宇部興産 生分解性材料の開発に出資、繭由来の天然素材

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2020年9月11日

 宇部興産は10日、カイコの繭に由来するタンパク質であるシルクプロテインの抽出・加工技術をもつながすな繭(京都府京丹後市)の第3者割当増資の引き受けによる出資を決定したと発表した。

 ながすな繭は、『「繭」の可能性を信じ、社会にその価値を届ける。』という経営理念の下、日本有数のシルク産業の地である京丹後市で、シルクプロテインの研究・開発と、その加工品などの製造・販売を行っている。

 シルクプロテインは、自然界の微生物によって分解される生分解性のある材料で、ながすな繭独自の抽出技術により、フィルムやスポンジ、粒子など幅広い形状へ加工できる。同社は、これらの技術により、医療機器や化粧品、繊維、コーティングなどの市場で、「人にも環境にやさしい、そして世の中に役立つものを」提供することを目指している。

 この取り組みに宇部興産が賛同し出資を決定。今後は両社で連携し、市場のニーズを把握しながらシルクプロテイン製品の品質向上やスピーディな量産立ち上げを行い、早期に事業を確立していく。同時に、共同研究を通じ、迅速に生分解材料の知見を蓄積するとともに、新たな用途の開拓に取り組み、将来にわたる両社の成長と事業の発展を目指す。

宇部興産 循環型陸上養殖に向けスタートアップに出資

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2020年9月11日

 宇部興産は10日、京都大学や近畿大学などの技術シーズをコアに設立されたスタートアップであるリージョナルフィッシュ(RF社:京都府京都市)の第3者割当増資の引き受けによる出資を決定したと発表した。

 RF社は、京大大学院農学研究科の木下政人助教と近大水産研究所の家戸敬太郎教授らの共同研究の成果を基に設立。オープンイノベーションを通じて、超高速の水産物の品種改良とスマート陸上養殖を組み合わせた次世代水産養殖システムを作り、「世界のタンパク質不足の解消(SDGs目標2:飢餓をゼロに)」「日本の水産業再興および地域の産業創出(SDGs目標8:働きがいも経済成長も)」「海洋汚染の防止(SDGs目標14:海の豊かさを守ろう)」を目指している。

 宇部興産は、次世代水産養殖システムの構築を通じて持続可能な水産物供給方法の確立を目指すRF社の取り組みに賛同し出資を決定。今後は、新規事業の創出を見据え、化学メーカーとして培った有機・無機・高分子の素材設計や合成技術、プロセス解析力を最大限に活用していく。

 両社は海洋汚染の防止につながる循環型陸上養殖向けのソリューションを目指し、生育環境の制御、廃棄物の削減・利活用、養殖水浄化の効率化などを共同で開発していく考えだ。

 宇部興産グループは、「UBEグループ環境ビジョン2050」を定め、自然と調和した企業活動の推進に取り組み、2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減を目指している。また、中期経営計画の基本方針の1つに「資源・エネルギー・地球環境問題への対応と貢献」を掲げており、さらなる温室効果ガス排出量の削減や、環境負荷低減に貢献する新たな技術・製品の創出と拡大に取り組んでいく。

ENEOS 秋田県沖の洋上風力発電事業開発に参画

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2020年9月11日

 ENEOSは10日、秋田県八峰町および能代市沖での洋上風力発電事業の事業化検討を行う合同会社八峰能代沖洋上風力に出資し、 国内での洋上風力発電事業開発に参画すると発表した。

 同事業開発は、当該海域に最大15.5万kW(0.8~1万kW級風力発電機×最大22基)の洋上風力発電所の建設を計画。ENEOSは、メガソーラーや陸上風力で培った再生可能エネルギー事業の事業化と運営などに関する知見を生かし、共同出資者であるジャパン・リニューアブル・エナジーと東北電力と共に、2024年以降の稼働を目指して、事業化の検討を加速していく。

 秋田県は、洋上風力発電事業では日本国内有数の適地。今年7月、経済産業省と国土交通省は、同事業の対象海域である八峰町および能代市沖を、「再エネ海域利用法」に基づく促進区域の指定に向けた有望な区域として認定し、協議会の組織化や国による風況・地質調査の準備に着手することを決定した。

 ENEOSは、再エネ事業を次世代の柱の1つと位置づけ、メガソーラー(18カ所、約4.6万kW)や風力(2カ所、約0.4万kW)、バイオマス(1カ所、約6.8万kWを全国で展開。また、昨年4月には、台湾の洋上風力発電事業へ参画し、世界的にも開発余地の大きい洋上風力発電事業の知見習得に注力している。

 同社は引き続き、再エネ事業の拡大に取り組み、発電容量を2022年度までに約100万kWまで拡大することを目指すとともに、環境配慮型のエネルギー供給を積極的に推進し、低炭素・循環型社会の実現に貢献していく。

NEDO 低炭素社会に向けCNF関連の研究開発に着手

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2020年9月10日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、低炭素社会の実現に向け、新たに「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」事業で14件の研究開発に着手すると発表した。期間は今年度からの5年間で、今年度予算は6.6億円。

 石油の価格上昇や枯渇リスク、CO2排出にともなう温暖化問題など、持続可能な低炭素社会の実現にはバイオマスなどの非石油由来原料への転換が必要となる。植物由来のCNFは、重量は鋼鉄の5分の1、強度は5倍以上の高性能バイオマス素材で、実用化への期待は高く、市場拡大のための用途開拓やコストダウンが求められている。

 NEDOは2013年度からの「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」事業で、「高機能リグノセルロースナノファイバーの一貫製造プロセスと部材化技術開発」「CNF安全性評価手法の開発」「木質系バイオマスの効果的利用に向けた特性評価」など、木質系バイオマスから得られるCNFの活用技術開発を推進してきた。

 今回、低炭素社会の実現に向け「革新的CNF製造プロセス技術の開発」「量産効果が期待されるCNF利用技術の開発」「多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」を行う。

 「CNF製造プロセス技術」では、CNF複合樹脂の製造コスト低減のため「生産性向上による労務費・原動費削減」「疎水化処理の薬品コスト低減」など製造プロセスの抜本的な見直しを行う。複合対象の樹脂は塩ビ、PA、PP、CRなど。

 「CNF利用技術」では、自動車や建築・土木資材、家電分野などに適用させるための製造技術や成形・加工技術の開発などを行う。「有害性評価手法の開発と安全性評価」では、拡大用途での安全性評価と、製品化時に行う簡易的な有害性評価手法を開発し、事業化支援につなげる。

 CNFを利用した製品の社会実装・市場拡大を早期に実現し、エネルギー転換・脱炭素化社会の実現を目指す考えだ。

 

三井・ダウ ポリケミカル 広島・千葉などにフェイスシールド寄贈

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2020年9月10日

 三井化学と米国ダウ・ケミカル社の合弁会社である三井・ダウ ポリケミカル(MDP)はこのほど、「ハイミラン」樹脂で製作したフェイスシールド7000個を、事業所のある地元自治体や医療機関、学校などへ寄贈した。

市原市の小出譲治市長(右)とMDP千葉工場の三輪敦史工場長
市原市の小出譲治市長(右)とMDP千葉工場の三輪敦史工場長

 寄贈先は、広島県庁、大竹市役所(広島県)、市原市役所(千葉県)、日本赤十字社東京都支部、三井記念病院(東京都)、千葉労災看護専門学校、東京都立港特別支援学校、市原市楽友協会合唱団の8カ所。

大竹市の入山欣郎市長(右)とMDP大竹工場の出羽保之工場長
大竹市の入山欣郎市長(右)とMDP大竹工場の出羽保之工場長

 「ハイミラン」は、米国ダウ・ケミカル社のライセンスを受け、MDPが1978年から製造・販売するアイオノマー樹脂。エチレン-メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマーで、透明性や強靭性、耐摩耗性、耐油性などに優れている。

 

宇部興産 CO2回収・資源化プロセス、NEDO事業に

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2020年9月10日

 宇部興産は9日、東京大学、大阪大学、理化学研究所、清水建設、千代田化工建設、古河電気工業と共同で提案した、「電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発」プロジェクトが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されたと発表した。

 同事業は、「ムーンショット型研究開発事業/2050年までに、地球再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に公募したもので、委託期間は2022~2029年度の最大10年間の計画となっている。

 地球環境の保全のためには、社会活動により生じる温室効果ガス(GHG)の削減が必要であり、中でもCO2が非常に高い割合を占めている。日本は、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(閣議決定)の中で、2050年までに80%のGHGの排出削減に取り組むことを宣言。GHGの削減は、緊急対策が必要な地球規模の大きな問題となっている。

 また、昨年に示された「カーボンリサイクル技術ロードマップ」(経済産業省)では、CO2を資源として捉えて有効利用する「カーボンリサイクル技術」を通して、排出量を抑制する方針が示され、革新的な技術開発が求められている。

 こうした状況下、NEDOは、ムーンショット目標4の達成を目指す研究開発プロジェクトに着手。今回、採択された委託事業では、電気化学技術を主体とし、400ppm~15%程度の幅広い濃度範囲の気体中CO2濃度に対応し、かつ分散配置が可能なCO2回収・有用化学原料への還元資源化プロセスの開発を目指す。

 具体的には、大気中に放散された希薄なCO2と放散される前のCO2を回収し、再生可能エネルギーを駆動力として電気化学的に富化/還元し、有用化学原料を生成するプロセスまでの統合システムを開発。これにより、カーボンリサイクルの基盤を構築する。共同研究者は、今回の事業採択を受け、希薄な濃度に対応可能なCO2回収・資源化に係る革新的技術を産学官の協働により開発するとともに、統合システムの実用化と普及に向けた取り組みを加速する。

 

東ソー ハイブリッドリサイクル技術、NEDO事業に

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2020年9月10日

 東ソーは9日、東北大学、産業技術総合研究所(産総研)、宇部興産、恵和興業、東西化学産業、凸版印刷、三菱エンジニアリングプラスチックスと共同で提案した、「多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクル技術の開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されたと発表した。

 同事業は、「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」で進める「廃プラスチックを効率的に化学品原料として活用するためのケミカルリサイクル技術の開発」に公募したもの。なお、同事業の委託期間は今年6月から来年3月までとなっている。

 採択された技術は、包装・容器に多く使用されている多層プラスチックを高温高圧水中で処理することで、特定のプラスチック成分のみを原料にまで分解し、得られた原料と単離されたプラスチックの双方を再利用する。食品などで汚染されたプラスチックごみをそのまま処理できる可能性があり、一般ごみのリサイクル率向上に寄与することが期待される。

 今回の委託事業では、産官学で連携してプラスチックの分解条件の探索と連続処理プロセスの開発を進めることでプロセスの高効率化を図るとともに、社会実装を見据え、対象となる廃棄物の調査と処理プロセス適用時のLCA(ライフサイクルアセスメント)評価を行っていく。

NEDO 地球環境ムーンショット目標に13テーマを採択

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2020年9月9日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、「ムーンショット型研究開発事業」の中の目標4「2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を目指す研究開発プロジェクト13件を採択したと発表した。

 日本発の破壊的イノベーション創出を目指した挑戦的な研究開発(ムーンショット)推進に向け、総合科学技術・イノベーション会議で「ムーンショット型研究開発制度」を創設し、今年1月に6つの目標を決定。今回、目標4の実施に向け、公募を経て採択した。

 開発は次の3分野からなる。①大気中CO2の回収と利用の「温室効果ガス(GHG)の回収・資源転換・無害化技術」8件。2050年までのGHG80%排出削減には、排出抑制だけでなく排出後のGHG回収技術が必要。大気中のCO2濃度は0.04%と希薄で、直接回収(DAC)には大量のエネルギー消費や高コストなど多くの課題がある。DACの課題解決と回収したCO2の資源化、さらに地球温暖化係数がCO2の数十倍、数百倍ある農地由来のメタンやN2Oの無害化も対象。2050年までにDACの世界的普及を目指す。

 ②農地や工場などから排出される低濃度窒素化合物の無害化と利用の「窒素化合物の回収・資源転換・無害化技術」2件。人間活動由来の窒素化合物は、プラネタリーバウンダリーの限界値を超えた状態にあると言わる。湖沼や海域の富栄養化、酸性雨や気候変動などへの影響に対応する。

 ③海洋中で適切に生分解するプラスチックの「生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発」3件。日本の「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」実現には、海洋流出しても環境影響の少ない海洋生分解性プラスチックが必要。海洋流出後に適切に分解するよう、生分解のタイミングやスピードをコントロールするスイッチ機能の開発を行う。

 これらを通じて、「地球温暖化問題の解決(クールアース)」と「環境汚染問題の解決(クリーンアース)」を目指していく考えだ。

BASF 高温耐性PPA使いGEHR社が押出成形品へ

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2020年9月9日

 BASFはこのほど、押出成形で半製品化できるポリフタルアミド(PPA)「Ultramid Advanced N 5H UN」を開発したと発表した。半製品の熱可塑性プラスチック押出成形の世界的リーダーGEHR社(ドイツ)は、同PPAを使って直径50mmの押出成形品の製造に世界で初めて成功した。従来のPPAに比べて扱いやすく、溶融安定性も高いため品質を損ねずに半製品の生産が可能。最終製品に仕上げるための切削加工も容易だ。

 「Ultramid Advanced N」は半芳香族の化学構造をもち、高温下の機械特性、厳しい使用環境下での耐薬品性と耐加水分解性、100℃以上の高温での耐摩擦、耐摩耗性に優れ、湿潤環境下での寸法安定性は全PA中で最高。半製品や小型組立部品の押出成形だけでなく自動車産業、機械工学、厨房設備など幅広い用途にも適する。 

 GEHR社の押出ロッドにより、高温環境で使用される部品や寸法安定性が必要なポンプ部品、歯車、サーモスタットハウジング、スライディングレールなど幅広い用途に使用可能。自動車用途ではモーターやトランスミッションオイル、冷却剤、酸、塩や凍結防止剤と接する部品に特に適する。高温環境でも優れた耐衝撃性と耐摩擦性、耐摩耗性を必要とする部品にも使用可能だ。

 これにより、ポリエーテルエーテルケトンやポリアリールスルホン半製品とエンジニアリングプラスチック半製品との市場ギャップを埋めることができた。

カネカ 生分解性ポリマーが資生堂の化粧品容器に採用

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2020年9月9日

 カネカはこのほど、「カネカ生分解性ポリマーPHBH」が「SHISEIDO」ブランドの新製品「アクアジェル リップパレット」の製品ケース(ボディ、蓋)に採用されたと発表した。今年11月より発売される。

アクアジェル リップパレットのイメージ。(提供:株式会社資生堂のブランド「SHISEIDO」)
アクアジェル リップパレットのイメージ。(提供:株式会社資生堂のブランド「SHISEIDO」)

 両社は昨年より化粧品容器の開発に共同で取り組み、資生堂の同製品のコンセプト「海を大事に想う」という考え方が「PHBH」の海洋分解性と合致することから採用。化粧品用途では初めての採用になる。

 「PHBH」はカネカが開発した100%植物由来の生分解性ポリマー(共重合ポリエステル)で、幅広い環境下で優れた生分解性を示し、海水中での生分解認証「OK Biodegradable MARINE」を取得。海洋汚染低減に貢献する。

 昨年末、同社高砂工業所(兵庫県)に従来の5倍にあたる年産5000tのプラントが竣工し、グローバル展開する多くのブランドホルダーとストロー、カトラリー、食品容器包装材など幅広い用途で検討が進んでいる。急拡大する需要にタイムリーに応えるため、本格的量産プラントの建設を早期に決定する見通し。

 同社は「カネカは世界を健康にする」という考えの下、今後もソリューションプロバイダーとしてブランドホルダーと共同してグローバルに価値を提供していく考えだ。