東レの4-6月期 機能化成品事業がけん引し増収増益

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2021年8月5日

 東レは4日、2022年3月期第1四半期(4-6月期)連結業績(IFRS)を発表した。売上収益は前年同期比29%増の5137億円、事業利益2.9倍の361億円、営業利益3.8倍の359億円、純利益3.1倍の297億円だった。

 セグメント別に見ると、繊維事業は増収増益。国内外ともに需要の回復が見られた。衣料用途では、引き続きコロナ禍の影響を受けた用途があるものの、スポーツ・アウトドア用途が好調に推移。産業用途では自動車関連用途が回復し数量を伸ばした。

 機能化成品事業は増収増益。樹脂事業は、コロナ禍の反動と自動車メーカーの稼働および中国経済の回復から需要が好調に推移した。ケミカル事業は、基礎原料の市況が回復。フィルム事業は、LIB向けバッテリーセパレータフィルムにおいて車載用途が回復したほか、ポリエステルフィルムで光学用途・電子部品関連が好調に推移した。電子情報材料事業は、有機EL関連の需要が増加した。

 炭素繊維複合材料事業は増収・事業損失。一般産業用途では、風力発電翼用途やスポーツ用途が好調に推移したが、航空宇宙用途において、民間旅客機のビルドレートが減少した影響を受け、原料価格も上昇した。

 環境・エンジニアリング事業は増収増益。水処理事業は、一部地域でコロナ禍の影響があったものの、逆浸透膜などの需要が堅調に推移した。国内子会社では、エンジニアリング子会社でエレクトロニクス関連装置の出荷が増加した。

 ライフサイエンス事業は減収増益。医薬事業は、経口そう痒症改善薬「レミッチ」において、後発医薬品発売の影響を受けたほか、薬価改定の影響を受けた。医療機器事業は、血液透析ろ過用のダイアライザーが国内で堅調に推移した。

 なお同日、通期業績予想の修正を発表。売上収益2兆2500億円(前回発表比1300億円増)、事業利益1300億円(同100億円増)、純利益900億円(同100億円増)に上方修正している。機能化成品事業において、樹脂、ケミカル、フィルムの各事業が堅調に推移し、収益を押し上げる見通し。

東レ 低誘電損失PBTを開発、5G通信に貢献

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2021年7月14日

サンプルワーク開始、1年以内の量産化を目指す

低誘電損失PBT センサーケースモデル成形品

 東レは13日、PBT樹脂がもつ寸法安定性や成形加工性を維持しながら、高周波ミリ波帯での誘電損失を従来比約40%低減した高性能PBT樹脂を開発したと発表した。

 同開発品は、5G通信用基地局や自動運転に向けた車載高速伝送コネクタや通信モジュール、ミリ波レーダーなどの性能向上に大きく貢献する。今後、本格的にサンプルワークを開始し、5G通信用材料としての要求に応えるとともに、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転に代表される高度道路交通システム(ITS)分野の用途開発を進めていく。

 PBT樹脂は、

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東レ 欧州に樹脂テクニカルセンター、顧客の開発を支援

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2021年7月2日

 東レは1日、欧州での樹脂製品のマーケティングおよび販売会社である東レ・レジンズ・ヨーロッパ(TREU)の技術開発拠点として、欧州自動車開発拠点であるドイツのオートモーティブセンター欧州(AMCEU)敷地内に樹脂テクニカルセンターを開設したと発表した。

 同センターでは、欧州域内での迅速な技術データ提供やCAE解析を通じた設計支援、イノベーティブな材料開発、分析・評価機能を充実し、顧客の製品開発を支援する。

 具体的には、樹脂製品のデジタル設計に対応するため、長期耐久データや高精度な機械物性データを拡充し、樹脂特有の異方性を考慮した解析などの高度なCAE解析の支援を強化する。また、自動車の電動化に伴い増加している金属をインサートした高電圧部品絶縁用樹脂成形品の冷熱時のヒートサイクルによる割れなどの課題に対応するため、高いトラッキング性や耐ヒートサイクル性をもつ材料提案や割れ防止の解析支援などに取り組む。

 自動車分野では、東レ先端材料の特性を最大限に引き出す成型加工・解析・評価機能をもつAMCEUと連携することで、東レの材料に合わせた工法・構造設計機能の提案や欧州自動車メーカー、部品メーカーとの共同開発など、欧州のニーズを捉えたテクニカルソリューション提供を一層強化していく。

 欧州自動車産業は、CO2排出量削減などの環境規制強化に伴い、開発リソースを電動化と自動運転技術にシフトする動きが加速し、電子制御・通信関連部品市場拡大による高機能樹脂の継続的な需要の伸びが見込まれている。また、電気・電子機器、住宅関連部品などの産業用途についても、耐熱性・耐薬品性の要求を満たす高機能樹脂の引き合いが強い。

 東レは同センター開設により、現地ニーズを迅速に把握し、ソリューション提案を推進することで、顧客の満足度向上と自動車用途を中心とした樹脂事業のグローバルな拡大を加速する。

東レ 三島工場のフィルム開発専用機が本格稼働を開始

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2021年6月16日

 東レはこのほど、高度化・多様化するフィルム市場のニーズに対応した高機能フィルムの開発力を強化するため、三島工場に独自のフィルム開発専用機を導入し、本格稼働を開始したと発表した。

 開発専用機は、東レの強みである高精度ナノ積層、「ナノアロイ」、高機能ナノコーティングなどの要素技術や多様なフィルム設計技術を適用することで、幅広いフィルム開発への対応を実現。また、実生産機に近いマシンサイズとクリーンルーム環境を兼ね備えた設計としている。

 これまでの量産機による開発では、設備の稼働状況や仕様によって試作タイミングや適用可能な技術に制約があり、開発サンプルの提供に時間を要することがあったが、開発専用機を活用することにより、研究レベルの小型パイロット機での、新技術・新製品コンセプトの創出から量産レベルの生産技術確立までの開発期間を大幅に短縮することが可能となる。

 同社は、今回の開発専用機導入により、電子デバイスやディスプレイ向けの高品位・高精細化を追求した新フィルムの開発に加え、今後の成長が期待される自動車、エネルギー、環境・ライフイノベーション分野に向けて革新的な新技術・新製品の開発を加速する。そして市場ニーズを先取りした提案を積極的に進めることで、高付加価値市場でのさらなる事業拡大を目指す。

 

東レなど グリーン水素PJ、P2Gシステムの試運転を開始

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2021年6月8日

 東レなど4者は7日、甲府市米倉山(こめくらやま)の電力貯蔵技術研究サイトで共同技術開発を進めてきた、再生可能エネルギーの電力でグリーン水素を製造し、化石燃料の利用を低減させることを目的としたプロジェクト「H2-YES」(エイチ・ツー・イエス)について、P2G(パワー・ツー・ガス)システムの試運転を開始したと発表した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である同プロジェクトには、東レのほか、山梨県、東京電力ホールディングス、東光高岳が参画している。P2Gシステムは、水の電気分解から水素を製造する技術。

 カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、再エネの導入拡大とGHG(温室効果ガス)削減による貢献が世界的に期待されている。特に「H2-YES」では、メガソーラーの変動する電力と、大型の固体高分子型水電解装置により水道水から水素を作り出し、水素吸蔵合金システムに水素を貯蔵するなど、安全・安心にグリーン水素を利用できるシステムを構築。将来の再エネの大量導入に併せ、様々な地域や場所への同システムの展開を目指していく。

 今回の試運転は今年秋頃までを予定しており、水素の製造や貯蔵などに係る試験調整を行いつつ、山梨県内の工場やスーパーマーケットへ輸送し利用する一貫したシステムにより、社会実証試験を全国に先駆けて開始する。

 今後は、段階的に水素の製造量を増加させ、年内をめどに、当初目標である「1時間あたり300N㎥、年間45万N㎥」の水素による本格的な実証試験へと移行する計画。4者は、2050年までにGHG排出を実質ゼロにするCN社会の実現に向け、「P2G」システムのさらなる高効率化・大容量化と、国内外への普及を図るとともに、エネルギー需要家の化石燃料の利用をグリーン水素に大きく転換させるため引き続き協力して取り組んでいく。

 

東レ 高熱伝導CFRP創出、金属と同等の放熱性

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2021年5月21日

ヒートマネジメント設計が可能、適用拡大を図る

 東レは19日、炭素繊維複合材料(CFRP)の放熱性を金属同等まで高める高熱伝導化技術を創出したと発表した。同技術をCFRPに用いた場合、熱源からCFRP内部の熱伝導経路を通って効果的に放熱することができ、モビリティ用途におけるバッテリーの劣化抑制、電子機器用途のパフォーマンス向上などに貢献できる。同社はすでに同技術の提案を開始。顧客ニーズに合わせてカスタマイズを行っており、数年内に製品化を目指していく考えだ。

高熱伝導化技術を適用したCFRP構造
高熱伝導化技術を適用したCFRP構造

 CFRPは軽量で高強度、高剛性の特長をもち、航空機、自動車、インフラ部材、スポーツ用品、電子機器などに広く使用されている。自動運転や電動化など、CASEに代表される次世代モビリティ用途では、充電時の発熱によるバッテリーの劣化を防ぐため、構造材料であるCFRPの放熱性向上が求められている。CFRPの熱伝導性はアルミ合金などの金属に比べ劣っているため、金属よりも熱伝導性に優れたグラファイトシート(GS)を表面や内部に配置することで放熱性を改善するアプローチが取られている。しかし、

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東レ PPS樹脂を値上げ、原燃料などコスト上昇に対応

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2021年5月21日

 東レは20日、PPS樹脂「トレリナ」を6月1日出荷分から値上げすると発表した。改定幅は、コンパウンドグレードが「50円/kg」、ベースポリマーが「80円/kg」。

 昨年秋からの自動車用途を中心とした急速な需要回復を受け、PPS樹脂の原燃料価格は上昇を継続。加えて、物流費や添加剤などの副原料価格も上昇している。同社は、あらゆる角度からコスト削減と合理化に努めてきたが、自助努力のみでのコスト上昇の吸収は限界に達しており、安定した品質での製品供給や高付加価値品の開発・提案を行う体制を維持・推進するために、今回の値上げを決定した。

東レの3月期 繊維・炭素繊維複合材が振るわず減収減益

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2021年5月14日

 東レが13日に発表した2021年3月期の連結決算(IFRS)は、売上収益は前年比10%減の1兆8836億円、事業利益28%減の903億円、純利益46%減の458億円だった。国内外ともにコロナ禍による生産活動・消費行動停滞の影響を受けた繊維や、炭素繊維複合材料が振るわず減収減益となった。

 セグメント別に見ると、繊維事業は減収減益。衣料用途は各国でのロックダウンや過剰な流通在庫から需要が低迷し、産業用途は一般資材用途が低調で販売数量が減少した。医療用白衣地やマスク用途での不織布需要の増加に加え、3Q(10-12月期)以降に自動車関連用途で回復の動きが見られたが、総量の減少をカバーできなかった。

 機能化成品事業は減収増益。樹脂事業は、コロナ禍による生産活動停滞の影響を受けたが、3Q以降、自動車メーカーの稼働や中国経済の回復を受け、需要が好調に推移。ケミカル事業は、基礎原料の市況が回復傾向となった。フィルム事業は、LIB向けバッテリーセパレータフィルムが市況価格低下の影響を受けたが、ポリエステルフィルムでは光学用途や電子部品関連が好調に推移、電子情報材料事業は、有機EL関連の需要が増加した。

 炭素繊維複合材料事業は減収・事業損失。一般産業用途では、風力発電翼用途が堅調に推移したものの、航空宇宙用途では民間旅客機のビルドレートの減少が響いた。環境・エンジニアリング事業は増収増益。水処理事業は、逆浸透膜などの需要はおおむね堅調に推移し、環境・アメニティー事業では、エアフィルターの需要が好調だった。

 ライフサイエンス事業は減収増益。医薬事業は、経口そう痒症改善薬「レミッチ」が後発医薬品発売の影響を受けたほか、昨年4月の大幅な薬価改定の影響を受けた。医療機器事業は、新型コロナ感染拡大に伴い、医療機関での不急の手術先送りの影響がある中、ダイアライザー(透析器)は国内外で堅調だった。

 なお、2022年3月期の連結業績は、売上収益13%増の2兆1200億円、事業利益33%増の1200億円、純利益75%増の800億円を見込む。

 

東レ 界面自由エネルギー予測技術を開発、技術進歩賞に

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2021年4月21日

 東レはこのほど、「分子シミュレーションを用いたフッ素ポリマーの界面自由エネルギー予測技術の開発」で、日本化学会から「第26回技術進歩賞」を受賞した。同社の受賞は6年ぶり6度目となる。

日本化学会の技術進歩賞を受賞
日本化学会の技術進捗賞を受賞

 今回の受賞は、スーパーコンピュータを活用した大規模な分子シミュレーションにより、フッ素ポリマーの接触角と液体の界面自由エネルギーを定量的に予測することに世界で初めて成功し、分子レベルでの表面構造設計技術を開発したことで開発期間の短縮が期待される点が評価された。

 界面自由エネルギーは、吸着・接着・毛管現象など多様な現象を支配することで知られている。中でも吸着は分離膜の分離性能を決定する主要因であり、水処理膜のファウリング(汚れ成分の膜表面への吸着が引き起こす目詰まり)や気体分離膜の分離性能を左右するガス分子の膜への吸着など、分離の基礎科学を理解する上で重要な熱力学量。

受賞対象となった液滴シミュレーション
受賞対象となった液滴シミュレーション

 界面自由エネルギーの評価には一般的に接触角測定が利用され、簡便な測定手法ながら表面の官能基や形状を高精度で測定できる。しかし、マクロな接触角とミクロな分子レベルでの表面構造との相関の明確化が容易ではないため、分離膜設計のコンセプト実証は試行錯誤的に進めざるを得ず、開発期間が長期化する一因となっていた。

 東レは、NEOD(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」の、先端素材高速開発技術研究組合に参画。名古屋大学との共同研究を通じて、長年培ってきた独自の分子シミュレーション技術を深化させ、モデル材料として水処理膜製造に用いられるフッ素ポリマーを選択し、大規模分子シミュレーションによる界面自由エネルギーの定量的予測を実現した。

 同技術は、分離膜だけでなく界面接着強度の制御などにも応用可能であり、汎用的な高分子表面の設計技術となり得るため、将来にわたり高分子素材産業の発展に大きく貢献していくことが期待される。同社は今後、シミュレーションやインフォマティクスを活用したデジタル材料設計の発展を進めていく。

東レなど P2Gシステムの実用化、基本合意書を締結

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2021年4月19日

 東レ、東京電力ホールディングス、山梨県の3者はこのほど、甲府市米倉山(こめくらやま)の電力貯蔵技術研究サイトで技術開発を進めてきたP2G(パワー to ガス)システムの成果を発展させ、さらにカーボンニュートラル(CN)の実現を目指した新たな事業への挑戦に向け、共同事業体の設立を検討していくことについて合意した。

 2016年度から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、3者が共同で技術開発を行ってきたP2Gシステムは、大型の水電解装置や水素出荷設備などの施設全体がおおむね完成。今年6月から、山梨県内の工場やスーパーマーケットで水素を利用する実証試験を全国に先駆けて開始する。

 こうした中、P2Gシステムの技術をさらに発展させ、山梨県内外での水素供給事業を可能にするとともに、国が創出する新たな基金事業へも積極的に取り組んでいくため、今回の合意に基づき、共同事業体「やまなし・ハイドロジェン・カンパニー(YHC)」(仮称)の設立に向けた検討を進める。

 山梨県は、2050年までに温暖化ガスを実質ゼロにする脱炭素社会の実現に向け、P2Gシステムの実用化を加速し県内外への普及を図る。そして、さらなる高効率化・大容量化に向けた技術開発を進め、エネルギー需要家の化石燃料の利用をグリーン水素に大きく転換させ、新たな水素エネルギー産業の創出を目指す。

 東京電力HDは、非化石エネルギーの推進を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、産業部門の電化や水素の技術開発により、脱炭素社会の実現に貢献していく。

 東レは、「サステナビリティ・ビジョン」の中で、2050年に温室効果ガスの排出と吸収のバランスのとれた世界などを目指すことを掲げ、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決を通じて社会に貢献することを目指している。電解質膜、電極基材などの水電解・水素圧縮や燃料電池向け材料の開発、製造および販売を通じて、CNを可能とする水素製造(水電解)や水素インフラ(圧縮・貯蔵)、水素利用(燃料電池)技術の発展に貢献していく。