日化協 「第6回 日化協LRI賞」の研究受賞者を決定

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2020年4月10日

 日本化学工業協会はこのほど、日本毒性学会内に設立した日化協LRI(長期自主研究活動)賞の第6回目の受賞者として、徳島文理大学薬学部の角大悟(すみ・だいご)准教授(テーマ:「慢性ヒ素中毒の発症機構と生体応答に関する研究」)に決定した。

 受賞理由として、①ヒ素化合物の毒性発現を左右する因子として、ヒ素の輸送機構と解毒機構に着目し、抱合と排泄を促進する転写因子Nrf2がヒ素毒性の軽減因子として働くことを解明。

 また、慢性ヒ素ばく露による心毒性とNrf2活性化能の関連を示し、Nrf2がヒ素化合物の蓄積、毒性発現に中心的な役割を果たすことを示し、ヒ素化合物の毒性メカニズム解明に貢献

 ②ヒ素の解毒に関わるヒ素メチル基転移酵素の発現調節機構の研究から、mRNAの選択的スプライシングが解毒機能の低下を引き起こすことを示し、多くの化学物質の毒性発現機構における新しいターゲットとして、毒性発現機構解明への貢献が期待される、などの業績が評価された。

 なお、授賞式は第47回日本毒性学会学術年会(仙台国際センター:6月29日~7月1日)で行われる予定。

 日化協は研究者奨励(育成)の一環として、〝化学物質が人の健康や環境に与える影響〟について優れた業績を挙げた研究者を表彰している。

 LRIとは、化学物質の安全性を向上させ、不確実性を低減させることを目的に、化学物質の影響に関する研究を長期的に支援する自主活動であり、国際化学工業協会協議会(ICCA)に加盟している欧州化学工業連盟、米国化学工業協会、日化協の三団体によって1999年より運営されているグローバルプログラム。

 日化協では2000年よりLRIを通じて、年間1億円規模の研究支援をはじめ、2015年にはLRIの認知拡大と理解促進のほか、優れた若手の研究者および世界をリードするような新しい研究分野を発掘することを目指し、日本毒性学会内に「日化協LRI賞」を設立した。

NEDO 自律型移動ロボット向けソフトウェアを公開

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2020年4月9日

 NEDOと東芝はこのほど、自律型移動ロボットと運行管理システムを接続するためのインターフェースAMR‐IF(Autonomous Mobile Robot Interface)の仕様を策定し、AMR‐IFに準拠した操作端末(GUI)ソフトウェアのサンプルをオープンソースソフトウェアとして公開した。

 製造・物流現場や公共施設内での、搬送や警備、清掃など様々な業務で、自律型移動ロボットが普及しつつあるが、各メーカーが上位システムの運行管理システムを開発し、独自のインターフェースで移動ロボットと接続しているため、メーカーが異なる移動ロボットを導入する際には、運行管理システムを開発しなおす必要がある。また、複数メーカー、複数種類の移動ロボットを同じ運行管理システムに接続することもできない。

 こうした課題を解決するため、NEDOと東芝は、移動ロボットと運行管理システムとの相互接続手順を定めた移動ロボットインターフェースAMR‐IFの仕様を策定。同ソフトウェアを活用することで、メーカーや種類が異なる複数の移動ロボットを、共通のシステムで運用でき、ロボット未活用領域でのロボットの普及や低コスト化が期待できる。

 今後、AMR‐IFが移動ロボットの標準インターフェースとなるよう、国際標準化を目指していく。

 

NEDO CNFの安全評価手法文書や原料評価書を公開

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2020年4月8日

 NEDOはこのほど、セルロースナノファイバー(CNF)に関して、①CNFの安全性評価手法に関する文書類、および②「CNF利用促進のための原料評価書」を公開した。

 ①については、NEDO、産総研、王子ホールディングス、第一工業製薬、大王製紙、日本製紙と共同で、CNFの安全評価手法の開発に取り組んでいる。

 今回、CNFを取り扱う事業者などの安全管理を支援することを目的に、「セルロースナノファイバーの検出・定量の事例集」「セルロースナノファイバーの有害性試験手順書」「セルロースナノファイバー及びその応用製品の排出・暴露評価事例集」を作成した。

 今後は、これら文書類を活用してCNFを取り扱う素材メーカーや消費者製品メーカーなどの安全管理を支援し、CNF部材の社会実装を後押しする。

 一方、②については、森林総合研究所、産総研、東京大学、京都大学、京都工芸繊維大学、大阪大学、東京工業大学、スギノマシン、第一工業製薬、三菱鉛筆と共同で、木質系バイオマス(原料)の物性を明らかにしつつ、原料・パルプ・CNFの特性、CNFの利用適正評価など、原料の効率的な選択を支援することを目的に同書にまとめた。

 今後は同評価書を活用して、CNFの材料メーカーや製品メーカーなどのCNF部材の社会実装を後押しする考えだ。

出光興産と東工大 出光協働研究拠点を同大キャンパスに開設

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2020年4月7日

 出光興産と東京工業大学は、次世代材料の創成を目的として、今月1日に「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」(出光協働研究拠点)を東工大すずかけ台キャンパス内に開設した。両者は、2000年代初頭から高分子材料分野を中心に幅広い領域で共同研究に取り組み、新規繊維・フィルム材料開発をはじめとして優れた成果を上げてきた。

 今回新設した「出光協働研究拠点」は、これまでの個別共同研究の枠を超え、「組織」対「組織」の連携により大型で総合的な研究開発を推進し、新たな価値創造を目指した次世代材料の創成と人材育成に取り組む。同研究拠点は、「東京工業大学オープンイノベーション機構」の支援の下、高分子分野の基盤技術の強化・拡充と、次世代モビリティ・高速通信などの領域で社会変革を実現する革新的な技術開発に関する研究活動を行う。また、高分子以外の幅広い分野を含むテーマ探索も推進する。

 なお、高分子関連分野では、高分子構造・物性、成形加工を専門とする東工大物質理工学院の鞠谷雄士教授と出光の代表共同研究員である末次義幸Ph.D.が組織を共同運営する。

 両者は、幅広い分野で高機能材料事業(潤滑油・機能化学品・電子材料・アグリバイオなど)を展開する出光の強みと、物質・材料をはじめとする広い領域にわたり、高度な学術的知見と最先端の科学・工学技術を持つ東工大の強みを融合し、新たな価値創造に挑戦していく。

出光興産次世代材料創成協働研究拠点の体制 イメージ図
出光興産次世代材料創成協働研究拠点の体制 イメージ図

 

デンカと九州大学 がんゲノム検査の共同研究部門を設置

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2020年4月3日

 デンカと九州大学はこのほど、医療分野での新たな検査診断技術の普及と発展のため、3月23日に組織対応型連携契約を締結したと発表した。

 今後、両者は同大学内に先進的ながんゲノム検査に関する共同研究部門を設置し、同大学の研究資源とネットワーク、デンカが持つ検査解析技術に関するノウハウを融合させ、産学連携による研究を推進する。同共同研究部門を産学連携および学術的研究活動の拠点と位置づけ、がんゲノム検査技術の発展に貢献していく。なお、期間は今年6月1日~2023年3月31日となっている。

 同大学は「九州大学アクションプラン2015―2020」の中で、「先端医療による地域と国際社会への貢献」と「社会と共に発展する大学」を具体的な目標と取り組みの1つに掲げ、基礎研究から臨床研究への推進体制の強化や、産学官民連携によるオープンイノベーションを積極的に推進。

 また、同大学は組織対応型連携事業の枠組みの下で企業との「共同研究部門」を設置し、社会の多様なニーズに対して組織的かつ長期的に民間企業などと実用化に向けた産学連携に取り組んでいる。

 一方、デンカは経営計画「Denka Value‐Up」では、ヘルスケア事業を経営の柱の1つに位置づけ、ワクチン・検査試薬事業で培ってきたコア技術を、がん領域や遺伝子診断技術、感染症検査システムなどの新たな医療分野へ拡げ人々のQOL向上に取り組んでいる。

 同大学とデンカグループの連携は、50余年前の合成ゴムの物性測定に関する研究に遡ることができ、その後も長年にわたり、高分子やセラミックスなどの先端材料、検査薬技術を活用した新規バイオマーカー、鉱山の安全な採掘法など多岐にわたる分野について共同研究を進め、実績を上げてきた経緯がある。

 今後は、包括的な共同研究を中心に次世代技術開発を加速するとともに、さらに密接な協力関係を構築・活用することで、地域社会や国際社会の発展に貢献していく。

 

NEDOなど 長期貯蔵でも沈降しないMR流体を開発

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2020年4月1日

 NEDOはこのほど、早稲田大学、日本ペイントホールディングスと共同で、長期貯蔵でも沈降しない高い安定性を持つ磁気粘弾性流体(MR流体)を開発した。

 MR流体は、鉄などの磁性粒子をオイルなどの分散媒体に分散させた流体で、外部から磁場を加えることによって粘度が変化する特性を持つことから、車両のブレーキや制震機、ロボットのアクチュエーターなど機械制御への応用が期待されている。しかし、従来のMR流体は、分散媒体中の磁性粒子が沈降しやすいため、長期間使用すると、装置の損傷や動作が不安定になるといった課題があった。

 今回開発したMR流体は、磁性粒子の沈降を抑制するための側鎖を持つポリオキシレン脂肪酸アミド誘導体を分散媒体に適用するとともに、直径20~300㎚のナノ粒子を分散媒体に添加することで、半年の静置状態でも分離せず、外部からの磁場に対して高い応力を発揮することに成功。今回の成果により、MR流体を長期間にわたって利用することが可能となり、ロボットを始めとする様々な機械制御分野へ応用展開が期待される。

 今後、3者は、開発したMR流体を使った、ロボット用柔軟アクチュエーターの開発を引き続き共同で進める。また、日本ペイントホールディングスは、これまで塗料分野で培ってきた顔料などの微粒子の分散方法や安定化技術の知見を生かし、産業機械向けに最適化させた新たなMR流体の商品化に向けた開発を進め、さらなる応用分野の開拓を進める考えだ。

NEDO 首都高を使った自動運転の実証実験を開始

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2020年3月27日

 NEDOは、管理法人を務める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」について、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路で、合流支援情報などを活用したインフラ協調の自動運転の実証実験を開始した。

 今回の実証実験では、安全で円滑な自動運転や運転支援を実現するため、高速道路の実環境下で、一般道からETCゲートを通過して本線に合流するまでの区間を自動運転車で走行。これにより、インフラ協調による交通環境情報の提供技術の確立を目指す。

 SIP第2期では、交通事故の低減、交通渋滞の削減、交通制約者のモビリティの確保、物流・移動サービスのドライバー不足の改善・コスト低減などの社会的課題の解決への貢献を目指して、自動運転の実用化に向け産学官共同で取り組むべき共通課題(協調領域)の研究開発を推進。昨年10月から開始した東京臨海部実証実験では、臨海副都心地域を中心とした公道の実環境下で、実験用車載器を搭載した自動運転車などを走行させることにより、交通インフラから提供される信号灯火色などの情報の有効性検証などを行っている。

 こうした中、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路では、合流支援情報などを活用した世界でも例がないインフラ協調の自動運転の実証実験を今月16日から実施している。

 実証実験は、高速道路の本線への合流など自動運転の継続が困難な状況の中で、安全で円滑な自動運転や運転支援を実現するため、インフラ協調による交通環境情報の提供技術の確立を目指すもの。有料道路の実環境下、一般道から料金所支払いを含むETCゲートを通過して本線に合流するまでの区間を自動運転車で走行する実証実験は世界でも例がない。実証実験を通して、高速道路から一般道へ自動運転の領域の拡張を加速させ、より安全で快適な自動運転を実現可能とする走行環境の構築を目指す。

 今後、東京臨海部実証実験は、臨海副都心地域、羽田空港と臨海副都心を結ぶ首都高速道路に加え、羽田空港地域にて自動運転技術を活用した次世代公共交通システムなどの実証実験を2020年度末まで実施する予定。また、自動運転に対する社会的受容性の醸成に向け、今年7月に日本自動車工業会と連携しながら、多くの人が自動運転車を体験できる試乗イベントの開催を計画している。

 

SEMI 学生向け半導体の業界研究サイトをオープン

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2020年3月27日

 SEMIジャパンはこのほど、学生向け半導体業界研究サイト「SEMI FREAKS」(https://www.semijapanwfd.org/)をオープンした。

 半導体は、エレクトロニクス機器の中核を担う存在であり、あらゆる産業にイノベーションを生む可能性を秘めている。世界中でその重要性が高まっており、市場は長期的な成長が期待されている。その半導体の製造領域では、日本の装置・材料メーカーは高い競争力を維持し、特に材料では圧倒的な世界シェアを誇る。

 2030年に100兆円超の規模が見込まれている半導体市場では、成長に伴い人材ニーズが高まっており、機械、電気・電子、情報、化学、物理などの幅広い分野で人材が求められている。

 こうした中、SEMIは、業界団体として日本の会員企業約340社とともに、学生への半導体業界の認知度・イメージ向上に重点的に取り組み、その一環として、「SEMI FREAKS」を立ち上げた。

 サイトのコンテンツとして、①半導体の活躍フィールド:モビリティ、XR(VR・AR・MRの総称)、医療、ロボティクス、5G、AIなど注目分野での、サービス・技術と半導体の接点②数字で見る半導体業界:半導体業界の産業規模や使われている技術などを具体的な数字を用いて分かりやすく説明③イラストで分かる半導体製造工程:マスク製造設計から実装・検査まで、半導体の全製造工程をイラストで分かりやすく紹介④ひと目で分かる日本メーカーの世界シェア:日本の材料・製造装置メーカーのシェアを提示、などがあり、今後もコンテンツは追加される予定となっている。

 SEMIは、学生による業界理解の第一歩に向けて、「SEMI FREAKS」を充実させていく考えだ。

 

東京大学 パターニングの電極を半導体に移し取る手法開発

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2020年3月26日

 東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産業技術総合研究所 産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI‐MANA)の共同研究グループはこのほど、洗濯のりにヒントを得て、高精細にパターニングされた電極を有機半導体に取り付ける手法を開発した。

 さまざまな機能性を持つ電子素子を駆動させるためには、電圧や電流を入出力するための電極が必要不可欠。電極は通常金属で、高真空下で大きなエネルギーを用いて成膜されることが多く、電極の設置面へのダメージを抑え、接着力など下地との相性を最適化することも重要な課題だった。

 こうした中、同研究グループは、洗濯のりの成分であるポリビニルアルコールが乾燥すると固まり、水にあうと簡単に溶けることを利用し、基板上で高精細にパターニングされた電極をポリビニルアルコールなどとともに電極フィルムとして引き剥がし、半導体上に移し取る手法を開発。

 さらに、たった一分子層(厚さ四㎚)からなる有機半導体に金属電極を取り付け、半導体の機能を十分利用できることを実証した。取り付け先の制約は極めて少なく、曲面や生体などへの応用も期待できる。

 今回の成果により、さまざまな積層デバイスへの応用が可能となり、将来の産業応用に際し低コスト・フレキシブルエレクトロニクス用のプロセスとしての利用が見込まれる。

 なお、今回の研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」(3月13日版)に掲載された。また、同研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金「単結晶有機半導体中電子伝導の巨大応力歪効果とフレキシブルメカノエレクトロニクス」「有機単結晶半導体を用いたスピントランジスタの実現」の一環として行われた。