料との混合性にも優れる。しかし、薄いほど凝集しやすく、高濃度にすると粘土状となり流動性が悪化してしまう。そのため、塗布や混合には希釈して低濃度溶液で使用する必要があり、グラフェン本来の特長を発揮しにくいといった課題があった。

極薄グラフェン分散液を使用し高流動性を発現
極薄グラフェン分散液を使用し高流動性を発現

 こうした中、東レは、グラフェン同士の相互作用による凝集を抑えるため、独自の高分子材料を添加してグラフェンの粘度を自在に制御する分散技術を開発し、高濃度の極薄グラフェン分散液の流動性を高めることに成功。開発品は高濃度でも流動性が良好であることから取り扱い性に優れ、希釈することなく塗布できるので高い導電性といった特長を発揮しやすい。また、分散性が高く攪拌しやすいことから他材料と混合も容易だ。

 例えば開発品をLIB用導電材料に使うと、正極材料と混合しやすく、正極の間にグラフェンが入り込み、導電性が向上する。これにより電池を繰り返し充放電する際に、導電経路の劣化による電池容量低下が抑制され、電池の寿命が長くなる。従来、EV向け高性能電池の導電助剤にはカーボンナノチューブ(CNT)が使用されているが、開発品に置き換えることで、CNTより電池寿命が1.5倍向上することを同社の電池評価で確認。コストについても、量産化によりCNTと競合できるレベルになると見られる。

 さらに、開発品は塗布し乾燥する際、グラフェンが積層することで緻密膜を形成。この緻密膜は金属のように錆びないことから、耐久性に優れた導電配線材料として、プリンタブルエレクトロニクス用配線への応用が期待できる。また、防錆塗料に混合すれば水や酸素の透過を遮断し耐久性を向上できるなど、幅広い用途への展開が可能だ。

 同社はすでに極薄グラフェンと分散液のサンプル提供を開始しており、顧客から高い評価を得ている。今後は製品のブラッシュアップとともに量産化体制を早期に整え、2030年度には売上高で100億円超を目指していく方針だ。

 

 

東レの4-12月期 減収減益も通期予想は上方修正

,

2021年2月10日

 東レは9日、2020年度第3四半期(4-12月期)の連結業績(IFRS)を発表した。売上収益は前年同期比14%減の1兆3642億円、事業利益36%減の670億円、営業利益64%減の362億円、純利益63%減の279億円となった。新型コロナの感染拡大による生産活動・消費行動の停滞に加え、国際的なサプライチェーン分断による経済混乱で、大幅に落ち込んだ。また米国子会社の減損損失を計上した。

 事業分野ごとに見ると、繊維事業は減収減益。国内外の生産活動・消費行動停滞の影響で、衣料用途は各国のロックダウンや過剰な流通在庫で需要が低迷し、産業用は一般資材用途が低調に推移した。医療用白衣地やマスク用の不織布需要の増加と自動車関連の回復の動きが見られたが、総量の減少はカバーできなかった。

 機能化成品事業は減収増益。樹脂事業は生産活動停滞の影響を受けたが、第3四半期には自動車と中国経済の回復で好調に推移。ケミカル事業は基礎原料市況が回復傾向だ。フィルム事業はLIB用セパレータフィルムが市況価格低下の影響を受けたが、ポリエステルフィルムは光学用途や電子部品関連で好調に推移。電子情報材料事業は回路材料は低調だったが、第3四半期は有機EL関連の需要が増えた。

 炭素繊維複合材料事業は減収減損。一般産業用では風力発電翼用途が堅調だったが、航空宇宙用途は民間旅客機のビルドレートの減少が影響した。

 環境・エンジニアリング事業は減収増益。水処理事業は一部地域への出荷に新型コロナの影響があったが、逆浸透膜などの需要はおおむね堅調。国内エンジニアリング子会社でエレクトロニクス関連装置は減少したが、建設子会社の大型工事案件進捗や不動産物件の完工で収益計上した。

 ライフサイエンス事業は減収増益。医薬事業は経口そう痒症改善薬が後発医薬品発売と薬価改定の影響を受けた。医療機器事業は医療機関での不急手術先送りの影響がある中、ダイアライザーは国内外で堅調だった。

 なお、通期業績予想は、業績動向と事業環境などを踏まえ、売上収益を前回発表比100億円増の1兆8700億円、事業利益を同100億円増の900億円、純利益を同50億円増の390億円に上方修正した。

東レ ナノアロイ技術で新規ポリマー材料を創出

, ,

2021年1月22日

PAの特性と疲労耐久性を両立、用途拡大を期待

 東レは、ポリアミド6(PA6樹脂)がもつ高い耐熱性や剛性、強度を維持しながら、繰り返し折り曲げ疲労耐久性を従来の15倍まで飛躍的に高めた新規ポリマー材料を創出した。開発品は自動車、家電製品、スポーツ用品といった疲労耐久性が必要な用途に広く展開が期待できる。2021年度から本格的なサンプルワークを開始し、顧客ニーズに合わせた改良などを進め、2023年度からの市場参入を目指していく考えだ。 

新規ポリマー材料 折り曲げ疲労耐久性を向上
新規ポリマー材料 折り曲げ疲労耐久性を向上

 PA6樹脂は、優れた特性から自動車のエンジンルーム内部品や、家電製品の筐体などに多く使用されている。PA6樹脂に疲労耐久性を付与するには柔軟なエラストマーを配合するが、PA6の特性である耐熱性、剛性、強度が低下するといったトレードオフの関係があった。

 こうした中、東レは、外力が加わった際に可動可能な構造をもつポリマーとして、分子結合部がスライドするポリロタキサンに着目。ポリロタキサンをPA6樹脂中に均質に微分散化することで、PA6樹脂の特性と疲労耐久性の両立する新規ポリマーの開発を目指した。

 独自のナノテクノロジーである「ナノアロイ」による精密アロイ制御技術を駆使し、PA6樹脂中に、ポリロタキサンを最大限の効果発現が期待できるPA6結晶構造サイズの数十㎚に微分散化することに成功。このしなやかな応力分散機構により、繰り返し折り曲げ疲労試験では、PAは屈曲回数2千回で破断するのに対し、開発材料は15倍の3万回と疲労耐久性が大幅に向上した。開発品は、理化学研究所が所有する高輝度放射光X線(SPring-8)による試験で、外力を受けた際にPA6樹脂の結晶構造変化が抑えられることを確認している。

 

しなやかタフポリマー PA6 樹脂中に微分散化したポリロタキサン
しなやかタフポリマー PA6 樹脂中に微分散化したポリロタキサン

 なお、同技術は内閣府が2014~2018年に進めていたImpact(革新的研究開発推進プログラム)の「しなやかなタフポリマー」プロジェクトで開発。プロジェクト終了後に、東レが実用化に向けた研究開発を進めていた。Impactでの成果では、100㎚の微分散化が可能であったが、同社の極限追求により、10㎚の微分散化を実現している。

 東レは今後、樹脂化が難しかった自動車部材をはじめ、家電製品、スポーツ用品など疲労耐久性が必要な用途への展開を進めるとともに、繰り返し折り曲げが要求される部材などの新規用途開拓を推進していく。さらに、今回の技術をPA6樹脂以外の樹脂にも展開し、顧客の要求特性を満たすポリマーの開発に注力していく考えだ。

 

《化学企業トップ年頭所感》東レ 日覺昭廣社長

,

2021年1月12日

 昨年は新型コロナウイルス感染拡大で世界中の経済活動が同時に停滞するという事業環境下で、社員全員が日々の事業活動に真摯に取り組んだことに感謝する。経済再開に伴い世界の景気動向は回復基調にあるが、事業環境は依然不透明であり、事業課題と実行計画を全社で共有しベクトルを合わせ、確実に計画を達成していく。

  昨年5月に長期経営ビジョン「TORAY VISION 2030」(ビジョン2030)と中期経営課題「プロジェクト AP-G 2022」を発表し、取り組み始めた。2018年発表の「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す、2050年に向けて東レグループが目指す世界を実現するために、地球規模の課題を革新的な素材の力で解決し企業価値を高めるためのマイルストーンで、「持続的かつ健全な成長」を実現するための統一指針だ。

 「AP-G 2020」は2020年度からの3年間にやるべき成長実現のための中期課題。主題の「強靱化と攻めの経営」は、持続的かつ健全な成長に向けた「攻めの経営」と、財務体質強化など「攻めのための守り(強靭化)」を両輪で実行するもの。新型コロナウイルス感染拡大による生産活動・消費行動・物流の停滞など、不確実性が増す事業環境下で、経営基盤を一層強化する方針だ。

 「ビジョン2030」の策定に合わせて、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」という企業理念をはじめとする経営思想を「東レ理念」として体系化した。これは創業以来継承されてきた先人の意思と経営姿勢で、我々が受け継ぎ将来に伝えていく東レグループの財産だ。持続的成長をグローバルに実現するため、「東レ理念」の理解と共有に取り組み、全社員が東レグループで働くことに誇りをもてる職場風土の醸成を目指す。

 我々は素材メーカーとしてこれまでの経営姿勢を貫き、革新技術で新市場創出を進め、付加価値の高い製品を世界に提供していく。今年も東レグループ社員一人ひとりが先端材料で社会を変えるという高い志をもち、「事業を通じた社会貢献」という創業以来の「東レ流の経営」を実践し、豊かな社会の実現に貢献することに誇りをもって仕事に取り組むことができるようにしていきたい。

 

東レ 環境配慮型PETフィルムを開発、CO2削減に貢献

, ,

2020年12月28日

 東レはこのほど、電子部品用途での使用済みポリエステル(PET)フィルムを回収・再利用するリサイクルシステムを構築し、サステナブルな社会の実現に貢献する環境配慮型PETフィルム「Ecouse(エコユース)」シリーズを開発したと発表した。年産2500t規模の生産体制を整え、本格販売を開始する。

環境配慮型PETフィルム「Ecouse」シリーズ
環境配慮型PETフィルム「Ecouse」シリーズ

 PETフィルムの用途は、電子部品や包装材料、ディスプレイ関連向けなど幅広い。中でも電子部品用フィルムは、フィルム製造から廃棄までのサプライチェーンが比較的短く、使用済みフィルムのリサイクルシステムの検討が進められてきた。しかし、サプライチェーンの各工程で使用される多種多様な塗材、樹脂などを除去できる方法がこれまでなく、廃棄物処理やサーマルリサイクルでの活用が中心だった。

 こうした中、東レは、サプライチェーン各社と協力して、電子部品の使用済みPETフィルムを回収・再利用するリサイクルシステムを構築。そして、フィルム表面の塗材、樹脂を除去するメカニカルリサイクル処理技術と、各製造工程における異物除去を組み合わせることで機械特性、信頼性を損ねることなくフィルムに再利用することを可能にした。

 今回開発した環境配慮型PETフィルムは、化石由来原料と廃プラの削減に加え、CO2排出量を従来品比30~50%削減可能だ。「Ecouse」は、同社が2015年からグローバル展開しているリサイクル素材と製品の統合ブランド。フィルム分野では従来、製造工程で発生した端材を原料としてフィルムに再利用してきたが、顧客から回収し再利用処理した原料を用いた環境配慮型PETフィルムを開発したことで、リサイクルフィルムの展開を加速する。

 同社は今後、さらなるリサイクルシステムと生産体制の構築を進め、電子部品用途だけでなく、各用途でリサイクルフィルムの拡大を目指し、また、PET以外のフィルムやフィルム加工品にも「Ecouse」の展開を拡充する考えだ。

 

東レ CDP水セキュリティで2年連続最高評価を獲得

, ,

2020年12月23日

 東レはこのほど、国際的な非営利組織CDPが実施した水資源保護に関する調査において、最高評価である「水セキュリティAリスト企業」に2年連続で選定された。

水セキュリティで CDPから 2 年連続で最高評価
水セキュリティで CDPから 2 年連続で最高評価

 東レグループは、2050年に目指す世界を示した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」や長期経営ビジョンの中において、安全な水の提供を東レグループが取り組むべき課題の1つとして掲げている。この課題の実現に向け、東レグループ全体でRO膜をはじめとする水処理技術を通じた世界各地域の水不足への貢献と、自らの事業活動における水資源の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進や適切な管理による水資源の保護に取り組んでいる。

 水資源は人間を含めた生物の生存に不可欠な要素だが、私たちの生活で容易に利用可能な淡水は地球上の水のわずか0.01%しかない。世界の人口増加や経済発展を背景に、水ストレスの増大や水質汚染が問題となっており、近年、世界的な気候変動の影響による干ばつや洪水などの災害が世界で多発している。

 さらに、世界の食糧需要は今後15年間で20%以上増加すると予測され、水資源の枯渇は農作物不作による飢饉頻発のリスクにもつながるため、安全な水の確保は、SDGsの1つとなっている。

 東レグループは今後も、「すべての製品の元となる素材には社会を本質的に変える力がある」との信念の下、水資源問題や気候変動を含む地球規模の課題の解決に貢献すべく取り組みを積極的に推進し、社会全体のサステナビリティ実現に力を尽くしていく。