ポリプラスチックス 耐アルカリストレスクラッキング性向上のPBTを開発

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2019年1月18日

 ポリプラスチックスは17日、耐アルカリストレスクラッキング性に優れた、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)「ジュラネックス」の新グレードを開発したと発表した。

 近年の自動車市場では技術開発により、走る・曲がる・止まるといった自動車の基本性能の向上に加え、安全・快適・環境配慮などの視点からECUケースやセンサー・コネクタなど、新たな製品や部品の開発が進められている。これらの増加によりスペースが不足し、シャーシ部などの車両下部に部品が設置されるケースが増えている。

 ただ、車両下部に設置される部品は、水や泥はねなどにより金属部分に発生した錆と接触しやすい状況にある。錆が発生する際に生じるアルカリ物質は、樹脂にダメージを与えクラックを発生させること(ストレスクラッキング)があり、部品の機能を損なう可能性があった。

 「ジュラネックス」は物性バランスに優れ、自動車部品に幅広く使用されている樹脂だが、一般的にアルカリ耐性が高くない。そこで同社は、PBTのアルカリ環境下の耐ストレスクラッキング性に対する改質検討を進め、新グレード「ジュラネックス 532AR」を開発。

 新グレードは、アルカリの樹脂内部への浸透を低減させるとともに、発生応力を減少させるため、靱性を付与することで、成形品がアルカリに接触した際のクラック発生リスクを低減させることに成功した。

 また、アルカリ環境下の耐ストレスクラッキング性だけでなく、耐加水分解性や耐ヒートショック性にも優れているため、自動車部品の信頼性や寿命の向上を図れるグレードとなっている。

 

ユニチカ 熱マネジメント適用可能な放熱PA樹脂を開発

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2019年1月16日

 ユニチカは、高い性能要求・熱マネジメントに適用可能な放熱ポリアミド(PA)樹脂製品群を開発した。同製品群は、ベース樹脂および熱伝導率の選択幅が広く、熱伝導率と物性のバランスに優れることからさまざまな提案が可能。LED部材やモーター部材などの自動車分野や、電子・電気分野の熱マネジメントへの貢献を見込んでいる。

 近年、環境意識の高まりに伴い、世界的な排出ガスの削減ニーズが高まる中、自動車のEV化が急速に進んでいる。車載スペースが限られていることから、モーターの小型化はますます進む見込みだが、放熱空間の減少といった問題をもたらすため、新しい熱マネジメントが必要になる。一方では、燃費向上の観点から金属を樹脂に代替する軽量化も重要な課題で、軽量化を実現しつつ熱マネジメントを行うため、高い熱伝導率を有する樹脂製品の要求が高まってきている。

 同社はこうした要望の多様化に応じるため、これまで培った配合技術と幅広いPA樹脂のラインアップを活用し、さまざまな性能要求および熱マネジメントに適用可能な放熱PA樹脂を開発。ベース樹脂に放熱フィラーを配合することで熱伝導率を付与しており、ベース樹脂がもつ本来の特徴は損なわずに高い熱伝導率を発現する。

 独自の配合技術により放熱樹脂で課題となることが多い流動性を大幅に改善したことで、一般的な射出成形機で成形が可能となった。また、ベース樹脂はPA6樹脂、PA66樹脂、高耐熱PA「Xecot」などの多くの種類から適宜選択できるため、さまざまな耐熱ニーズに対応。さらに、導電タイプと絶縁タイプに分かれているため、さまざまな環境下においても、幅広い熱伝導率、耐熱性の選択ができる。

 今後の展開として、LED部材やモーター部材を中心としたアプリケーションに製品開発・用途開発を積極的に進め、放熱PA樹脂の採用拡大を目指していく。

 なお、同製品は「第11回オートモーティブワールド ~第9回クルマの軽量化技術展」(16~18日:東京ビッグサイト)に出展される。

昭和電工 ラミネートシート使用で車載LIB向け冷却器開発

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2019年1月16日

 昭和電工は15日、子会社の昭和電工パッケージングと共同で、市場が拡大する電気自動車(EV)などに搭載されるリチウムイオン電池(LIB)向けの次世代冷却器を開発したと発表した。

 近年、環境負荷に対する意識の高まりなどによりEVの販売台数が伸長。EVに使われるLIBは大容量で発熱量も大きいため、効率的な放熱が求められる。現在、EVに搭載される角型LIB用の冷却器には、アルミニウム製の押出材や板材などを溶接あるいはろう付けしたものが用いられている。こうした冷却器は、接合するために600℃以上の加工温度が必要だが、今回発表した冷却器はアルミ箔と樹脂から成るラミネートシートを構造材として用いることで、ヒートシール法により200℃程度の低温での接合が可能となる。

 さらにラミネートシートの材料構成や寸法の変更が容易で精密なプレス加工性にも優れているため、製品形状・寸法の自由度が飛躍的に向上する。同開発品に用いたラミネートシートは昭和電工パッケージングでパウチ型LIB包材として製造・販売しているアルミラミネートフィルム[SPALF]を応用したもの。高い絶縁性を有し、成形性・耐食性が優れる特長をもつ。

 昭和電工の長年にわたるアルミ冷却器・熱交換器事業で培った冷却器の技術と「SPALF」のラミネート技術を融合させることで、同開発が実現した。今後はEV用やESS(定置型蓄電システム)用の電池の冷却部材として開発を加速し、2020年度中にサンプル出荷を開始する予定。

 同社は、今年スタートした中期経営計画「The TOP 2021」において、グループ戦略の柱の一つとして事業間連携を掲げ、保有する幅広い製品や技術を生かした開発に取り組んでいる。今後も顧客の求める最適なソリューション提供に向けて活動を強化していく。

なお、同製品は東京ビッグサイトで開催される「第48回インターネプコンジャパン」(16~18日)で紹介される。

ADEKA 低VOCの水溶性UV硬化材料を開発

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2019年1月11日

 ADEKAは10日、紫外線(UV)とLEDで硬化が可能な、人と環境に優しい樹脂材料「水溶性UV硬化材料」を開発したと発表した。

 同社の有機合成技術とUV硬化技術を結集し設計した「水に溶けやすい分子構造」を持ちながら、水系材料の課題であった耐水性などに優れる、全く新しい高機能材料。従来の材料の多くは有機溶媒に溶解させたり、水中に樹脂を分散させたりするが、同社が独⾃に設計した「水に溶けやすい分子構造」は水の溶解性が高く、有機溶媒を使用しないので、乾燥時の低VOC(揮発性有機化合物)化を実現した。

 これにより、作業者の健康へ悪影響を及ぼさず、大気汚染やシックハウス症候群など、暮らしにおけるリスクを最小限に抑えることができる。また、UV硬化後に高密度構造を形成することから酸素バリア性が高まり、例えばポリエチレンなどのプラスチックフィルム上にコーティングすることで、酸素透過性を10分の1に低下させることができ、内容物の酸化防止と保存性向上が期待できる。

 さらに、従来の水系材料は硬化膜の水分への耐性が低くなる傾向にあるが、新製品は構造・ 配合の設計を最適化することで、高い耐水性を実現した。その他、フォトレジスト材料や回路形成材料といった電子材料分野の、有機溶媒に弱いプラスチック基剤向けに活用できることや、水銀ランプによる硬化に加え、LEDランプの幅広い波長に対応していることも特徴だ。

 印刷インキやコーティング剤などに含まれる、有機溶剤によるVOCの発生が人体に悪影響を及ぼし、大気汚染の原因となるため、世界的に環境規制が強化されている。水系UV硬化材料など低VOC化へ向けた開発が行われているが、いまだに有機溶剤系が⼀般的なのが現状だ。

 同社では、印刷やコーティング向けはもとより、電子材料やディスプレイ向けをはじめとするあらゆる分野でのニーズに応える製品を開発し、人・環境への負荷低減に貢献していく考えだ。なお、新製品は昨年11月に開催された「第27回ポリマー材料フォーラム」(高分子学会主催)で発表し、高分子学会広報委員会パブリシティ賞を受賞している。

DIC 高耐熱性と柔軟性を兼備した厚膜レジスト用樹脂を開発

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2018年12月28日

 DICは、半導体実装向け厚膜レジスト用樹脂として、これまで両立が難しかった高耐熱性と柔軟性を兼ね備えたフェノール樹脂「RZ-230シリーズ」を開発した。 7月からサンプルワークを開始している。

 人工知能(AI)を活用することで用途に適合した厚膜形成を可能にし、0.5~1μレベルの回路微細化を実現する。

 世界的なスマートフォンやタブレットPCの需要拡大などにより、半導体の世界市場は昨年・今年と2桁成長しており、今後も市場拡大が見込まれている。

 また、IoTの活発化などによる通信速度の高速化を背景に、半導体集積回路のさらなる大容量化・高速化・低消費電力化とともに、半導体実装の小型化や薄型化を目的として、半導体回路の微細化への要求はますます高まっている。

 これまで、半導体実装用向け厚膜レジスト材料には、耐熱性を持つネガ型ポリイミドやエポキシ系材料が用いられてきたが、分子構造や現像性から回路の微細化には限界があった。

 一方、高速現像性を持つポジ型ポリイミドに既存フェノール樹脂を添加することで微細化できるものの、耐熱性と柔軟性が劣ることから同用途への使用は限定的だった。

 今回、同社は、独自の高分子設計技術とAI技術を化学分野に生かすケモインフォマティクス(化学情報学)を駆使してフェノール樹脂の新たな分子骨格を見出した。同分子骨格を採用することにより、Si基板などへポジ型ポリイミドでの厚膜形成が可能でありながら、ガラス転移温度をこれまでより50℃以上引き上げ150℃以上とし、現像性は2~3倍(同社製品比)の高速化を実現。

 また、ポリイミドの性質を阻害しない柔軟性を持つことから、これまで5%程度だった添加量を約5倍増できる。これらにより、課題であった耐熱性と柔軟性が高まり、ポジ型での回路微細化を実現する。

 半導体実装用材料は、膨大な情報を高速で処理するサーバー用のCPUやAPU、スマートフォン用アプリケーションプロセッサーなどの統合化用途への採用が今後増加することが期待されている。

 同社は、今年で最終年を迎える中期経営計画「DIC108」のポリマ事業で、国内ではニッチで高機能なテーマに取り組んでいる。

 今後も研究開発と用途拡大に注力し、高機能フェノール樹脂において5年後に売上高10億円を目指す方針だ。

AGC 曇りにくいガラスを「コペン・クーペ」が採用

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2018年12月21日

 AGCはこのほど、同社が開発した曇りにくいガラス「エグゼビュー」が、ダイハツ工業の限定販売車「コペン・クーペ」のフロントガラスに世界で初めて採用されたと発表した。

エグゼビューが採用されたコペン クーペ 
エグゼビューが採用されたコペン クーペ

 ダイハツの「コペン」は、「感動の走行性能」と「自分らしさを表現できるクルマ」を、骨格+樹脂外板構造で実現した軽自動車のオープンスポーツカーで、現在3種類の意匠で販売されている。

 今回発売するコペン・クーペはコペン・セロをベースに、CFRP製のハードルーフを装着した、本格クーペスタイルの限定販売車。コペン・クーペには車内外に特別な装備が盛り込まれており、その1つとしてAGCのエグゼビューがフロントガラスに採用された。

 自動車ガラスに求められる高い耐久性能を確保したAGC独自の樹脂膜コート材が車内の水分を吸収し、フロントガラスの曇りを防止する。デフロスターの操作回数が低減し、ユーザーの利便性と実燃費の向上に貢献していく。

 また、AGC独自の樹脂膜コート材が車内の水分を吸収することで、結露による光の散乱を防ぎ、ドライバーの視界確保による走行安全性を向上する。

 AGCグループは、今後も自動車の安全性・快適性の向上に貢献する製品の提供を通じて、経営方針「AGC plus」の下、世の中に「安心・安全・快適」をプラスしていく。

 

 

積水化学 食品工場・調理向けの業務用マスクを発売

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2018年12月21日

 積水化学工業は20日、100%子会社の積水マテリアルソリューションズが食品工場・調理向け業務用マスクを21日に発売すると発表した。

 製品名は「HaccPlan(ハサップラン)オールカラーマスク1.5PLY」。マスクの構成部材を全て着色することで、万一、マスク全体かその部品が脱落して食品に混入しても、容易に発見できる。

 特に食品工場では、複数のマスクを使い分けることにより、マスクの構成部材が食品に混入した場合、どの工程やシフトで混入したかの特定がしやすくなる。マスクの定期交換忘れも抑制できる。マスクの上部と下部を1層、中部を2層とすることで、呼吸のしやすさと唾液の飛沫防止を両立した。

 カラーはブルー・ピンク・ホワイトの3種類(ピンクとホワイトは来春発売予定)。耳かけタイプとオーバーヘッドタイプの二種類があり、サイズはゴム紐部分を除き幅17.5cm、高さ9.5cm。本体の材質はポリプロピレン不織布、ノーズピースはポリエチレン、丸ゴム紐はポリエステルとポリウレタン。

 第三者機関により安全性が確認されている。食品衛生法準拠の溶出試験結果に「合格」、皮膚刺激指数による分類で「安全品」の評価、皮膚一次刺激性試験で「無刺激物」の評価を得た。

 世帯構造の変化による外食・中食需要の増加、2年後の東京オリンピック・パラリンピックの実施、日本からの食品輸出促進を見据えた国際標準と整合的な食品衛生管理への対応などを背景に、今年6月、15年ぶりに食品衛生法が大幅に改正された。

 そのポイントの1つがハサップに沿った衛生管理の制度化。原則として、全ての食品事業者に、一般衛生管理に加え、ハサップに沿った衛生管理が求められるようになった。

 同社ではこの改正食品衛生法の施行に向け、新製品を開発した。今後、同社はハサップラン・ブランドで異物混入抑制など食の安全に資する衛生資材製品の開発を進め、2022年度に同シリーズ製品で売上高五億円を目指す。

 

JXTGエネルギー スクリーン用の透明フィルムに飛散防止機能を付加

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2018年12月20日

 JXTGエネルギーはこのほど、飛散防止機能を新たに付加したスクリーン用透明フィルム「カレイドスクリーン」のフロントタイプの販売を開始した。「カレイドスクリーン」は、独自のナノテクノロジーを活用したスクリーン用透明フィルムとして、「透明性が非常に高い」との評価を得ている。

カレイドスクリーンのフロントタイプ
カレイドスクリーンのフロントタイプ

 従来、ガラスなどの透明な板に映像を投影することは難しいとされてきたが、同製品をガラス面などに貼り合わせることにより、スクリーンとして活用することが可能になり、これまでさまざまなイベントの空間演出に使用されてきた。

採用例 名古屋テレビ塔
採用例 名古屋テレビ塔

 東京タワーや名古屋テレビ塔などの商業施設、スポーツ大会の開会式での空間演出に採用され、また、情報表示を目的としたサイネージ用途としても展開している。

 「カレイドスクリーン」のフロントタイプは、スクリーン前面に映像を投射するタイプ。販売を開始するにあたり、高い透明性や映像の鮮明さに加え、「さらに安全・安心に使用したい」という顧客ニーズに対応し、飛散防止機能を新たに付加した。

 JIS規格を満たす同製品は、地震などの災害時にガラスが割れた場合でも破片の飛散・落下を防止し、二次災害を軽減させる効果も期待できる。

イベントのイメージ
イベントのイメージ

 なお、東急不動産ホールディングス本社ビルで開催される、プロジェクションマッピングイベント「Aoyama Luminous Noel」に、同製品が採用された。ヘキサゴンジャパンが手掛けるイベントでは、クリスマスをイメージした映像が今月2日まで上映されている。

 同社は、技術立脚型事業の一つである機能材製品の開発・展開を通じて、顧客の多様なニーズに対応していく。

ADEKA 次世代二次電池用活物質のサンプル提供を開始

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2018年12月19日

 ADEKAはこのほど、次世代二次電池用活物質「硫黄変性ポリアクリロニトリル」(SPAN=エスパン)のサンプル提供を開始した。2020年度の製品化を目指す。

外観
外観

 SPANは、ポリアクリロニトリル(PAN)と硫黄を反応させたもの。電極材料に用いた試作電池では、長期にわたり安定した電池性能を保持することが確認されており、硫黄を超える活物質として期待されている。

 これまでは、製造時に発生する多量の硫化水素により量産化は困難とされていたが、同社は硫化水素処理技術やノウハウを駆使し、産業技術総合研究所と豊田自動織機が開発した製造方法をもとに、量産化検討を推進してきた。

 二次電池は、スマートデバイスや電気自動車など、現代の豊かなくらしに欠かせないものであり、小型化やエネルギー密度の増大、長寿命化といった、よりいっそうの高性能化ニーズが高まっている。

SEM 図
SEM 図

 また、リチウムイオン二次電池に用いられているレアメタル(希少金属)は、その需要増加に伴い、資源枯渇とコスト増化が懸念されている。性能面やレアメタル問題を解決する次世代電池向け活物質として、以前から硫黄が注目されていたが、充放電時に生成する反応中間体が電解液へ溶出し、寿命を悪化させることから、二次電池向け活物質としては広く実用化には至っていなかった。

 ADEKAは、次世代二次電池のレアメタルフリー化と軽量化、充放電サイクル長寿命化を可能にする活物質として、SPANを有望視。サンプル提供を通じて次世代二次電池向け活物質の標準となるよう、市場開発を加速していく考えだ。

 また同社では、次世代二次電池向け材料として、グラフェン(導電助剤)や電解液添加剤の開発も進めている。特に、電池業界のトレンドである全固体電池への材料開発を拡大するなど、環境・エネルギー材料分野での研究開発を推進し、持続可能な社会の実現に寄与する製品の創出を目指していく。

東洋紡 中空糸型FO膜がデンマークの発電プラントに採用

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2018年12月18日

 東洋紡は17日、中空糸型の正浸透膜(FO膜)が、デンマークの浸透圧発電パイロットプラントに採用されたと発表した。今年9月から実証実験を開始しており、早期の実用化を目指している。

中空糸型正浸透膜
中空糸型正浸透膜

 この事業は同社がデンマークにある浸透圧発電のベンチャー企業ソルトパワー社、産業機械メーカーのダンフォス社、エンジニアリング会社セムコ・マーチン社と4社共同で運営するもの。

 今回採用されたのは、中空糸を円筒形の圧力容器に高密度に充填したFO膜で、水分子を通し一定の大きさ以上の分子やイオンを通さない半透膜の一種である。

 東洋紡は1970年代に、繊維事業で培った紡糸技術を応用し、中空糸型半透膜を開発した。海水を淡水に変える逆浸透膜(RO膜)として、性能や耐久性などが高く評価され、1980年代初めから主に中東湾岸地域の海水淡水化施設で採用実績を重ねてきた。

 デンマークで運転を開始した浸透圧発電プラントは、地下から汲み上げた地熱水と呼ばれる塩水と、淡水の塩分濃度の差を利用して発電するシステム。塩分を通さずに水を通す性質をもつFO膜を隔てて塩水と淡水を接触させると、浸透圧差により塩水側に水流が発生。この水流を利用してタービンを回すことで発電する。

 地熱水を活用した浸透圧発電は、太陽光や風力に比べ、天候や昼夜に左右されない新しい再生可能エネルギーとして注目を集めている。

正浸透膜が採用された浸透圧発電プラント 2
正浸透膜が採用された浸透圧発電プラント

 同社のFO膜は、高密度に充填された中空糸によって水が効率的に流れる内部構造を持ち、発電用タービンを回すための水流を安定かつ低ロスで発生させる。また、効率的な浸透圧発電に必要な高い水圧に対して、RO膜用途で実証してきた優れた耐圧性能を備えていることなどが高く評価され、今回の採用となった。

 同プラントは、同型の浸透圧発電方式としては業界最大で、一般的な家庭約50世帯分の電力に相当する20kWを発電。これまで実験的な浸透圧発電設備はあったが、実用規模の浸透圧発電プラントが運転を開始するのは世界で初めて。

 来年9月ごろまで実証実験を行い、2021年までに東洋紡製の浸透膜を採用した、1㎿規模の浸透圧発電プラントをデンマーク国内で建設するとともに、他の欧州地域にも同規模のプラントを導入していく予定だ。