日本触媒 抗ウイルス効果の新規コーティング材を共同開発

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2022年1月11日

 日本触媒と大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の宇山浩教授のグループは7日、様々な素材表面に抗菌および抗ウイルス効果の付与が期待できるコーティング材料を共同開発したと発表した。新たに開発したコーティング材料は、フタロシアニン金属錯体による抗菌・抗ウイルス効果と、酢酸セルロースによる接着機能を発現する。

新規コーティング材を塗布したアクリル板

 両者は、同研究科に設置した「日本触媒協働研究所」を拠点に共同開発を進め、様々な細菌・真菌・ウイルスを不活化することが可能な一重項酸素を発生する光増感剤に着目。既存の光増感剤を比較評価したところ、一重項酸素放出能とその安定性の観点で、フタロシアニン金属錯体が最適であることを見出した。

 さらに、日本触媒でこれまで培った赤外線カットフィルター用などの色素の設計技術を駆使してフタロシアニンの構造を最適化。酢酸セルロースへの分散性が高く、かつ長期間にわたり一重項酸素を生成可能なフタロシアニン金属錯体を開発した。

 同開発品をコーティングしたアクリル板の抗ウイルス性能をISOに規定する試験方法で評価したところ、ヒトコロナウイルスを99.9%以上不活化することを確認。抗ウイルス効果をもつコーティング材料として衛生対策が必要な幅広い用途への利用が期待される。

 両者は今後も、同協働研究所内で、同研究科の最先端の学術的な知見や情報技術基盤と、日本触媒の触媒、有機合成、高分子合成などの保有技術の融合を図るとともに、データサイエンスを活用することで、革新技術の創出と事業創出、そして研究人材の育成を推進していく。

 

花王 持続可能なプラ資源循環プロジェクトに参画

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2022年1月7日

 花王はこのほど、商業施設から発生するプラスチックの回収・リサイクルを東京都全域に拡大する「POOL PROJECT TOKYO」に参画すると発表した。

 資源循環プラットフォームサービスや資源循環コンサルティングを提供するレコテックが開始した事業で、東京都の「プラスチック資源循環に向けた革新的リサイクル技術・ビジネスモデル推進プロジェクト」にも採択され、東京都と共同して使い捨てプラスチックの削減と、プラスチックの資源循環を促進していく。東京都内の商業施設から発生した廃プラスチックを効率的に回収し、高度マテリアルリサイクルを行う。

 再生されたプラスチックは、発生元から輸送・減容・加工など全過程でのトレーサビリティがとれたPCR(ポストコンシューマーリサイクル)材「POOL樹脂」として製造業者へ販売するとともに、同樹脂を活用した製品開発・ブランディングを行う。また、汚れが付着したり分別が難しいプラスチックは、一部ケミカルリサイクルのテストを実施し、汚れ具合や分別精度による物流・保管を含めたリサイクル工程や成果物の検証を行う。

 花王は、得られた再生プラスチックの物性評価と容器包装への適用検討を担当する。

産総研 酸化物系電解質材料で全固体LIBが室温作動

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2021年12月28日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、次世代リチウムイオン電池(LIB)である酸化物系全固体電池用の高容量正極と負極を開発した。高エネルギーで安全なLIBに向けての前進だ。

 全固体LIBは複合正極層・隔離層・複合負極層からなり、リチウム(Li)イオンが各層内の固体電解質粒子を介して移動することで充放電する。正極層に高エネルギー密度の硫黄(S)、隔離層に硫化物、負極層にLiを使った全固体リチウム硫黄電池は、現行LIBに比べてエネルギー密度が大幅に向上するが、充放電で負極のLi金属が針状に成長(デンドライト成長)して短絡すること、硫化物系電解質が空気中で分解して有毒な硫化水素を発生することが問題である。正・負極をLi2SとSiにすることでデンドライト成長を抑制。酸化物系固体電解質粒子は有毒ガス発生の危険性は低いが、一般的に硬く粒子間の接触が悪いため、高容量活物質で反応性の低いLi2O・Si電極での室温作動の報告はない。

 産総研は、酸化物系固体電解質(Li2SO4‐Li2CO3‐LiX)が変形性とイオン伝導性が高いことを発見したが、フルセルの室温試験での性能は不十分であった。今回、比較的イオン伝導率の高い酸化物系固体電解質としてLi2O‐LiIガラスに注目し、その原料(Li2O、LiI)と電極活物質(正極はLi2S、負極はSi)、カーボンなどの導電材料を一括混合・メカニカルミリング処理し、電極内固体電解質材料合成と電極合材の複合化を同時に行った。

 Li2SとSiは結晶構造が壊れても充放電特性の低下がないため、微細化することで電池特性が向上。またこの製造方法により活物質粒子‐固体電解質粒子間、固体電解質粒子間の接点が大幅に改善された正極・負極合材を得た。さらに、常温プレスのみで電極を形成でき、生産性は高い。隔離層に硫化物系固体電解質材料(Li3PS4‐LiI)を用いたフルセル試験では、25℃でエネルギー密度283Wh/㎏と、現行の液系LIBとも比肩し得る値を示した。

 今後は電解質材料の充放電サイクル安定性とイオン伝導率の改善、活物質増量によるエネルギー密度の向上、薄膜化を検討する。産業界のパートナーと連携し研究を加速し、全固体リチウム硫黄電池の早期実現を目指す。

BASF 産業規模のガス精製で組成をリアルタイム分析

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2021年12月28日

 BASFはこのほど、CO2分離・回収設備の商用初号機を設置したアンモニア工場の立ち上げから50年を迎えた。以来、ガス精製分野の革新と成長を追求し、天然ガスや合成ガスを使用するために特定成分を安全に除去するガス精製技術、さらに製油所の排ガス、燃焼排ガス、バイオガス向けなど様々なガス精製ソリューションを開発・提供。世界中で500超の採用実績がある。

 10年前から「OASE(オーエイス)」ブランドで、技術・ガス吸収液・包括的サービス一式を提供。ガス精製効率が高く、資源の保全・省エネルギーによるCO2排出量削減に貢献し、同社ポートフォリオの中でサステナビリティに大きく貢献する「アクセラレーター」製品の1つになっている。

 一昨年には革新的デジタルプラットフォーム「OASE connect」を構築。シミュレーションツールによるプラント運転の最適化とサンプル分析結果の保存、eラーニング教材によるガス精製技術の学習ができる。また昨年、米エクソンモービル社と共同で高エネルギー効率のCO2排出量削減と硫黄回収のためのガス精製技術「OASE sulfexx」を開発した。

 今年発表予定の「OASE digilab」は、ガス精製効率をさらに向上させる。BASFグループのtrinamiX社(ドイツ、ルートヴィッヒスハーフェン)と共同で、ガス吸収液の状態をほぼリアルタイムで分析する方法を開発。モバイル型近赤外分光器とデータ分析技術を組み合わせ、サンプル組成を定性・定量的に分析判定する。

 これにより、ガス精製条件を継続的にモニターし、最適な吸収液で稼働できる。ガス中のCO2や硫化水素などの酸性ガスは、吸収塔の中でガス吸収液と向流接触し、吸収液と反応して分離される。酸性ガスを吸収した吸収液は、再生塔で加熱されて酸性ガスを分離。その後冷却して吸収塔に再循環させる。分離回収されたCO2は純度が高く、化学合成用途にも使用できる。

 「OASE」ガス精製プロセスは省エネルギーで可用性が高く、大量の高純度ガスを提供する。また、特定のガス成分の選択的分離回収も可能。ガス吸収液は安定性が高く耐用年数が長いため、補充量も最小限で済むとしている。

三井化学 J‐CEPに参画、CEに向けた産官学民連携

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2021年12月28日

 三井化学はこのほど、サーキュラーエコノミー(CE)の推進に取り組む産官学民連携の新事業共創パートナーシップ「ジャパン・サーキュラ―・エコノミー・パートナーシップ」(J‐CEP)に参画したと発表した。

サーキュラーエコノミーの推進に取り組む産官学民連携の新事業共創パートナーシップ

 今年10月20日に旗揚げしたJ‐CEPには、事務局となるアミタホールディングス、NECソリューションイノベータをはじめ、30社が加盟(12月15日時点)、三井化学は幹事会社(全5社)を務めている。

 「ものと情報と気持ちがめぐる社会」を目指し、ものに付随する情報や関わる人の動機性までも「資源」と捉え、ICTなどを活用して再構築することで、①日本国内の資源の最適循環②持続可能社会の実現に資するビジネス創出、に取り組み、環境と経済が両立する社会の最適解を導くことが目的。

 活動第1弾として、兵庫県神戸市とアミタが主体となり進める「プラスチック資源に特化した回収ステーション」に、J‐CEPが連携団体として参画中だ。11月4日から約3カ月間、同市長田区にあるふたば学舎(コミュニティ施設)にコミュニティスペースを備える資源回収ステーションを設置。プラスチックを中心とした資源を、リサイクル後の利用目的に応じて品目別に回収し、併せてリユース品の回収・交換スペースの設置や、資源回収量に応じた寄付などを実施することで、同市のプラスチック再資源化率向上と、互助・共助のコミュニティづくりを進めている。

 その中で三井化学は、〝神戸市の「まわり続けるリサイクル」の推進に資するマテリアルリサイクル(MR)〟の実施を予定。具体的には、回収したプラ資源を三井化学の技術を活用してMRの検討を行い、ふたば学舎で利用するベンチを作成するための実証実験を計画している。

神戸市で取り組む資源回収ステーションの全体図 ©J-CEP

中外製薬 アジア国際共同研究「A‐TRAIN」に参画

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2021年12月28日

 中外製薬は27日、国立がん研究センターと共同研究契約を締結し、同センター中央病院が中心となって進めるアジア多施設共同前向き研究「A‐TRAIN(エー・トレイン)」に参画したと発表した。

 エー・トレインは、アジアでの発生頻度が高い6種類の難治がん(子宮頸がん、卵巣明細胞がん、卵巣がん、上咽頭がん、子宮体がん、トリプルネガティブ乳がん)に対して、リキッドバイオプシー検査による遺伝子解析および臨床情報を合わせたデータベースを構築・解析する国際共同研究。同研究を通じ、治療標的となりうる遺伝子異常の特定や治験の実施につなげることで、アジア地域に多い難治がんに対する個別化医療の基盤構築および治療薬の研究開発を推進することを目指す。

 共同研究で中外製薬は、ロシュ社と協働の上、卵巣がんコホートにおける遺伝子解析検査として、血液を用いたリキッドバイオプシー検査である「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」を提供する。

 奥田修社長CEOは「アジア諸国におけるがんの問題は深刻さを増しており、質の高いがん治療の実現は重要な課題だ。今回研究が、この地域におけるがん個別化医療の基盤構築および研究開発の推進につながることを期待している」と述べている。

積水化成品工業 リサイクル原料使用、発泡PEシートを上市

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2021年12月28日

 積水化成品工業は27日、リサイクル原料を100%使用した発泡ポリエチレン(PE)シート「ライトロン RNW」を上市したと発表した。

「ライトロン RNW」

 無架橋高発泡PEシートの「ライトロン」は、軟質でクッション性に富み、独立気泡体のため断熱性や防水・防湿性に優れている。薬品や油分にも侵されにくい素材として、各種包装資材や農業資材・雑貨など、様々な用途で広く使われている。

 同社は今回、環境保全に配慮した製品を求める顧客ニーズに応え、リサイクル原料を100%使用した「ライトロンRNW」を新たに開発。物性や加工性なども、従来品とほぼ同等の性能を保持している。特長として、再生ポリエチレンを100%使用し環境負荷が小さい、生産時におけるCO2発生量を52・6%削減、使用後もリサイクルが可能、などが挙げられる。

 同社は今後、昨年上市した植物由来の「ライトロン BIO」とともに幅広い分野での展開を図り、持続可能な社会への貢献に努めていく。

日本ガイシなど 空間伝送型電力伝送システムの普及促進

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2021年12月27日

 日本ガイシとトレックス・セミコンダクター(東京都中央区)、Ossia社(米ワシントン州)はこのほど、空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)システムの普及に向けた協業を開始した。日本ガイシのLIB「EnerCera(エナセラ)」とトレックスの低消費電力「電源IC」、OssiaのWPT技術「Cota」を組み合わせ、WPT受電レシーバー開発キットを開発する。

 多数のIoTデバイスを使ったセンサーネットワークの利用が進む中、電源ケーブルや一次電池によるIoTデバイスへの給電は、配線や電池交換が必要だ。WPTは電波により10mほど離れた場所へ電力を伝送する技術で、メンテナンスフリーIoTデバイスへの給電技術として注目されている。なかでも5.8㎓帯を使った「Cota」技術は、小売店や工場、倉庫に設置されるセンサー電源などの幅広い用途で活用できる。他のWPTより高い周波数帯を使うため、受電レシーバーの小型化や給電の高精度制御も可能だ。

 今回のWPT受電レシーバー開発キットは、受信した電波を電力として取り出す「Ossiaアンテナ」、その電力をためる「エナセラ」、ためた電力をMCU(電子機器動作制御チップ)やセンサーへ最適な電圧で安定的に供給するための「電源IC」で構成される。「Ossiaアンテナ」は移動中でも複数のデバイスを自動的に充電し続けるスマートアンテナで、効率的かつ真にワイヤレス電力伝送を可能にする。

 「エナセラ」は独自の結晶配向セラミックス板を電極に使用した超小型・薄型の半固体電池で、高容量、高出力、高耐熱、長寿命が特長。電源ICの「micro DC/DC XCL」シリーズは、コイルと制御ICを一体化した超小型DC/DCコンバータで、省スペース・高効率・低ノイズ・高放熱性を両立している。このキットを任意のMCUやセンサーに接続することで、WPTを電源とするデバイスの開発が行える。これにより、メンテナンスフリーIOTデバイスの開発・普及の促進を図るとしている。

大陽日酸 太陽光発電システム、八王子事業所に導入

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2021年12月27日

 大陽日酸はこのほど、八王子ガスセンター(東京都八王子市)において、ガス充填設備の動力のグリーン化を目的に自家消費型太陽光発電システムを導入したと発表した。

太陽光発電システムを導入した八王子ガスセンター

 世界を取り巻く地球温暖化問題に対する脱炭素への各種取り組みは、電力多消費型産業である工業ガス製造業においても、今後事業を継続するにあたって取り組むべき最重要課題の1つ。今回、同社では一般シリンダーガスを充填している八王子ガスセンターに自社所有の太陽光発電システムを導入し、充填に必要な動力源をグリーン化した。この電力で充填したガスシリンダーを顧客に届けることで環境価値向上を図っていく。この取り組みにより、同センターでは最大年28tのCO2排出削減を見込んでいる。

 同社は今後、事業所および関係会社事業所内で使用している電力のグリーン化など、自社で取り組むことが可能な領域から電力消費による間接的な温暖化ガスの排出量抑制の取り組みを進め、地球環境改善に貢献していく。

宇部興産 抗血小板剤の効能効果など、一部変更承認を取得

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2021年12月27日

 宇部興産は24日、第一三共との共同研究開発により創製した抗血小板剤「エフィエント錠3.75㎎」「エフィエント錠2.5㎎」について、同日、第一三共が「虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)」の効能または効果、用法および用量追加に係る国内における医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。

 同剤は、血栓性脳梗塞患者を対象とした国内第3相臨床試験(PRASTRO‐Ⅲ試験)および虚血性脳血管障害患者を対象とした国内第3相臨床試験(PRASTRO‐I、PRASTRO‐Ⅱ試験)などの結果に基づき、昨年12月に医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請が行われている。

 両社は、虚血性脳血管障害における新たな治療の選択肢を提供することで、患者に貢献できると期待している。