【カーボンニュートラル特集】マイクロ波化学

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2021年11月12日

代表取締役社長 吉野 巌氏

マイクロ波により、化学産業の製造プロセスに革新を起こす

 電子レンジで使われているマイクロ波(電磁波)は、物質を直接・瞬時に加熱できる、極めて高効率なエネルギー伝達手段。近年では、地球温暖化問題を契機に環境意識が高まっており、CO2削減に貢献できるマイクロ波技術に注目が集まっている。

 2007年に設立されたマイクロ波化学は、化学産業にイノベーションを起こすことをミッションに掲げている。化学産業では外部から加熱してモノを作るプロセスが100年以上変わらずに使われており、マイクロ波技術に転換することでエネルギーの効率化、省エネ、環境負荷の低減が期待できる。カーボンニュートラル(CN)がフォローの風となり大きなビジネスチャンスを迎えている中、吉野巌社長に、これまでの取り組みや今後の展望などを聞いた。

吉野 巌社長

 ━会社の概要をお聞かせください。

 当社は、マイクロ波をキーワードに研究開発を行い、技術プラットフォームを確立した。それをベースに反応系と装置をデザインし、マイクロ波プロセスとして提供している。

 技術の基盤は、物理と化学と化学工学だが、ラボ実験から工場立ち上げまでカバーするため、当社には多様な人材が揃っている。社員約60名のうち、技術系は物理と化学領域のサイエンティストと、エンジニアが半分ずつ在籍している。

 技術の導入・実施にはエンジニアリングが重要であるが、シミュレーションの専門家も必要となる。足元では、多様な案件に適用することで、汎用化に向けた技術プラットフォームのさらなる強化に取り組んでいる段階だ。また、科学的知見も重要となるため、

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【カーボンニュートラル特集】リファインバース

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2021年11月12日

常務取締役 加志村 竜彦氏

廃棄処理困難物を技術力で再生、廃プラ回収でCRにも貢献

 カーボンニュートラル実現のためには、原燃料のグリーン化とともに、循環経済(サーキュラーエコノミー)の構築がカギを握る。プラスチックをリサイクルしていくためには、廃プラを分別・回収する工程の重要性が増しており、動脈産業と静脈産業が一体となってバリューチェーンを構築する必要がある。

 産廃業とリサイクル業の両方の顔を持つリファインバースは、タイルカーペットやナイロン漁網のリサイクルを手掛けており、豊富なノウハウや高い技術力をもつ。昨年には三菱ケミカルが出資し、今年8月にはケミカルリサイクルでの協業を発表するなど注目を集めている。同社でリサイクルの事業開発に取り組む、加志村竜彦常務に話を聞いた。

加志村 竜彦常務取締役

 ━リファインバースの概要をお聞かせください。

 当社の前身は産業廃棄物処理業であり、主にオフィスなどの内装関係を強い分野とし、廃棄物の回収・処理を行ってきた。ただ、オフィスから大量に発生するプラスチックや繊維系といった軟質系の産廃物は、破砕機に絡まるため、業界的には処理困難物として扱われる。

 こうした中、当社は、埋め立て処分するしか方法がなかったタイルカーペットに注目し、

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【カーボンニュートラル特集】アールプラスジャパン

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2021年11月12日

代表取締役社長  横井 恒彦氏

バリューチェーン一体で廃プラCR支援、27年商業化目指す

 カーボンニュートラルを実現する上で、リサイクルの技術革新は欠かせない。使用済みプラスチック再資源化事業の商業化を目的に、2020年4月、サントリーMONOZUKURIエキスパートが中心となり、12社共同出資で「アールプラスジャパン(RPJ)」が設立された。米国バイオ化学ベンチャー・アネロテック社が進める、廃プラを原料に芳香族とオレフィンを生産するケミカルリサイクル(CR)技術の開発を全面的に支援し、2027年の日本での社会実装を目指している。

 現在、参画企業は32社にまで増え、川上の化学メーカーから容器・包装会社、ブランドオーナー、小売り、リサイクル会社とバリューチェーンを構成する各社が名を連ねる。RPJ社長は、サントリーMONOZUKURIエキスパート執行役員の横井氏が務める。会社設立の経緯や技術の強み、今後の展開などを聞いた。

横井 恒彦社長

 ━RPJ設立経緯についてお聞かせください。

 発端は2011年にまで遡る。当時サントリーグループ(以下、サントリー)は、ペットボトルを石油由来ではなく、別の素材でできる技術はないかと様々な可能性を調査していた。トウモロコシやサトウキビを原料に、液相での化学変換法でバイオペットボトルを作る技術は知られていたが、サントリーとしては、環境負荷への配慮から

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【ポリカーボネート特集6】SABIC(SHPPジャパン)

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2021年10月8日

高機能化とソリューションで、二桁成長を実現

 SABIC(サウジ基礎産業公社)は、2007年にGEプラスチック事業を買収し、イノベーティブプラスチックス事業部として35カ国で展開。ポリカーボネート(PC)の生産能力は、世界4拠点(米国とEUが各約50万t、中国とサウジアラビアが各約25万t)で約150万tとみられる。

 日本においては、1968年に、GEと長瀬産業の代理店契約により高品質PC「レキサン」の市場開発とコンパウンディングをスタートさせ、

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【ポリカーボネート特集5】出光興産

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2021年10月1日

コスト競争力と独自技術で、2桁成長を目指す

 出光興産は、1964年に独自の連続生産技術により徳山工場でポリカーボネート(PC)生産を開始。1975年には三菱化成に技術供与し、1985年に千葉工場で生産を始めた。

 その後、事業環境の悪化から日本での生産を停止し、2015年に台湾のフォルモサケミカルズ&ファイバー(FCFC)でのライセンス生産に集約。巨大コンプレックスでの生産により、原料ビスフェノールA(BPA)や用役など、製造コストの面で競争力を高めた。

 FCFCは年産20万tの生産能力をもち、

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【ポリカーボネート特集4】住化ポリカーボネート

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2021年9月27日

PCの特性生かし、光制御技術・製品開発に注力

 住化ポリカーボネートは、1996年に住友化学とダウ・ケミカルの合弁会社・住友ダウとして商業生産を開始。2011年にポリカーボネート(PC)事業のスタイロン社(現トリンセオ)への譲渡により住化スタイロンポリカーボネートに社名変更し、2017年に住友化学100%出資会社となり現在の社名となった。

 愛媛工場に8万tの生産能力をもち、コンパウンドについては、大ロットは愛媛工場で、小ロットや海外顧客には日本、中国、ベトナムの外注工場などで対応している。供給先については、日本を含めた東アジア(中国、台湾、韓国)が多く、東南アジア各国にも輸出。アジア市場は

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【ポリカーボネート特集3】帝人

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2021年9月17日

新たな市場ニーズに対応、高付加価値化の推進

 帝人は1960年に日本で最初にポリカーボネート(PC)の商業生産を開始し、1999年にはシンガポール、2005年からは中国へと樹脂の生産拠点を拡大した。その後シンガポールからは撤退し、現在は日本12万t、中国16万t、計28万tで世界第5位の生産能力を保有するとされる。

 PC樹脂「パンライト」と、ABS樹脂とのポリマーアロイ「マルチロン」の2つの製品群を展開している。光学用途に特化した「パンライトSP」シリーズは高屈折率・低複屈折といった特長があり、カメラの薄型化・高画素化に貢献。スマートフォンのカメラ向けに引き合いが強いが、要求特性の多様化に合わせた新グレードの開発に取り組んでいる。

 それに対し、独自開発した「マルチロン」は、PCとABS樹脂の両方の特長を兼ね備えており、

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【ポリカーボネート特集2】三菱エンジニアリングプラスチックス

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2021年9月10日

全方位で事業展開、高付加価値品比率向上で成長

 三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP)は、三菱ガス化学(MGC)と三菱ケミカルの合弁会社として1994年に設立。ポリカーボネート(PC)樹脂はMGCの「ユーピロン」、三菱ケミカルの「ノバレックス」、DSMから継承した「ザンター」の3ブランドで、樹脂販売とコンパウンドの製造・販売を行い、その売上高はMEP全体の7割を占める。グループのPC樹脂生産能力は、世界5拠点(日本20万t、タイ17万t、中国14万t、韓国6万t、オランダ3.5万t)の合計60.5万t。世界第3位に位置し、日本国内ではトップシェアを握っている。

 同社は3ブランドを擁し、幅広いラインアップと市場浸透により、汎用品から機能品までオールラウンドに事業を展開。国内の売上高については、昨年前半はコロナ禍の影響で大幅に落ち込んだものの、後半には回復。今年前半にかけては2019年の水準を超える場面もあったが、今は

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【ポリカーボネート特集1】(総論)

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2021年9月3日

足元は需給タイト、高機能・高付加価値品に注力

 ポリカーボネート(PC)は、ビスフェノールA(BPA)とホスゲンまたはジフェニルカーボネートを重合して作られるエンジニアリングプラスチック。1955年にバイエルとGEが各々単独で特許出願し、1958年にバイエルが商業生産を開始した。日本での商業生産は、1960年に帝人化成(現帝人)により始まっている。

 現在、グローバルではコベストロ(旧バイエル)とSABIC(旧GE)が2大メーカーの地位を占め、

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【夏季特集】わが国化学産業、グリーン政策で脱炭素化が加速

2021年8月10日

GHG排出削減に注力、循環型社会構築もテーマ

 わが国化学産業は、世界的にグリーン化の流れが加速してきたことで、原燃料の見直しや事業ポートフォリオ改革を迫られている。政府は昨年宣言した2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年の計画について、GHG排出削減目標を46%(2013年比)に引き上げ、エネルギー基本計画では再エネ比率を36~38%(2019年実績18%)に高めた。エネルギー多消費型である化学産業にとっては、いずれもチャレンジングな目標となっており、各社の自助努力に加え、イノベーションが必要不可欠となる。

 さらに、廃プラの利用など循環型社会構築への貢献も大きなテーマだ。ケミカルリサイクル技術を導入する動きが活発化しているが、社会実装のためには、業界の垣根を超えた連携に加え、行政のサポートがより重要になってくるだろう。今回の夏季特集では、環境対応に取り組みながら、いかに企業成長を図っていくのか、業界を代表する首脳の方々に聞いた。

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◇インタビュー◇

信越化学工業代表取締役会長 金川千尋氏
▽変化を成長の機会に、製品と技術で社会の課題解決に貢献

三菱ケミカル代表取締役社長 和賀昌之氏
▽ CN実現は官民の議論と消費行動がカギ、あらゆる可能性探る

旭化成代表取締役社長 小堀秀毅氏
▽グリーン・デジタル・パーソンを高め、社会貢献で事業成長

三井化学代表取締役社長 橋本 修氏
▽事業ポートフォリオ変革し、社会課題視点のビジネスモデルへ

昭和電工代表取締役社長 森川宏平氏
▽各事業が成長軌道に回帰、個性派企業に向け基盤整備に注力

東ソー代表取締役社長 山本寿宣氏
▽新中計も基本方針を継続、CNへのコミットは現時点で困難

JSR代表取締役社長兼COO 川橋信夫氏
▽成長事業であるDSとLSに注力、企業価値の向上に邁進

プライムポリマー代表取締役社長 藤本健介氏
▽PEメタロセン化、PPは新設備で高付加価値と環境貢献図る

PSジャパン代表取締役社長 室園康博氏
▽新中計は環境対応と能力増強がテーマ、新規難燃にも注力