NEDOなど 耐久レース参戦水素エンジン車に水素提供

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2021年6月8日

 新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)など6者は、先月21~23日に富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久シリーズ2021第3戦」の参戦車両に、水素エンジンの燃料の一部として低炭素水素を提供した。

 参戦車両は、トヨタ自動車が新たに開発した、レーシングチーム「ORC ROOKIE Racing」の水素エンジン車で、燃料電池車が水素と酸素の化学反応で発生した電気でモーターを駆動するのに対し、水素を燃焼して動力を発生させるもの。ガソリンエンジンの燃料供給系と噴射系を変更。微量のエンジンオイル燃焼分を除き、走行時にCO2を発生しない。優れた環境性能と同時に、音や振動を含めた「クルマを操る楽しさ」を実現する可能性を秘めている。

 一方、NEDOが提供した低炭素水素は、福島県浪江町の実証設備「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)で製造した水素。東芝エネルギーシステムズ、東北電力、東北電力ネットワーク、岩谷産業、旭化成とともに、再生可能エネルギーと世界最大級の水素製造施設を利用し、低コストでクリーンな水素製造技術の確立を目指している。昨年2月の完成以降、主に圧縮水素トレーラーやカードル(ガス貯蔵容器)で定置式燃料電池の発電用途として福島県内の需要先へ供給する実証試験を行っている。

 NEDOは今後もFH2Rでの取り組みを通じ、水素エネルギーの普及拡大に向けた情報発信を進めていく。なおレースで最終ドライバー務めたトヨタの豊田章男社長は、水素社会にあっても既存の内燃機関を生かすことの重要性に言及した。結果は完走。走行距離1634Km、走行時間11時間54分、水素充填回数35回、充填時間は4時間5分であった。

三井化学ファイン 酵母由来コラーゲンがヴィーガン認証取得

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2021年6月8日

 三井化学ファインはこのほど、化粧品の原料などに使用される酵母由来コラーゲンが、肉・魚介類、卵・乳製品、はちみつなど動物由来の原材料を含まないものとしてヴィーガン認証を取得したと発表した。国内初。

「酵母由来コラーゲン」取得したヴィーガン認証マーク
「酵母由来コラーゲン」取得したヴィーガン認証マーク

 コラーゲン製品は魚を含めた動物由来のものが多いが、近年の環境保護といったエシカル(倫理的)志向の高まりから、海外を中心に非動物由来コラーゲンの利用が増加している。同社は、独自の発酵法により非動物由来の「酵母由来コラーゲン」(粉体と液体)を製造する。今回、国内初のヴィーガン認証を取得したことから、今後は国内外の化粧品原料向けに広く提案していく考えだ。

 同製品は、動物由来コラーゲンに比べ分子量が小さいため溶解性と操作性に優れるほか、従来のコラーゲンと比較して熱に強く、120℃でも沈み込みや沈殿物が出ない、においが少ないといった特長も併せもつ。三井化学ファインは引き続き環境に配慮した化粧品原料の拡充を進め、サステナブルな社会に貢献していく。

東レなど グリーン水素PJ、P2Gシステムの試運転を開始

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2021年6月8日

 東レなど4者は7日、甲府市米倉山(こめくらやま)の電力貯蔵技術研究サイトで共同技術開発を進めてきた、再生可能エネルギーの電力でグリーン水素を製造し、化石燃料の利用を低減させることを目的としたプロジェクト「H2-YES」(エイチ・ツー・イエス)について、P2G(パワー・ツー・ガス)システムの試運転を開始したと発表した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である同プロジェクトには、東レのほか、山梨県、東京電力ホールディングス、東光高岳が参画している。P2Gシステムは、水の電気分解から水素を製造する技術。

 カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、再エネの導入拡大とGHG(温室効果ガス)削減による貢献が世界的に期待されている。特に「H2-YES」では、メガソーラーの変動する電力と、大型の固体高分子型水電解装置により水道水から水素を作り出し、水素吸蔵合金システムに水素を貯蔵するなど、安全・安心にグリーン水素を利用できるシステムを構築。将来の再エネの大量導入に併せ、様々な地域や場所への同システムの展開を目指していく。

 今回の試運転は今年秋頃までを予定しており、水素の製造や貯蔵などに係る試験調整を行いつつ、山梨県内の工場やスーパーマーケットへ輸送し利用する一貫したシステムにより、社会実証試験を全国に先駆けて開始する。

 今後は、段階的に水素の製造量を増加させ、年内をめどに、当初目標である「1時間あたり300N㎥、年間45万N㎥」の水素による本格的な実証試験へと移行する計画。4者は、2050年までにGHG排出を実質ゼロにするCN社会の実現に向け、「P2G」システムのさらなる高効率化・大容量化と、国内外への普及を図るとともに、エネルギー需要家の化石燃料の利用をグリーン水素に大きく転換させるため引き続き協力して取り組んでいく。

 

三菱ケミカル 植物由来のPTMG開発、サンプル提供を開始

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2021年6月8日

 三菱ケミカルは7日、植物由来原料を使用したPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)「BioPTMG」を新たに開発し、サンプルの提供を開始したと発表した。

BioPTMG ロゴ
BioPTMG ロゴ

 PTMGは、反発弾性や耐摩耗性といった特徴から、ポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)などに伸縮性を付加する素材として使用されている。同社が植物由来の原料を使用して開発した「BioPTMG」は、石油由来のPTMGの性能と同等の反発弾性、耐摩耗性、耐加水分解性、低温での柔軟性などの優れた特性をもつため、インテリア、ファッションから工業資材に至るまで幅広い分野での活用が可能。スパンデックス以外にも、ポリウレタンエラストマーやポリエステルエラストマーでの使用が想定される。

 同社は、今回開発したグレードにとどまらず、さらに多くのグレードを開発・拡充することで、顧客ニーズに応えていく。また「BioPTMG」をはじめとする植物由来の素材の研究開発を加速させ、持続可能な社会へのソリューションを提供することで、SDGsの達成に貢献する。

DIC ハイブリッド型無機系抗ウイルス・抗菌剤を開発

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2021年6月7日

 DICはこのほど、ハイブリッド型の無機系抗ウイルス・抗菌剤「ウィルミッシュ」を開発し販売を開始したと発表した。同製品は、高い抗ウイルス・抗菌性を発揮する金属化合物と特殊な光触媒から構成されるハイブリッド型。同社は今後、住宅内装材や繊維、産業資材などの広範な用途での展開に向けて製品ラインアップを拡充し、日本、中国、東南アジア地域への販売を視野に入れ、2025年までに売上高15億円を目指す方針だ。

ハイブリッド型抗ウイルス・抗菌剤の⽤途展開
ハイブリッド型抗ウイルス・抗菌剤の⽤途展開

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況下では、消費者の衛生面への関心が高まり、医療施設や公共施設だけでなく、日常生活のあらゆる場面で抗ウイルス・抗菌製品の使用を求める声が多くなっている。抗ウイルス・抗菌剤として有機系製品があるが、皮膚刺激性などの安全性や耐久性の点で近年、無機系製品が着目されている。しかしながら、抗ウイルス性や耐久性、安全性の全ての点で高い機能をもつ製品は多くない。

 今回、同社が開発した「ウィルミッシュ」は、一般的な細菌やインフルエンザ型ウイルスはもちろん、従来の製品では効き難いとされるノロ型ウイルスにも有効。光のない暗所では、金属化合物の作用で高い抗ウイルス性を発現し、光のある明所では、屋内の弱い光でも反応する(可視光応答型)光触媒の作用でさらに高い抗ウイルス性を発揮するとともに、皮脂などの特定の有機物汚れを目立ちにくくするセルフクリーニング機能が期待できる。加えて、耐熱性や耐水性などの耐久試験後も、高い抗ウイルス性を確認しており、安全性試験でも良好なデータが得られている。

 同社は今後の幅広い用途展開を視野に、多方面の製品への応用技術についても特許を出願中。現在、住宅内装材や繊維、産業資材などの広範な分野で同製品の実証試験が進んでおり、すでに内装材分野で一部採用されている。

 今後もDICグループ内に培ってきた多種多様な技術を基盤に、性能向上とアプリケーション開発を進め、人々の健康で安心・安全な暮らしの実現と生活空間の快適化に貢献していく。

 

三菱エンジニアリングプラスチックス POMの医療向けMAシリーズを開発

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2021年6月7日

 三菱エンジニアリングプラスチックスはこのほど、新たに医療規格に対応したポリアセタール樹脂(POM)「ユピタールMAシリーズ」を開発した。

  MAシリーズは、「MAS20」(標準)、「MAS30」(高流動)、「MAH25」(高剛性)、「MAL20」(高摺動)のグレード群をラインアップ。小型化、軽量化が進む医療器具や医療機器に対し、製品設計の自由度向上に貢献する。特に摺動グレードの「MAL20」はPOMとの摺動性を大きく改善。従来、POM製の部品同士を組み合わせると、きしみ音や摩擦が発生し、これらを回避するために異種材料を組み合わせる設計がとられてきた。

  「MAL20」は一般のPOMと組み合わせても摩擦や摩耗が抑えられ、静粛性とスムーズな動きを実現して、医療機器を使用する際の快適性を大幅に向上させる。また、MAシリーズでは調色用の着色マスターバッチを用意。物性だけでなく、意匠の点からも部品設計をサポートする。

 「ユピタールMAシリーズ」は、医療用材料に求められる品質と規制に対応しており、COPD(慢性閉塞性肺疾患)やぜんそくの薬剤吸入器、インスリンペンなどの注射器具、医療機器の部品などの用途に適している。

 

NEDOと産総研 AI材料設計向け仮想実験環境を構築

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2021年6月3日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、物性計算シミュレーターとAI技術を連携させ、材料の電気伝導度計測を計算機上で再現する基盤技術を開発したと発表した。これにより生成した大量の材料データを深層学習させることで、望みの電気特性をもつ材料の組成・構造の予測・設計につながることが期待される。

 NEDOは各種有機・高分子系機能性材料開発の試作回数・開発期間を従来の20分の1に削減・短縮する「革新的機能性材料の開発を支援するためのシミュレーター」を、産総研と先端素材高速開発技術研究組合と共同で開発した。材料の組成・構造から物性・機能を予測(順問題予測)するには正確なビッグデータが必要だが、そのための計算シミュレーションでは、実材料のサイズが計算容量を大きく上回ることが問題であった。

 今回、第一原理電気伝導計算機能(量子方程式で物質構造から電子状態を求める)とAIの深層学習法を連携させ、順問題予測を正確に行い、電気特性に関する仮想材料実験を計算機上で行うための技術を開発した。材料を構成する全原子の相対的位置情報を局所的情報に単純化して記述子とし、様々な構造・組成に対する電気伝導度の第一原理計算シミュレーションで得たデータを深層学習に使う。大きなサイズ領域の記述子を構築できるため、計算シミュレーションの計算機性能の制限を受けず、高い精度で予測できることを検証できた。

 この仮想実験により、材料の組成・構造の数値情報と電気的性質が明瞭に関連付いた高精度で、また実際の実験では得ることが難しいデータを大量に生成できる。そしてAIを利用することで、目的の機能・性質を実現する材料の組成・構造の予測(逆問題予測)が可能になる。

 今後、計算機上での仮想実験で、実際の実験や材料試作に応じた大量のデータを系統的かつ網羅的に生成し、電気伝導物性(材料機能)から材料組成・構造を予測する逆問題予測手法の開発につなげていく考えだ。

デンカ コンクリート凝結効果を促進、特殊混和材が採用

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2021年6月3日

 デンカはこのほど、コンクリート凝結効果促進材「デンカ ACF材」が、青森県中泊町における清水建設の実工事で初めて採用されたと発表した。寒冷期の工事では冷たい外気温によりコンクリートの凝結時間が長くなり、通常期と比べ施工の長時間化と作業従事者の負担増加の課題を抱えている。

特殊混和材「デンカ ACF 材」
特殊混和材「デンカ ACF 材」

 「デンカ ACF材」は、セメント・特殊混和材で培った無機材料設計技術を応用して清水建設と共同開発した凝結促進材料。工事現場で生コンクリート車に混和材を投入し撹拌する簡易な方法で、コンクリートの凝結時間を短縮し、通常期と同レベルの凝結時間の確保が可能となる。また、外気温や施工現場の環境に合わせてその場で混和材の添加量を調整し、凝結時間を任意に調整することも可能だ。

ACF 工法による凝結促進効果
ACF 工法による凝結促進効果

 今回の工事では清水建設と共同で開発したコンクリートの凝結時間制御技術「アドバンストコンクリートフィニッシュ工法(ACF工法)」が用いられ、気温5℃の低気温環境下で適用したケースで4時間以上の工事時間短縮や、ブリーディング(打ち込んだコンクリート表面から練り混ぜ水の一部が上昇する現象)低減により発生リスクが高い傾斜面の沈降クラック抑制の効果が確認されている。

 デンカは今後、様々な工事場面での適用に向けて、「デンカ ACF材」の販売を本格的に展開していく。

 

三菱ガス化 四日市のPOM生産を停止、タイ拠点に集約

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2021年6月3日

 三菱ガス化学はこのほど、四日市工場(三重県四日市市)におけるポリアセタール(POM)の生産について、2023年9月末を目途に停止すると発表した。POMは、耐摩擦性・耐クリープ性・耐疲労性・耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックスで、自動車、電気・電子、精密機器などの部品の材料として広く使用されている。

 同社グループは、四日市工場のほか、タイ・韓国・中国に生産拠点をもち、「ユピタール」などのブランドで高品質なPOMを世界中に供給している。四日市工場では、1981年以来、40年にわたってPOMを生産してきたが、プラント規模が年産2万tと小さいことに加え設備の老朽化が進んできたこともあり、厳しい採算を余儀なくされていた。こうした背景から、タイ拠点に生産を集約し、より競争力のある供給体制でPOM事業を展開することを決定した。

 現在、四日市工場品を使用している顧客には、タイ品への切替えを依頼。また、タイ拠点においては、旺盛なPOM需要に対応するため、今後の増産を検討する予定だ。今回の生産停止は、昨年12月に発表した韓国POM事業再編に続く事業強化のための施策の一環となる。同社は、引き続きPOM事業の発展に努めていく。

 

ランクセス 高性能プラ向け耐熱性黄色顔料製品を拡充

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2021年6月2日

 ランクセスはこのほど、高性能プラスチック向け耐熱性黄色顔料「カラーサーム」の製品ラインナップを拡充すると発表した。様々な熱安定性レベルに応じたオーダーメイド顔料により、費用対効果を最適化する。

 特殊な物理・化学特性をもつ高性能ポリマーが金属、ガラス、セラミックの代替として自動車、電子機器、プロセスエンジニアリングや医療分野などの特殊用途・ハイテク用途で使用されるにつれ、着色顔料の要件プロファイルも高まりつつある。特に熱安定性は決定的な品質要因で、有機顔料は処理温度が高いと分解が進み、無機代替顔料は温度が180℃を超えると色のばらつきが起こることがある。

 同社は、高温ポリマーを高い信頼性で黄色着色するモジュラー型の「カラーサームイエロー」製品ラインナップをもつ。耐熱温度300℃の「カラーサームイエロー20」「同30」と同じ色調・色強度で、220~260℃の温度範囲を補完する製品として「カラーサームイエロー5」と「同26」を拡充した。「カラーサームイエロー5」と「同20」は酸化鉄ベース、「同26」、「同30」、「同3950」は亜鉛フェライトベースで、淡黄色・濃黄色からオレンジの色調まで、最高300℃までの温度で加工できる。

 また「同26」と「同30」の色強度は同等製品比で最大20%高く、顔料の添加量は少量ですむ。着色顔料の要求熱安定性レベルはポリマーの種類によって異なり、PEでは240℃前後、PA、PP、PPSでは300℃前後だ。プラスチックの種類や必要な熱安定性に合わせて、最適な顔料の選択が可能となった。

 また同社は、広範な設備の技術センターをもち、顔料使用の包括的アドバイスを提供。顧客のプラスチック用途での熱安定性分析も可能だ。サンプルローディングから比色分析まで自動化され、専門性の高い試験を最高レベルの精度で行える。一貫した品質はプラスチック着色の決定的な要件であり、国際標準の試験方法で原材料を常時モニタリングし、継続的な品質管理を行うことで、製品の信頼性を最大限に確保するとしている。