NEDOなど 機能性材料の熱伝導率計算ソフトを開発

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2020年2月28日

 NEDOは未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合・東京大学と、多結晶体などの複雑なナノ構造を持つ様々な熱機能材料の熱伝導率を、手軽で高精度に予測・熱伝導現象を再現するソフトウエア「P‐TRANS」を開発した。

 東大が開発したモンテカルロ・レイトレーシング法と、構造作製ツールや可視化ツールなどのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を融合したもので、学術界や産業界などの研究現場での普及を目標に使いやすさを重視した。

 このソフトウエアの活用により、複雑な形状や内部構造を考慮したミクロな領域の熱物性を把握でき、高性能な熱機能材料の研究開発が促進されることが期待できる。

 徹底した省エネのためには、エネルギーの供給過程で有効利用されずに捨てられている未利用熱を、削減・回収、熱として蓄え再利用し、さらにほかのエネルギー形態に変換して利用するための「熱の3R」に向けた熱機能材料やデバイスを開発し、社会実装することが必要だ。

 しかし、研究開発と実用化が進められているこれらの材料やデバイスの性能を抜本的に高めるためには、材料の微視的な熱輸送解析(熱伝導率の予測・熱伝導現象の再現)による、ナノスケールの熱の設計とミクロな領域の熱物性の理解、さらにそれらに基づく材料設計と熱制御が不可欠である。

 「P‐TRANS」を使うことで、ナノ構造化した際の熱伝導率の低減効果を試算できるほか、高熱伝導材料の作製時に生じる多結晶構造の粒界が熱伝導率に及ぼす影響も把握できるため、高性能な熱機能材料開発の加速化が期待される。

 今後、「P‐TRANS」の機能拡張と活用を進め、効率的な材料・デバイスの開発と抜本的な性能向上を図り、熱の3Rによる徹底した省エネルギーの実現を目指す。なお、東大はこのソフトウエアをウェブサイトで公開しており、無償でダウンロードできる。

リケンテクノス 抗ウイルスフィルムを上市

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2020年2月28日

 リケンテクノスはこのほど、抗ウイルスフィルム「RIKEGUARD FILM(リケガードフィルム)」を上市したと発表した。

 同フィルムの「RIVEX(リベックス)」グレードは、抗菌・抗ウイルス性と安全性を認証するSIAAマークを取得した、世界で初めてのウィンドウフィルム。SIAAマークの取得には、抗ウイルス・抗菌処理を施していない従来製品と比較して、菌の増殖割合が100分の1以下でなければならないなど、厳しい規格を満たすことが必要となる。

 同グレードはリケンテクノスのコーティング技術を応用することで、高い透明性を持たせつつ、フィルム表面のウイルス数を大幅に減少でき、ウィンドウフィルムとしても、モバイル端末などのディスプレイ表面の保護用途としても使用できる。

 新型コロナウイルスの感染拡大や、米国でインフルエンザウイルスが猛威をふるう中で、抗ウイルス製品に対する社会的ニーズが高まっている。主要な感染経路に接触感染が挙げられるが、多くはウイルス付着物に手で触れた後、口や鼻などを触ることで感染するとされており、ウイルスに触れるリスクを減らすことが重要となっている。

 一方で、さまざまなものに素手で触れないようにすることには限界がある。中でもスマートフォンは、今や生活必需品となっているが、目に見えない菌やウイルスが多く存在している。

 「スマートフォン表面には、トイレの18倍細菌が存在する」という米国の研究データがあるほどだ。公共施設のタッチパネルなどは不特定多数の人が触るため、感染のリスクはさらに高いと言える。

 「リケガードフィルム」の「リベックス」グレードを貼ることで、付着したウイルスの数を大幅に減少させ、日常生活の中での感染リスクの軽減が可能になる。耐傷つき性にも優れるため、病院や学校の窓、タッチパネル、案内板、電車の窓など、さまざまなシーンに展開できる。

 さらに、表面の硬度を上げた「リケガードフィルム」の「REPTY(リプティ)」についても、SIAAマークの取得を準備している。

ソルベイ PEEKパウダーが医療器具のコーティングに採用

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2020年2月26日

 ソルベイはこのほど、「キータスパイア・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)」パウダーが、サージカル・コーティングス社の電気外科手術用金属チューブのコーティング用途に採用されたと発表した。

 「キータスパイアPPEK」パウダーが選ばれたのは、耐薬品性と耐疲労性に加え、高温でも傑出した機械特性と寸法安定性が維持されるため。生体適合性材料である「キータスパイア」は、加工が容易で、繰り返しの洗浄・滅菌にも耐える。

 サージカル・コーティングス社はファインパウダー(FP)PEEKグレードである「キータスパイアKT‐820FP」と「キータスパイアKT‐880FP」を使用することで、高度な電気外科手術向けの静電塗装の適合性を高めている。

 「キータスパイアKT‐820FP」は低流動性グレードで、きれいに表面を仕上げることができる。一方、「キータスパイアKT‐880FP」は高流動性グレードで、複雑な表面形状の塗装に向いている。

 「キータスパイアPEEK」パウダーは品質と安定性に優れているため、サージカル・コーティングス社はコーティングの厚さ1000分の1インチ単位まで薄くすることが可能になった。

 電気外科手術用途のコーティングには、モノポーラー周波や高電圧、洗浄と滅菌の繰り返しに耐えることが求められるようになっている。電気外科手術では、外科用メスなどの手術器具を使わずに、電気周波による清浄な切開を行うが、電気絶縁性がある「キータスパイアPEEK」材料は、執刀医と患者を感電から守ることに貢献している。

 また、コーティングの厚さを均一にすることができるため、安定した特性を確保し、リスクを軽減。市販の各種PEEKパウダーと比べ、ソルベイの材料は水分含量が少ないことから、サイクルタイムの短縮とスループットの向上が可能で、乾燥時のエネルギー消費も低減する。その他のメリットとしては、ガス放出・寸法公差・表面欠陥の低減などが挙げられる。

共同印刷 「針刺し検知フィルム」開発、使用履歴確認に最適

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2020年2月26日

 共同印刷はこのほど、針を刺した跡などが白化して見えやすく、包装の完全性や使用状態が分かりやすい、「針刺し検知フィルム」を開発したと発表した。

 同社は医薬品や電子部品、精密機器などの業界へ、湿気・アウトガス吸収材料「モイストキャッチ」をはじめとする、独自技術で生み出した高機能フィルムを多数提供している。

 今回開発した針刺し検知フィルムは、高機能フィルムの販促過程で寄せられた「製品改ざんのリスクを減らしたい」などの声に対し、培った独自のフィルム加工技術で応えたもの。

 針を刺すなどの応力がフィルムに加わると、その部分が白化し、目視可能な跡となって半永久的に残るが、「外からの力を受けた部分のみに変化が生じる」という物理変化のため、内容物に悪影響を与えることなく、安心・安全に、改ざん防止・完全性の証明、使用履歴の確認などが行え、製品保管環境の影響を受けることもない。

 また同フィルムは、ヒートシールやレトルト滅菌が可能で、一般的な汎用フィルムや同社の各種高機能フィルムとの積層も可能。ホールキャップバイアル瓶のタンパーシールといった容器蓋材、医療器具や医薬品の包装袋といった各種用途に活用できる。

 同社は今後、同フィルムを医薬品や化粧品業界などへの展開に取り組むとともに、高機能フィルムのラインアップ拡充と販売拡大に引き続き注力し、生活・産業資材系事業の発展に努めていく。

 なお、「針刺し検知フィルム」は、インテックス大阪で開催中の「第6回インターフェックスWeek 大阪・[医薬品・化粧品 研究・製造展]」(26~28日)へ参考出品している。

三井化学 次世代メガネ、女性向け新フレーム第1弾を発売

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2020年2月25日

モダンなレトロ調パターンのフレーム
モダンなレトロ調パターンのフレーム

 三井化学はこのほど、次世代電子メガネ「タッチフォーカス」の、2020年春・新フレームコレクションの販売を開始した。

 第1弾として発売したフレームコレクションは、「テクノロジーを身につける洗練」をコンセプトに、年齢を気にせず前向きに生きる女性たちの感性にフィットする、上質で洗練された新しいハイエンドモデルをラインアップ。

 「大胆に」「鮮やかに」、そして「素のままに」という3つのキーワードを具現化した「レトロモダン調」「パステルカラー」「ヌードカラー」など、全10モデルを展開する。

 「タッチフォーカス」は、フレームのタッチセンサーに触れるとメガネレンズ内の液晶が駆動し、瞬時に遠近の視界の切り替えができる次世代メガネ。フレームデザインは、世界的デザインファームであるIDEO社と協業し、人間工学思想に基づいた機能美と様式美を満たすフォルムに仕上げている。

 今回のコレクションでは、「テクノロジーを纏う」という新しいスタイルに対するメッセージと、そのメッセージを体現するキャラクターとして、モデルの田中久美子さんを起用したキャンペーンを開始。全国60カ所の同製品取り扱い店や広告などでの販売促進と訴求を行っていく。

NEDOなど 小型中性子解析装置開発、非破壊で分析

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2020年2月25日

 NEDOは新構造材料技術研究組合(ISMA)の組合員の産業技術総合研究所と、輸送機器の構造材料・部品などの非破壊分析向けに小型中性子解析装置を開発した。

 同装置は解析用の放射線として透過力の高い中性子線を使うことで、従来のX線では透過できなかった、センチメートル厚の金属部品などの内部の結晶情報を、非破壊で分析することを可能にした。

 自動車などに代表される輸送機器の軽量化は、省エネ化の促進やCO2排出量の削減に直結する、重要な技術開発の1つと位置づけられている。最近は様々な軽量部材で輸送機器を構成(マルチマテリアル化)することで、総合的な軽量化が図られている。

 その場合、材料の物性がそれぞれ異なるため、組み合わせ部材の健全性が重要になるが、その評価には非破壊検査を通じて、結晶のひずみなどの変化を分析できることが必要だ。

 そこで、NEDOはX線よりも透過力が高い中性子線に着目。これを用いたマルチマテリアル部材などの解析手法の確立に取り組み、世界で初めてブラッグエッジイメージング法に特化した小型装置を協力機関と短期間で開発し、最初の中性子の発生と結晶情報を含む透過スペクトルの計測に成功した。

 ブラッグエッジイメージング法とは二次元検出器を利用して、画素ごとに試料を透過した中性子強度の波長分布(ブラッグエッジスペクトル)を測定し、結晶情報の抽出と画像化を行う測定法のこと。これにより、金属などで構成する部品や材料内部の広い面積(現状10㎝角)の結晶相・ひずみなどの結晶構造情報を、二次元画像として非破壊で観測できるようになった。

 小型のため使用時は専有となり、自由な条件設定が可能なほか、小規模体制での運営により、産業ユーザーからの装置利用時間などに関する要望にも柔軟に対応できる。また、自動車部品を想定して、様々な試料サイズに適応できる試料室も設けた。これらにより、健全性の高い構造材料・部品の開発と輸送機器の軽量化の促進につなげることができる。

 今後は中性子線の安定化や検出器の高感度化など、装置の性能向上を進め、2020年度の本格稼働を目指す。

東ソー 新型コロナウイルス検査キットの開発に着手

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2020年2月25日

 東ソーは21日、核酸(RNA)を増幅検出する「TRC法」を用いた新型コロナウイルス検出試薬の開発を開始したと発表した。TRC法による検出試薬を用いて、同社製品である自動遺伝子検査装置「TRCReady‐80」で検査することで、新型コロナウイルスを簡便かつ約50分以内に検出することを目指す。

 同社のバイオサイエンス事業の一翼を担う遺伝子検査システムは、「小型」「迅速」「簡便」をキーワードに製品開発を推進。TRC法を用いた同社の遺伝子検査システムは、迅速性を要求されるノロウイルスや結核、非結核性抗酸菌症(MAC)、および性感染症の検査に用いられている。

 同社は、これまで培ってきた技術や知見を生かして、各種研究機関・公的機関の協力を仰ぎながら早期の開発に取り組んでいく考えだ。

 なお、TRC法とは、一定温度でRNAを複写増幅する転写逆転写協奏法と、検出対象の核酸と結合することで蛍光が増強する発蛍光プローブ(INAF プローブ)を組み合わせた方法。

 同社のTRC法検査の特徴として、①転写逆転写反応が連続的に進行するため標的核酸の迅速な増幅が可能、②核酸検査(RNA)のため高感度で検出が可能、③内部コントロールを同時に増幅・モニタリングすることによる偽陰性リスクの低減、④核酸精製から核酸増幅・検出の工程を自動化した検査装置による作業の簡便さなどが挙げられる。

東工大など 温室効果ガスを化学原料に変換する光触媒を開発

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2020年2月21日

 東京工業大学や物質・材料研究機構(NIMS)など5者による共同研究グループは、低温でメタンの二酸化炭素改質反応=ドライリフォーミングを起こす光触媒材料の開発に成功し、このほどその研究成果を英国科学誌「Nature Catalysis」のオンライン版に発表した(現地時間:1月27日)。

 ドライリフォーミング反応では、温室効果ガス(GHG)であるメタンとCO2を、水素と一酸化炭素の合成ガスに変換する。生成した合成ガスはアルコールやガソリン、化学製品を製造する化学原料となるため、ドライリフォーミング反応は 天然ガスやシェールガスの有効利用と地球温暖化抑止の観点から注目されている。

 しかし、この反応を効率よく進行させるためには800℃以上の高温が必要となることから、大量の燃料消費と、高温条件下での触媒の劣化が問題となっていた。

 こうした中、同研究グループは、ロジウムとチタン酸ストロンチウムからなる複合光触媒を開発。光照射のみでドライリフォーミング反応を達成した。ヒーターなどによる加熱を必要としないため、燃料の消費が大幅に抑えられると同時に、加熱による触媒の劣化が起こらず長期間安定的な反応の継続が可能になった。

 今回は光触媒として、紫外線応答型のチタン酸ストロンチウムを使っているが、実用化に向けては太陽光の主成分をなす可視光の利用が課題となっている。一方で、同研究では酸素イオンが媒体となるエネルギー製造型反応の機構を初めて見出しており、今後この新しい反応機構を基に、可視光を吸収できる光触媒材料への展開などを図っていく考えだ。

 実現すれば、天然ガス・シェールガスの有効利用やGHG低減への貢献のほか、低温で合成ガスを製造することができるため、既往の工業的手法と組み合わせることでガソリン製造などの施設の大幅な簡略化と効率化が望めるという。

 なお、同開発を行ったのは、東工大物質理工学院材料系の庄司州作さん(博士後期課程3年)と宮内雅浩教授、NIMSの阿部英樹主席研究員、高知工科大学の藤田武志教授、九州大学大学院工学研究院の松村晶教授、静岡大学の福原長寿教授らの共同研究グループ。

 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」の研究課題「高効率メタン転換へのナノ相分離触媒の創成」として実施した。

ソルベイ 医療機器部品構造体向け熱可塑性樹脂を展開

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2020年2月21日

 ソルベイは医療機器部品構造体向けに「Xencor LFT(ガラス長繊維強化熱可塑性樹脂)」を展開している。

 「Xencor LFT」コンパウンドは、構造用途に適した高い強度と優れた耐衝撃性能を提供する。医療用部品構造体に使われてきた金属や、従来の短繊維強化熱可塑性樹脂に取って代わるもので、医療機器設計者とメーカーに新たな展開をもたらす。その典型的な用途は筐体やギアシステムなど、高度な機械特性と耐荷重性能が求められる部品だ。

 同社は引抜成形により、連続して高度に配向したコンパウンドを製造。高温条件下での機械特性の保持性能に優れ、非常に低いクリープ、優れた耐疲労性を付与し、美しい表面仕上げを可能にする。ポリマーの種類とグレードによって、長繊維強化材が30%から60%含まれる。

 同コンパウンドが金属に勝る点は、より軽量になり、設計の自由度が高まり、優れた耐薬品性が得られ、生産が効率化されること。こうしたメリットは、最近、Stavjelo社が初の完全樹脂製Eバイクを開発したことで実証されている。

 この開発に必要とされた技術的要件は、医療機器にも応用可能なものだ。「Xencor LFT」製品群は、ソルベイの半結晶性樹脂材料グレードで構成されている。

出光興産 次世代電池向け固体電解質の小型量産設備を新設

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2020年2月21日

 出光興産はこのほど、次世代電池として有望な全固体リチウムイオン電池(LIB)向け固体電解質の商業生産にむけた実証設備を、千葉事業所内(千葉県市原市姉崎海岸)に新設すると発表した。完工・稼働開始は2021年度第1四半期を予定している。

 近年、全固体LIBは電気自動車や定置用電池向けなどに早期の実用化が求められており、エネルギー密度向上、充電時間の短縮、安全性向上などにより、現行の液系LIBの課題を克服できる次世代電池として急速に開発が進められている。

 こうした中、同社は全固体LIBのキーマテリアルである硫化物系固体電解質を開発。これまでに高純度の硫化リチウム製造法を確立しており、硫化リチウムを原料とする硫化物系固体電解質について開発をリードし、現在数多くの特許を持っている。

 これまで蓄積してきた技術を実用化することにより、今後固体電解質の量産とさらなる品質向上、コスト削減を図り、原料からの一貫生産と安定供給体制の構築を目指す。同社は、全固体LIB向け固体電解質の開発・実用化を推進し、電動化社会に貢献していく考えだ。