宇部興産 有機系土木・建築材料開発、宇部興産建材が発売

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2020年12月23日

 宇部興産は22日、化学事業の知見を生かし、ウレタン樹脂の分子構造設計技術を土木・建築分野に展開したコンクリート構造物用の有機系表面被覆材「U-レジストクリアコート」と有機系はく落防止材「U-レジストクリアガード」を開発したと発表した。これらの製品は、土木・建築用材料を販売する宇部興産建材が11月から発売を開始している。

Uーレジストシリーズの製品群
Uーレジストシリーズの製品群

 2つの新製品は、宇部興産化学カンパニー研究開発本部の基盤技術研究所・建築インフラ研究グループが開発した新規ウレタン樹脂を使用。強靭性と高耐久性を兼ね備え、補強メッシュなしで良好なはく落防止性能を持つ。また、コンクリートの劣化因子である炭酸ガスや塩化物イオンなどがコンクリート内部に侵入することを防止するため、構造物の長寿命化を可能にする。さらに、透明塗膜であることから視認性に優れ、施工後の構造物の目視点検ができるため、コンクリートの状態の変化を早期に検知できる。

Uーレジスト 押抜き試験
Uーレジスト 押抜き試験

 宇部興産建材では、コンクリート構造物の保全・長寿命化のニーズに応えるため、これらの製品を拡販していく。

NEDO カーボンニュートラルへの先導研究の公募開始

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2020年12月22日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、「革新的環境イノベーション戦略(今年1月)」を受け、新たに「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」の技術開発の公募を開始した。

 省エネルギー・新エネルギー・CO2削減に向けた「デジタル技術を用いた強靱な電力ネットワークの構築」「最先端のGHG削減技術の活用」「最先端のバイオ技術などを活用した資源利用及び農地・森林・海洋へのCO2吸収・固定」「農林水産業での再生可能エネルギーの活用&スマート農林水産業」の4分野が対象。2030年以降の実用化を見据えた、飛躍的なエネルギー効率の向上と脱炭素社会の実現につながる革新的な技術・システム開発を目指す。期間は最大2年、1件あたり年間1億円以内。

 さらに今月下旬以降も、エネルギー・環境新技術先導研究プログラムでは「再生可能エネルギーを主力電源に」「多様なアプローチによるグリーンモビリティの確立」「化石資源依存からの脱却(再生可能エネルギー由来の電力や水素の活用)」「最先端のGHG削減技術の活用」の分野、新産業創出新技術先導研究プログラムでは「持続可能な産業発展や新需要創出につながる革新的研究開発」などについても、順次公募を行う予定だ。具体的な課題は、公募開始時点に掲載される。

 これらプログラムの実施を通じて、革新的な技術の原石を発掘し、将来の国家プロジェクト化への道筋をつけ、2050年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現やウィズコロナ/アフターコロナなど社会システムの変革につながる技術の開発を強力に推進する考えだ。

NEDOなど 微生物発酵技術で香料原料の高生産性を達成

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2020年12月21日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と地球環境産業技術研究機構(RITE)はこのほど、香料などの原料となるカテコールを微生物によって発酵生産する技術を開発したと発表した。新たに開発した複数のスマートセル基盤技術を活用して、初期生産株の約500倍となる世界最高レベルの生産濃度を達成した。

カテコール生産技術の比較
カテコール生産技術の比較

 香料の原料や半導体の加工材料として需要が高いカテコールなどの芳香族化合物は、主に石油を原料とする。バイオマスなどの再生可能資源を原料とするには糖の微生物発酵法があるが、カテコールなどの芳香族化合物は微生物毒性があり、生産代謝経路が長く複雑なため、実用生産は困難である。

 両者は2016年度から「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」に取り組み、「スマートセルインダストリー」の創生を視野に入れ、スマートセルの基盤技術の確立を目指している。

 研究開発成果
研究開発成果

 RITEは微生物の物質生産性向上のために、情報解析による基盤技術の高精度化と有効性の検証を行ってきた。これら基盤技術を使い、カテコールの効率的生産のために設計した代謝経路をコリネ型細菌の細胞内に再現することで、カテコールの高生産株を開発した。手法の異なる複数の基盤技術を活用することで生産性は段階的に向上し、カテコール生産濃度は初期生産株の約500倍に達した。これは発酵生産による世界最高レベルの濃度だ。これにより、これまで石油原料に依存していたカテコール製造を再生可能資源由来に転換でき、環境に配慮した持続可能な生産への効果が期待できる。

 今後NEDOはこれを先行事例として、生物機能を活用して高機能化学品や医薬品などを生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」の実現を目指す。またRITEはこの技術をベースに、さらに生産株へ改良を加えるとともに、大量生産法の開発などを進めて早期の実用化を目指す。

ENEOS SSで初期費用ゼロ円ソーラーサービス開始

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2020年12月21日

 ENEOSはこのほど、ENEOSサービスステーション(SS)を対象に、自家消費支援事業「ENEOS初期費用ゼロ円ソーラーサービス」の展開を開始した。「ENEOSでんき」に加入したSSは、初期費用「ゼロ円」でSS事務所棟屋根に太陽光発電設備を設置でき、SSで使用する電力の一部を自家消費に充当できるもの。

トライアルの様子=条南SS(大阪府:ENEOSジェネレーションズ)
トライアルの様子=条南SS(大阪府:ENEOSジェネレーションズ)

 同社は、分散電源の活用を中心とした次世代型エネルギー供給・地域サービス事業を成長事業の1つと位置づけており、自社リソースを活用したエネルギーサービスの創出を目指して、「自家消費支援事業の推進」を掲げている。今回、自家消費支援事業としては初めて、自社リソースを活用したSS向けサービスを展開。同事業の推進による分散電源の普及拡大は、現在実証に取り組んでいるVPP(バーチャルパワープラント)事業への将来的な活用が期待される取り組みとなる。

 今年6月からトライアルを進め、今回の本サービスの開始にあたり、ENEOSフロンティア、ENEOSジェネレーションズと契約を締結。今後は関東・中部・関西エリアで、両社の運営する100カ所のSSを対象にサービス展開を進めていく。さらに、来年度からは全国のSSへと順次拡大を図る考えだ。

三菱ケミカル MCASが気候変動アクション環境大臣表彰に

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2020年12月21日

 三菱ケミカルはこのほど、グループ会社である三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(MCAS)が、環境省から「令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞したと発表した。

気候変動アクション環境大臣表彰
気候変動アクション環境大臣表彰

 環境省では今年度より、気候変動の緩和と気候変動への適応に顕著な功績のあった個人または団体に対し、その功績をたたえる「気候変動アクション環境大臣表彰」を実施。今回、MCASがケニアやミャンマーで行ってきた塩水化・高濁表流水の浄化事業の活動が評価され、同表彰の普及・促進部門(適応分野)で受賞者の1つに選定された。

ケニア住民の間で浄化された水は喜ばれている
ケニア住民の間で浄化された水は喜ばれている

 MCASが事業を展開するケニアやミャンマーでは、気候変動の影響を受け、乾季の河川水位低下に伴う海水遡上(表流水の塩水化)や、雨季の長期化による表流水の高濁度化が深刻化。MCASでは、このような水質が不安定な水源に対し、これまで培ってきた水処理技術を活用して、飲用に適した安全な水を提供するための事業を行っている。また、膜ろ過プラントの運転・維持管理については、現地の水道公社職員に技術移管するだけでなく、遠隔監視システムにより、日本からもモニタリングや技術サポートを行える体制を構築している。

 MCASでは今後も、安全・安心な水の供給を通じて、三菱ケミカルホールディングスグループの目指す「KAITEKI」の実現に貢献していく。

 

NEDOら 世界初の新ゲノム編集技術で植物遺伝子改変

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2020年12月18日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と徳島大学はこのほど、世界で初めて、新しいゲノム編集ツールCRISPR-CasタイプI-D(TiD)が植物細胞の遺伝子改変技術として有効であることを実証したと発表した。海外のゲノム編集知財に抵触せず、現行のゲノム編集技術CRISPR-Cas9と比べて標的以外のDNA配列の変異リスクが低く、より広範囲な様式の変異をゲノムに導入できることが確認された。

 植物や微生物の細胞がもつ物質生産能力を人工的に最大限引き出した生物合成技術「スマートセル」により、生産が難しい有用化合物の創製や生産性をより向上させた合成技術の開発など、物質生産での基盤技術と実用化技術開発を目的に「植物などの生物を使った高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」を2016年から推進してきた。その中でゲノム編集は遺伝子機能を改良する重要な技術だが、海外の知的財産権であるため活用しにくい。

 徳島大学は、機能が不明でゲノム編集には使われてこなかったTiDに注目。標的の認識やDNA切断のメカニズムを明らかにし、ゲノム編集ツールとして利用できることを見出だし、植物細胞の遺伝子改変に世界で初めて成功した。既存技術と比較して、導入できる変異の様式が多様で、標的以外のDNA配列に変異が起こるリスクが低いことも確認。海外のゲノム編集知財にも抵触しない。動物や微生物など様々な生物遺伝子の機能改変も可能だ。日本のバイオインダストリー推進の原動力として期待される。

 今後、徳島大学はTiDの変異導入効率の向上や、様々な機能ドメインを付与した多様なゲノム編集のツール化を進める。NEDOは後継事業「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発(バイオものづくりプロジェクト)」を今年度より立ち上げ、原料供給から最終製品のスケールアップにいたるボトルネックの解消を進めていく。

 

DSM 世界最強繊維「ダイニーマ」、日本展開を加速

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2020年12月18日

 DSMはこのほど、来年1月より世界最強・最軽量繊維「ダイニーマ」のブランドキャンペーン「With you when it matters」を始動すると発表した。広告展開や、You Tube、SNSを活用するとともに、今年からブランドサイトをオープンする。

 同社は今年5月より、専任チームを設けて日本市場での本格展開に着手。ターゲットとする顧客やパートナーと連携する形で営業活動を進め採用実績を増やしてきた。今後は、同キャンペーンにより顧客企業や利用業界の門戸を広げ、より強力に日本市場での販売と用途を拡大し市場定着を図る。

 「ダイニーマ」は、鉄の15倍の強度をもち、水に浮くほど軽い。ロープや網、生地などの素材として、船舶・港湾や洋上風力発電、食肉加工、建築(ロープ・スリング・チェーン)、漁業(網)、安全衛生、アパレル、アウトドアやスポーツ(生地)などで活躍が期待されている。過酷な環境下では、装備や道具のわずかな違いが大きな結果の違いを生み出す。例えば、繊維一本の断裂や数センチのへこみが安全にかかわる場面、わずか数秒を追求するスポーツの場面、重さや丈夫さの違いが快適さや利便性を劇的に変える場面などでは、妥協せず素材を選び抜いてこそ、装備や道具が真価を発揮し、最高のパフォーマンスを引き出す。

 DSMは、今回のブランドキャンペーンの一環として、今後、これまで海外で実績のある多くの採用事例をYouTubeやSNSを通して紹介。妥協せずに素材を選ぶ大切さ、そして「ダイニーマ」を選んでこそ発揮される装備や道具の真価を訴求し、日本市場でのブランド構築を図る。

ENEOS クレジットカードで緑化、植林などに寄付

2020年12月18日

 ENEOSはこのほど、個人向けクレジットカード「ENEOSカード」会員が同カードでENEOSサービスステーションを利用した金額の0.01%に相当する約1700万円を、2020年度上期分として公益社団法人国土緑化推進機構に寄付したと発表した。

栃木県足尾町での植樹の様子(写真提供:国土緑化推進機構)
栃木県足尾町での植樹の様子(写真提供:国土緑化推進機構)

 同社は、2001年から「ENEOSカード」による緑化推進活動を実施しており、これまでに累計で約5億8000万円の寄付を行っている。寄付金は、同機構が実施する植林作業や青少年による緑化活動、熱帯林の再生、砂漠化防止など、様々な環境支援活動の資金に充てられている。

 ENEOSは今後も、同社グループ理念、行動基準に定める「環境保全」「市民社会の発展への貢献」活動を積極的に推進し、国連SDGs(持続可能な開発目標)で定める「気候変動対策」や「陸の豊かさ」の実現に貢献していく考えだ。

 

PSジャパン ケミカルリサイクル実証化設備の検討開始

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2020年12月18日

 PSジャパンは17日、東芝プラントシステムのケミカルリサイクル(CR)実証化設備を水島工場(岡山県倉敷市)に建設する検討を開始したと発表した。基本設計に入る契約を東芝プラントシステムと締結しており、2022年3月の完工を目標にしている。

 CR実証化設備では、使用済みポリスチレン(PS)製品を熱分解し、原料であるスチレンモノマー(SM)に戻すモノマー還元を行う。すでに、取引先からは実証化への協力の申し入れもあり、設備の完成後に直ちに実証運転を経て実装化を目指していく。

 PSは無味無臭で、燃やしても有害ガスが発生しない安全なプラスチック。食品容器に適していることに加え、発泡性に優れることから容器・製品の軽量化に役立っている。また、断熱材の用途では軽量で高断熱な特性を生かして、環境負荷の低減にも貢献している。さらにPSは、少ないエネルギーで分解ができることからCRがし易いといった特徴がある。PSジャパンは、使用済みPS製品をSMに戻す設備を導入していくことで、スチレン資源循環を実現させ、持続可能なものづくりに取り組んでいく。

 同社はPS樹脂の製造販売会社として、顧客の視点を心掛け、安心と価値を提供していくとともに、将来世代への責任を果たすため、真剣かつ積極的にプラスチックの環境問題に対応していく考えだ。

ポリスチレンのリサイクル模式図
ポリスチレンのリサイクル模式図

産総研など 新型コロナ外出自粛による省エネ効果を推定

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2020年12月17日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、明星大学、ドコモ・インサイトマーケティングとともに、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛による人口変化が、大阪市のオフィス街と住宅街の気温と電力消費量に及ぼす影響を推定したと発表した。日中人口が約7割減少したオフィス街では電力消費量を40%(床面積1㎡あたり12W)、人工排熱を42%(土地面積1㎡あたり76.3W)押し下げ、その結果気温は0.13℃低下したと推定。一方、人口が微増した住宅街では電力消費量が18%(床面積1㎡あたり1.4W)増加したが、気温は外出自粛前と変わらなかった。

 オフィス街の気温・電力消費量の低下は、昨年開催されたG20大阪サミットの交通・出勤規制による低下量のそれぞれ3倍、10倍で、電力消費低下量は東日本大震災に伴う夏の節電対策効果に匹敵した。なお、この気温低下量は、日本各都市の気温観測値から得た先行研究による統計的推定値と矛盾しない。

 産総研と明星大学は、都市部の人間活動と気象・気候の関係に長年取り組み、世界初の数理モデル「都市気候モデル」を開発。これを気象学の領域気候モデルと統合し、電力消費実測値との比較などを通して「都市気候モデル+人口データ」に大幅改良した。

 人間活動の把握はドコモ・インサイトマーケティングの「モバイル空間統計(500mメッシュ・1時間毎)」で行い、空調使用スケジュールや人体からの排熱量などのパラメータに反映させた。公開・測定されていない都市街区の数百m~数Kmスケールの電力消費量と気温の推定、人間活動が変化した際の電力消費量や気温への影響を評価できる点に意義があり、都市の気候と電力消費量の将来予測、都市計画や都市部の気候変動適応策の評価にも応用できる。

 今回テレワークなどの人間活動の変化により、都市部の省エネとヒートアイランド緩和が実現できることが示唆された。「新たな日常」での都市の気温と電力消費の予測に有用で、気候変動に備えた都市部の適応策の評価・提案への貢献も期待できる。

 今後は首都圏や国内外都市に適用し、外出自粛の影響を広域的に見積り、人間活動と都市の気候の関係を体系化する。また外出自粛が熱中症指数に及ぼす影響も調査し、気温や電力消費量に留まらない総合的な気候変動適応策の提案に繋げる考えだ。